次の日、俺は八一とあいちゃんとともに将棋会館に向かっている。
目的は、あいちゃんの弟子登録と八一の帝位戦リーグのためである。
「ウフフ〜♪」
あいちゃんは、俺と八一に連れられて楽しそうに歩いている。
ほんとうに無邪気な子供は可愛い。
「本当にいいんですか?付き添いなんて。」
「んああ、いいよどうせ今日予定ないし。」
「でも、盤王戦の防衛戦が近いんじゃ・・・」
「気にしないくらいがちょうどいいんだよ。」
「やっぱり、兄弟子はすごい・・・」
本当はあいちゃんの可愛さをもっと見たいだけなんだけどね。
✳︎
将棋会館に着いて無事に弟子登録を済ませ、八一は対局場へ向かった。俺とあいちゃんは道場へ行き中に入る。俺に気付いた子供たちが一斉に俺の周りに集まる。
「山橋盤王だ!」
子供たちに囲まれている俺を見てあいちゃんは驚いた顔をする。
「おじさんスゴイです、大人気です。」
「アハハ、まぁ一応将棋の世界で有名人だし。」
すがる子供たちから逃げて俺はあいちゃんの1日の対局料を払う。
「あいちゃん、好きなだけ今日は指してきていいよ。」
「ハイッ!」
あいちゃんは目を輝かせて将棋盤の前に行く。
盤王と一緒に来た竜王の弟子ということで、あいちゃんは早くも子供たちに大人気だ。
あいちゃんは八一が言った通り強かった。
道場にいる子供を次から次へと倒していく、特に終盤力には目を見張るものがあり、彼女の才能の高さを感じさせる。
あいちゃんは勝つたびに俺の方を見て嬉しそうに笑う、可愛い。
俺はその笑顔が見たくて自然とあいちゃんを応援する。
また一勝して笑顔を向ける。それに応えるように俺も笑うと、向かいの席で今負けたショートカットの女の子が俺の方へやってきた。
俺の前に来ると彼女は緊張した顔で話しかけて来る。
「は、始めまして水越澪です。あ、あ、あの山橋先生握手してください。」
「え?いいよ。」
前に差し出された小さな手を握ると、澪ちゃんの顔が明るくなる。
「やったー、盤王に握手してもらった。私、ファンなんです。さっきもあいちゃんに向けた笑顔が素敵で、その・・・な、なんでもないです。」
澪ちゃんは顔を真っ赤にして顔をブンブンと激しく横に振る。そんなよくわからない仕草も小学生がやると可愛く見えるなぁ。
澪ちゃんと話しているとさらに背の高いお嬢様っぽい子と、その二人よりもさらに小さい金髪の子がやってくる。
「初めましてです。貞任綾乃と申します。よろしくお願いいたしますです。山橋盤王のお話は姉弟子からよくお聞きしていますです。」
「姉弟子?綾乃ちゃんの師匠はどなた?」
「加悦奥です。」
「加悦奥先生ということは姉弟子というのは・・・万智さん?」
「はいそうです。姉弟子はよく、『こちらが準備する前に勝手に穴に上がり込んで無茶苦茶やって去って行く』と言っておりました。」
「うん、将棋のことだよね!?穴熊ののことだからね!」
「?」
汚れのない小学生になんて事を言っているんだろう・・・
「供御飯山城桜花の穴に盤王が・・・」
道場の外ではなんか変なひそひそ声聞こえるんですけど・・・
「しゃうおっといぞあーるだよ。」
「?」
気がつくと金髪の子が俺の足に掴まっていた。
「シャルロットイゾアールちゃんです。」
綾乃ちゃんが補足してくれる。
なんだろうこの子マスコットキャラみたいでめちゃめちゃカワイイ。
そういえば、銀子も子供の頃負けた時に俺の腰に顔埋めて泣いてたっけな。
昔を思い出してイゾアールちゃんの姿を笑顔で見つめていると八一がやって来た。
「あいー、昼飯食べにいくぞ・・・兄弟子ロリコンだったんですか!?」
「おい八一!?何言い出すんだよ!?」
弟にまさかの誤解をされる。
その上、道場の外では「将棋界のホープに初スキャンダルだわぁぁ」とか言われちゃってるし、違うからね!?
次回からオリジナル展開突入です。