清滝一門の長男   作:Rokubu0213

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5月
開幕!盤王戦


歩夢との対局に戦後最長の402手で辛うじて勝利し、あいも無事研修会に入ることができて、俺とあいは久しぶりのまったりとした時間を過ごしていた。

 

 

「師匠、今日はご予定はありますか?ないんでしたらあいと一緒にお出かけでもしませんか?」

「いや、今日は観たいものがあるんだけど、あいにも観せたいものだから、一緒に観る?」

「見せたいものですか?ハイッ♪ご一緒します。」

 

 

あいは上機嫌で朝ごはんをもりもり頬張っている。

そんな弟子の無邪気な姿を見て俺は自然と笑顔になってしまう。

 

 

俺は10時になるとタブレットを取り出してニコ生で将棋中継を見始める。

上機嫌で俺の隣に座ったあいは、それを見て顔から笑顔が消えた。

 

 

「将棋ですよ、師匠。」

「うん、今日、兄弟子の防衛戦なんだ、応援しないとな!」

「師匠のだらぶち。」

 

 

なぜか、あいの機嫌が急に悪くなった。

なんでだ?

 

 

 

✳︎

 

 

 

「お時間になりましたので対局を開始して下さい。」

 

 

立会人の合図を聞いて先手の俺が一手目を指す。7六歩、角道を開ける最も一般的な初手。

挑戦者の田井中俊7段はそれを見て8四歩と指す。

居飛車党同士の対決。

 

 

戦型は俺が一番得意な角換わり戦になった。

 

23手目自信を持って力強く用意していた一手を放つ

 

ーー3五歩

 

この手を見て田井中7段の手が止まった。

 

 

俺は玉を囲わずいわゆる居玉で相手を攻め始めたのだ。

 

玉の守りが薄い分、もちろん攻め切らなければ負けてしまうのだが、決め切れる自信がある。

 

俺は123筋に狙いを定めて角も桂馬も香車も取られながら無理やり飛車を敵陣に侵入させる。

 

相手も角を二枚設置して守りの薄い俺の玉にプレッシャーを与えてきた。

 

 

ーーここで引いてたまるか!

 

 

敵陣に銀を打ち込み無理矢理相手玉の守りを剥がしにかかる。

 

相手も負けじと角を突進させてこちらの守りを剥がしに来た。

 

 

ついに俺の玉を守る駒はなくなった。

 

 

逃げ道も金で封鎖される。

 

 

ーーまだ終わってない!

 

 

ひたすら手を読む。

 

 

 

読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む読む

 

 

ーー見えたっ!

 

 

時間いっぱい使って相手の詰みを発見した。

 

 

 

81手目5四桂打ちを見て田井中7段は投了した。

 

 

「ありません、負けました。」

「ありがとうございました。」

 

 

まずは一勝、俺は盤王戦で先手を取った。

 

 

 

✳︎

 

 

 

「すごいです、師匠、おじさん勝ちましたよ!」

 

 

最初は不機嫌だったあいも兄弟子の将棋を見始めるとすっかり機嫌を直しそれからは1日中、兄弟子の将棋に夢中になっていた。

 

 

「ところで師匠あの戦法あいは知らないですー(>_<)」

「角換わり4五桂急戦。最近有力視されている角換わりの戦法だよ。ただそれをタイトル戦で、しかも居玉で指すのはさすが兄弟子って感じだな。」

「おじさん、本当に強かったんですね!普段はそんなに強そうな雰囲気なかったから信じられませんでした。」

「そうだよ、兄弟子は昔から俺の憧れで目標なんだ。恥ずかしいから兄弟子には絶対言わないけどな。」

 

 

兄弟子は昔からずっと俺より前を走り続けて来た。

居飛車党になったのもプロデビューもタイトル獲得もいつだって兄弟子の後を追い続けた。・・・将棋だけじゃない、一人暮らしも兄弟子を真似して始めた、兄弟子の真似をすれば強くなると思って・・・

 

でも最近になってわかった。兄弟子の真似をしてるだけじゃいつまでも兄弟子には追いつけない。

 

兄弟子を超えるには兄弟子とは違う道を進まなければならない。

 

「でも師匠なら絶対勝てますよ、おじさんにも。だってあいの師匠は最強なんですから!」

 

 

俺の膝の上で無邪気に笑う弟子を見て思う、俺はあいの憧れる誰よりも強い棋士にならなきゃいけないんだ!

 

 

「ああ!いつか絶対勝ってみせるよ。」

 

 

 




この作品を書き始めた当初予想していたより多くの方に読んでいただいて、とても嬉しいとともに驚いています。

皆さんに楽しんで頂けるように努力しますのでこれからもよろしくお願いします。


さて、次回は桂香さんファン必見です!!
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