もののけの子 作:雪谷
ストックはあっても直しが間に合わない悪夢。
現れたのは1m四方の黒い壁。
中央には小さな扉があって、開くと何やら電子画面のようなものとパスワードを入力するための何も表記のない12のボタンがある。
「?、パスワードはわかるがこの画面?はなんだ?」
「コレもパスワード」
電子画面もどきも12に区切られていて、聖法をこめながら指をスライドさせる。聖法に反応する特殊な素材を使っているから私しか使えない仕様だ。
あと同時進行でやらないと警告音が家中に響いて地下への通路が封鎖されるので、自滅する恐ろしいプログラムも組み込んである。
まるで違う生き物のように動く私の指が気持ち悪いのか、おじさんは静かだった。
入力が終わった直後、部屋全体に機械音と歯車が軋むような音が響き渡る。
「……壊れてないか?」
「仕様だ」
この金庫はお気づきの通り私が魔改造したものだ。3段に別れていて、上二つには個別に扉がついている。が、今日は一番下の気安く置いてあるもので充分なのでスルー。ちなみにオートロック。
上の数枚をとってポイッとわたす。
無言で目を通すと、パシーンと書類で頭をはたかれた。はて、何かしたか?
「こんなもん有るならさっさと出せ!」
「あとでコピーし終わったら返してね」
「ハァ、わかった」
「あとコレもあげるよ」
部屋のすみにあるどっから見てもゴミ箱の中に手を突っ込んでその中の一種類を出す。
「鍵だ」
「!」
祓魔師の世界では必需品であり、鍵がなければたどり着くことのできない場所があるほど重宝されている便利なアイテムだが、一般人には全く知られていない魔法の鍵である。
いくら空の神様と過ごしているとはいえ、一般人であろう私がもっているには不自然だ。おっと、おじさんの眉間に大きなしわがよっている。
「クラッキングしたら一発で製法が出てきたぞ?愉快なことだ」
「お前、何もんだ」
明らかに警戒しだしたおじさんに今更な反応だと笑いながら、ここ最近始めた仕事の営業をする。
「いつもご利用ありがとうございます、あなたの悪魔バアルでございます。本日はどのような知識をお求めでしょうか」
お決まりの文句です。
するとみるみるうちに変な顔になっていくおじさん。
「お前!あの人か悪魔かわからんやつか!態々悪魔の名前をコードネームに決めやがって!散々調べさせられたんだからなぁ!!」
「全てブロックした。やり過ぎたと思ってるけど悪いとは思ってない」
「思えよ!」
「聖騎士って言っても社畜なのか」
「言うな」
そこからは早かった。
白鳥家が取り潰されることはなかったが、騎士団に弱みを握られたも同然の白鳥家は暫く静かになるだろう。
6歳になったとき、学校に行く行かないで山の皆とおじさんの間で小さな紛争が起きた。その様子はさながら地獄絵図と言って差し支えない凄惨なものだった。
私を人間の巣窟にやりたくない山のみんなVS普通の子供と同じように扱うおじさんはなかなか決着がつかない。なので偽の保護者を作り上げて教員免許をもつ貧乏な家の長男と言う設定にした。実際に貧乏な大家族と交渉して給料として大金を払っている。
そうすればその偽の保護者に教えてもらう、と言うことになるため学校に行かなくても良いとなるわけだ。
私が山の皆よりおじさんをとるわけないだろう。
「っておい!お前本当にグレーだな!!」
「誉めないで」
「誉めてねぇ!」
「でもいいじゃん、私の拘束される時間がない方が忙しいおじさんも助かるでしょ?」
「……言い返せないのがつらい」
素行が悪めで有能すぎるおじさんは、馬車馬のごとく働かされていて最近は情報通にもなってきた(私のせい)からか更に忙しいらしい。
上司に逆らえない社畜過ぎてたまにボロボロになっているけど、怪我してないあたり有能だなと思う。
「もうそろそろ空の神様が来るから帰ってよ」
「いや、今日は訓練とやらも見ていこうと思ってな」
「ついでにご飯も食べたいだけでしょ」
「まあそう言うなよ」
「全く、しょうがない大人だ」
そんなこんなで空の神様とおじさんに鍛え抜かれた小学校時代。
さすがに人と接する機会が少なすぎると言うおじさんに、空の神様が賛同してしまいおじさんが神父をしてる男子修道院へ鍵で移動のち登校と言うことで中学校はおさまった。
ご読了ありがとうございます。