もののけの子 作:雪谷
私は今世初の体験をしている。
原因は目の前に男子生徒の制服を掲げているおじさんだ。私に息子はいないのだが。
「おら、コレお前の制服」
「諸々の面倒ありがとう、でも何で男子用?」
「は?お前男だろ?……男だよな?」
初めての性別を間違えられた。
そういえば、おじさんが買ってくる玩具のなかに人形は含まれていなかった。
おままごととかお絵かきとか淑やかな遊びはなかった。初めから勘違いしていたらしい。
「……まあいっか」
「変なやつだな、いきなりどうした?」
「何でもない」
「じゃあ来い、俺の息子を紹介してやる!」
歯を見せて笑うおじさんはとても楽しそうだった。
……よく考えたらこれから主人公に会うんだな、何か変な感じ。
さて、人生初の友達作りといきますか。
「燐、雪男、こいつは白鳥 待雪。これから同じ中学に通う仲間だ、仲良くしろよお!」
「「!」」
目の前に青い目の双子がいる。
まだ幼い黒くない雪男君と、そんなにスレてない燐君。
何か楽しみになってきた。友達とか作ったことないけど。
「お、俺は奥村燐!で眼鏡が双子の弟の雪男だ!好きな食いもんはスキヤキ、よ、よよよろしくな!!」
「雪男です、よろしくお願いします」
「よろしく」
「よぉーし、てめぇら自己紹介はすんだな?これから入学式だ、さあ行った行った」
遅刻するぞお~と脅してくるからか双子が慌てて鞄を取りに行った。
「なんか、楽しみになってきたよ」
「!、そうか」
入学式は退屈だった。
新入生代表はやっぱり雪男。優等生然とした挨拶をして少し緊張ぎみに礼をして下段していった。そのあともお決まりの長い話が続いて寝かけたころにやっと入学式は終わった。
教室へ向かう道中雪男君を見掛けたので声をかけると勢いよく振り向いてガッカリされた。
「なんだなんだ、失礼だぞ?」
「あ、すみません……あの兄さん見ませんでしたか?」
「見てない……」
「「もしかして!」」
二人で元来た廊下を戻る。
入学式を催していた体育館に近づくにつれて、会場から困ったような怒ったような声が聞こえてきた。
保護者の方はすでに退場した後だった。
「兄さん!」
「燐君……ホントに寝てた」
学ランを気崩していたから、目付きもあいまって不良と思われて誰も声をかけなかったのかな?
地元では有名らしいし、しょうがないか。
「兄さん、起きて!」
「燐君、起きないと金的だ」
「「「!!!?」」」
「起きた!起きたから!その拳をおろしてください!!」
その場にいた全ての男性が青ざめた顔で見つめてくる。一回やってみたかったから少し残念だと思いながら、渋々振り上げていた手をおろした。
「さて、行くよー」
「「ハイ!」」
((こわ!なにこの人!?))
流れに乗っていけばクラス割が張り出されているところに迷わず行けたはずだが、そんな悠長なことをしているとHRが終わってしまいそうなのでテキトーにそこら辺にいる先生を捕まえてクラス表の場所を聞く。
「君、奥村兄弟と白鳥 待雪だろう?それなら3人セットでAクラスだよ。ちなみに場所は3階上がってすぐ」
「ありがとうございまーす」
途端に元気になって駆けだす燐君を宥めながら、クラスの前につくともう自己紹介が始まっているようだった。
「どうする?」
「はやく行こうぜ」
「でもそれだと今自己紹介してる人の邪魔になるよ、兄さん」
「あ、そっか」
「じゃあ今やってる生徒が終わり次第突入でいい?」
「おう」
「うん」
なんか、これからバカやるのが見え見え。
ワクワクする!
「ハイ、次のせ」
バーン!
先生の言葉を遮る形で、燐君から突入。次に雪男君、最後に私。
「……ようやく来たか」
「へへっ居眠りしちまってよー、俺は奥村燐!趣味は料理で好きなものはスキヤキ!よろしくな!」
「……弟の雪男です、兄共々よろしくお願いします」
「白鳥待雪、まあ、よろしく」
1人目は思いっきり不良スタイル、2人目は新入生代表の優等生、3人目は美しいパーマを腰まで伸ばした不思議な生徒。
突然の襲撃に、クラスメイトたちは方然とした。
が、3人とも顔はいいほうなので疎らではあるが、拍手が届けられた。
「お前ら、席は最前列3つ隣り合わせである仲良く決めろよー」
話し合うまでもなく、燐君が真ん中に座ってしまったので教卓の真ん前が燐君、その左が雪男で右が私だ。
「……仲良いなお前ら」
とりあえず、今すぐ帰りたいから早く進めてほしい。
ご読了ありがとうございます。