もののけの子 作:雪谷
HRが終わり、大量の教材を抱えて僕たちは帰っている。いつもと違うのは、歩く通学路と隣に兄さんだけでなくその向こうに、白鳥 待雪というこがいることだ。
重すぎる教材をリュックとサブバックに分けていたけど、体力がない僕は途中から兄さんがサブバックを持ってくれている。白鳥君は全体的に線が細くて筋肉のきの字もない体で、非力そうなのに涼しい顔でサクサク歩いているから内心すごく驚いている。ちょっと羨ましいな。
藍色の長い天然パーマをゆらす彼は、今朝突然
彼は存外傲慢で自己中だ。
僕だって人のことは言えないけど、白鳥君は自由に思考して好奇心で動いてる。傲慢ともいえる自信と誇りを持っている。
……3年間平穏に過ごすことは無理そうだ。
今だって着々と不良たちに囲まれ始めているのだから。
「おうおう、ちっと面かせや奥村ァ!入学式の帰りかぁ?浮かれてんじゃねぇぞお!!」
燐君にガンつけながら唾を飛ばす今時古いリーゼントヘアーの不良その1。他にも短ランに特攻服にモヒカンと古すぎるラインナップで10人ほどで周りを囲まれ、脱け出すことは難しそうだ。
雪男くんは顔を真っ青にして、眼鏡の奥の目を恐怖でゆらしていた。小さく震える手を固く握りしめて、しかし不良から目は離さない。少し感心した。
「誰だお前ら」
喧嘩を売られた張本人である燐君はというと、鼻をほじりながらこの言いぐさ。恐らく前にも喧嘩を売られ圧勝し根に持たれたのだろうが、その返答は火に油を注いでいるだけだ。
「こんの、なめやがって……!」
「はあ?飴なんか食べてねーぞ!」
……このアホどうにかならないのか?
しょうがないから雪男君の腕をつかんで、燐君と私で守るように背を向けサンドイッチ。燐君は前を見たまま、私は背を向け後ろを。
雪男君の腕は明らかに喧嘩する人の筋肉の付き方ではなかったが、全くないわけではなく銃を撃つには適した筋肉の付き方だ。もう数ヶ月もすれば祓魔師の試験に合格して歴代最年少の祓魔師となるのだろう。
「し、白鳥君!?」
「まあまあ、ここは私も参戦しようじゃないか。ついでに次に苗字で呼んだら金的な」
「え!?や、あ、えっと、はい!」
ちょっと睨んだら良いお返事がもらえた。鍛えてる割に小心者だな。
少し考え込んでいる間に燐君と不良たちはヒートアップしていたらしく、背に雪男くんがいることを意識してか穏便にすまそうとしていた燐君も我慢の限界らしい。
「てめぇ!いい加減にしろぉ!!」
「おめぇが覚えてりゃあここまでキレてねーよ!?」
あ、ギャグはいった。
だが遊んでいる暇はなさそう。さっきの言い合いの直後、不良が燐君を殴った。無論やられるだけの燐君ではないので直後に強烈なストレートが不良のみぞをとらえていた。それと同時に子分らしきその他が殴りかかってきたから、思わずデリンジャーだしそうになって焦った末回し蹴りで3人ほど吹っ飛ばしてしまった。
「あ、加減を間違えた」
やってしまった。後悔先に立たず。
クリーンヒットしたやつは立ち上がることも出来ず呻いて、吹っ飛んだ弾みで顔面強打。鼻血がでている。
他の2人は、仲間を巻き込み打撲多数と言うところか。
「お、おい、奥村燐……その天パは何モンだ」
「知らねぇ!」
「ぐぼお!?」
あ、燐君話し始めた不良にお構いなしで攻撃しに行った。容赦ねぇな。
その後、雪男君を人質にしようとした頭の悪いバカどもを燐君とボコして、電柱に吊るした。
「絶景哉!」
「腹減ったー早く帰ろうぜ!」
「え?この人たちこのままでいいの?」
「「気にすんな」」
「……うん、そうだね」
いつのまにか消えた私への敬語に、ちょっとした満足を感じながら男子修道院へ帰った。
修道院につくとおじさんが門の前で仁王立ちして私たちを迎え入れてくれる。ほかの祓魔師である神父さんたちも皆笑顔で迎えてくれた。
……帰る場所に人がいるのも悪くない。
「燐、お前その頬どうした」
「ほわ!?べ、べべつに喧嘩なんかしてねぇよ!?」
「兄さん……」
「誤魔化す気あるのか……?」
「燐!またおめーは喧嘩して、どうしてそう手が出んだ!!」
バシーン!
「いってぇ!人のこと言えんのかよ!?」
「口答えしない!ついでに白鳥!」
「ん?」
「お前がついていながら何で喧嘩になる!?」
スカッ
「2度はくらわん」
「すっげぇ!じじいの攻撃避けたぜアイツ」
「ちょっと残像見えなかった?」
ご読了ありがとうございます。