もののけの子   作:雪谷

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初めての渾名と勉強

 なぜか金曜日にあった入学式。

 

 今日はその翌日、土曜日である。休日の今日、私は男子修道院へと訪れていた。

 

 

「ここが一応お前の部屋だ」

 

 

 ダミーとして、友達呼んだりするときに必要だろうと部屋を1つ貸してくれた。勿論有料で。最初は無料提供の体で話が進んでいたがさすがに悪いとゴリ押しした。下宿しているようなもんだし。

 

 それにしても、本当に私の性別を勘違いしているようだ。修道院の他の人は気付いている人もいて、苦笑いを隠せずにいる。

 

 あてられた部屋は6畳ほどで、ベッドと勉強机があって大きめのクローゼットは助かる。ここに学校用のコートやジャージ等を入れておく。

 

 

「寝る前とか、あっち(・・・)に戻るときは確り鍵を閉めるように!」

 

「わかった」

 

 

 おじさんはよく私の世話を焼いてくれる。何だかんだいって冷酷になりきれず、情が移ってしまえば切り捨てられないお人好しだ。

 

 その強靭な身体と精神を守れるように。

 

 

「おじさん」

 

「ん~?」

 

「コレあげる」

 

 

 渡したのは空の神様の爪でつくったお守り。見た目はそこらへんに売ってるお守り袋と同じだけど性能は桁違いだ。悪いものから装備者を守護して、跳ね返してくれる。

 

 空の神様の爪はのびるのが早いから、家に沢山あるものの1つ。

 

 

「!」

 

「壊れたら教えてね」

 

「ああ、サンキュー!」

 

 

 歯を見せて笑うおじさん。笑顔があの双子とそっくりなことに、心で笑った。

 

 自室についての話がひと段落した後、居間というより共有スペースといえる部屋に連れてこられた。そこには双子の兄弟がそろっていて、私たちが部屋に入ってくるのを認めるや否や走り寄ってきた。

 

 

「マツ!これからよろしくな!」

 

「マツ君、よろしく」

 

「マツ、?」

 

 

 耳慣れない言葉に首をかしげると、燐君が心得たとでもいうようにいきいきと説明してくれた。

 

 

「待雪って長いだろ?雪だと雪男とかぶるからマツ!」

 

 

 渾名をつけてもらった。

 

 実を言うと、フルネーム全て気に食わなかったので嬉しい。

 

 

「これから一緒に住むんだろ?ここ案内してやるから来いよ」

 

「ああ、ありがとう」

 

「じゃあ神父(とう)さん、僕たち行くね」

 

「おー、仲良くな~」

 

「「「はーい」」」

 

 

 結果双子とは結構仲良くなれた。

 

 院内の施設説明は30分くらいで終わり居間に戻って談笑していたが、恐らく近いうちに実力テストがあると私が言うと雪男君発案勉強会が開催されることになった。

 

 まあ案の定……

 

 

「わ、わかんねー!」

 

「兄さん……実力テストはある程度点を取っておかないと、目をつけられるよ?」

 

「もう手遅れな気もするけどね。……さて、何がわからないんだ?」

 

「ま、マツー!お前だけがたよりだ!」

 

「しょうがないんだから……僕も聞くよ」

 

「お前ら良いやつだ!ありがとなっ」

 

 

 いやいや、お前がな。

 

 だが自分のために誰かが動いてくれることは幸せなことだ。そして今までの生で燐君はそれに気づいている。3年後、私の存在が2人にどう影響するかわからないが本音で話せる程度には、この双子の壁を叩き潰そうと思っている。

 

 それに燐君の不良化を押さえることができれば、おじさんがサタンに手を出されることはないかもしれない。ま、空の神様のお守りがあるから、間違っても死なないけど。

 

 壊れた欠片でも強い魔除けに成る程聖法で力をこめた。もはや飽和状態で見る人が見ればほんのり光って見えるだろう。

 

 

「……兄さん明日も勉強ね」

 

「ハイ」

 

「とりあえず、寝る前にこの漢字書き取りして」

 

「!サンキュー」

 

「おーい、お前ら晩飯だ!」

 

「「「はーい」」」

 

 

 

 

 

 月曜日

 

 

「おはよーさん、今日は実力テストやるぞー。さあ怠けた頭をたたき起こせ!」

 

「うっしゃあ!二人のおかげでやれる気がする」

 

「まさか本当にあるとは……僕も勉強しておいてよかった」

 

「予想的中、3人で上位埋めような」

 

「おう/うん!」

 

(((え?白鳥って何者?)))

 

 

 教科は主要科目5教科。

 

 10分休みは次のテストに出る要点を確認して、答え合わせは二の次三の次。時は金なり!

 

 そんな私たちを違う生き物を見る目で、クラスメイトたちが見ていたけど気にしない。

 

 先生が私の話すたび凝視してくるけどキニシナイ。

 

 実際小学校は勉強とか必要ない範囲だけど、皆で勉強楽しいから気にしない。

 

 

 

 

 

「おい、順位張り出されてるぜ!」

 

「ホントだ……ここからじゃ見えないね」

 

「そう?私は見えるが。上位50名分だけみたいだ。総合点数も書かれているな」

 

 

 気軽に話しながら近付いていくと、モーセの十戒のごとく人垣が割れて道ができた。

 

 人垣の間を3人で歩きながら心なしか小声で話す。

 

 

(((なにコレ?)))

 

「どうしたんだコイツら?」

 

「さあね」

 

「あっ兄さん、マツ!」

 

 

 ちょうど順位表が見える距離になったとき、雪男の驚愕した声が。その視線の先にある順位表に目を向ける。

 

 1位 白鳥 待雪 500点

 2位 奥村 雪男 498点

 3位 奥村 燐  480点

 

 

「まつ、ゆきお……おっ俺!?」

 

「おめでとう兄さん!まさか本当にこんな上位にはいるなんて夢みたいだ!」

 

「燐君おめでとう!勉強頑張ったもんな」

 

(((逆じゃないのか?)))




ご読了ありがとうございます。
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