もののけの子 作:雪谷
実力テスト以来、私たちは毎日1時間その日の復習と確認テストと予習をするようになった。私と雪男君力作のノートで燐君も問題なく学習できている。
そのおかげか、燐君は成績優秀素行不良といった面白い評価をもらっていた。
雪男君はというと……
「凡ミスがなくならないっ満点とれない……」
「雪男君、お茶のむ?」
「お願い」
この通り、負けず嫌いを発揮して問題と悪戦苦闘中。実力テストで私に負けたのがよほど堪えたらしい。しかし言葉の通り若干スランプ気味である。贅沢な話ではあるが。
この勉強時間1時間と決めているのは、燐君は集中力が毎日そう続かない、雪男君は祓魔師になるための勉強があるはずだ。たまにおじさんと出掛けていくから、忙しいだろうという配慮から。
私は勉強が終わると夜の散歩へ出掛けて、帰ったら鍵で山の家に帰る。風呂もこっちではいるから、今のところ問題はない。双子には扉のノブにsleepとかかっていたら、寝ているから鍵もかかっていると言ってある。
「終わった!マツ、丸つけ頼む!」
「はい、はい」
「僕のも」
「早いな」
燐君も解く速さは少し遅いが満点を出し始めていて、雪男君は焦っているようだけど楽しそうだ。今まで追従をゆるさない差で1番だったようだし、張り合いないとつまらないよね。
今日は2人とももう予定はないので、居間でテレビを仲良く見ている。
「ぎゃははは!やべーっはらいてー」
「ハハハ!や、やめてくれ面白い」
「ほえふうふぁ?」
「「……何食べてんの?」」
((何言ってるかわかんないし))
コレ食べる?って聞きたかったんだけど、飲み込み忘れてて自分でも何言ってるかわからなかった。
食べていたのはマドレーヌ。弁当にいれるアルミカップを使って作ったもので、ホットケーキミックスを使えば簡単に出来る。大皿にいっぱい出来たから皆で食べようと思ったんだが。
「燐君、よだれ」
「わり」
「雪男君も」
「あ」
「2人とも、いっぱいあるから落ち着け」
さっき焼き上がったばかりだから、とても良い香りがする。修道士の方も香りにつられて部屋から出てきた。
沢山つくってよかった。普通に消費されそうだ。
もはや戦争だったな。
「うちは飯なら作れる奴が多いんだが、どうにも菓子は訳が違ってな」
とは料理番の弁。
修道院はおじさんのポケットマネーと一部の寄付金で成り立っている。皆男だから食費もばかにならない、生活も節約して遣り繰りしていてそんなに買えるものでもないから甘味に飢えていたそうだ。
ネットのレシピ通りつくれば問題ないはずなのに、一度オーブンのなかで爆発して以来は諦めたと言われれば、もう何も言えなかった。
「よし、マツはお菓子係な」
因みに材料費は私持ちだ。これくらいは痛くも痒くもないので、許容範囲内だ。家族のなかも深まって、悩みを相談できる場も出来て一石二鳥だな。
私は家族団欒という癒しを眺められてむしろ三鳥得ている。
「お~テメーら俺に黙ってなぁに食ってんの?」
「父さん!マツがつくってくれたんだぜ」
「おいしいよ」
その後残り少ないマドレーヌを巡って食いしん坊たちによる第1回お菓子戦争が繰り広げられた。
翌日登校中、少し長くなってきた前髪を気にしつつ燐君が私に問いかけてきた。
「マツ、お前髪切らねーの?」
「燐君、髪はね長いほど便利だよ。呪いとか、対価のかわりとか、冬は温かいとか」
「最後以外変だよ、マツ」
「気のせい、気のせい」
因みにこの長髪天パで何度か生徒指導室に呼ばれている。普通に無視したけどな!
入学時に地毛登録なるものをしているのに難癖つけられる謂れはないし、髪を切れと言われたって切る気はないから行かなかった。後悔してないし悪いとも思っていない。
「お~ッス」
「おはようございます」
「はよー」
上記が教師に対する私たちの挨拶だ。燐君雪男君私の順だ、わかりやすいだろ?
「おはよう、問題児トリオ」
「雪男も!?」
「雪男君って優秀だし素行も良いから、とやかく言い辛いんだろ」
「心外です、先生」
なんか黒いものを背負って先生ににこぉ、と微笑む雪男君。こわやこわや。
成績優秀で素行優良の雪男君だが、ふざけたり羽目を外すことに最近躊躇いがなくたってきている。私と燐君が何かやらかそうとしてもしれっと見ぬふりして陰で笑ったり参加してきたりもするからな。先生も察してきているようだ。
「白鳥、放課後生徒指導室に来ること」
「先生ー、早退します」
「すまん、先生が悪かった。意味もなくサボらないでくれ!」
この先生面白い。
(マツのやつ楽しんでるな)
(先生も面倒なのに目をつけられたね)
((マツには逆らっちゃダメ、絶対))
ご読了ありがとうございます。