友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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過去話 5

 

俺は優秀だった、あらゆる面で成績を残した。誰もが俺を褒め称えた。

アイツが出てきてくるまでは。

 

俺の個性は一般的に強個性と呼ばれるものだった。性質がヴィラン向きだとしても、誰もが俺の個性を褒め称えた。

アイツが出てきてくるまでは。

 

俺は優秀だった、アイツが出てきてくるまで俺は勤勉で善良な人間だった筈だ。あんな奴が出てくるまでは、俺の王国にあんな異物が出てくる迄は。

 

「死ね……轟焦凍。死ね。アイツのせいでアイツのせいでアイツのせいで」

 

全てはアイツが出てきて狂った。常に頂点だった成績はアイツの登場で常に2番手となり、母は1番になれないのは勉強が足りないからだと俺を罵った。

俺は母の期待に応えようとした。寝る間も削り日々机に齧り付いた。だが……そうしてもアイツに追い付けない。

 

『今回も轟が一番だな! 惜しかったな■■! 』

 

先生は俺を見て笑う。1番を取れない俺を嘲笑っているのだ。

 

『■■! アンタの努力が足りないのよ!少しは轟くんを見習ったらどうなの!? 』

 

母はそう俺を蔑み、無能だと吐き捨てた。

 

『轟の個性すっげーな! ちょーかっけぇー! 』

 

周りの奴らは俺の個性を褒めなくなった。アイツの個性はヒーロー向きで超がつくほどの強個性だった。他の奴らは俺を見て笑う、褒め讃えていた筈なのに。

 

『■■の個性もすげーけど……やっぱヴィランみたいだよな』

 

俺の王国が瓦解する音が聞こえる、時間を掛けて造り上げた筈の王国が崩壊していく。

 

そして……その下手人は全てに興味が無いようにこう言い放つのだ。

 

『消えろ。邪魔だ』

 

なんなのだコイツは? 俺の国を滅茶苦茶にして、乗っ取るでもなしにただ無関心だと? お前には俺達がゴミ屑にしか見えないのか?

お前から見たら全てがゴミ屑なのか?この俺ですら塵芥でしかないと言うのか?

 

絶望が俺を蝕んだ、そこから俺は転げ落ちた。悪い事は大体やった、俺の個性ならどんな奴だって俺の配下に出来た。年上だって俺の配下にしたし、大人だって俺の支配下にしてやった。

 

そうして俺は新しい王国を造り上げた。誰もが俺を褒め讃える、素晴らしい世界だ。だが……何かが変だ、俺の胸に何かシコりが残っている。

 

「轟焦凍……アイツだ。俺の楽園を壊したアイツが生きてる限り、俺に真の平穏は訪れない」

 

だから殺す。そして……アイツを殺す前に、嘲笑いながらこう言ってやるのだ。

 

ゴミ屑はお前の方だと。

 

───

 

パチン、駒が進められる。その瞬間に自分の敗北を悟る。また負けた、そう思い対戦相手を見ると、アイツは如何ともし難いと言わんばかりに複雑そうな顔でこちらを見ていた。

 

「轟……お前本当に弱いな。テスト見る限り頭は悪くない筈なのに……実はお前って勉強出来ないからガリ勉で補うタイプ? 」

 

「……うるせぇ」

 

何度やっても勝てない。もう百はやっている筈なのに、未だに飛車と角をハンデとして此方に渡されても尚勝てない。

 

「んじゃ罰ゲームな。携帯かせ」

 

「……は? 」

 

始める前に罰ゲームなんて話はなかった筈、そう思い睨み付けるもアイツは気に返した様子もなくただ携帯を要求するように掌を此方に出す。

諦めて携帯を渡すとアイツは俺の携帯を触り納得したように呟く。

 

「……まぁこんな事だろうと思ったが、こりゃ駄目だわ。壁紙は初期設定&電話帳は家族のみ&画面シールすら外してないとかここまで来るといっそ笑えるな」

 

「テメェ何見てやがる。返せ」

 

俺がそう言って携帯を取り返そうとすると、アイツは避けながらもう片方の手で自分の携帯を取り出し2つの携帯を動かし始める。取り返そうと躍起になっていた俺に携帯が渡される。

 

「取り敢えずアドレス帳に俺のメアドとケー番入れといたから」

 

「……ケー番?」

 

初めて聞く言葉に首を傾げると電話番号の事だと笑いながらアイツは話した。なんの為に入れたのか、それを聞くとアイツは笑い言葉を続ける。

 

「俺がお前の電話番号知りたかったから。この際ここで交換しておこうと思ってな」

 

俺のついでに大和の番号もいるか?と笑うアイツに何か言おうと考えたが口で勝てそうとは思えず口を閉じた。

 

「それと……おーいモテキング! 」

 

「どうした童貞! 何があった!?」

 

「殺すぞ貴様。チンコもぎ取ってやろうか?アァン?」

 

「やれるもんならやってみろよチェリー?あっ一生チェリーだったか? 」

 

確か……大和と名乗っていた筈の男がアイツに呼ばれ近付いてくる。その際に2人が胸ぐらを掴み合い睨み合うが俺の視線を感じお互いに腕を下ろした。

 

「……お前を殺すのは後だ後。おら写真撮るから集まれ」

 

そう言いアイツは俺の隣に立つ。そして俺のもう隣に大和を呼ぶようなジェスチャーをした。

 

「あん?男3人で写真とか頭に蛆湧いてんのかこのカス」

 

「お前……ほんっとーに。良いからやれ」

 

「へいへい。分かりましたよ」

 

飄々と俺の隣に立った大和を確認すると、アイツの手にあった筈の携帯が宙への浮かぶ。

 

「ほら笑え笑え」

 

「せんせー。ここに個性を悪用してる童貞がいまーす」

 

「青少年のくせに毎日ヤリまくりの屑に言われても先生は困惑しか出来ないだろうなぁ」

 

カメラのシャッターが切られた音がして携帯のライトが光る、そして携帯はアイツの手元に戻り、アイツは携帯を動かし驚いたような声を上げた。

 

「うっわ……轟めっちゃ仏頂面」

 

「マジかよ……うっわマジで真顔じゃん。正直ウケるわ」

 

アイツが持っていた携帯を覗き見した大和が面白いものをみたように笑う。そして笑いながら俺に携帯を見せてきた。

 

そこには真顔の俺の顔があった。それを見せながら大和は笑い言葉を続けた。

 

「コミュ障極めすぎだろ正直ウケるわ。俺レベルとは言わんけど顔面偏差値結構高いのにもったいねぇ」

 

「お前本当に煽るの好きだよな」

 

「煽れる時に煽っとけが家の家訓でな。分かったかブサイク君? 」

 

「だから捨てろって何時も言ってんだろうが。性根ブサイク野郎」

 

言葉の応酬からそのまま睨み合う2人。先に折れたのはアイツだったらしく、そのまま携帯を操作しながら俺に話し掛けた。

 

「取り敢えずさっきの写真送っといたから壁紙にしなさい。強制な」

 

「は? 」

 

ポケットに入れていた携帯がバイブで揺れる。取り出して確認するとメールに画像が送付されていた。

馬鹿馬鹿しい。そう思いメールを削除しようとするとアイツは大和に声を掛けた。

 

「大和。やれ」

 

「おっとコミュ障ボーイ。何をする気なんだ? 」

 

後ろから動きを封じられた俺の手から携帯が奪われる。アイツは何度か操作すると俺へと携帯を返した。

 

「ちゃーんと壁紙変えといたから」

 

携帯を確認すると確かに変わっていた。壁紙を変えるために携帯を操作するも何故か変えられない。変えるためにパスワードが必要だと出てきた。

 

「あっ。因みにパスワードは18桁だから」

 

「鬼かお前は」

 

苦笑いする大和の声を聞きながら適当にパスワードを入れるも、現実は無情らしく、全て外れる。

 

「……パスワードを教えろ」

 

「明日教えてやる。明日な」

 

そう言いながらアイツと大和は教室を出ていく。

 

「じゃあ明日な! 」

 

「……そんな片意地張っても正直無駄だからそろそろ諦めた方が気が楽だぞー」

 

そんな声を聞き、俺も帰り支度を始めた。荷支度をしていると突然教室の扉が開く。

 

「……」

 

そいつは見たことの無い奴だった。だがこの学校の制服を着ているからここの学生だとは分かる。無言でこちらを見ながら、ただ佇むソイツを訝しんだ俺は距離を取りながら返事を返した。

 

「……なんか用か?」

 

「……」

 

俺の言葉に何も言わず、そいつは携帯を操作し始める。すると何処かに電話をかけたのかプルルルとそいつの持つ携帯から音が鳴り、ガチャりと音が鳴った。

 

『よぉ……轟ィ。元気にしてたか? 約束の時間だぞ』

 

「……誰だ」

 

覚えのない声に緊張が走る。約束、一体なんの話だと思っていると、その声の主は声のトーンを下げ言葉を続けた。

 

『そうかそうか……つい最近の事だったがもう忘れたか。いやあの時のお前の眼中に入ってなかった俺のミスだな。詫びよう、俺のミスだ』

 

『お前から見れば俺はただのモブ野郎だよ。存在すら覚える価値のないモブさ』

 

「下らねぇ……帰る」

 

まるでピエロを彷彿とさせる話し方に苛立ちを感じ俺は目の前の存在を無視してこの場所を後にしようとする、通り過ぎて扉を潜ろうとした瞬間。

 

『……轟冷って知ってるかァ? 』

 

足が止まった。

 

「……なんで母さんの名前をテメェが知ってる」

 

俺の反応が気に入ったのか声の主はトーンをあげて盛大に笑う。

 

『ヒーヒッヒッヒッ! それだけじゃねぇぞ!轟冬美だったか? 美人なお母さんとお姉さんだなァ! 正直羨ましいよ、あんな綺麗な身内がいるなんて! 俺も欲しいなぁ……欲しいなぁ』

 

『両方……欲しいなぁ』

 

底冷えする声が俺の背中を伝う。そして理解する、この声の持ち主は俺の姉さんと母さんに害を及ぼすかもしれない存在、つまりヴィラン。

 

「……目的はなんだ」

 

『本日以内でのお前の生命の断絶』

 

即答だった。俺の命が欲しい、正確には死んで欲しいと、この声の主はそう言ったのだ。

 

『お前がいたら俺は幸せになれないんだよ。だから死んで欲しい、できるだけ惨たらしく、苦しんで死んで欲しいんだ。頼むよ』

 

「……拒否すればどうなる? 」

 

『こうなる』

 

その瞬間、携帯を持っていた生徒が泡を吹いて倒れる。慌てて駆け寄ると携帯から愉快そうに笑う声が聞こえた。

 

『ヒヒッ……ヒーッヒッヒッ! だいじょーぶ死んでない! 倒れただけさァ! 殺したら犯罪者だからな! まだ殺してない! コイツを殺したってなんの意味もないからな! 』

 

『……言いたい言葉の意味。賢い賢い轟焦凍さんなら分かるよなァ? 』

 

言外に俺が断れば姉さんと母さんを殺すと言ってきた。怒りのままに唇を噛んでしまう。唇からタラりと血が流れ、地面へと落ちる。

 

『安心しろ! お前が死ぬ場所はぜーんぶこの俺が用意してやった! 俺の王国にお前を招待してやるんだ! 咽び泣いて感謝してくれ! 』

 

『だから……この携帯を持って、俺の誘導通りに進んでくれ』

 

それで話は終わりだと思っていたら、忘れていたと言わんばかりに、その声の主は言葉を続けた。

 

『あっ。ヒーロー呼んだら二人とも殺すから』

 

これが俺の運命の日、恐らく人生の中で一番長い日の始まりだった。




唐突なオリジナルヴィランは二次創作の特権
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