友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
『なぁなぁ轟焦凍くん。目的地に辿り着くまでちょっとしたゲームしようぜ』
「ゲーム……? 」
夕暮れ時でも街の喧騒を変わらずに賑わっている、そんな街を歩く1人の少年がいた。少年の手に握られているのは写真が沢山貼られたピンク色の携帯、第一印象でこの携帯の持ち主が彼だと思う者はいないだろう。実際、これは彼の物ではない。
『そう……単純なゲームさ。俺の正体が誰なのか、それを当てる簡単なゲームさ』
彼は今、母と姉を人質に取られてとあるヴィランに脅され行動しているのだ。ヴィランは笑う、まぁお前が俺を覚えているわけが無いと確信に満ちた声色で。
『お前の小学校は■■小学校。さて……俺の出身校は? 』
「……知る訳がねぇだろうが」
確かに自分が卒業した小学校は■■だ。だが、ヴィランの出身校なんて知るわけがない。そう吐き捨てるとヴィランは愉悦が抑えられないように嗤う。
『ほんとぉ? まぁ良いや。じゃあ次の問題にいこうか』
コホンと咳をしてヴィランは次の問を出す。
『君が初めて俺に会ったのは何時でしょうか? 』
また意味不明な問題だ。だが、出題者がそういうのだ。恐らくこのヴィランは俺を知っている奴だ。
「……俺はお前と会った事があるのか? 」
そう聞くとヴィランはおどけるように笑い言葉を発した。
『あるとも! もしかして思い出してきた? いやぁこんな無駄な事もやってみるものだねぇ! やっぱ最初の問題が良かったのかな!? 』
「いや……お前なんて知らねぇ」
電話の先で何かが壊れる音が聞こえた。
『あのさぁ……なんなのお前。俺に喧嘩売ってんの? 次同じ事やったら覚悟しとけよ』
あっ次の角は右ね、という言葉に従い道を進んでいく。裏通りを進みながらヴィランの言葉に耳を傾けた。
『俺は何歳でしょうか? 』
『ヒントはお前と同じ年齢さ』
「……答えじゃねぇか」
ヒントと言いながら答えを言い出すヴィランに呆れながら俺は脳を回す。
1つ 俺とヴィランは同年代
2つ ヴィランは俺の出身校を知っていた
3つ 俺はヴィランとあった事がある
ここから編み出される答えは一つしかない。
「……お前。小学校の頃の同級生か? 」
『せーいかーい! 詳しく言って欲しいけどお前の他人を覚えないクソみたいな人間性を考慮して今回だけは特別だ! 』
そう言いヴィランは無言になる、互いに話さなくなり暫く歩いた後。ヴィランはゆっくりと話し始めた。
『……良いよな。選ばれた人間って』
『俺は優秀だった……個性も強くて勉強も出来た。正直あの時代の俺は神に等しかった。何奴も此奴も俺を讃えていた』
『楽しかったなぁ……本当に楽しかった。毎日が輝いていたよ』
『友達は俺が選ぶ立場。気に食わない奴がいれば俺が何かいうだけでソイツをハブる事が出来た。隠れて何人も虐めたよ……楽しかった。優越感に浸れて明日が来るのが毎日楽しみだった』
『あぁ……明日を何をしようかって布団に入りながら明日の予定を建てるのさ』
思い出すように語られる言葉に耳を傾ける。屑同然の行いをしみじみと語る声色は自分に非がある事を何一つ気づいていない。正しく屑、畜生そのものだった。
『正しく英雄になる運命の子って感じ? 全てが俺の為にあったんだ。これ以上に幸福な日々はなかった』
『毎日が俺の笑顔で溢れていた。俺は充実していた』
お前が現れるまでは。
空気が変わる。電話越しですら感じる変容に轟は思わず身構えた。
『更に選ばれた子が出てきたんだ。親はNo.2ヒーロー、個性は超強力でヒーロー向き、ついでに俺よりも勉強ができるときた』
『そうだな……ソイツは正しく神に愛されて産まれた子供だったよ』
お前の事だよ、轟焦凍。とヴィランは吐き捨てる。困惑する、俺が神に愛されて産まれた? それはない。なぜなら俺は
「……俺の存在は母さんを傷つけた。そんな俺が神に愛されてる訳が無い」
そう、俺のせいで母は狂った。もしも神に愛されていたとしてもそれは疫病神かなにかだろう。
『ハァァァァッ? お前の存在が母さんを傷つけたァ? んな事、お前が神に愛されているのとなんの関係性があるんだよ馬鹿か? 』
『日本中がお前という存在に嫉妬するぜ! 父親はNo.2、持ってる個性は超強力、自分を含めた家族は皆美形ときた! これを神に愛されたと言わずになんという! 』
『母親を傷付けるだけでお前になれるなら皆親の1人や2人ぶっ殺すに違いねぇよ! 』
理解不能だと笑うヴィランに果てしない不快感を感じる。思わず顔が不快感で歪むが電話越しにそれが伝わる事はない。
『あーあー……あの屑を殺して俺もお前になりてぇよ。俺が努力しても全部否定したあの屑を殺してお前になれるなら一石二鳥なのになぁ』
『あぁ……もう殺した後だったわ』
その言葉に思わず手に力が入る。このヴィランは今、なんと言った?
「……殺したのか? 」
『あぁ! 俺がお前に壊された楽園を新しく作り直す際に必要ないものは全部処分しようと思ってな! 』
『手を汚さずに殺す方法なんて俺の個性を使えば幾らでもある。あの屑は死んで当然なんだよ』
理解不能な言葉に思わず足を止める。これが自分と同じ年齢が考える事なのか? 母を殺害して一切の罪悪感を感じていない、それどころかして当然だったと言い出す始末。
「なんなんだ……お前は」
『ん?俺は◼◼だよ。お前は覚えてないだろうけど』
聞き覚えのない名前に眉を顰めているとヴィランはつまらなそうに言葉を続けた。
『……というかお前が名前を覚えている奴とかいんのか? いないだろ』
だってお前、この世の全てを見下してるし。
簡単に吐き出されたその言葉に困惑するしか出来ない俺の態度が気に入ったのかヴィランは電話越しに言葉を続けた。
『え!?もしかしてお前! 自覚なかったの!? マッッッジデ!? おいおいおいこれなんていうギャグ? 下手なコメディーより面白いぜ! お茶の間大爆発間違いなしだ! 』
『そっかー自覚なしかー。マジで屑だなお前、社会のためにさっさと死ねば良いのに』
『あの全てを見下す目! あれを見せられて俺と同じことを思わない奴はいない! どう考えてもお前は全てを見下していた! 全部がくだらないんだろ!? 全部が邪魔なんだろ!? 違うか!?』
人すら通らない裏路地で俺は立ちすくしていた、電話越しに聞こえる声が遠く感じる。
『おいおーい……聞こえてマースか? ちっ……つまんねぇ。無視しやがって』
「俺は……見下していたのか? 姉さんも? 母さんも? 」
『おっ聞いてんじゃねぇか!そうだよ! お前は人を見下していた笑う糞野郎だ! お前みたいな奴はさっさと……』
ヴィランが何かを言い切る前に目の前の小さなマンションから1人の男が降りてくる。男は轟の顔を見ると驚いたような顔をして近付き話し掛ける。
「ん……お前。轟か? なんでこんな裏路地にいるんだ? ここはお前が来る場所じゃねぇぞ。お前は無駄に顔が良いんだからさ。ほれ、回れ右しろ回れ右」
「……お前は」
その男の名前は信条大和。轟焦凍の同級生であり引合石と共に轟に構ってくる2人のうちの1人だ。
「おいおい後輩。俺の事は大和と呼べと言っただろうが……んで……あー……」
ジロジロと轟の姿を見た大和は頭を抱えため息を吐く、ヤバイものに出くわしたと言わんばかりの態度で天を仰いだ。
「……電話してんだろ? 取り敢えず話したい事があるから1回終わらせてくんね? 」
『……無視しろ。お前お得意のアレをしろ』
電話越しのヴィランの言葉に従うしかない轟は眼前の存在に助けを求める事すら出来ない。
「……邪魔だ」
さっさと退け。そう視線に乗せて睨みつけると大和は苦笑いをして言葉を続けた。
「……オーケーオーケー、その前にちょっとだけ待ってくれ。先生がお前に伝言があるって言ってた事、今ちょうど思い出したわ」
そう言い、大和は辺りを見渡した後。おもむろに轟のポケットに腕を突っ込み携帯を取り出した。
何かを操作したかと思えばまたポケットに携帯を突っ込む。
「プリント、お前提出してないから出せってよ。んじゃな後輩、頑張れよ」
「……同級生だろうが」
「ばっか……お前俺は先輩だぞ。色んな意味でな、じゃあなチェリー。明日は引合に勝てると良いな」
そう言い、この場を去る大和を見送るとヴィランは楽しそうに声を上げる。
『いやぁ!相変わらずの氷点下だ。マジでクズだなぁお前。アイツお前なんかにあの態度とかマジで良い奴じゃねぇか』
「……そうだな」
その後も会話は続く、ポケットの携帯は小さく光り続けていた。
どうでも良いヴィランくんステータス
名前 小物 崩郎
性格は読んで御察しの屑、しかもどうしようもないレベルの小物。自分が頂点じゃないと気が済まなくて暴れるゴミ、犯罪経歴多々有り
中1
殺人経験あり
個性 次かその後の後書きで説明するかも
自分で作ってなんだけどコイツ凄まじいレベルで屑で笑う