友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
紅白饅頭と俺達
青い空、白い雲。こんなに天気が良いと何か良い事が俺を待ってるに違いない。素敵な彼女の出会いとか、ちょっぴりエッチなトラブルとか下駄箱のチョコレートとか屋上で待っている美少女とか。
「誕生日占いは…最悪、ついでに星座占いも最悪。血液型占いも最悪…糞以下だな」
占い結果に唾を吐き捨て学校へと向かう。今日は2月14日、つまりバレンタインデーである。男の子が大好きなこの日は今日がこの学校で最後のワンチャンス、これまでの自分を信じろ。きっと叶う
「あ、あのー…良いですか?」
「うん…?どうしたの?」
後ろからの声に振り向く。その相手は後輩の女子、顔真っ赤にしながらこちらに話し掛けてくる姿は大変愛らしくでグッド。だがここでがっついたらドン引きされごめんなさいが関の山、それを知ってる俺はここで己の欲望を絶対見せない
去れ!マーラよ!お前の出番は攻略してからだ!
「これ!」
「…うん。これがどうかしたのか?」
そう言いながら俺に渡してきたのは可愛く包装された小さな箱。心の中でガッツポーズして冷静に相手の言葉を待つ、真っ赤な顔はトマトのように真っ赤になりボソボソと小さな声を紡いでいく。
「引合さんって轟さんと仲が良いんですよね…?」
俺のなかで女子の口から今日一番聞きたくない言葉が飛び出してきたことに意識が半分飛びそうになりながら言葉を続けるように促す。
「それ…轟さんにわたしてくれませんか?」
「分かった。死ぬまで殴ってやるから安心してね」
「えっ…いや…あの?」
良し、あの紅白饅頭野郎。顔面ボコボコになるまでぶん殴ってやる。ついでにこのチョコはアイツの顔面に叩きつけおいてやろう。
そう心に決め俺は校門をくぐった。
一つが二つに二つが三つに三つが…と、ドンドン増える贈り物(別人宛)に今日の俺は怒り狂っていた。これは許されぬ事だ、神がいるのならばこの現実は可笑しい、神は死んだ!ついでに俺の純粋な心も死んだ!
「引合さん!これ!轟さんに!」
「分かった。キッチリ殴り殺しておくからね」
困惑する女子から糞野郎宛のプレゼントを預り先に進む。学校に入ってからひっきりなしにプレゼントを預かっている。
少し遠くにいる後輩男子が血涙を流しながらこっちを見ていたが泣きたいのは俺だ。なんでプレゼントを渡す仲介役を俺がせにゃならんのか。死ね、死ねとは言わんからブサイクになれ!
「おはよー引合!お前相変わらずモッテモテだなー!」
「殺すぞ大和」
「ジョーダンだってジョーダン!こんな事で個性使うなよ!?」
今の俺に話し掛けてきた愚か者は俺の友人の一人、信条大和。簡単に説明すると明るい男だ。どうでも良いがコイツの個性は
「あの大和くん…これ。貰ってください!」
「ありがとう。大切にするよ」
「死にやがれ個性『フェロモン』」
「僻みか?うん?」
もう分かっただろう。フェロモン、異性を虜にするエキスを汗と一緒にばらまくモテ男だ。正直殴り殺したい。個性を使えばコイツを塵一つ残さないレベルで消し飛ばしてやれるというのに
「そーかそーか。大和くんはそんなに死にたいか?」
「悪かったって!早く轟に渡してこいよそれ!」
ため息を吐きながらモテ男に別れを告げこのプレゼントの受取人がいるであろう教室へと脚を運ぶ、全く不愉快だ。俺だって顔は悪くないし性格も悪くない筈。回りのモテ男共に比べたらまだマシだと自負しているのだが何故かモテない。
何故だ。やっぱり顔か?それとも個性か?
「うーす!うちのプリンス様はもう来てるか!?」
そう言いながら教室に入るとクラスメイトが俺の持ち物を察して苦笑いをする。そしてクラスメイトの一人が後ろの端の席で読書している紅白饅頭を指差し小声で話し掛ける。
「…それ一つ貰っても良いか?」
「取り敢えずお前が一つも貰えなかったのは分かった」
そう言うとクラスメイトはガクリと足をつき男泣きを始める。安心しろ俺も何一つ貰えてないしそんな素振りすらなかったよ。
「…なに読んでるんだ?」
「…ん」
取り敢えずそう話し掛けると読んでいた本を閉じこちらに渡してくる。
タイトルは…オールマイトの百の言葉。今日から君もヒーローだ!か…元気の出そうな本だなうん。
「今年もお前宛のプレゼントが来たから受け取ってやれ」
そう言い山のようなプレゼントを机の上に下ろしてやると心底嫌そうな顔をして俺に押し付けようとする。なんだこいつまじで顔面不細工になるまで殴ってやろうか
「毎年の事だけど…こんなに食えねぇよ。石もこんなに貰ってくんな」
「毎年言ってるけどなぁ!お!ま!え!に!渡すように言われてんだよこっちは!」
「…?」
不思議そうに首を傾げる紅白饅頭の頭の中には何が入っているのかが心底気になりながら隣に座り一つ一つ開けて渡していく。
「いいから食え!そんでラブレターも読め!」
「…石にやる」
「何が悲しくてお前から施し受けなあかんのじゃ!いらんわアホ!」
俺に押し付けようとする馬鹿に中身のチョコを口に無理矢理捩じ込みながらラブレターを音読する。こうでもしないと食べないし読みもしないのは長い付き合いで良く知っている。ラブレターを音読されてる少女よ、許してくれ。
「…だとよ。返事は?」
「…甘ぇ。茶くれ」
「うるせぇ次食え次。そんでラブレターで気になったやつがいたら教えろ、キープしておくから」
「…いねぇから全部やる」
「…お前さぁ…せめて相手が一生懸命書いたラブレターくらいさぁ…」
そう言いながら全部の箱を開封し付属していたラブレターだけ抜き取り渡す。心底嫌そうな顔をしてたが無視だ無視。残りの本命チョコの山を轟の鞄に押し込んでいく。上から嫌そうな声が聞こえるが無視して作業を進めていく。帰って綺麗なお姉さんと食えボケ
「…んで気になったやつはいたか?」
「…いや」
「はい。うちのプリンス轟焦凍様のお眼鏡に適う子は今年もいませんでしたー!知ってるかお前!これから毎日のように女子から結果報告せにゃならんのだぞ!いっそ看板にでもはってやりたいわ糞が!」
「…駄目なのか?」
「当たり前だろこの馬鹿」
そう言いながら頭を小突く。すると萎縮したような顔をする馬鹿な友人を見て笑いながら言葉を続けていく。
「…まぁ気にすんな。成り行きで俺がこんな事してるがお前がモテモテな以外なんとも思ってないから。
…これで大和みたいに女をとっかえひっかえしてたら殺してたかもしれんが」
「…別にモテたくてモテてる訳じゃねぇよ」
「まぁ!聞きましたか皆さん!この子ったらついにこんな事を言い始めましたわよ!ついに思春期到来!?」
近所の伯母さんみたいに言いながら頭を撫で回すとクラスメイト(男子)が集まり近所の伯母さんみたいな話し方をしながらもみくちゃにしていく。
「まぁまぁまぁ!うちの轟がついにそんな事を!?」
「昔は『俺に触れるな』だの『邪魔だ』だのと冷たかった轟がついにそんな事を言うように!?」
「羨ましいですわ!チョコ一つ下さいませ!」
「テメェはシャー芯でも齧りあそばせ!」
そんな馬鹿な事をしていると予鈴のチャイムが鳴り響き30代半ばのおっさん担任がノシノシと教室に入ってくる。そしてその後ろを大和がコソコソと入り込み注意される。
「おいゴラ大和ォ!モテモテなのは分かったから席に座れぇ!」
「ちっ!担任が女ならワンチャンあったんだが…」
「おら!轟の回り集まってる馬鹿共も散れ散れ!席に座ってないやつは遅刻扱いだからな!」
その言葉にバラけていくクラスメイトに笑いながらもみくちゃにされて机に突っ伏す轟。
「…おいショート」
「…なんだ?」
いかにも私不機嫌ですというオーラを出しながらこちらを見てくる姿に笑い、そういえばまだ挨拶をしてなかったと思い話し掛ける。
「おはよう」
「…おう」
これは超絶最強イケメンである俺、引合石様が能天気な紅白饅頭、轟焦凍。通称ショートの尻拭いをしながら一緒に馬鹿をやる物語である。