友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
悲しみの中高校生活編を投稿です。
「はい。皆さんが静かになるのに8秒もかかりました。時間は有限、君達は合理性に欠けるね。特にそこの男子二名」
そう言いながらコチラを呆れた顔で見る謎の存在。ボサボサの髪の毛は海草類を想像させ、その髪の奥に見える眼光は胡乱。なんというか胡散臭さを感じさせる人だった。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
訂正しよう。胡散臭いこの人は俺達の担任の先生だった。担任…相澤先生は自分が入っていた寝袋から体操服を出し、
「早速だがこれに着替えてグラウンドに出ろ」
「男の人肌で暖められた服を着ろだと…ッ!?」
先生のとんでも発言に異端者、峰田が信じられないと言わんばかりに小声で悲鳴をあげた。ついでに俺も心の中で悲鳴をあげていた。なんでおっさんの人肌で暖められた服を着なきゃならないのか。
「いや、これは着なくて良いから。君達の席に用意されてるのを着てちょうだい」
机の横掛けにぶら下がっている紙袋を確認すると、確かに体操服が用意されている。その体操服を見て胸を撫で下ろしていると、先生は寝袋を肩に担ぎ教室を出る。それに待ったを掛けるように飯田が挙手をするも
「それじゃあグラウンドで集合な」
「質問よろしいでしょうか!?」
「自分で考えろ。以上」
生徒の質問をガン無視し教室を出る教師ってどうなのだろうかと思う。挙手をした飯田が呆然としているぞ。
「取り敢えず着替えるか」
「何やってんだ轟!まだ女子がいるだろ!」
「…着替えろって言われただろ?」
うちのショートが女子を気にせず着替え始め、それを夜嵐が止めようとしていた。ショートが着替え始めたのを見て女子勢が教室から出る。すまんコイツそこら辺全く気にしないんだ。
「…教室で隠れていたら八百万のヤオヨロッパイ見れるのでは?」
「マジで埋めるぞ」
峰田が名案だと言わんばかりに呟き、俺が真顔で宣告する。俺はやると言ったらやる男だぞ?
「お前だってヤオヨロッパイ見てぇだろうが!」
「…そりゃ当然見たい!舐め回すように見たいさ!だけど。それで女神の心を傷付けたら…俺は死ぬしかないだろうが!」
「いや…死ぬなよ」
宗教上の問題で俺は無理矢理手を出す事が出来ない。『可哀想なのは抜けない』これこそが真理であり、女神を怯えさせてしまったら俺はあの至高の胸に辿り着けず死ぬという事だ。それだけは死んでも避けたい。いや、あのおっぱいを触る前に死にたくないけど。
「なぁ峰田。お前、女神に怯えられても抜けるのか?」
「抜けるね。あの顔がオイラという存在で恐怖するとかそれなんていうAV?」
ここまで分かり合えないといっそ清々しい。yesおっぱいNOタッチの心を知らないとは。
「──二人とも!女子を待たせてはいけないぞ!」
飯田の声を聞き俺は峰田を引きずりながら教室を出る。教室を出ると女子勢が俺達を何とも言えないような顔で見ていたのはきっと見間違いだと思いたい。
「「個性把握テストォ!?」」
体操服に着替えてグラウンドに出た俺達に掛けられた言葉は予想外なものだった。今日の日程が書かれた紙には入学式とガイダンス云々が書かれていた筈。だが、俺達は高校生活の始まりたる入学式に出れないらしい。流石雄英、やる事が違う。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間はないよ」
至極当然な意見はそんな一言で切り捨てられる。なら最初から個性把握テストをすると書いておいて欲しいと思ったのは俺だけだろうか?
「雄英は『自由』な校風が売り文句。そしてそれは『先生側』もまた然り」
つまり『教師がルールだ』という事なのか。逆らったら除籍がありえるとか笑えない冗談だ。入学して早々除籍だけは勘弁して欲しい。
「どうやら一人気付いた奴がいるみたいだな。安心しろ、さっきまでの事は見逃してやる」
俺の表情から思考を読んだのか、そんな事を言う先生。心底有難い御言葉だけど逆に俺の考えに確証がついてしまい正直ドン引きしてる。それで良いのか雄英高校ヒーロー科。
「ソフトボール投げとか五十メートル走とかやってただろ?個性禁止の体力テスト」
「国は未だに画一的な記録を取って平均を作ってるが…合理的じゃない。まぁ簡単に言うなら個性社会についていけない文部科学省の怠慢だよ」
「爆豪。お前中学の頃ソフトボール投げの記録は何Mだった?」
「67m」
そう答えた爆豪に先生はボールを投げ渡し、投げるようにジェスチャーする。
「じゃあ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何しても良い、はよ」
「思いっきりな」
そう締め括った先生の言葉に爆豪は子どもに見せられない顔をするとボールを投げる構えをする。
「んじゃまぁ…」
「死ねぇ!」
爆音と共に空へと消えていくボール。グングンと空へと飛び立ち先生の手に握られていた機械が計測を終えたようにピピッと鳴る。
「先ずは己の最大限を知る。それがヒーローの素地を作る合理的手段」
そう言いながら先生の手元の機械に映し出された数字は705.2m。個性を使ったテスト、その結果の一つを見せられて盛り上がらない奴はいない。
「なんだこれ、すげー『面白そう!』」
「705mってマジかよ!」
「個性思いっきり使えるんだ!流石はヒーロー科!」
『面白そう!』その言葉を聞いて先生は先程までの胡散臭い雰囲気から怒気を混じらせボソリと呟く。あっ嫌な予感が。
「面白そう…か」
「ヒーローになる三年間。そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」
先程までの喧騒は聞こえなくなる。先生の雰囲気が変化したからだ。正直俺も嫌な予感を感じ始めている。さっき確信したアレが現実になりつつあるのだ。
「よし。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し」
除籍処分とするとしよう
その言葉と共に喚き立つ俺達を嘲笑うように笑い、先生は宣言する。
「生徒の如何は俺達の『自由』」
「ようこそ。これが雄英高校ヒーロー科だ」
家にいる母ちゃんへ。どうやら俺は凄い学校に入学したみたいです。