友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
人は個性によりさらなる存在へと進化した。超常が現実へと変化した今、昔ならばただの少年少女だったであろう彼等はどう変化したのだろうか?
「無駄無駄ァ!俺に触られた時点で終わりなんだよぉ!」
嘲笑を響かせながらゆっくりと歩く男。皆様ご存知、引合石がそこにいた。体操服に指貫きグローブというある意味奇抜な格好をした男は悠然とビルの中を歩く、そこにあるのは絶大なる自信。自分が絶対有利だと確信している姿がそこにはあった。
「逃げろ口田!当たれば終わりだ!」
「分かってるよ砂藤くん!」
「逃げろ逃げろ!このスーパーイケメン天才ヴィラン。引合石の前に敵はなし!」
引合の敵、正確には哀れにも彼の秘密兵器の実験役となってしまった砂藤力道と口田甲司。彼等の背に近づくもの、それは
「お前らを追いかけるその針!それには刺されば一瞬で眠れる麻酔薬がたっぷりと染み込んである!そしてその針はお前らを永遠と追い続ける!」
「恨むなら俺をヴィラン役にした運命を恨むんだなぁ!」
「ハーッハッハッハッ!」
超常が現実へと変化した今、個性は少年に絶大なる過信と慢心を与えてしまった。そしてそれが事実だと言わんばかりに引合は高笑いを続ける。そこにいたのはNo.1ヒーローオールマイトに憧れたヒーローの卵ではない。ぶっちゃけただのヴィランだった。
「ハーッハッハッハッ!ハーッハッハッハッ!ハーッハッハッハッ!」
…こんな事態に陥ってしまったのには理由がある。そこでそこまで時間を戻そう。
「第1回戦は引合&尾白チーム対砂藤&口田チーム!引合少年と尾白少年はヴィラン役なので先に戦闘場所であるビルの中で待機しているように!」
「因みにトラップを仕掛けてても問題ないからな!自分がヴィランになったつもりで行動してくれ!」
「任せて下さい!ヒーロー役が泣いて懇願するまでボッコボコにしてやりますよ!」
「ウーッン!この問題児!」
オールマイトから最初の戦闘訓練のメンバーが発表された引合は仲間である尾白にアイコンタクトをとりヒーロー役のクラスメイトに近付いた。
「ヘイ!対戦相手!俺の名前は引合石。そしてこのイカした尻尾ボーイが」
「尾白猿夫だ。よろしく」
「おっ…おう、元気だな。俺は砂藤力道、よろしく。そんで俺の隣にいるのが」
「口田甲司。よろしくね」
砂藤力道、口田甲司と名乗った彼等は引合のテンションに押され流されてしまう。今思えばここで勝敗は半分決まっていた、ここで彼等のうちどちらかが引合が個性把握テストでなにをしたのかを理解していればこれから起こる悲劇は回避出来たのかもしれない。
「いいなぁヒーロー役。俺もやりたかった」
「…さっき物騒な事を言ってなかったか?」
「ヴィラン役だから仕方なくロールプレイしてただけ。俺だってヒーローしたかった」
「ハハハハ!確かにヴィランは嫌だよな。だけど今回はお前らみたいだからお互い頑張ろうな!」
そう言いながら残念そうにする引合を見て砂藤は笑う。奇抜な教室での登場シーン、峰田との熱いおっぱい談義に個性把握テストでの活躍、そして今の姿。その全てを観察して砂藤は引合を面白い人間だと結論をつけた。そしてそれは口田も同じだったらしく、生来怖がりの彼も引合の人柄に触れて安心したのか朗らかに笑っていた。凡そ、これから戦う者達が見せる表情ではない。
故にだろう。これから起こりうる事を回避出来なかったのは。
「良し!それじゃあ宜しくな砂藤!」
そう言い引合は指貫きグローブを脱ぎ握手を求める。顔は先ほどと変わらない朗らかな笑顔だ。
「おう!宜しくな引合!」
そして砂藤も同じく素手には素手で握手に応じる。そのまま引合は口田にも握手を求め、口田も笑顔でそれに応じた。
「んじゃ先に行って準備してきます!
行くぞ尾白少年!」
「それじゃあ二人ともよろしく…後、色々とごめん」
笑顔で走り去る引合とボソリと謝罪しながら立ち去る尾白。その二人を見て砂藤&口田、哀れな生け贄達は自分達も頑張らないといけないと息巻き二人に続くようにその場を後にした。
「ナイス青春!君達も相手に敬意を持って挑むんだぞ!例え相手がヴィラン役であろうが相手は大切なクラスメイトだということを胸に刻むんだ!」
「「はい!」」
オールマイトの言葉に殆どの生徒が大きく返事を返す。だが、返事を返さなかった者達がいた。
「…あの引合があんな青春青春するかぁ?絶対になんかある。オイラの勘がそう言っている」
「峰田君!引合君は二人に敬意を持って接していた!先生もその心を大切にしろと仰ったばっかりではないか!」
引合と知り合って僅か1日だが彼の本質を一人を除き理解していた男。峰田実はそういぶかしみ、飯田がそんな峰田を注意していた。
峰田だけならば考えすぎで流されていただろう。だが、もう一人無言で考えていた者がいた。
「どうした轟!うんこか!?」
「いや…石のやつがあんな事をするとは思えねぇ。絶対になにかある」
デリカシー皆無な夜嵐の言葉に冷静に返事を返した轟焦凍、通称ショート。その人である。
「…轟さんは引合さんと同じ学校でしたっけ?なにか知っているのですか?」
同じ中学出身故に自分達よりも引合石という人間がどんな人物なのか知っているのだろうと判断した八百万百は何気なく轟へと問いかける。その問いに返事を返すのが難しいのか何度もうなりながら轟は返事を返した。
「…俺と石の友達に大和って奴がいる。そいつは『煽れる時には煽っとけ』という家訓の持ち主で良く石を弄って倍返しにされてた」
「それは…なんというか」
突然の新キャラ大和の家訓に返事の返しようもない八百万は困惑した顔をする。だが、それに気付いていない轟は言葉を続ける。
「…そして石の奴は持論を持ってる」
「…持論?『女の子に酷い事は出来ない』みたいな感じの事を仰っていましたね」
「いや、それは石曰く『聖書に書かれている言葉だから持論ではない』らしい。なんの聖書に書かれているか不明だが、まぁそういうことなんだろう」
「…宗教は多種多様化していますから彼の信仰する宗教が何か分かりませんがそういう事なんでしょうね」
「…石の持論に話を戻すぞ」
気付けばクラスメイトの殆どが彼等の話に耳を傾けていた。轟焦凍と八百万百。二人とも推薦入試を潜り抜けたエリートの中のエリート。当然そんな彼等が話す事を気にならない訳がない。
「一回だけ石が持論を語った時があった…それは」
「…もうすぐ戦闘訓練開始だな。口田、個性で辺りの鳥に引合達が何処にいるのか教えてもらってくれ」
砂藤のそんな言葉に口田は自らの個性を使って鳥に呼び掛ける。口田甲司、彼の個性は『生き物ボイス』生き物に呼び掛ける事の出来る力を持っているのだ。
「場所さえ分かれば俺の個性でぶっ飛ばして終わりだ!」
そう息巻く砂藤力道。彼の個性は『シュガードープ』、糖分10gにつきパワー5倍という増強系の個性を持っている。
『それじゃあ両者準備は良いかい?』
オールマイトの声が戦闘エリアに響き渡る。これから試合が始まる、緊張した顔をした二人は身体を強ばらせる。初めての対人戦闘だ、仕方のない事だろう。
『戦闘訓練!開始ッ!』
その言葉と共にビルへと駆け出そうとした二人。だが二人は走る事が出来なかった
「──ビルに引っ張られる!?」
「ど、どうしよう砂藤くん!?」
彼等の身体、正確には手がビルへと引き摺られるように引っ張られていくのだ。
駆け出そうとしていた故に体勢を崩した彼等はその謎の力に逆らう事は出来ない。
「「ウワァァァァァァァッ!?」」
「ハーッハッハッハッ!引っ掛かったな馬鹿めぇ!『戦う前に勝つ!』これが俺の持論よ!」
入ったビルの中で引合の高笑いが木霊する。
「石の持論は『戦う前に勝つ』…やっぱりこうなったか」
「「…」」
轟含むクラスメイト達の目の前にあるモニターに映し出されている光景には砂藤と口田が謎の力によってビルの内部へと引き摺られていく姿と、高笑いしている引合が映し出されていた。
砂藤と口田、彼等は今自分達が何と戦うのかを理解する。これから始まるのは正々堂々とした戦いではない。
「ヴィランならなんでもありだよなぁ!?卑怯汚いは敗者の戯言!ボッコボコにしてやるよぉ!」
彼等は今、相手の胃袋の中に放り込まれたのだ。
因みに轟くんが対戦相手だった場合
握手に応じない→ビルを氷漬けにする→それを引合が反発で回避する→泥沼
で、地獄絵図が発生していました(白目)
今回の戦闘訓練は魔王引合とそれに従う尾白VS哀れな勇者の卵二人を意識しています。ですので引合君の視点では進みません!ごめんね!
因みに勝ち筋は存在しています。皆も必死に頭を捻って考えてね!