友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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少し速めな秋模様と将来の夢

 

拝啓、馬鹿野郎。現在如何お過ごしでしょうか?今後ろに隠れていることは知ってますが俺は心底やってられません。何故なら俺の眼前に泣きながら俺を睨み付け女子がいるからです。

 

「…さいってい!」

 

頬に炸裂したビンタは今の季節には少し早い紅葉を作り出しており、俺の頬っぺたはジンジンしています。痛いです、なぜ俺がこんな目にあわなきゃならんのか

 

「轟さんに伝えてください!『貴方なんて大嫌い』だと!そして貴方も嫌いです!」

 

そう吐き捨てるように言いながら立ち去っていく女子の背中を見ながら後ろから心配そうに駆け寄ってくる馬鹿の気配を感じとり涙を流す。

 

「…今年はあと何回これを繰り返したら良いんだろうなぁ…」

 

「わりぃ…大丈夫か?」

 

「大丈夫…うん。ぶっちゃけ痛いのは心だから個性使って冷やそうとしなくて良い」

 

バレンタインデーより一週間、俺の顔が真っ赤に腫れる事を約束されているのだ

 

 

「…で。今回は何と言って叩かれたんだ?プレイボーイさん?」

 

「ミンチにするぞモテキング」

 

大和、ショート、ついでに俺で弁当を食べながら話をする。当然話題は俺の顔面だ。ショートは申し訳なさそうに俺を見て大和はニヤニヤしながら聞いてくる。ミンチするぞお前

 

「…『正直に言おう。轟は君の事を知らないしどうでも良いと言っていた。残念ながら諦めたほうが』って言ったら

『自分で言いに来ないなんて見損ないましたわ!さいっていです!』と顔面叩かれて今年初めての紅葉第1号が完成した」

 

「…すんげー正論。だけど轟に任せたらなぁ…」

 

「…すまん。俺が言ったら何故かいつも了承した事になるから…」

 

「ばーか、気にすんな。慣れたもんさ」

 

大和の声に心の中で同意しながら謝るショートにデコピンして弁当を貪る。ショート、別名女たらしの天然モテプリンス、この名前を知らないものはこのクラスにいない。というか俺が言いまくってるから皆覚える。

このモテプリンスはいちいち女をその気にさせるいわばたらしスキルを持っている。しかも全て無自覚、それに泣かされた女の数は…なんだかんだあんまりいないな…うん。

付き合う気もないのにその気にして困り果て、最後に俺に泣き付いてきて俺が説明して叩かれる。昔、何故俺を叩くのかと聞くと

 

「だって…轟くんの顔を叩くなんてそんな酷いこと出来ない!」と言われた。関係ない俺は良いのかと小一時間問い詰めてやりたい。

 

「大和、お前ショートに女の扱い方教えてやれよ」

 

「いや無理。だって何しても相手許してくれるから対処方法分からんぞ俺」

 

「ナイフで刺されて死ね」

 

そう言いながら髪をたなびかせるアホに一言吐き捨て母親が作ってくれた美味しい弁当を噛み締める。

うめぇよ…母ちゃん…卵焼き、甘くてふんわりしててうめぇよ。

 

「…旨そうだな。それ」

 

「うちの4番バッターが欲しいだと?…その旨そうな鮭の切り身とならトレードしてやらんこともない」

 

「鮫トレだろそれ!?」

 

「この条件が飲めないなら話はご破算だな」

 

俺の卵焼きに目をつけた大和がトレード要求を仕掛けてきたから向こうの弁当の鮭を要求する。鮭と卵焼きどちらが腹を満たすのかといえば確実に鮭、動き盛りの俺達にとってこのトレードは利害の一致しない鮫トレなのは火を見るよりも明らか

となると当然結果は

 

「…くっそ!旨そうに食いやがって!」

 

俺は当然のように母の味を堪能したのであった。うめぇよ…母ちゃん。

 

「そういやお前らどこの高校受けるつもりだ?」

 

弁当も食べ終わり話に花を咲かせていると大和からそんな話題が飛び出した。中学三年生である俺達にとって高校はもう目と鼻の先にまで近づいていて。

 

「因みに俺は雄英の普通科を受けるつもりだぜ?」

 

「…理由は?」

 

「…あの学校女子の顔面偏差値くっそ高いんだよ」

 

と欲望にまみれた言葉を聞き思わず笑ってしまう。流石校内一のモテキング。雄英でも伝説を作るつもりか

 

「そんで轟はどこにするつもりだ?お前なら雄英のヒーロー科余裕で狙えそうだしな」

 

「…ヒーロー科に行くことは決定してるが何処かまでは決まってない」

 

「あー…うん。まぁお前なら選り取りみどりだし問題ないか。んじゃ引合はどこにいくつもりなんだよ?」

 

ショートの話はそこそこに切り上げ俺に話を促す大和。宜しいならば聞かせてやろう。俺の進学先を!

 

「ふふん。聞いて驚けよ、めっちゃ驚けよ」

 

「なんだよ。焦らすなってワクワクすんだろうが」

 

少し焦らしクラス中の奴等が俺の言葉に耳を傾けたのを確認しおもむろに椅子の上に立ち上がりながら宣言する

 

「年間倍率300越え!史上最難関と呼ばれるあの!雄英高校ヒーロー科だぁぁぁッ!」

 

「「な、なんだってーッ!」」

 

サンキュークラスメイト、ノリが良くて大変結構。

 

「お前マジか!マジで受けるつもりか!?」

 

「マジもマジ。大マジよ」

 

「お前定期テストで真ん中くらいの頭なのにマジで言ってんのかそれ!?」

 

何故皆が驚いてるのか。ノリも理由の一つにあるだろが、恐らく驚いている理由の9割はこれ、俺が勉強が得意ではないという事だ。倍率300越えの超名門校に定期テスト真ん中の男が行くと宣言したらそらビックリするだろう。俺が皆の立場ならビックリすると思う。

「マジ」

 

「…マジかよ。正気か?」

 

「正気に決まってんだろ馬鹿か?」

 

「馬鹿はお前だろ」

 

「喧しいわ」

 

混乱する教室。ドヤ顔の俺、呆然とする大和。目を開いて驚くショート…色々失礼だが、取り敢えず大和にデコピンをする

 

「いって!…いやでもさぁ!」

 

「行くと言ったら行く!俺は絶対に行く!」

 

「子どもか!轟も何とか言ってやれよ」

 

突然話題を振られたショート。ショートの言葉をクラス全員が待ち、暫くしてから返事をした。

 

「…俺も雄英にする」

 

「本当か!よっしゃ!これでショートに受験で出そうな所教えてもらえるな!」

 

ショートのトンデモ発言にさらに教室は荒れ、この騒動は教師が怒鳴り混んでくるまで続いた。そして俺は成績優秀者であるショートという教師を手に入れた。どちらにせよ頼むつもりでいたから丁度良かったと言ったところか

 

「 早速ですまんが助けてくれ」

 

「…どこが分からないんだ?」

 

「こことここ」

 

「ここはだな…」

 

──時は流れ放課後。俺とショートは二人しか残っていない教室で勉強をしていた。どうやら俺は結構な馬鹿だったらしく即座に助けを求めた。大和がこの場にいたなら絶対に煽ってきただろう。アイツはあれでも成績上位者だ。ぶっちゃけ凄い

 

「あーなるほど。つまりこーゆー事?」

 

「そこはそれじゃなくてこっちだ」

 

「あり?俺としたことが」

 

ショートの教え方は的確だった。馬鹿な俺ですら希に間違うことがあってもすぐに理解出来るほどであり舌を巻かざる得ない。長い付き合いだが勉強を教わるのは初めてだなと心の中で思いながら目の前の問題を解いていく。

 

「…なぁ石」

 

「どーしたショート。どこか分からない所でもあるのか?」

 

「…分からない。確かに分からないんだ」

 

その言葉に何やら大切な話だと感じとり顔を向ける。すると思い詰めた表情をしたショートがこちらを見ていた。

 

「…なんでヒーロー科を選んだんだ?俺とは違ってお前ならもっと別の選択肢があっただろ?」

 

何故、ヒーロー科を選んだのか。金、名誉、女。色々と理由はあるだろうがデカいのが一つ

 

「皆の夢だろ?オールマイトみたいなスーパーヒーローになるって」

 

「…オールマイト」

 

「そ。格好いいじゃんスーパーヒーロー」

 

あらゆるヴィランを一撃粉砕。絶対的な勝利の象徴、希望の星オールマイト。その姿に憧れないものは絶対にいない筈だ、いるのならソイツはヴィランファンに違いない。間違いない

 

「ショートも好きだろ?オールマイト」

 

「…嫌いではない」

 

「オールマイトの名言集とか持ってる癖に良く言うよ。好きなんだろ」

 

「だからさ、一緒に目指そうぜスーパーヒーロー」

 

「俺とお前なら最高のコンビになれるだろ?」

 

と締めくくり、さっきまでやっていた問題に意識を戻し勉強を進める。取り敢えずショートに教えて貰ってるんだから確実に合格しないと気を引き締めた。

 


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