友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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長かった戦闘訓練がようやく終わりました
はやく委員長決めやりたい



戦闘訓練 下2/2

固唾を飲んでモニターに映し出されている映像を見守る少年少女とオールマイト。そこに映し出されているのは砂藤力道が全力で走る姿

 

『今行くぞ口田 ──ッ!』

 

彼の頭に残っているのは先程、通信機から聞こえてきた「信じて」の言葉のみ。戦況は劣勢。そんな中、まるで逆転の糸口があると言わんばかりに自信に満ちた声。これを信じずとして誰がヒーローか

仲間を信じ、共に戦ってこそヒーロー。

 

故に砂藤はヴィランの悪辣な罠に掛かってしまった。砂藤は気付かない、あの声が口田の声とは似ていなかった事に。戦闘していた尾白が逃げる砂藤を追いかけてこなかった事に。

何故、口田と連絡が取れないのか。彼を信じてしまっているから疑うことすらしない。

目前に勝利という名の人参をぶら下げられた馬の如く駆け抜けるしかないのだ。

 

『やはり俺は天才!ハーッハッハッハッハッ!ハーッハッハッハッハッ!』

 

ヴィランの高笑いが三階中央に鳴り響く。そんな彼の近くには守り抜かなくてはならない核と、意識を失った口田甲司。

 

戦闘訓練、決着の時は近い。

 

「──ここに核があったのか!周りに誰もいない!今がチャンスだ!」

 

口田の言う通り三階中央に辿り着いた砂藤の目に飛び込んできたのは中央に設置されている核、そして周りには誰もいない。迂闊、だが今はそれに感謝するしかない。

 

「おめでとう砂藤少年!どうやらここまで辿り着けたようだな!」

 

「 ──ッ!?」

 

核へと向かおうとした瞬間、聞こえてきたのは引合の声。一体何処から聞こえてきたのか、思わず動きを止め回りを見渡す。

 

「上を見ろ」

 

その言葉に砂藤は上を向く。そこには悠然と天井を歩き回る引合の姿があった。そして引合の手元には

 

「口田!?」

 

「騙して悪いが仕事なんでな。ここで終わりだ」

 

その瞬間砂藤は己の失態を悟る。あの時の通信機からの連絡は引合からのものだったのだと。だが、目の前には核がある。核に触りさえすれば勝ちは確定、ならばやる事は一つだ。

 

砂藤は腰に入れておいた袋の中から、白い粉末が入った袋を取り出す。そしてその粉末を一気に飲み干した。

 

シュガードープ、それが砂藤力道の個性。砂糖10gに付き5倍のパワーを得る増強系の個性だ。先程の白い粉末は彼のエネルギーとなる砂糖。

デメリットとして制限時間である三分を超えたら脳の思考能力が低下するが、短期決戦ならば問題ない。

 

「…白い粉末。砂糖を接種する事で力を増幅させる個性」

 

「尻尾怪人と戦ってた筈なのに自傷していた様子はない。現時点では自傷してしまう緑谷の上位互換か」

 

「だが。無意味だ」

 

引合がパチンッと指を鳴らす。その瞬間、核を除いた部屋にあった物が砂藤へと襲い掛かったのだ。

 

「 ──オォォォォッ!」

 

常人が食らえばタダでは済まない一撃。緑谷程のパワーとは言わないが、それでも人間が振るうとは思えない程の一撃が連続で放たれる。拳圧だけで突風が唸り、その圧倒的パワーから放たれる拳は全てを粉砕する。

その力を持って砂藤は前へ前へと進んで行く。目指すは核、他の物に目もくれずその圧倒的パワーを持って進み続ける。その姿は圧倒的巨体で突き進む重機関車を彷彿とさせ、その姿を見る者に希望を与えた。これならば勝てる、引合に勝つ事が出来ると。

 

「行けぇ!砂藤!そのまま突き進め!核に触るんだぁ!」

 

砂藤の姿を見てモニタールームは大いに盛り上がる。ここに来ての文字通りの大逆転、圧倒的な力を見せつける砂藤を応援する者達。

 

「なら…これも壊す事が出来るか?」

 

「 ──ッ!口田!?」

 

重機関車の如く突き刺す砂藤に放たれたのは意識を失った口田。眼前に現れた口田を攻撃する事は出来ない、ぶつかればダメージが入るのは自明の理、故に砂藤は口田を庇わなくてはならない。ヒーローが目の前の仲間を見捨てる事は出来ない。故に砂藤が行った行動は当然

 

「そうだ!お前は口田を庇うしかないよなぁ!足を止めてでも抱き抱えるしかないよなぁ!」

 

引合は嗤う。心底愉快そうに、この光景がまるで予想通りだと言わんばかりに。

 

「さぁて問題だ。ヒーロー砂藤は意識を失った仲間を庇いながら俺相手にどこまで戦えるでしょうか!?」

 

その言葉と共に飛来する物体が砂藤…正確には彼が庇う口田へと襲い掛かる。仲間を庇わなくてはならない砂藤は防戦一方で動く事が出来ない。

 

「そして…更なるゲストを紹介しよう!このスーパー天才イケメン怪人が誇る最強の部下を!」

 

「──シャァア!」

 

防戦一方の砂藤へと更なる敵が襲い掛かる。それは先程まで砂藤が戦っていた存在、尾白猿夫。その人であった。

 

「行け!尻尾怪人!狙いはそこでスヤスヤ眠っている口田少年だ!」

 

「ごめん…ほんとごめん」

 

引合の言葉で謝りながら口田へと襲い掛かる尾白。更なる敵の乱入に戦況はヴィランが有利な状況へと傾いてしまった。先程までの砂藤が作り出していた戦況は引合のたった一つの手で崩壊し、最早砂藤は口田を庇うことしか出来なくなった。

尾白の個性である大きな尻尾を含めて放たれる連撃は確実に砂藤の肉体にダメージを与え、尾白を振り払うように腕を降ればその隙を逃さないと言わんばかりに引合から部屋にある物体が口田へと放たれる。

 

これを見ていた者達は思う。なんだこれは、一体なんなのだ。これがヴィランの戦い方、正しく鬼畜外道。これが人間のやる事なのかと。

 

「先生!もう試合終了だ!もう見てらんねぇよ!砂藤はもう動けない!」

 

「…」

 

「先生!」

 

もう試合終了、これ以上は無意味だという声がモニタールームに響き渡る。だがオールマイトは何も言わない、ただモニターを眺めているだけだ。

 

「(いや…砂藤少年の目は諦めていない。彼は今耐えているのだ。連撃が乱れる、その瞬間を)」

 

オールマイトが思う通り、砂藤の目は何一つ諦めていない。逆転の手があると言うならば止める理由はない。

 

「(見せてみろ砂藤少年…plusUltra!逆境でこそヒーローは輝くッ!)」

 

先へ、さらに向こうへ。砂藤力道はその目に闘志を輝かせる。ヴィランは何でもありの鬼畜外道、そしてヒーローは様々な制約に縛られた存在。

だが、最後に勝つのはヴィランではない。どんな苦境であろうともヒーローは最後に勝つ。

 

『──ッアァァァァッ!』

 

轟音と共にビルが揺れる。砂藤が床を粉砕する勢いで踏み込み、核に向かって突撃を仕掛けたのだ。連撃を仕掛けている尾白を跳ね除け高速で突き進む。だが、これで口田を庇う事は出来ない。しかし、このままではじり貧になるのは目に見えている。だからこそ突撃、こうなれば尾白は口田に攻撃を仕掛ける事が出来なくなる。

 

『──引合ィィ!』

 

『──っれで終わりだァァァッ!』

 

尾白が引合に向かって叫ぶ。だが、既に砂藤はその爆発的な踏み込みから生み出された力のままに核に向かって飛び掛かる。

 

「行け!砂藤!そのまま行けぇぇぇッ!」

 

誰が叫んだかは分からない。だが…この場にいる殆どが同じ事を思っていた。これを止める事は出来ない、砂藤達はあの引合に勝ったのだ。鬼畜外道な行為を平然と行うヴィランにヒーローが勝ったのだと。

 

『──届けェェェェッ!』

 

「…ナメプ野郎が」

 

砂藤の絶叫を聞きながら爆豪が心底不快そうに呟く。それと同時に砂藤の手が核にドンドンと近付き

 

『──ぁ?』

 

核に触れる、その寸前で砂藤の動きが突然止まった。呆然としている砂藤は動く事が出来ない、何故自分の身体は核の目の前で止まったのか。一体何故、それだけで思考が埋まり他の事を考える事が出来ない。

 

『大切な核を放置する訳ないだろ、当然保険は掛けてある。だからあれだけ好き放題出来たんだ』

 

静まりかえった中、引合の声だけが大きく響く。そして片手を砂藤に向け

 

『おやすみ』

 

針が射出される。針は正確に砂藤の手に突き刺さり意識を刈り取る。

 

『…完全っしょーっり!ハーッハッハッハッハッ!ハーッハッハッハッハッ!』

 

『ごめん…ほんっとにごめん。後でちゃんと謝るから』

 

高笑いする引合と対照に意識のない二人に謝る尾白。モニタールームに響き渡る声が最後に戦闘訓練は終了した。

 

ヴィランチーム。勝利

 




対引合で勝つ為の説明
引合に触られた時点で勝ち目は皆無に等しかったです
この試合の勝ち筋は最初に針を恐れず2対1の状態でフルボッコにする事。運が良ければ針が刺さる前に引合を倒せたかもしれません
引合から逃げる
引合から離れて核を探すのは完全な悪手。

調子に乗ってる間に瞬殺する事、これが引合に対する必勝法です。

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