友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
「──故に俺は学級委員長として皆を先導していきたいです! 」
「はい! 委員長みたいな見た目もさながら、内容も糞真面目で大変結構! 飯田天哉君のスピーチでした! 」
第1回学級委員長争奪選挙大会の一番手は飯田だった。飯田はその性格に相応しいスピーチを行い、引合はそれに対して感想を語る。
「次は全身ピンクで超キュート!性格は正に天真爛漫!このクラスは君のような存在を待っていた!芦戸三奈の発表だ!」
「はーい!」
引合の声に従い、芦戸三奈が教壇へと足を進めた。意気揚々と返事を返し自信満々に教壇に向かう姿には、彼女の明るい人間性を感じられるだろう。そんな中、1-A担任、相澤消太は現状を眺め一人思考に耽る。そんな彼の頭の中に存在しているのは、この学級委員長を決めるにあたり即座に司会進行の名乗りをあげた少年。引合石だ。
(中学校の方からプロフィールは送られていたが……ここまでとはな)
1-Aの担任である彼は、当然自分が持つクラスの生徒達のプロフィールの全てを確認している。中学校での生活態度、成績、身体能力、成績。生徒達のプロフィールを確認する際、何人か突出した生徒は存在していたが。一人、別の意味で突出している者がいた。
三年にあがるまで成績は平凡以下だった筈が、ある時期を切欠に高得点を常に叩き出し。生活態度は下の下、彼が三年の時に担当した教師は
『非常に我の強い生徒であり、その我の強さからついていく存在多数。男子生徒のほぼ全てを纏め上げ一つの団体を作り上げたカリスマ性は筆舌に尽くしがたい』
『彼が一年生の時に作り上げた団体は三年間崩壊する事なく運営された事から考えるに人を纏めあげるだけではなく、管理運営能力にも秀でていると思われる』
『だが、基本的に他者では思いもつかない行動を取るのでそこには注意が必要である』
と、引合石の事を評価している。初めてこれを見た相澤は、多少誇張が混じっているとしても人を纏めるのが得意な生徒なのだろうと結論をつけていた。
しかし蓋を開けばどうだ?
個性把握テストでは推薦組や主席の爆豪に負けず劣らずの好成績を叩き出し、ボール投げの一件がなければトップの成績に違いなかった。
そしてこの学級委員長を決めるにあたってのオリエンテーション。
『第1回! 学級委員長争奪! 選挙大会』である。
挙手だけで全く進んでいなかった現状を確認し即座に司会進行を申し出て。やり方はどうであれ、即座に全員を纏め上げた。ヒーロー科に入る生徒とは人を集め、纏め上げる事を得意とする生徒が多い。そんな存在が集まると、当然自分こそが学級委員長になると考え、己の意見を皆に押し付けようとするのが普通だ。
だが。引合はその上昇志向の高さを逆手に取り皆をまとめ、オリエンテーションには必要不可欠なルールを即座に作り上げた。
あまりに人をまとめあげるのに慣れすぎている。相澤の中であのプロフィールに書かれてあった事が最早誇張ではなくなっていた。
「──です!」
「はい! 取り敢えず可愛い! それしかありません! 以上芦戸三奈のスピーチでした! 」
「次はクールビューティー! クラス一イカしてるパンク少女! 耳郎響香だ!」
「……恥ずかしいから。それ、やめてくんない?」
呼ばれ方に不満があったのか、嫌そうに言いながら耳郎は周りに見えないように引合に小さな紙を見せる。それを見た引合は嬉しそうに頷き発表を促した。
(……次の発表者の時間を削って自分の発表時間を増やして欲しい。か、対価は今度ジュースでも奢る……引合の奴はそれを認めたか)
そしてその紙の内容を相澤は確認していた。内容は簡単に言えば賄賂そのもの。本来相澤はこれを咎める必要があるが、このオリエンテーションにおいてそれを咎める事はしない。
規則その1
司会進行に呼ばれた者は教壇に立ち、司会進行が終了の合図を行うまでスピーチを行う。内容は全て自由。教壇から出ずクラスメイトに危害を加えなければ何をしても良い。
※相澤先生がやりすぎと判断した場合は上に書いていた通りにはならない。やり過ぎに注意すべし
教壇に入った時点でやり過ぎなければ何をしても問題はないとここに明記しているのだ。
(司会進行に賄賂を送っても自由。賄賂など何も行わず飯田のように自分の意見を誠実に伝えるでも良い)
始まる前に『どんな手を使っても良い!』と引合は語った。故に、これは引合にとって予想範囲内なのだろう。
(耳朗はそれを選んだか……まぁ誠実だけでは限界が来る事もある。賢いといえば賢い手だ)
学級委員長をNo.1ヒーローに例えるならば、発表者はどのようにNo.1ヒーローになるのか。多少汚い手を使ってでもなるのか、それとも汚い手を使わずになるのか、それを見る事が出来る。
飯田は全てに気付きながらも敢えて己の意見を皆に伝えるだけだった。
芦戸はルールの意味に気付かずただ発表をしただけだった。
耳郎は理解し、自分が勝つ為に次の発表者。つまりは他者を蹴落とした。
(……即席にしては面白いルールを考えやがる)
ただ投票するならばここまで違いが出なかっただろう。皆が自分に投票するのが目に見えている。だが、このルールならばそんな事が出来ない。
規則その2
全員のスピーチを聞いた後、白紙に自分の名前、学級委員長に推薦したい者の名前を書いて提出する。
※同じ紙に同じ名前を二つ書いていた場合、その紙は無効となる
(抜け道はあるにはあるが……このルールならば自分を投票する事は出来ない。故にコイツらは皆に自分をアピールするしかない、その為にどうするか。見物だな)
どいつもこいつも自分が学級委員長に相応しいと考えてる奴ばかりだ。そんな奴らに自分を認めさせるのはスピーチの場しかない。
「──以上っス」
「うーん! 非常に素晴らしいスピーチありがとう! さて次は……上鳴電気でいっか。どうぞ」
「おうっ……って何か適当だな!?」
「おっ口答えしたな?はい制限時間半分」
「ウェッ!?冗談だよな?」
「俺がルールだ。黙って従え」
「ウェィ……」
上鳴は半分の時間の中で発表し、スゴスゴと席へと戻っていく。規則その1に『司会進行が終了の合図を行うまで』と明記しているのだ。故に文句を言おうが『俺がルールだ』の一言で玉砕される。
(……このルールに気付かない奴は少し頭が弱いな)
と。ルールに気付いていないであろう芦戸と上鳴の評価をつけ、相澤は思考を続ける。
(雄英は自由な校風が売りだが……ここまで自由にやる生徒は初めてだな)
ただの遊びにしかならないルールならば強制終了するつもりだったが、ここまで考えられたルールならば止める必要がない。
(雄英はどのような場所であれ君達に試練を与える。例えそれがこんな事でもな)
例え始まりが引合の戯れであろうとも、使えるのならば最大限使う。実に合理的だ。
(plusUltra 学級委員長になりたいならこの試練を乗り越えろ)
第1回! 学級委員長争奪! 選挙大会
規則その1
司会進行に呼ばれた者は司会進行が終了の合図を行うまでスピーチを行う。内容は全て自由。教壇から出ずクラスメイトに危害を加えなければ何をしても良い。
※相澤先生がやりすぎと判断した場合は上に書いていた通りにはならない。やり過ぎに注意すべし
規則その2
全員のスピーチを聞いた後、白紙に自分の名前、学級委員長に推薦したい者の名前を書いて提出する。
※同じ紙に同じ名前を二つ書いていた場合、その紙は無効となる。