友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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HR 学級委員長 下

 

「──だから私は学級委員長になりたいです! 」

 

「ブラボォォ! その透明な身体の奥底の心にはそれだけ隠しきれない熱い思いが隠されていたのか葉隠透! 次は……峰田実。5秒で終わらせろよ」

 

空中に浮かぶ学生服。個性『透明』を持つ少女。葉隠透のスピーチが終わり引合はやる気のなさそうに峰田の名前を呼ぶ。いきなり発表時間を5秒にされた峰田は愕然とした表情をして叫ぶ。何故自分だけこんな目にあうのかと

 

「なんでオイラだけ5秒なんだよ! 5秒とか『一票お願いします』だけで終わるだろ!? 」

 

「0秒が良かったか?」

 

「チクショォォォ! この暴君! ヘタレ! ムッツリスケベ! 」

 

実は他の者達の時間延長の要求により峰田に全ての皺寄せが寄っているという事実があるのだが、それを知っているのは時間延長を要求した者達と司会進行の引合と相澤だけである。

 

「オイラはスカートの丈を膝上30cmにする!」

 

半分ヤケクソになりながら発言した峰田のスピーチに教室に衝撃が走る。5秒という少ない時間で言い切ったのは見事なのだが問題なのはその内容。

 

「えっ……お前、女装癖あんの?」

 

「──お、ま、え、が時間を5秒に設定したからこうなったんだろぉぉぉぉッ!? 」

 

恐らく『オイラが学級委員長になったら女子のスカートの丈を膝上30cmする』と言いたかったのだろうが如何せんそれを言い切るのに時間がなかった。故に言いたかった事を何とか言おうとしたのだろう。その結果、この惨劇を産み出した。

 

「えー……性癖は人それぞれです。大切なのは、その性癖で女性を泣かせない事。女装は皆が見えない所でやりましょう」

 

「オイラは……オイラは……」

 

引合がお前の女装を見たら女は泣くと遠回しに感想を述べた後、全身真っ白になりながら峰田が席へと戻る。そして、クラスメイト達の哀れむ視線を一身に受けながら峰田は考えるのを止めた。

 

第1回学級委員長争奪選挙大会、後半戦に突入。

 

「それじゃあ次は……爆豪勝己」

 

「俺の名前を呼ぶんじゃねぇよこの糞ナメプ野郎! 」

 

俺が爆豪の名前を呼ぶと理不尽にキレられた。なんだコイツ俺がルールという事を分かってないのか?ん?

 

「かっちゃん……引合君にそんな事言ったら峰田君と上鳴君の二の舞に」

 

「うるっせぇよクソナード! どうせアイツらは他の奴らの踏み台にでもなったんだろうが! 俺を踏み台にするってやつがいるなら俺がソイツを踏み台にして踏み殺したるわ! 」

 

……驚いた。この馬鹿、このオリエンテーションのルールを理解している。しかし、こちらもHRが終わるまでにこれを終わらせないといけない。故にさっさとしてもらうぞ。

 

「嫌ならスピーチしなくても良いぞ」

 

「しないわけないだろうが! 演説し殺したるわ! 」

 

そう言ってやると心底不快そうにズカズカと音をたてながら爆豪は教壇へと向かう。分かってるならさっさとやれよ。

 

「あー……モブ共。俺に投票しないと殺す! 」

 

両手を爆発させながら脅迫紛いのスピーチをする爆豪。その姿に呆れるクラスメイト達。ため息を吐く相澤先生と俺。そう言われて誰が投票したくなると思うのか、やっぱりコイツ馬鹿だわ。

 

「はい。0票確定ありがとうございました。次は麗日お茶子さん、張り切ってどうぞ!」

 

「はっはい! 」

 

「んだと!お前ら全員俺に投票しろや! 」

 

感想を言い教壇から押し出すと、不機嫌を隠さず爆豪が吠える。だからそんな性格の奴に誰が一票入れるんだよ。いねぇよそんな奴、産まれ直して出直して来い。

 

爆豪が不機嫌になりながらも席に座る姿を確認した俺は、麗日に何時でも初めても良いと合図を促す。

 

「あの……引合君。一つええかな?」

 

「はい?何か分からない事でも?」

 

俺の説明で至らなかった点があったとは不覚。女子には優しく、男には厳しくが俺のモットー。何でも答えましょう。

 

「うん。これってスピーチの内容は何でもええんよね? 」

 

「勿論! 峰田みたいに性癖を暴露したり爆豪みたいにチンピラよろしく脅迫したりと何でもありです! スピーチ内容は自由! さぁ張り切って行こう! 」

 

「オイラは女装する変態じゃねぇぇぇッ!」

 

「誰がチンピラだ!ぶっ殺すぞ! 」

 

俺の声に馬鹿が二人釣れたが無視する。そして麗日は俺の回答で納得したのか何度も頷き、緊張を解す為に両手で頬を叩く。なんだこの子可愛すぎ天使か?

 

「えー。私、麗日お茶子は緑谷出久君を学級委員長に推薦します! 」

 

麗日のその言葉に時が止まった。いや、正確には教室の時が止まったと言うべきか。驚愕するクラスメイト達、目を見開く相澤先生。動きが止まる俺。

 

「「えぇぇぇぇッ!?」」

 

教室に絶叫が響き渡る。確かに叫びたい理由は分かる。非常に分かるがぶっちゃけ時間がない、黙れ馬鹿共。

 

「ハァッ!? なんでクソデクを推薦しやがるんだ!? おいこらどーいう事だデクゥ! 」

 

「うわぁぁぁっ! ごめんかっちゃん僕にも何がなんやら」

 

ブチ切れた爆豪が緑谷の胸ぐらを掴み威圧する。だから時間ないっつってんだろシバくぞ爆豪。

 

「おーい爆豪」

 

爆豪の元に近付き、机を触り額を叩く。すると爆豪が緑谷の胸ぐらから手を離しこちらに身体を向けた。

 

「んだよ糞ナメプ野郎! 引っ込んでろ! 」

 

「スピーチ中だ。静かにしろ」

 

その言葉と同時に爆豪の額が机に引き合わされガツンと心地良い音を響かせる。

 

「……良し。鎮圧完了」

 

「……殺す。テメェだけは絶対に殺す」

 

「分かった分かった。良い子だから後にしろ」

 

机に突っ伏し、目だけで俺を睨む爆豪を放置する。どうやら周りのクラスメイトも爆豪の暴れっぷりを見て静かになったようだ。感心感心、まだ騒いでいたら女子は違うが男子は爆豪と同じ末路を辿っていたからな。本当に良かった。

 

「えーと……大丈夫?」

 

「大丈夫! さぁ張り切って行こう!」

 

緊張したように続きを話し始めた麗日の言葉に耳を傾ける。どうやら麗日は受験や戦闘訓練で頑張っていた緑谷の姿を見て、きっと緑谷なら学級委員長として頑張ってくれると考え推薦したらしい。

 

……良い子や。どいつもこいつも自分が学級委員長になる為に色んな手を使ってる中で純粋に他者を推薦する心。これはもう勝てる気がしない。

 

「えー……グスッ。どいつもこいつも自分の事しか考えてない中とても素晴らしいスピーチをありがとうございます。相澤先生も何かありませんか?」

 

「正直……このクラスで他の奴を推薦する奴が出るとは思わなかった。良かったぞ麗日」

 

このスピーチには俺と相澤先生も絶賛。誉められて予想外だったのか嬉しそうにする麗日。こんな子に推薦されるとか羨ましいぞ緑谷死ね。

 

「それでは次。緑谷羨ましい死ね……じゃなかった。取り敢えず壁の染みになるまで……でもない。緑谷出久、どうぞ」

 

「引合の奴。緑谷に対して殺意が滲み出てやがる……ッ!」

 

俺を見ながら顔を真っ青にさせ緑谷が教壇に立つ。失礼な奴め、俺がお前に何かをする訳がないだろ。全てはHRが終わってからだ。

 

「みっ……緑谷いじゅくです!」

 

噛んだのを自覚した瞬間、顔を真っ赤にする緑谷。それを見て、何とも言えない表情を取るクラスメイト達と同じような顔をしつつ緑谷のスピーチの終わりを待った。

 

「──以上です! 」

 

「はいお疲れ様でした。次は緊張で噛まないように頑張りましょう…残りはショートだけか」

 

今まで我関せずと思考を他所へと飛ばしていたであろうショートを教壇に呼び出す。取り敢えず何でも良いから言ってくれ。

 

「……俺は石を推薦する。得意だろ?こんなん」

 

「俺は司会進行だからなしだ。別の奴か自分にしろ」

 

「……特にねぇ」

 

ショートのその言葉でスピーチタイムは終了した。次は皆様お待ちかね

 

「はい。お疲れ様でしたー! これから白紙を配りまーす!そこに自分の名前と推薦したい人の名前を書いてくださーい! 」

 

投票の時間だ。

 

「……投票の結果ですが。悲しい事が判明しました」

 

投票用紙を集め確認した俺と相澤先生はある事に気付いた。

 

「何故か自分の名前の所に俺の名前が書かれてあったのが二枚もありました」

 

司会進行である俺は投票用紙を配ったが記入はしていない。これはつまりそういう事だ。

 

「誰とは言いませんが俺は峰田と上鳴に対して投票してました」

 

「思いっきし言ってんじゃん」

 

「後、いくら見直しても名前を書く欄にクラス全員分の名前がありません。というか半分くらいしかありません。喧嘩売ってますか?買うぞ?」

 

「まぁ全部許すけど」

 

「「よっっしゃぁぁぁぁッ!! 」」

 

俺の許可に教室が沸き立つ。

ぶっちゃけこれを想定して作られたルールだ。自分の名前が使えないなら他人の名前を使えば良い。これに気付かなかったのか芦戸が悔しそうな顔をしていた。

もしかして考えるのが苦手なのか?

 

「時間がないので結果だけ。緑谷2票八百万2票。他は省略」

 

「以上の結果になりました。同票2名という訳で残りは俺と相澤先生の票で決まります」

 

トップの同票が2名という珍しい状況になり、俺と相澤先生の票が運命を決めるという状態になった。

 

「俺は良い。引合、お前が決めろ」

 

「うっす」

 

相澤先生が辞退した為、俺の票だけになった。これは責任重大である。まぁ入れるのは誰か決めているんだが。

 

「どうせ八百万だろ?」

 

分かりきってると言わんばかりの態度を取る峰田の意見を聞き流す。本来ならばそうするつもりだったが、今回は少し違う。

 

「えー……緑谷。お前の投票用紙なんだが、なんで俺に一票入れてるんだ?司会進行の俺に入れても無駄って言ったよな?」

 

そう緑谷が俺に一票入れていたのだ。入れても無駄だと説明したのに何故入れたのか。これを確認しなければならない。

 

「……引合君はこうやって皆をまとめあげたから一番学級委員長に相応しいんじゃないかなって」

 

「まぁ俺の名前を書いた時点でこの票は無効なんだけどな」

 

「うっ……」

 

俯く緑谷に言葉を続けていく。

 

「……まぁ。こうやって俺を評価したのは素晴らしい、俺は誉められるのが大好きな人間だからこんなサービスもする」

 

そう言って俺は緑谷に投票用紙を渡す。そこに書かれてあるのは

 

名前 引合 石

推薦者 緑谷出久

 

「こっ…これって……」

 

「緑谷3票! 因みにコイツはお前らみたいな狡い事をせず純粋に他人から3票もぎ取った! 真の王者に卑怯な真似など必要ない! 」

 

「1-A学級委員長は緑谷出久! 副委員長は八百万百で決定! 以上! 終了! 」

 

有無を言わさず終了の宣言をする。クラスメイト達も緑谷ならと考え認めたようだ。これが爆豪なら非難が出るに決まっている。やはり人徳というものは大切だ。

 

どれだけ卑怯な手を使おうが勝てない時は勝てない。良い教訓になったという事で一つ。

 




オールマイトが卑怯な真似をしてNo.1ヒーローになったのかって話ですよ
やっぱオールマイトってすげぇや
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