友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

36 / 82
区切りが良いので今回は少なめ。許せサスケ


食堂 上

食堂、雄英高校の全ての生徒が一同に集まるこの場所は常に喧騒に包まれている。そんな何処を見ても騒がしい中、周りの声に負けないほど盛り上がっている者達がいた。

 

「オールマイトの一番かっこよかったシーンといえばあの大災害だろ! 単独で千人を救う偉業! 」

 

「分かるよ! 僕あの映像をもう一万回は見てるからオールマイトの台詞全部言える! 」

 

「おっ?言ったな緑谷?じゃあいっせーので行くぞ?」

 

「「もう大丈夫だ皆! 私が来た! 」」

 

オタク全開の話題で盛り上がり、聞いている者達をドン引きさせている存在がいた。引合石と緑谷出久である。彼等は、周りの存在など知ったことではないと言わんばかりに盛り上がり、彼等の近くにいる者達の殆どが口元をひきつらせドン引きしている。そんな中、彼等にドン引きしない者といえば

 

「引合君とデクくん…って。オタクなの?」

 

そう言いながら頭を捻る少女、麗日お茶子と。

 

「使えば絶大な力を発揮する緑谷君の個性はオールマイトと似た物を感じる。故に彼がオールマイトに憧れるのも必然なのだろうな」

 

何か言えば一人で勝手に納得する分かり手の中の分かり手、簡単に言えばカモ。引合に『コイツいつか詐欺に引っ掛かりそうだ』と思わせた男、飯田天哉に。

 

「……すげぇな緑谷。石についていけるのか」

 

心底驚いたと言わんばかりに呟く轟焦凍、通称ショートの三人だけだ。

 

彼等は只今昼食中である。

 

「いやぁー! 久しぶりに語った! まっさか緑谷もオールマイトのファンだったとはなぁ! 」

 

「僕もびっくりしたよ! まさか引合君がオールマイトのファンだったなんて! 銀時代のオールマイトでここまで語り合えたなんて生まれて初めてだ! 」

 

ひとしきり語り合ったオタク共は楽しそうに笑い合う。引合は満足そうに、緑谷は目を輝かせもっと語り合いたいと言わんばかりに。

 

「二人共! オールマイトにスッゴい詳しいけどオタクなの? 」

 

「親がオールマイトファンだから自然となった。そこんじょそこらの奴より詳しい自信があるぞ」

 

「ううう麗日さん!? 」

 

そんな二人に話し掛ける麗日。その返答に引合は何ら恥ずかしがる事なく、緑谷は顔を真っ赤にして返答する。

 

「緑谷君! 趣味とは人それぞれだ! 君がオタクであったとしてもなんら恥ずかしがる必要はないぞ! むしろその知識量を誇るべきだ! 」

 

「そっ……そう?こんなの気持ち悪くないかな?」

 

飯田の言葉に緑谷が恥ずかしい半分落ち込み半分で語る。恐らく、緑谷自身がオタクで気持ち悪がられた事があったのだろう。そんな緑谷に轟と飯田がそんな事はないと語る。

 

「オールマイトの事をそんなに知っててすげぇじゃねぇか。こういうのを『好きこそ物の上手なれ』って言うんだろ?」

 

「それだ轟君! 他者を超越した知識量。それはいつの時代でも力になる! No.1ヒーローの姿をよく見てきたという事は、その背中を見続けてきたという証明! プロヒーローを目指す者にとって、それは大きな力になる! 」

 

轟と飯田の言葉に緑谷は俯き、感極まったように涙を流し始める。当然周りにいた者はその姿に驚き慌てふためく。

 

「うっ……うぅ……」

 

「どうしたのデクくん!? 」

 

「大丈夫か緑谷君!? 」

 

「わりぃ……俺。なんか嫌な事を言っちまったか? 」

 

「違うんだ……嬉しくて。こんな事初めて言われたんだ」

 

緑谷の脳裏に浮かび上がるのは自分の趣味を馬鹿にされ続けてきた過去の記憶。

 

気持ち悪い

クソナード

 

馬鹿にされ続けた彼にとって、皆に掛けられた言葉は正に青天の霹靂。同世代の者から初めて認められたという事実が彼の涙腺を刺激する。

 

「誉められて嬉しかったんだろ? 気持ちは分かる」

 

その言葉と共に引合は緑谷の頭をグワシと乱暴に撫で回す。乱暴だが優しさを感じるその掌は、自分を労っているというのを感じさせ更に緑谷の涙腺を刺激した。

 

人が溢れる食堂の中で。

 

「見世物じゃねーよ。見てた奴1秒五百円払え」

 

突然泣き始めた緑谷を遠巻きに見ていた者達が、引合の言葉で顔をさっと横に向ける。

 

((理不尽だしくっっそ高ぇ!? ))

 

遠巻きに見ている者達の心境が見事に一致した瞬間であった。

 

「──落ち着いた? 」

 

「ありがとう麗日さん。もう大丈夫」

 

「良かった! だったらはやくご飯食べよ! カツ丼、冷えたら美味しくなくなるよ? 」

 

「……ッ!」

 

「どうしたの。ブサイクだよ?」

 

「いや……麗らか過ぎて」

 

緑谷と麗日が漫才みたいな事をしている中、他の三人はその様子を見守りながら食事を取る。

 

「緑谷君がいきなり涙を流した時は驚いたが……そうか。彼には理解者がいなかったのか」

 

「理解者は見つけるものじゃなくて基本作るもの。ソースは俺」

 

「……そういや中学校の頃はオールマイトファンが多かったな」

 

沈痛な面持ちで納得する飯田、ドヤ顔の引合、特に理由はないが中学時代を振り返る轟。三者三様な反応を取っていると麗日が空気を変える為に話題を出す。

 

「まだ言ってなかっけど……デクくん!学級委員長当選おめでとう! 私、デクくんに投票したんだ! 」

 

「そうだった。緑谷君、学級委員長就任おめでとう! 君ならばきっと素晴らしい学級委員長になれる筈だ! 」

 

「因みにショートを除いて推薦したのはここにいる俺達三名です。頑張れ雑用係」

 

「引合君! 学級委員長は雑用係ではない! クラスメイトの信用を一身に受けて初めて務める事が出来る聖職! けっして雑用等という言葉では片付けてはならない係だ! 」

 

「頑張れよ。緑谷」

 

学級委員長就任に対しての応援が緑谷に掛けられる。しかしそれに対する緑谷の反応は四人の予想とは相反するものだった。

 

「ありがとう。けど……僕に学級委員長が務まるのか不安だよ」

 

「ツトマル」

 

「大丈夫さ」

 

「務まるから大丈夫。絶対に大丈夫。なんならショートの髪の毛全部賭けても良い」

 

不安そうに話す緑谷に様々な声が掛けられる。引合が轟の頭髪を賭けるという言葉に、緑谷が面白そうに笑うのを見て轟は頷き返事をした。

 

「分かった」

 

「分かっちゃ駄目だよ!?」

 

「引合君! 未成年の賭博行為は法律で禁止され……ッ!? 」

 

飯田が立ち上がり引合を注意しようとした瞬間、食堂にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。




オタクとオタクは惹かれ合う
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。