友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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ウソの災害や事故ルーム9

「……何なんだこれは。一体何なのだこれは!? 」

 

現場は一言で現すならば阿鼻叫喚の地獄絵図、雄英高校のジョーカーである相澤消太は既に死体とほぼ変わらぬ状況、地面に伏す生徒と恐怖で震え上がる生徒達。

プロヒーローである彼等がこの光景を見て感じたのは己に対する憤怒である。

何故、もっと早く駆けつけてやれなかったのか。もっと早く駆けつけていれば、この様な事態を防げたかも知れないのにと。

 

「……あれが首領のようだな」

 

義憤に駆られるプロヒーローの中でただ一人、即座に行動を移した者がいた。彼はスナイプ。テンガロンハットを被り、両手に銃を持つプロヒーローは未だ君臨する魔王へと向け発砲した。

彼の個性は『ホーミング』遠距離にいる相手の位置が一瞬で理解出来どんな場所からでも急所を撃ち抜ける個性だ。

 

打ち出された弾丸は魔王の肩を貫かんと宙を穿ちながら突き進んで行く。だが、それが魔王を貫く事はなかった。

 

「黒霧。銃弾程度、気にする事はなかったんだよ? 僕があの程度でどうにかなるとでも思っていたのかい?」

 

「怪我をしないのが1番です」

 

魔王の眼前に立ち塞がった黒い霧が銃弾をブラックホールの如く吸い込む。銃弾は何処へ向かったのか、それをスナイプが考える前に彼の脇腹を鋭い痛みが走った。

 

その瞬間に理解した。この痛みの原因は己の銃弾であると魔王を貫く筈の一撃はあの黒き霧によって己を貫く槍へと変化したのだと。

 

「……空間移動の個性、どうやら敵は中々に強力のようだね。先行してた筈のオールマイトがこの状況を鎮圧出来てないとなると彼等の実力はオールマイトに匹敵、いやそれ以上となるのかもしれない」

 

一匹の鼠が冷静に状況を確認する。その鼠はこの世界で唯一無二、その強力な個性によって人間以上の知恵を持つことが出来た動物。個性『ハイスペック』人間を遥かに凌駕するIQを誇る雄英高校校長である根津校長は怒りを抑え現状を分析した。

 

分析結果は一瞬で出た。

自分達では勝ち目がない。幸運の女神が自分達に微笑み、彼等がこの場を去ってくれる事だけがこの場における最善であると。

 

「……昔、羽無太郎にひまわりの種を送り付けた報いが来たのかな? 」

 

思わず現実逃避をしたくなる。周りの教師達も敵の実力を感じ取ったのか、臨戦態勢のまま動けなくなってしまった。プロヒーロースナイプの絶技とも言える銃撃が意図も容易く、赤子の手を捻るが如く返されてしまったのだ。そうなるのも無理もない。

 

「…どう致しますか? 」

 

「ヴィラン連合の恐怖を叩き込む事に成功したからもう用はないのだけど……オールマイトの矜恃はへし折って……ッ!?」

 

眼前の敵の笑みが崩れ驚愕がその顔を支配した。その瞬間、USJが揺れる。それはプロヒーローの彼等ですら立っている事すらやっとの大地震、局地的大地震がこの場で発生したのだ。

その瞬間、眼前のヴィラン達は黒き霧に包まれその姿を消す。

 

根津が望んだ奇跡は起こったのだ。それも意図も容易く、即座に。この大地震が奇跡の元なのだとしたら一体何が原因で起こったのか、それを理解する為に震源地である暴風災害ゾーンへと目を向ける。

 

そこには筆舌に尽くし難い光景が広がっていた。思わず根津が唸ってしまうほどの現実、近くにいたセメントス先生も思わずフラリと倒れそうになるような意味不明な現状が彼等の眼前に現れたのだ

 

「え……いや、何これ?」

 

扇情的なコスチュームを身に纏うプロヒーローミッドナイトの絞り出すような言葉に根津を肩に載せたプロヒーローヴラドキングは現実から目を背け呟いた。

 

「見たら……分かるだろう?つまり……そういう事だ」

 

「いや……こんなの分からないわよ!バッカじゃないの!? なんでこうなってるのよ!? 」

 

最早キャラ崩壊したミッドナイトの絶叫がUSJに響き渡る。だが、それを止める者は誰もいない。誰もそれを諌める余裕がないのだ。因みに1番余裕がないのは根津である。彼は今現実から目を背けチューチューと唸っている。その姿は正しくげっ歯類の鼠そのものだ。普段の知的溢れた姿は消え去り最早野生そのものである。

 

「なんで暴風大雨ゾーンの天井がぶっ壊れてあんなデカブツが宙に浮いてんのよ!? 何がどうなればこうなるよ!?」

 

宙に浮かぶ巨大な灰色の球体の上で高笑いをしてる馬鹿の声を聴きながら根津は乾いた笑みを浮かべる。因みにセメントスも浮かべていた。

というか教員全員笑うしかなかった。

 

ヒーローはいついかなる時も笑顔でいなければならないとはオールマイトの言だが、これを見て笑顔になれと言われても困る。

 

大半の生徒達は恐怖を忘れ呆然と球体を見つめ、殆ど死体の相澤も痛みを忘れ、苦笑いをしている。

 

「……あの人達の子供なのだからいつかはやらかすと思ったが……もうやらかしたか。引合、お前は馬鹿だよ。本当に」

 

嗚呼……本当に馬鹿だと相澤は呟いた。身体の拘束は既に解け、現実に戻り救出の為に動き出した教員の1人が此方に近付くのを感じ、涙目で縋り付く緑谷に微笑みかけ、馬鹿の姿をその目に焼き付ける。

 

「来いやヴィラン共ォ! まとめてぶっ飛ばしたるわオラァァッ! 」

 

 

 

馬鹿の怒声が響き渡る。相当腹に据えかねた事が起こっていたらしいと相澤がぼんやりと考えていると己の親友が目の前まで近付いてきた。

 

 

 

「Hey。イレイザー、男前が上がったようで何よりだぜ」

 

「遅いぞマイク。俺はいいからあの馬鹿と生徒達を頼む」

 

首元にスピーカーを取り付けた金髪頭のプロヒーロー、プレゼントマイクの言葉を切り捨てる。だが、そんな相澤の言葉をマイクを肩を竦めて返事を返した。

 

「手足折れてて血塗れの死体の癖に何言ってんだよ。生徒達には他の奴らが既に向かった。俺はお前ら担当だ。後、オールマイトが見当たらないんだが何処にいるんだ? 校長が野生に帰るくらい混乱してたからさっさと解決してもらわないと校長先生はそのまま野生に帰るかもしれしれない」

 

ついでにセメントスの奴も過労死するかもしれないなと笑いながらマイクは相澤を担ぎ上げようとする。だが、その行動に相澤は待ったを掛けた。

 

「俺は後で良い。だから生徒を頼む」

 

「だからそんな事を言ってる状況じゃ……」

 

「マイク」

 

そう一言だけ言うと相澤は緑谷並びに生徒達を睥睨する。魔王という恐怖から開放された彼等は皆マトモとは言える状況ではなかった。

 

「ひっ…ひっ…ひぃぃッ! 」

 

震えあがり全身を震わせ頭を抱える峰田実。

 

「……もう大丈夫よ峰田ちゃん。奴らはもう消えたわ……もう消えたのよ」

 

気丈に振る舞いながら峰田に優しく語りかける蛙吹梅雨。彼女の身体は小刻みに震えており、それが温度差から起こるものではなく恐怖からだと言うのは自明の理であろう。あのような惨劇があったのだ、当然の結果だ。

 

「先生ぇ……ゴメンなさい。僕のせいで、僕のせいで」

 

「違う。緑谷、お前のせいじゃない。これは悪い夢だったんだ。落ち着きなさい」

 

相澤に縋り付くように啜り泣く緑谷出久。彼等の身体には何一つ傷はない。だが、心に大きな傷を負ったのは確かだ。

 

「糞ッ! 糞ッ! 糞ッ! 糞がァァァッ! 」

 

人一倍のタフネスで意識を取り戻した爆豪勝己。彼は怒りのままに吠え立てた、あの現場を知らぬ者に彼が何に怒ってるのかは分からない。彼の心は魔王によって切開され傷口に塩を叩き込まれたのだ。

魔王によってズタズタに刻まれたプライド。涙が頬を伝ってる事実を忘れ、ただ爆豪はただ獣の様に吠えた。

 

「……大丈夫か?切島、夜嵐」

 

爆豪の咆哮で目を覚ました轟は近くで倒れていた切島と夜嵐を何度も揺さぶる。彼の行動で目を覚ました2人は口々に礼を言いながら現状を理解する為に辺りを見渡した。

 

「……なんとか、な。サンキューな轟」

 

「……手も足も出なかった。が、次は必ず勝つぞ! 」

 

夜嵐の宣言が響き渡り。その言葉に切島は笑った。彼等は魔王によって赤子の如く捻られ倒された、だが夜嵐はそれでも諦めずに次なる邂逅での勝利を決意していたのだ。

 

「……強えな。夜嵐は」

 

思わずそう呟いた轟の言葉を聞き、夜嵐は心底不思議そうに首を傾げた。

 

「負けっぱなしは嫌じゃないのか? 俺は嫌だぞ」

 

「……そりゃそうだな! 次はもっともっと強くなった俺達であの女に一泡吹かしてやろうぜ! 」

 

3人は笑う、次の邂逅では絶対に勝つと。その時がくるか分からないがこの時、彼等の心が一つになったのは確かだ。

 

「勿論。爆豪、お前も一緒だからな! 仲間外れにはしないぞ! 」

 

夜嵐は爆豪にそう告げる。その言葉を聞き、爆豪は咆哮を辞め涙を拭きながら吠え立てた。

 

「……まだ言ってんのか糞暴風野郎! ぶっ殺すぞ ! 」

 

「おぉ!調子が戻ったな! その調子だ! 」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇぞ! あれは俺の獲物だ! テメェら脇役は霧野郎でもボコっていやがれ! 」

 

そう吐き捨てる爆豪にそりゃないぜと切島は笑い轟は我関せずとある方法へと目を向けていた。そんな轟の視線に釣られるように三人が向けた視線の先には馬鹿が造り上げた物体xが宙を浮いていた。大雨暴風ゾーンの屋根は吹き飛び、雨風が天井かから吹き荒れている。ついでにその上には謎の物体xである。意味不明状況だ。

 

「おい、そこの糞紅白。何見てんだ……は? 」

 

「どうしたんだよ二人ともって……は? 」

 

「うおっ! 滅茶苦茶デカイなあれ! 誰が作ったんだあんなの!? 」

 

意味不明な状況を呆然と眺めていると状況がさらに変化する。

 

空中を脳無と呼ばれた怪物とオールマイトが拳圧で空を舞いながら空中戦をしていたのだ。既に謎の物体xでお腹はいっぱいなのに更に加えられた状況に追い付けずフリーズする4人。空中にて行われる乱打の勝負。勝利したオールマイトが謎の物体Xに脳無を叩きつけ、その一撃が謎の物体xを崩壊させ、タダでさえ壊れていた大雨暴風ゾーンをただの瓦礫の山へと変化させた。

 

「……俺。雄英高校を舐めてたかもしれねぇ」

 

「これが雄英高校か! 凄いな! 」

 

「……多分違うと思うがな」

 

鼠ととある教師の悲鳴がUSJに木霊する。だが、それに答える者はいない。

何はともあれ事件は解決したのだから

 

「フハハハハ!ウルトラスーパーイケメン世界代表の俺とナンバーワンヒーローオールマイトを敵に回すとは馬鹿な奴らめ! 知能がないからそうなるんだよバカが! 」

 

「待って引合少年! 今確実に個性解除したよね!? 完全に大雨暴風ゾーンが壊れたよ!? 」

 

「オールマイトの一撃があまりにも強すぎて強制的に解除されたんです……流石オールマイト! 」

 

「流石にこれを弁償するのはおじさん辛いかなって……聞いてるかい? 」

 

「そう言えばオールマイトって空中戦で色々ぶっ壊してましたね。でもオールマイトの財力ならこの程度余裕ですよね。まさか自分が原因なのに俺に半分払わせるとか暴挙に出ませんよね! よね! 」

 

「oh.shit! ほんと彼らそっくりだよ君は! 」

 

余談だが完全に崩壊した大雨暴風ゾーンの目の前でそんな会話があったとかなかったとか

 

 




まぁUSJ編はまだ終わらないんですけどね(白目)
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