友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
「あー…分かった。明日返す。お前も前に貸してたあれ返してくれよ」
「分かった。明日持っていくわ」
「サンキュー」
「 ─これから荷物点検を行う」
朝のHRが始まるや否や担任がそんな事を抜かした。
…抜かったッ!最近してなかったから完全に忘れていた。この学校の荷物点検は非常に不味い…不要物は没収されたら最後卒業後まで帰ってくる事はない!今日の鞄の中には大和のゲームが…ッ!
ちらりと大和の方を見る。どうやら大和も完全に忘れていたらしく目に見えて動揺しているのが見て取れた。
「因みに俺の個性は分かっているだろうが説明しておこう。俺の個性は」
「 ──ッ!ウオオオオオオオッ!」
担任が説明を始めた瞬間、一人のクラスメイトが荷物を持ち教室からの脱走を試みる。馬鹿がッ!アイツの個性を忘れたってのか!アイツの個性は!
「新島…動くな」
「 ──ッ!糞ッ!糞ッ!糞ッ!」
「…この通りだ。俺の個性は『停止』。目に見えた者の行動を一時的に停止出来る。さて…お前から検査してやろう」
「やっやめろぉ…やめてくれぇ…」
幽鬼の如くユラリとクラスメイト(新島)に近付きおもむろに身体検査を始める。
「…ポケットの音楽再生機器は授業に関係あるのか?」
「これは毎朝当校する際のルーチンワークの一つなんです!登校中は何か聞いてないと俺調子が」
「生活音でも聞いてろ。没収だ」
「あっ…あぁ…あぁ」
その瞬間停止が切れその場にガクリと膝を突く新島。そしてそのまま俺達の方を振り向くと、
「信条と引合は前に一杯食わされたからなァ…今回は最後にしてやる。いくら隠そうとしても無駄だ。徹底的に調べさせて貰うぞ」
思わず悲鳴をあげたくなるような声色でそう言い地獄の荷物点検を始めた。
「先ずはお前だ、佐藤…」
「くっ…今日に限ってッ!」
二番目の犠牲者となったのは窓際の端の席に座る女子、佐藤。イベント好きな明るい奴だ。いつもは不要物を持ってこないのか没収経験はいまだ0。だが今日は違うようで
「化粧道具は学業に必要は…?」
「ない…です!」
「没収だ」
とバッグの中から出てきた化粧道具を没収された。ガックリと俯く佐藤、惨い。幸いだが俺と大和にはまだ時間がある。そしてこちらは前に担任を騙した経験者。今回も前と同じ手で余裕…
「そこの馬鹿二人。前にやった点検済みの奴に預かってもらう戦法は通じんからな。預かった奴は反省文を書いてもらう、それも一枚や二枚ではない。百枚だ」
作戦を考えなければならない事態になってしまった。緊急事態、エマージェンシーというやつだ。
その後何人ものクラスメイトが不要物を没収されていった。今回はその阿鼻叫喚の中で酷いものを没収された奴等をお送りしていこう。
山内…このゲーム機はなんだ?
…これは計算機です!
ゲームも出来る計算機を持ってくる必要はない。没収だ
山内、ゲーム機没収
斎藤…このディスクはなんだ?
…流行りのアイドルのCDです
嘘つけ。どうみてもAVだろうが
…アイドルのイメージビデオです
没収だ。これはお前の親に即日返してやる
それだけは何卒御容赦を!
斎藤AV没収
吉原…お前…これ。いや、え?
絵本です。
いや…お前この表紙…男同士…
絵本です。絵本なんです。
…没収だ
…はい。もう返さなくて良いです
…処分しておいてやる
吉原…名状しがたき物体没収
そして次々に没収されていき次はショートの番となる。そしてショートの前におもむろに立ち
「轟…お前、鞄の中に何が入ってる?」
「…オールマイトの自伝小説と教科書と筆記用具。あと弁当」
「そこの馬鹿二人から何か預かったか?」
「まだ預かってない」
「ならいい。次だ」
と、隣の俺を無視して次の列の奴等の荷物点検を始める。荷物点検すら行わない暴挙に他のクラスメイトが異議ありと大声で喚きたてる。もちろん俺と大和もだ。
「轟だけ点検しないとかズリィぞ!」
「そうだそうだ!これはもう荷物点検を中止にすべきだ!」
「ついでに没収品の返却をすべきだ!」
沸き起こる野次を担任は鼻で笑う。まてやコラそれでも教師か貴様
「逆に問おう。轟が不要物を持ってきて、それを隠す人間だと思うか?」
「俺が『そこの馬鹿二人から何か預かったか?』と聞いて『まだ預かってない』と返してしまうコイツにそんな事が思い付くと思うのか?」
圧倒的な論破に俺達は何も言えなくなる。確かに天然で色々と抜けているショートなら自分から暴露する姿が目に見える。これは完全論破、ぐうの音も出ない。
「分かるかそこの馬鹿二人。これが『信用』というものだ。大人しく首を洗って待っているがいい」
そして荷物点検を進めていく教師を尻目に俺は大和からゲームディスクを預かる。どのみち大和の個性では隠しきる事は不可能。だが、俺の個性ならば隠しきる事が可能だ。
担任、あんたは確かに強い。「停止」という個性はプロヒーローが持っていても遜色ないものだ。だが、この場においては俺の個性の方が強い!
「…やれるか?」
「…俺はイケメン天才な引合君だぞ?出来ない事はない」
まだ担任はこちらを見ていない。それを確認した瞬間、俺は個性を発動した。
─そして時は流れ俺達の番になる。
「さて、信条と引合。取り敢えずお前らは学ランを脱げ、そして鞄の中身を全部出して何度も揺さぶれ」
「そこまでやるか…?」
「下着の裏に隠した経験のある貴様らに言われる筋合いはない。本来ならばここで体操服に着替えてもらいたいレベルだ」
「なんだこの変態教師…!」
二人して言われた通りに学ランを脱ぎ鞄の中身を出して揺さぶる。当然何も入っていない。当然の結果だ。
「…ならば次はボディーチェックだ」
「キャー!痴漢!変態!ホモ!」
「やかましい!さっさと大人しくしろ!」
言われた通りに大人しくなり二人してボディーチェックの餌食となる。何度も何度も確認されるが当然ブツは出てこない。当然である。
困惑する担任、その姿をみて当然だと云わんばかりの表情をする俺達。盛り上がってきたと騒ぎだすクラスメイト。
「コイツらが持ってきていないわけがない!何故だ!なぜ見つからない!」
「失礼な、俺達だって持ってこない日くらいありますよ。なぁ大和」
「全くです。なんなら他の人の荷物を確認してもらっても結構ですが?」
「…コイツらを庇っている奴は出てこい!今なら反省文はなしにしてやる!これから確認して出てきたらどうなるか分かるな!」
その言葉にクラスメイト達が自分達は持っていないと言い担任に対してまだ終わらないのかと野次を向け始める。
「そんな馬鹿な!…糞ッ!轟!荷物確認をさせてもらうぞ!」
「『信用』とはなんだったのか」
「黙れ信条ォ!さぁ見せて貰うぞ轟ィ…」
「どうぞ」
そしてショートの鞄を漁るも結局出てこない。困惑に困惑を重ね混乱する担任。
「馬鹿な…本当に持ってきていないだと?この二人がか?この中学が誇る知能の高い馬鹿二人がか?」
「なんという失礼。俺は清く正しく真面目で誠実なイケメンですよ」
「俺も清く正しく真面目でイケメンでモテモテですよ」
「死ねモテキング」
その後も何度も何度も繰り返し探すがブツは結局見つからず。HRが終わる予鈴がなるまで探した後、朝の報告を一言話し教室を後にした。
「…いったか?」
「…いったぞ!」
大和に担任が階段を下りるのを見張らせいなくなるのを確認するとクラスメイト連中全員が俺達の元に駆け寄ってきた。
「やったな引合!お前達くらいだぜ!あの荷物点検を回避するのは!」
「まっさかあんなところに隠すなんて予想外だよ!」
「ほんっと便利な個性よねー『磁力』正確には磁力関係なく引き合わせてたり反発させたりしてるんだっけ?」
「フハハハハハ!もっと誉めろ!やっぱり俺は天才でイケメンだ!」
高笑いをしながら机の上とブツを反発させていたのを解除する。すると天井からゲームソフトが落下し、そのうちの一つを大和へと渡す。
「ほい大和。これ返すわ」
「サンキュー。しっかし今回は焦ったな」
「全くだ。こんな事はこれっきりにして欲しい。心臓が何個あっても足りんわ」
お互いにソフトをバッグの中にいれながら胸を撫で下ろす。今回は心底焦った。もしも担任がショートにブツの行方を聞いていたら即死だった。混乱して無駄に探したのが貴様の敗因だ担任!
「しっかしうちの担任の焦りようときたら笑えるよな」
「右も左も探したって無駄に決まってんだろ。なんたって上だからな」
「そうか、それは俺のミスだな。次からは気を付けるとするか」
「気を付けろよ!ハハハハハ…ハァ?」
突然の背中越しに聞こえてくる声に困惑する。よく見るとクラスメイトのやつらはとっとと席に座り授業の準備を始めている。おかしい、まだ本鈴は鳴っていない。いつもならまだ騒いでいる筈、まして今日はこんな事があったんだ。なのに何故?
「どうした?俺がなんなんだ?」
背中に視線を向けず大和とアイコンタクトでお互いに覚悟を決めた事の確認をする。
今だっ!
「信条ォ!引合ィ!止まれェ!」
こうして俺達の大切なソフトは卒業まで返ってくる事はなかった。
個性 磁力
手で触れたものを+か-かに振り分ける事が出来る
+と-はお互いに引かれ合い引っ付く(強弱は変更可能)
+同士や-同士が近づくと反発する(強弱は変更可能)
戦闘方法としては色々あり割愛する。中学生生活最後にでもヴィランとの戦闘シーンをぶちこんでやろうかなと考え中