友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
臨時休校が終わった次の日。結局昨日はバードマンに捕まり厳重注意を受けた俺は学校に行くと色んな奴が俺をジロジロと見ていた。残念ながら俺は見世物じゃないのでその視線をフル無視して教室へと向かう。
「おっす引合! 皆から噂されてたけどどうしたんだ!? 」
「グッモーニン切島ァ! その話はやめろォ! 俺が修羅になっても良いのかァ!? 」
教室に入るとド直球で切島が昨日の事を聞いてきた、どうやら昨日の一件を切島は知らないらしい。正直街中走り回ってたから知らない奴なんていない者だと思ってた。
「聞いたぜ引合! お前街中走り回ってヴィランぶっ飛ばしてんだろ!? 追いかけて来るヒーローガン無視してとかヤバすぎんだろ! 個性の不正使用からの傷害とかもろにヴィランじゃねーか! 」
「いや……マジでやばいだろお前。大丈夫なのか? 」
ヤベェヤベェと語呂が死んでいる上鳴と此方を心配する瀬呂。正直もろやってる事がヴィランだったので俺も何も言えない。しかもあの時の俺は怒りで我を忘れていた、正直何も言えない。
「あの姿……正しく鬼神そのものだった」
「まぁ……なんかあったんだろ。クッキー食うか? 落ち着くぞ」
ウンウンと鳥頭を向けながらそんな事を抜かす常闇と取り敢えず焼酎の感覚でクッキーを渡してくる砂藤。取り敢えず砂藤に礼を言って俺は言葉を続けた。
「……昨日ちょっと色々あってな」
「いやいやいや。色々あったからって街中のヴィランぶっ飛ばすとか何がどうなったらそうなるんだよ! 」
母親に性癖を担任にバラされたりその担任におしめ変えられた事がある事を教えられたりしたらこうなったとは死んでも言えず、俺は乾いた笑みを以て返事を返した。
「……察しろ? 」
「「出来るかッ! 」」
クラスの大半が俺に説明を要求するが俺は死んでも説明をするつもりはない。 というかしたら俺の心が死ぬ。
クラス中を見渡して昨日の事を知りたがっているのを確認する、男子は今いる奴全員と女子が。
「一体引合さんの身に何があったのでしょうか……? 」
「……多分心底どうでも良い事じゃない? 」
俺の身を案じてくれている女神と俺を呆れ果てた顔で見る耳郎の姿。後はチラチラ此方を見る麗日と半分軽蔑した目で此方を見る蛙吹。
「ねー! 教えてよ! 何があったの!? 」
「……例え女子でも俺はこの事を墓の底まで持っていくッ! 誰にも話さん! 」
「えー! ケチー! 」
口を尖らせながら俺に説明を要求してくる芦戸と葉隠。今いる面子では大体こんな感じだった。
「爆豪は性格がクソ煮込みの糞野郎で何時ヴィランになるか分からねぇけど引合は既に実行済みとかウチのクラスヤバすぎんだろ。ヒーローを目指すのに論外が2人もいるぜ2人も」
もう知らん、言うなら言え。と考え俺は席にどっかりと座り込み窓をぼんやりと眺める。空は雲一つない快晴で八つ当たりしたくなるくらい良い天気だった。
そんな事をしているとまたクラスメイトが登校してくる、ズカズカと此方に近付いてくる足音を聞いた時点で見なくても誰か察してしまう。
「おぅ飯田か、どうしたそんな不機嫌な顔して。なんか嫌な事でもあったのか? 」
そう聞くと飯田は如何ともし難い顔をして返事を返した。
「いや……何も無い」
そのまま自分の席へと向かう飯田を目で追った後、俺はぼんやりと窓から景色を眺める。遠くから女子の姦しい声が此方に届き、さらに遠くから男子ともの絶叫が響き渡った。嫌な予感しかしない、というかこんな状況を作れる存在は俺の知る限り1人しかない。
「……なーんか廊下側が騒がしくねぇか? 」
「ちょっと俺見てくるわ」
瀬呂の言葉に上鳴が返事を返しながら廊下側を見渡し絶叫にも近い悲鳴をあげた。
「あんじゃこりゃぁぁぁぁッ!? 」
上鳴の絶叫に、なんだなんだと男子が廊下を見て同じように悲鳴をあげる。まぁアレを初めて見たのなら仕方ない、凝山では良くあった事だ。
「……女子は八百万にガスマスク作って貰った方が良いぞ。」
「……アンタマジで何知ってんの? 」
俺の善意からの忠告に知っている事を吐けと言わんばかりに睨み付ける耳郎に、笑いながら席を立ち廊下側へと向かう。
「親友が俺を煽りに来た」
「ハア? 」
取り敢えず女神に女子の人数分のガスマスクを作ってもらうように頼み俺は石化している男子を押しのけて廊下へと出る。
「よぉ引合! 童貞でブサイクの癖に昨日はやらかしたみてぇだな! ウケる! 」
大名行列も顔真っ青のレベルで女子を引き連れ、その先頭で俺を見ながら笑う男。信条大和がそこにはいた。
「もうその規模の女を侍らしたか。ほんっと手が早いなお前」
「まぁな! いやぁ雄英は最高だ! 女のレベルが高くて気分が良い! 」
清々しい程の屑っぷりを見せつけている大和、そしてそんな姿を見ても引きもしない女子。顔を惚けさせ大和を見る姿は凝山で良く見た姿だ。
「おい引合! なんだよコイツ! なんでこんなにモテモテなんだよ!? 現実的に有り得ねぇだろ! 」
「諦めろ上鳴。これが真のモテ男の恐ろしさだ」
歯ぎしりをギリギリと鳴らしながら大和を睨み付ける上鳴にそう言うと上鳴は涙を流しながら教室へと戻っていく、強く生きろよ。
残ったA組連中の視線を受け俺は大和を説明した。
「これは俺とショートと同じ学校の出身の天下一のモテ男だ。個性は『フェロモン』生物学的にメスと分類される者全てに対して魅力的な体臭を出す変態だ」
その個性を聞いて絶句する奴らを無視して大和は俺を煽る。
「なんだ? 嫉妬か? うん? 」
「片っ端からメスの動物集めてお前に向かって放つぞ」
「すまん。調子に乗った」
俺の言葉を聞いて即座に謝る大和。そうなるなら煽らなきゃ良いんだが
「煽れるうちに煽っとけが家の家訓でな! 」
「だから捨てろって言ってんだろうがその糞の役にも立たん家訓 」
大和の取り巻きの女子が俺を睨み付けるが俺はその視線を全部無視して言葉を続ける。
「……マジで俺を煽りに来ただけか? 」
「いや? 心操がお前の噂を聞いて心配してたから安心させるついでにお前を煽りにきた」
そう言いながら大和が手を招くと居心地が心底悪そうな顔で心操が出て来た。
「顔が死にかけてて、俺が心配してしまうんだが? 」
そう言うと大和は笑いながら心操の背中をバンバンと叩きながら言葉を続けた。
「すまんすまん! 童貞にはちょっと辛い環境だったな! 」
色んな意味で死にかけの顔で心操が俺に話掛けて来る。
「なぁ……コイツって何時もこんな感じなのか?」
「諦めろ、ソイツは常時そんな感じだ。大和が傍にいる時点で花の高校生活はないと思え」
「いや……それは良いんだけど。アンタ、ほんと凄いな」
ある意味尊敬するよ、と。俺に言い心操はまた女子の群れの中へと消えて行く。そこ辛いだろうに良く戻ろうと思うな、と感心しながら俺は大和の顔面にアイアンクローを掛けた。
「あだだだだ! 俺の天下無双のイケメンフェイスが!? 」
「「大和くん!? 」」
悲鳴をあげる女子を無視して、俺は大和を女子の群れへと放り投げた。溢れんばかりに殺意の篭った視線を無視して俺は大和へと語り掛ける。
「邪魔になってるから巣に帰れ巣に」
「いっつー……お前みたいな不細工になったらどうするつもりだ!? 」
「知らん。その顔がグチャグチャになった方が幸せになれる奴は多いと思うぞ」
その会話を最後に大和は女子を引き連れて普通科の方へと消えていく。
女子が消えて俺も教室へと戻ろうとしたが、その腕を誰かに掴まれる。
「なぁアンタ! アイツなんとかしろよ! 」
その声の方向を向けば、さきほど女子がいた場所に男子共が集まっていた。正直むさくるしいのではやく帰って欲しい。
「アイツが入学早々女を侍らせたせいでアイツに女が集中して俺達の方に誰も来ないんだよ! アンタはアレと同じ学校出身なんだろ! アイツをなんとかする方法知ってんだろ!? なんとかしろよ! 」
その言葉を皮切り男子共の嘆願が廊下中に響き渡る。昨日の一件で正直疲れていた俺は心のままに叫んだ。
「んなもん俺も知りたいわボケ! 俺だってアイツを何とか出来るならとうに何とかしとるわ! 」
「はぁ!? なら俺達はどうすりゃ良いんだよ! このままじゃアイツのせいで俺達の学生生活台無しなんだよ! 」
そうだそうだと声を貼りあげる男子共。教室から感じるソイツら何とかしろという視線。その瞬間、俺の中の何かが弾けた。
眼前の男子の顔面にアイアンクローを掛ける。突然の凶行に困惑する男子共に対して俺は声を張り上げた。
「グチャグチャグチャグチャと……つまりお前らは自分じゃ大和から女を寝取れねぇから俺に助けを求めてんだろうが! とんだヘタレペニス野郎共だな! お前らのそのちんこは飾りかァ!? あぁん!? 」
突然の暴言に困惑する男子共に俺は言葉を続ける。
「アイツは中学時代でもあんな感じだった! だがな! うちの中学ではアイツ1人だけがモテてたわけじゃねぇぞ! それが何故か分かるか!? 」
「んなもん知るかよ! ソイツはなんでモテてたんだよ!? 」
男子共の中から声が上がる。俺はその声にあらん限りの声で返事を返した。
「ソイツの魅力が大和よりもあったからだ! 確かにアイツの個性は女を寄せ付けるがアイツ以上の魅力があるなら問題ないんだよ!
大和は糞以下の人間性だが自分の女だけは死ぬ程大切にしやがる! お前にその度胸と甲斐性はあるのか!? ねぇだろ! 」
俺の雰囲気に押されていく男子共を見て俺はさらに言葉を続けていく。
「良いか! アイツは確かに強大だ! だが絶対に勝てない敵ではない! 己を磨き、誰もが羨む人間になった時、お前らはアイツに勝つ事が出来る! 」
「お前達に彼女が出来る可能性はあるんだ! 」
男子共は俺の言葉を聞いていた。俺の経験が篭った言葉がアイツらに届いたんだ。やはり実体験のない言葉に力はない、経験してこそ言葉には力がある。
「俺だってお前らみたいに苦しんださ! 3年間ずっとな! 分かるか! 3年間だぞ! 己を磨き、なお届かない星へと手を届かせる為に! 」
そう……あの時の俺では届かなかった。
「お前らはそうやって文句をたれるだけなのか!? 見果てぬ彼方にある星は確かに遠い……だが、それを掴んでこそ! 星を掴んでこそ己の宿願が果たせると思わねぇのか!? 」
この瞬間、男子共の咆哮が廊下に響き渡る。俺だって星を掴みたい。と、誰もが思い、叫ぶ。俺はその咆哮に負けじと声を張り上げた。
「お前らァァァッ! モテたいかァァァッ! 」
「「オオオオオオオオッ! 」」
「俺だってモテたい! お前らにその為に……星を掴む為に己を磨き抜く覚悟はあるかァァァッ! 」
「「オオオオオオオオオオオッ! 」」
その咆哮でビリビリとガラスが揺れる。その咆哮に悲しみの色はない、既に皆の目には決意が宿り、声には強い意志が宿っていた。
「……お前らの意思は良く分かった! お前ら全員俺に付いてこい! 俺と共に見果てぬ星を掴みに行こう! 」
あの時の俺は少々疲れていたのかもしれない。じゃないと中学自体と同じ誤ちを繰り返す訳が無い。
「ここに桃園の誓いを……我ら異なる時、場所に産まれど! 共に見果てぬ星へと足掻き続け! 研鑽を続ける事を誓う! 」
「共に往こう……我が同胞達よ! 」
腕を張り上げ雄叫びをあげる自分と男子共。何故俺はまた同じ事を繰り返してしまったのか、何度考えても分からない。だが、やってしまった事は仕方ない。
「星を掴め! さぁ行くんだ! 敵は強大だが倒せぬ訳ではない! 」
その言葉を残し俺は教室へと戻る。テンションが上がり切った男子共はそのまま自分達の教室へと戻って行った。彼等は示された道を突き進むのだろう、頑張って欲しい。
教室の中ではあのテンションに当てられたのか一部の男子が燃え上がっていたり、女子が変な物を見る目で此方を見ていた。
「いや……アンタほんとになんなの? 」
「今をときめくイケメン天才の引合石君だが? サインいる? 」
俺の存在自体を問う耳郎にノートを破りサインを描いて渡す。渡されたサインをマジマジと見詰め耳郎はボソリと呟いた
「……いらないんだけど」
そんな事をしていると、校内放送が流れ始め俺はその放送に耳を傾ける。
『えー……1-A 引合石君。至急職員室まで来て欲しいのさ 』
「……今度は何やったの? 」
突然呼ばれた俺の名前、正直嫌な予感しかしない。そんな俺に耳郎は呆れた顔で話掛けて来た。
「……正直。前科が有りすぎてどれがどれやらさっぱり」
そう言って肩を竦めながら席を立つ。ここまでやってまだHRの時間にすらなっていない事実に若干震えながら俺は職員室へと足を進めた。
B√大人気ですがオティンティンは天邪鬼なので……