友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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危機 退学 回避方法

人間。予想外の出来事に出くわすと思考が止まると言うが、そんな自体に出くわす人はそういないと思う。当然だ、そん事態がそうポンポンと起こられたら此方の身が持たない。

 

「───って訳なんだけども……聞いてるかい? 」

 

「あぁ……まぁ……多分」

 

眼前のド畜生齧歯類の言葉がその事態であり、俺は既にいっぱいいっぱいになっている。昨日今日とで神は一体俺に何を求めているのだろうか? 無駄に試練を与えないで欲しい、人間には限界があるのだから。

 

歯切れの悪い俺の言葉を聞き畜生以下の糞齧歯類はその言葉を紡いだ。

 

「つまり……下手したら君は退学になる可能性があるのさ! 」

 

快活な声色でそんな事を抜かすこの齧歯類にマジでマタタビぶっかけてやっても許されると思うのは俺だけだろうか?

 

引合石、入学早々退学の危機へと陥る。

 

「……で、何でそんな事態になったんですっけ? すいませんがもう一度ご説明頂けませんか腐れ齧歯類? 」

 

「本音が漏れてるよ」

 

おっと、腐れ齧歯類と言えども仮にもこの学園の校長をやってる溝鼠だ。ちゃんと、丁寧に接しないとな。

 

「すいません溝鼠様。つい本音が」

 

「うーん……隠す気ないね! 」

 

まぁ良いさ。と言いながら紅茶を飲む齧歯類、偉そうに紅茶を飲みながら齧歯類は先程までの話を再度説明し直した。

 

「簡潔に纏めると君、この短期間で問題起こしすぎ」

 

「どこが!? 俺は清く正しい模範的生徒の鏡ですよ!? 溝産まれだから目が腐ってるんじゃないんですか!? 」

 

謂れのない風評被害に俺は反論する。俺ほど真面目でこの学園の為に尽力する男いない筈だ、全く失礼極まりない。この齧歯類には何が見えているのだろうか。

 

「うん。今もバッチリ問題行動を起こしてるかな! 」

 

どうやら校長の目は冗談抜きで腐っていたようだ、話にならない。

 

「USJの一件、そして昨日の一件、ついでに朝の馬鹿騒ぎ。うちの学園でもこの短時間でここまでやらかした生徒は過去1人として存在しないよ? 」

 

「つまり……この学園に俺の伝説が刻まれた……と? 」

 

「その通りだけど決して褒められるような行為ではないのさ! むしろ逆効果だからこうなってるって思って欲しいのさ ! 」

 

どうやら俺はこの学園に伝説を刻めたらしい。建てた偉業が過去誰も達成していないというのは大変素晴らしいものだ。その代わりに退学の危機に陥るのは何一つ宜しくないが。

 

「USJで君が崩壊させたあのゾーン……損害費はこのくらいさ! 」

 

そう言いながら紙を渡してくる。それに俺は目を通し目玉が飛び出るような数字に絶句した。

 

「よん……よん……四十八億ゥ!? あんな場所にそんな価値があんのかよ!? 無駄遣いが過ぎるだろ雄英! バカなのか!? いや馬鹿にも程があるだろ! 」

 

仮にも国立の癖になんでそんな無駄遣い出来る金があるのかと小一時間問い詰めたくなったが、そんな俺の言葉に被せるように齧歯類は言葉を続けた。

 

「因みに施工費をセメントス先生とローダーアーム先生に頼んで割り引いてるから本来はその2倍も3倍もするのさ! 」

 

「はぁ!? 」

 

「因みにオールマイト先生が壊した被害額を含めるとそれの10倍くらいになるのさ! 正直やってられなくて泣きそうなのさ! 」

 

俺の悲鳴を遮るように齧歯類は更に追撃を掛けてくる。あれは緊急事態だったのでセーフ。正当防衛、故に俺は悪くない。だから俺はびた一文も払う気はない。

 

というか額だけでいうなら弱小国の国家予算分くらいの被害額だな。と思わず現実逃避しそうになった俺に齧歯類は逃がしはせんと言わんばかりに言葉を続けていく。

 

「まぁ金銭の要求をするつもりはもうとうないのさ。君のような才能に溢れ過ぎててどうにかなってそうな子どもに押し付けるほど雄英は愚かじゃないしね」

 

それよりも問題は昨日の件だよ昨日の件。と言い齧歯類は腕を組み、某秘密結社のボスのような格好で言葉を続けた。

 

「昨日の一件は幾ら雄英でも誤魔化しが効かない一件なのさ。ヒーロー達全員を尻目にヴィランを無力化、しかもヒーローに追い付かれずに一日中ずっとそれを繰り返す、プロヒーローの面目丸潰れって事なのさ。幸いバードマンが君を保護して厳重注意したって事で事件は終わったけども……プロヒーローからすれば自分の面目丸潰れにされた挙句、それがただの子どもとなればどうなるかは火を見るより明らかなのさ……って聞いてるかい? 」

 

「アッハイ聞いてます」

 

正直意識が飛びそうな程ペラペラ話されて若干焦ったが大体の事は分かった。つまり……

 

「俺という素晴らしい才能の持ち主に街中のヒーローが嫉妬していると」

 

「……超がつくほどポジティブに捉えたらそうなるかもね 」

 

ため息を吐きながら齧歯類は話を続けていく。これで2つ目、3つ目は朝の一件らしいが一体なんの問題があったのだろうか? というか知られるのが速くないか?

 

「先程の一件、素晴らしいお手並みだったのさ。生徒達の心身に取り入り、彼等の望む言葉を吐き出しながら士気を高め、自分が輪の中心となるやり口。君ならどんな場所でだって馴染めるだろう、例えるなら……そう」

 

ヒーロー達の集まりに狡賢く卑劣なヴィランが入り込むようにね。

 

本題はこれからだと言わんばかりに齧歯類は声色を変え話し始める。そんな事言われても正直俺は何がなんやらさっぱり分からんので取り敢えず称賛として受け取っておく。

 

「はぁ……そりゃどうも……? 」

 

「いやいや。そう謙遜する事はないのさ! 他者を誘導する人心掌握の術、きっと素晴らしい師匠から教えられたのじゃないかな? そう……それこそ犯罪者の頂点に立つ者から……とか? 」

 

「何言ってんだこの齧歯類 」

 

意味不明な言葉に困惑してつい本音が出てしまう。マジで何が言いたいのかさっぱりわからない、もっと要点を纏めて話して欲しい。これだから獣は駄目なんだ、知能が足りん。

 

「……まぁ、そう言われるのは分かってたさ。という訳で引合君には少し話して貰いたい人がいるのさ! 」

 

そう齧歯類が言うと新しい人がこの場に現れる。どんな人かと言えば美人で俺よりも歳上、顔もお綺麗でおっぱいの大きさも中々グッド。正直好みだ。

 

「初めまして。私は塚内真、君の事は根津校長先生から聞いているわ。とっても元気な生徒さんだってね」

 

そう言いながら握手を求められたので俺は笑顔でそれに答える。美人のお願いは9割答えるべき、それが俺の生き様だ。

 

「いやぁ……それほどでもありますよ」

 

そう言って握手を終わらそうとすると塚内さんが俺の手を離す事はなくそのまま話を続けていく…… what?

 

「私は人心掌握に術について研究しているの。貴方は人を纏めるのがお上手だと先程聞いたから少し話を聞きたいなと思って……駄目かしら? 」

 

「そうですか……それくらいなら別に話しますよ? 」

 

「良かった! それじゃあ……」

 

そんなこんなで塚内さんは俺がどうやって皆を纏めていたのか、そのコツはどうなのかと聞いてきたので一応俺の中で確立しているやり方を説明した。ぶっちゃけやってる事は扇動家なのだが結果的に纏めあげているので良しとして欲しい。

 

「……その歳で良くそこまでの理論を確立したわね。それは独自で磨いたの? それとも誰かから教わって? 」

 

「……いえ、殆ど独学ですね。俺の周りの奴らは何奴も此奴も濃い奴ばっかだったので……ソイツらを纏めあげなきゃ話にならなかったと言うべきか……あぁ……でも最初の頃は教わってましたね」

 

懐かしい……最初の頃は『せんせー』から他人と仲良くなれる方法として色んな事を教えられたものだ。今覚えば帝王学みたいな事を言っていた記憶がある。

 

「それは……どんな事? 」

 

「まぁ……これくらいなら言っても良いか。ただ単純に友達を作る方法ですよ。個性が発現した俺は人と違う物を見続けていたらしく、誰とも理解し合えなかったんです。そんな時に教えて貰ったんです」

 

良くある個性の弊害ですよ、と笑いながら言葉を纏める。俺の場合は人とは違う世界を見ている、ただそれだけだ。

 

「そう……良い人に出会えたのね 」

 

「まぁ……俺と同じ世界が見える人でしたからねぇ。逢えただけでも奇跡ですよ」

 

俺の言葉を聞き塚内さんはでも……と言いながら言葉を続けた。

 

「君のような技術を持った人がヴィランになれば恐ろしい事になるわ。即座に人を纏めあげ犯行に移す。そして自分だけは逃げ延びまたそれを繰り返す。その技術は悪用したら大変な事になる。それは分かってる? 」

 

「そんなテロリストみたいな事しませんよ。そんな事したら俺本当にヴィランになるじゃないですか」

 

そんな事したらオールマイトに捕まって即人生終了である。恐ろしい、そんな事考えたくもない。

 

「貴方ってヴィランじゃないの? 」

 

冗談交じりに笑い掛けてくる塚内さんに俺も笑いながら返事を返した。

 

「失礼な、誓ってヴィランじゃないですよ。このイケメン天才な引合石くんがヴィランなんて馬鹿な存在になる訳がない。合法的にヴィランをぶっ飛ばせるヒーローが一番ですよ一番」

 

俺の言葉に塚内さんは苦笑しながらちょっとした毒を放つ。

 

「なら……昨日の事は反省しないとね? 」

 

ぐうの音も出ない正論に言葉を失ってると、塚内さんは俺の手を離して齧歯類と話し始める。

 

「良い子ですね。性格がちょっとアレですけど、きっと性根の優しい子だと思いますよ? 」

 

性格がアレだと言われて内心落ち込む、マジで俺の教育は失敗していたらしい。こんなイケメン天才な完璧超人でも少し駄目な部分があるほうがギャップ萌えを狙える分マシと結論をつける。

 

「そっか……なら此方も覚悟を決めないといけないね 」

 

「まって齧歯類。なんの話?」

 

「齧歯類じゃなくてちゃんと校長先生と呼んで欲しいのさ! 」

 

人を退学処分にしようとしている齧歯類なぞ齧歯類で十分だ。溝鼠と呼ばないだけ感謝して欲しい。

 

「それで退学になる可能性になるって言ったね? それじゃあそれを回避する方法の話をしようか? 」

 

「なんなりと仰て下さい我らが雄英高校の誇りである根津校長先生様。何なりと従いましょう」

 

前言撤回、素晴らしい根津校長に対して溝鼠だのと抜かす愚者は俺が泣いたり笑ったり出来なくする。こんな素晴らしい校長先生にそのような愚行を行う愚者は俺が許さん。

 

「……手のひら返しが速いね?」

 

「いえ。なんの事かさっぱり分かりませんが、そんな事よりもその方法とやらを無知で愚蒙な私めに是非ともお教え下さい。あっ靴舐めましょうか? 」

 

「……血って遺伝するものなんだね」

 

靴は舐めなくても良いと言い根津校長先生閣下は話し始める、そのお言葉を一言一句聞き逃さないように俺は耳を傾けた。

 

「もう直ぐ開催する雄英高校体育祭! そこで君は世間に自分という存在をこれというくらい主張して欲しいのさ! 」

 

閣下……お言葉ですが言われなくともやるつもりです。




溝鼠だの腐れ齧歯類だのと根津校長を揶揄した事をここでお詫び申し上げます。
ごめんな根津ゥ! ほんとごめんなぁ!

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