友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
「すまないね……ダブルス」
雄英高校校長であり、個性『ハイスペック』を持つ鼠は溢れんばかりの罪悪感を溜息と共に吐き出した。先程の一件は言わば確認、もしも引合石がヴィランなのであればこの場で確実に仕留める、その覚悟と意思が彼にはあった。
だが、現実は彼はヴィランではなかった。ヴィランの王、オールフォーワンによって育て上げられた存在がまだヴィランではない。その事実に根津は感謝し、彼を己の計画の為の生贄にする決意を決めた。
「オールフォーワンの復活が確定した以上……今までのようにはいられない。取れる手は取るべきだ」
そう言うと徐にチェス盤を出し駒を並べていく。黒の駒はキングただ一つ、そして白の駒は王以外全て並べる。
「……このキングをどう攻略すれば良い? もし攻略したとして……オールマイトが死んだとしたら僕達はこの平和をどう維持する? 」
「新たな象徴になりうる存在が皆には必要だ。誰もが『彼ならば』と思え、ヴィランからすれば理解不能の理不尽の体現者」
「オールマイトは後継者を選び、相澤先生は己がなると覚悟を決めている。だが……僕は違う。平和の象徴……あらゆる全ての者達に安心感を与えられる存在は彼だと思う 」
根津の脳内に昨日の一件が思い出される、1人の少年は朝から夜までひたすらにヴィランを無力化し続けた。本来ならば個性の無断使用と傷害でヴィランと判断するべきなのだろう。だが、根津にはそう思えなかった。
「1人で街全てのヴィランを駆逐する……その姿に人々は日常と変わらぬ安心感を覚えている。オールマイト……まるで君じゃないか」
引合石。彼を平和の象徴に成りうる存在、実力はUSJの一件で申し分ない事は確定している。そして昨日の1件でオールマイトのように1人で全てを解決出来る事も判明した。個性の無断使用? 傷害? そんな事を言っている場合では無い、そんな圧倒的な実力を持つ存在がヴィランではない。その事実に我々は感謝すべきなのだ。
「 間違いなく体育祭で彼は世間に自分という存在を見せ付けるだろう。圧倒的な力を以てその存在を社会に示す。そしてその場ではどんな力を振るおうとも民衆にはエンターテインメント程度にしか思われない 」
「 そんな場所で彼が全てを歯牙にかけず頂点に立つ。人々は彼の事を未来有望な素晴らしい人材だと思う筈だ」
「マスコミに金を掴ませ、次代の平和の象徴を担う存在は彼だと言わんばかりに放送を流してもらう。そして彼は今までと変わらずに問題を……常人では有り得ぬ偉業を成し遂げる筈だ。そしてその実績が……彼がヒーローとなったその瞬間に偉大なる功績の一部となる。例え現時点では犯罪者の行為に等しくとも、そこに民衆の好印象が合わされば……『学生時代から己を顧みず人々を守り、導いていた存在』になれるのさ」
こんな事がバレたら相澤先生とオールマイトに詰め寄られるだろう、と。根津は笑った。だが、それを気にする事はない。
根津に物理的な力は一切ない。オールマイトのような環境を変える神の如き一撃は放てないし、イレイザーヘッドのように影から隠れ一撃必殺を放つ事も出来ない。
だが根津には権力がある。金がある。そして様々なジャンルの方々とのコネクションがある。それは社会において何よりも強い。そして彼は人よりも優れた知能を持っている。そんな彼からすれば偏向報道だろうがなんだろうがお茶の子さいさいであり、彼の一声で社会の流れを変化させる事は可能なのだ。
「ワンフォーオールの後継者は緑谷出久君でも相澤先生でもどっちでも良いのさ。彼にその力は必要ない、それはUSJで良く分かったからね」
「たった40億程度で彼の将来が買えるなら安すぎる買い物なのさ。その点に関してはヴィランに感謝しないといけないね」
冷めた紅茶を飲み干し根津は笑う。人類を超越した頭脳を持つ鼠は人類社会を己の手のひらで回す、全ては今の世界を維持する為に、全ては世界の平和の為に。
「オールマイト……君の覚悟は彼に引き継がせる。だから安心して君はオールフォーワンと決着をつけたら良い、勝っても負けても彼がいる。彼ならば平和の象徴に成りうる存在だ」
「すまないね……オールマイト。本来は君の味方をしたかったんだけど……状況が状況なのさ」
オールマイトへの謝罪を吐き出し、根津はある人へ連絡をし始める。天下の雄英高校校長として彼が持つコネクションは無尽蔵と言って過言ではない。これから忙しくなる、そう笑いながら根津は己の計画を進めていくのだった。
───そして、そんな事になってると露も知らない我らが引合石の現在の状況というと。
「やるじゃねぇか小僧! それだけ動けりゃ上等よ! 」
「そりゃ……どうもっ! 」
体育館γで眼前のグラントリノと共に四次元的立体機動で動作をしながら戦闘を行っていた。互いに一撃を加える瞬間にその場から離脱、そして隙を狙い攻撃の繰り返し、それを何度も行っている。グラントリノが生徒達へと攻撃を仕掛けた瞬間、それを察知して逃れられた存在は複数いたが殆どはその場で無力化され腹を抑え蹲っている、簡単に言えば腹キックされ悶絶しているのだ。
「───テメェら……俺を無視してんじゃねぇッ! 」
そんな2人の元に爆破を繰り返し空中機動を繰り返しながら近付いてくる存在がいる。爆豪勝己、彼もグラントリノの一撃から逃れた1人。本能ともいえる野性的な直感持つ彼はグラントリノの攻撃を察知し、逃れたのだ。因みに夜嵐と轟は超スピードからの腹キックを受けている、現状動ける生徒は彼等の2人だけだろう。
「爆発小僧か! まだやる気か!」
そして、そんな爆豪を見てグラントリノは空中で何度も軌道を変え爆豪へと近 づいて行く。変則的な軌道から放たれる一撃は爆豪の背中に直撃し、爆豪は地面へと叩きつけられた。
「……タフだな爆豪。これで何回目だ? 」
引合が感嘆したように呟く。爆豪は先程から何度もグラントリノに叩き落とされ、その度に立ち上がって攻撃を仕掛けているのだ。修羅の如く目を爛々とギラつかせ倒れても倒れても立ち上がる。その姿は正しく戦いを求める戦闘狂そのもの。
「……まだだッ! 俺は弱くねぇ! こんな所で! こんな奴らに負けてる場合じゃねぇ! 」
そしてまた空中へと舞い上がり、今度は引合に攻撃を仕掛けんと近づいて行く。
「うわっあぶなっ! 」
放たれる一撃はそんな声と共に避けられ背中を叩かれたかと思うと、また地面へと引き戻されていく。ゆっくりと地面へと引き合わされていく感覚を感じながら爆豪はあらん限りの声で叫んだ。
「まだだ! 絶対にお前らをぶっ飛ばす! じゃねぇとあの糞女に俺は勝てねぇ! だからテメェらは俺にぶっ飛ばされろ! 」
「良く分からんが爆豪が青春してる事は分かった」
爆豪の絶叫にそう反応した引合は再びグラントリノと正面から対峙し、また立体機動からの攻撃を繰り返す。グラントリノが引合の死角に入り、蹴りを入れようとすると、引合が示し合わせたように裏拳を放つ。両者がその一撃を避け、また距離を取る。
「……やるじゃねぇか、最近の餓鬼は末恐ろしいな。坊主、名前は? 」
「今をときめくイケメン天才の引合石です。あっサインいる? 」
何時もの様に巫山戯た名乗りをかます引合の言葉を聞きグラントリノは納得したように頷いた。
「……血か。将来が末恐ろしいな」
そしてグラントリノは手を上げ引合へと近づいて行く。
「どうやらお前とやっても千日手になりそうだ。お前に教える事は何もねぇ、好きにやれ」
「やだ……もしかして免許皆伝? 」
そんな引合の戯言を無視してグラントリノは爆豪へと近づいて行く。地面に引き合わされて尚、未だに目を爛々と輝かせ睨み付けてくる爆豪の姿を見てグラントリノは笑った。
「爆発小僧……放課後、この場所に来い」
ただ一言。そう爆豪に言い残しグラントリノは自分が腹キックした生徒達の元へと飛び去っていく。そこに残ったのは、驚いた顔でグラントリノが飛び立つ姿を見る爆豪と
「取り敢えず……俺達も戻るか 」
グラントリノの飛び去った姿を見送る引合だけだった。その後のヒーロー基礎学はグラントリノの指導の下、生徒達が入り組んだ工場跡地で目的地に如何に素早く辿り着くかが行われ、最初の腹キックを除けばマトモな授業が行われた。
そして……時間は流れ帰りのHRの時間となる。担任である相澤が近い内に行われる雄英体育祭について話を行い、生徒達がそれを聞き様々な事を話すが爆豪の耳には届いていなかった。
「引合さん! 今日は是非私と戦闘訓練を行いませんか!? 前に教えられた事の続きを聞きたいのです! 」
「……何か言ったっけ俺? 」
本来なら聞くだけで虫酸の走る声だが、それすらも爆豪の耳には届いていない。ただ目を爛々と輝かせ、放課後を今か今かと待っているのだ。
「んじゃ……体育祭までに全員死ぬ気で頑張れよ」
相澤のやる気のない激励と共にHRが終わる、その瞬間に爆豪はカバンを持ち教室を後にする。あらゆる全てを無視して彼は目的地へと足を進めた。
「来たか。爆発小僧」
「テメェが呼んだんだろうが」
体育館γで既に待っていたグラントリノの言葉を聞き爆豪は修羅の様な形相で笑った。
はい。という訳で強化フラグその2です
カッチャン! 倒れても倒れても立ち上がるハングリーさがグラントリノの目に入りました。
まだ強化フラグ入っているキャラと強化済みキャラはいますが取り敢えず現状
カッチャン!
女神ィ!
轟ィ!
〇〇!
〇〇!
以上だ!
えっ引合? 彼は十分ヤベー奴なので()