友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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緑谷出久の恐怖 理解不能な引合石

 

海岸公園。波の音だけが響き、人の声がしない夕方の海辺に1人の少年がいた。緑色の髪を潮風で揺らし体育座りでただ海を見詰めている姿は、青少年の青春の1ページを彷彿とさせるだろう。実際、彼が背負っている問題は青春の1ページ云々の話ではないのだが。

 

「どうすれば良いんだろう……? 」

 

少年は目尻に涙を溜めながら己の現状をただ嘆く。昨日の昼頃、臨時休校で家にいた少年の元に担任の教師が来た。

USJでの一件、そこで命を掛けて助けてくれた恩師が自分を心配して来てくれたのだと母に説明され喜んだ少年だが、その恩師から放たれた言葉は少年を根底を揺さぶった。

 

『緑谷、お前はヒーローを目指さない方が良い』

 

なんの冗談かと思った。しかし担任の目は何一つ笑っておらず、包帯の奥で決意に満ち溢れたその目を見て少年は怯んだ。

 

『USJでの一件……お前の持つ個性はお前を苛烈な運命に導いていくのは間違いない。今回が俺がいたから良かったが、もしかするとお前一人でいる時に奴は現れるかもしれない』

 

奴、その言葉を聞いて思い出すのは1人の女性の姿。見目麗しい人だったが、その中身は邪悪を煮詰めた鬼畜外道、少年の目の前で人を殺し、更に教師をいたぶり続けた姿は今も脳裏に刻まれている。

思い出すだけで震えるあの姿を思い出す少年の姿を見て、担任は溜息を吐きながら言葉を続けた。

 

『……オールマイトさんはお前を選んだ、ワンフォーオールの後継者は本来はオールマイトさん自身が選ぶべきだ。何一つ間違えちゃいない。だが、そんな事を言う状況じゃなくなったんだ』

 

ワンフォーオール。その言葉が担任の口から放たれ、緑谷は目を丸くする。何故、それを貴方が知っているのかと困惑していると担任は肩を竦めながら話を続けた。

 

『あぁ……俺はちょっとした伝手でオールマイトさんの事は全部知らされてるんだ。だからその点については安心しろ、だからワンフォーオールが他者へと継承出来る個性って事も理解している』

 

まぁ……そんな事は今はどうでも良いな。と担任は再び言葉を続ける。

 

『……再びあの巨悪がお前の目の前に立ち塞がった時、すまないが……その時お前があの巨悪に立ち向かえるとは俺には思えない……ワンフォーオールをお前が持ち続ける限り、あの巨悪がお前の前に現れるのは火を見るよりも明らかだ』

 

だから……その『個性』を捨ててくれ。と、担任は少年へと言い切る。そして、今日だけじゃ結論はつけられないだろう。暫くしたらまた聞く、その時に良い言葉を聞かせて欲しい。と言い残し担任は少年の家から去った。

 

その1日。担任から言われた言葉が悶々と頭の中で駆け巡り、少年はただ嗚咽を漏らした。憧れのヒーローから頂いた力、君はヒーローになれると言われ、辿り着いた雄英高校。これから僕のヒーローの道が始まった、そう思った矢先にこれである。憧れの人から頂いた力、それを持っているとあの巨悪が自分の前に現れる。その事実に少年はただ震えるしかなかった。

 

次の日、少年は学校を休んだ。学校に行ったら担任に会ってしまう。それが今の少年には恐ろしくて、足が学校に向かうのを拒否したのだ。

母親に体調が悪いと嘘をつき少年はベットの中で震えていた。己の中にある個性。憧れの人から授かったそれを手放したくないという思いと、あの巨悪に立ち向かう事への恐怖。それが頭の中でグルグルと駆け巡っていたのだ。

 

そんな少年の元へとまた客人が訪れる。それは彼の憧れの人にて師匠、No.1ヒーローオールマイト。その人であった。

 

己の師匠が心配して自分に逢いに来てくれた。その事実に少年は涙を流し、己の中にある不安の全てを曝け出した。きっとオールマイトなら何とかしてくれる、そう思って。

 

『そうか……緑谷少年。だけど大丈夫だ! あの巨悪……オールフォーワンは私が必ず倒す! だから安心するんだ! 』

 

何時ものようにそう笑うオールマイト。本来ならばそれで少年は安心してこの話は終わるのだ。だが、今回は状況が違う。

 

思い出されるのはオールマイトがあの女性と対峙した瞬間。

 

『それが君の弱点だ』

 

『第2ラウンドだ。無様を晒せオールマイト』

 

その言葉と共に、オールマイトはあの存在に軽くあしらわれていた。急に動きを止め、そこを突かれて彼は別の場所へと飛ばされてしまったのだ。その姿を眼前で見ていた少年は、それ故に……その言葉に安心感を覚えられなかった。

 

『だいじょーぶっ! 私がいる! 緑谷少年!君が心配する事はなにもない! 』

 

笑顔でそう言い切るオールマイトの言葉に安心感を覚えきれずに、オールマイトは少年の元から去り、他に休んでいた生徒の元へと向かった。

 

『その個性をもっている限り……お前はあの巨悪と立ち向かう事となる』

 

担任の言葉は師匠の言葉を聞いて尚消え去ることは無く、肥大化して少年の心に重くのしかかった。

 

『だいじょーぶっ! 私がいる! 緑谷少年! 君が心配する事はなにもない! 』

 

本当ならば安心感を覚える言葉の筈なのに。安心出来ない、この力を持っていたら自分はあの巨悪と戦わなくてはならないのか、それを考えるだけで少年の身体は恐怖で震えた。

 

身体をふらつかせながらベッドの中に潜り込む、眠ってしまえば現実から逃れられる。そう思い目を閉じるも、脳内では先程の事が駆け巡り眠る事すら出来ない。ただベッドの中で震えていると時間は経ち、夕方になった。

 

夕暮れに包まれた街を窓から眺め少年は気分を変える為に家を出る。家に篭っているからこんな暗い気持ちになるのだと結論を付けて宛もなく街へと足を進めた。何気なく少年は足を進め、とある場所へと辿り着く。そこは彼と師匠の思い出が詰まった場所、海岸公園。少年は砂場で座り込むと、そのまま俯いて涙を流す。

 

思い出の場所に辿り着いたのは、限界に近い自分の心が求めていた場所だったのだろう。此処には師匠との思い出が詰まっている、だからこそ少年はここに来たのだ。

だが、ここには彼の師匠は来ていない。場所を変えても襲ってくる恐怖に身を震わせ少年は涙を流す。誰でも良いから自分を救って欲しい、そんな事を思いながら嗚咽を漏らした。

 

「どうすれば良いんだろう……?」

 

いっそ担任の言う通りに力を捨ててしまえば良いのか? あの恐ろしい存在と立ち向かうくらいならいっそ……と、そんな思いが彼の中で産まれたその瞬間、彼が眺めていた海から何かが現れた。

 

「さーっむ! やっぱ夜の素潜りは辛いわ! 獲物も大して取れなかったし! やってらん……ん? 」

 

それは海パン一丁でシュノーケルを被り魚の刺さった銛を携えている自分と同じくらい年齢であろう存在。

というか少年はその存在を知っていた。

 

「引合……くん? 」

 

「……こんな夜中に何やってんだお前? というか緑谷、お前今日休んでたよな? もう大丈夫なのか? 」

 

凡そ、その姿のお前にだけは言われたくはない言葉を言い放つ引合の姿に驚いた少年、緑谷出久は困惑しながらも大丈夫だと頷く。

夜の海パン男、引合の手元にある銛先に突き刺さっている魚がピチピチと足掻くように蠢く。

 

彼の感じていた恐怖心とかそんな感じの何かが、意味不明な展開で吹き飛ばされた気がした。

 




強化フラグその3
緑谷少年! スマッシュ!ですよ緑谷さん!
心が限界の状況で引合君と出会う奇跡(強制)
彼がどうなってしまうのかは次回に続く

え?どうせ引合がなんとかするんでしょ?ハイハイ引合引合だって……?

そんな天丼をオティンティンが繰り返すとでも?

NEXTオティンティンヒーント!

わ た し が き た ?
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