友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
それが嫌な方は云々
俺は凄かった、人よりも才能があったし『個性』もプロヒーローに向いている派手で強力な個性だった。常に誰かから褒められて、賞賛された。だから俺は雄英に入り、産まれて初めて心の底から見上げるという行為を行った。今までならば俺が1番凄い、それで終わっていたのだが此処には本能で分かってしまう程、俺よりも強い奴が蠢いていた。
ナメプ野郎の金魚の糞みてぇな紅白野郎にうるせぇ暴風野郎、そしてナメプ野郎……ポニーテールは個性が強いだけ、だが……あの3人は俺よりも確実に強い。
特にナメプ野郎、コイツは俺でも理解不能な領域にいた。初めの戦闘訓練、そこで見せた『強個性』を持つ者としての圧倒的な戦い方。それは良い、だが、問題は次。USJでのあの1件だ。
USJ内に浮かび上がった巨大な球体。人間が塵程度の大きさにしか見えないコンクリートの塊、あんなのを作り上げる個性とは一体何なんだ? なまじ俺は頭も良いし耳も良い、だからこそあれを作り上げた存在が誰か理解してしまった。
ナメプ野郎、アイツの全力に俺の全力は歯牙にすら届かない、腹立たしいが糞女の言う通りだった。
『理解すると良い『 井の中の蛙。大海を知らず』君は特別な存在ではなく、何処にでもいる唯のちっぽけな少年だということを』
あんな超常の力を見せ付けられたら嫌でも理解させられる。俺がただの餓鬼で雑魚共相手にイキってた、唯の雑魚だって事に。絶望よりも先に怒りを感じた……ナメプ野郎にではなく、今まで慢心して鍛えなかった自分自身にだ。俺の隣にデクじゃなくてアイツがいたなら、俺はきっと己を鍛え続けアイツの足元に届く程にはなっていた筈だ。だが、俺の隣にはデクがいた。何も出来ない木偶の坊、個性もなけりゃ運動も出来ない勉強だけのクソナード。俺はデクを見下して、ただそれだけに満足して己を鍛えなかった。
殺したくなる。過去の俺を、自分こそが最強にオールマイトを超える存在だと思って疑わなかった無知な俺を、自分が特別でもないただの餓鬼だと気付かなかった俺自身を。
近接戦ですら軽くあしらわれた。俺は個性の特性故に、空中戦が苦手ではない。爆破を繰り替えせば戦闘機のように縦横無尽に動き回れる。だが、アイツの個性は空中戦に向いている訳では無い。なのに負けた、空中戦でも近接戦でも負けた。圧倒的な出力を持った個性でゴリ押される訳ではなく、必要最小限の力で俺は抑え込まれた。
個性で負けているだけじゃない。地力の差すら追い付けていない、怒りでどうにかなりそうだった。俺は今まで何をしていたんだ? 俺は一体何様のつもりだった? プロヒーロー向きの強個性? 人よりも才能がある? そんなものコイツの持つ物と比べたら鼻糞以下の物じゃねぇか。
圧倒的な力と才、そして隣には俺を凌ぐ個性を持った奴が隣にいる。漫画ならライバル同士でお互いを延々と高め合うんだろうな、胸糞悪ィ。
才、力、そして隣に居る者。存在そのものが俺の完全上位互換。俺は初めて心の底から人を見上げ、そして心の底から泣いた。
だが……それで結構。俺の完全上位互換、この広い世界だ。いても可笑しくねぇ、寧ろ今までいなかったのが可笑しかったんだ。俺の完全上位互換が現れた、だからどうした?
それでも俺が俺である事には変わらない。俺はオールマイトを、世界最強の存在を超える男だ。そんな俺が目の前の壁を超えれずに諦めて泣くなんて行為をする訳がない。
壁なら壊す。何でもぶっ壊して進んできた俺がこんな場所で立ち止まる訳がねぇ、だから超える。眼前でヘラヘラと笑う理不尽の化身を。
「どうした爆豪。黙り腐って……うんこか? 」
「黙ってろナメプ野郎」
ヘラヘラと笑い下らねぇ事をほざくナメプ野郎の言葉を切り捨て、俺はデクを見た。視線を逸らし顔を真っ青にしながら身体を震わすコイツが……ムカつくし、ぶっ殺したくなるが、俺の原点だ。
俺を初めて見下ろした存在。しかも俺よりも劣っている癖にだ、俺よりも優れてないコイツが俺を見下ろす。それに恐怖した俺はコイツを拒絶し、そして俺の中の自尊心は歪み始めた。それからの俺は、コイツからの賞賛に苛立ちを感じながらもコイツの羨望を受けないと苛立つようになった。
無個性で運動も出来ない木偶の坊は俺の背中を追い続けた、俺はそれを上から踏み潰し優越感に浸っていた。俺より下の存在を見下す感覚に酔っていたんだ。
過去の俺を爆殺してやりたいレベルで腹が立つが、それは良い。
雄英に入ってからの木偶の坊は、こんな僅かな期間で俺の背中に追い縋る程になっていた。発現して無かった個性が発現して、そこからのクラス委員長、今までのコイツではありえなかった。そしてUSJ、コイツはあの糞女にボコられながらも俺に逃げろと指図してきた。
俺よりも弱い筈なのにまた俺の身を案じやがったのだ、ヘドロ事件の時の様に。もう駄目だ、このままの成長速度ではコイツは俺を超える。そして俺は完全にコイツに見下される。
そう思っていた筈なのだが……
「なんだテメェ……そのザマは」
「ひっ……ごっ……ごめん」
「──なに謝ってんだって言ってんだよクソナード! テメェクソみてぇな顔しやがって! 昔みてぇに逆戻りしてんじゃねぇよ!ぶっ殺すぞ! 」
今日あったコイツは雄英に入ってからの自分を忘れたみてぇに震え、呆れるほどの雑魚に逆戻りしちまってた。初めてのヒーロー基礎学での戦闘で勝って俺を超えるとほざいた顔は真っ青に染まり、俺の顔を見るだけで震えていた。
思わず顔を見た時は呆けてしまった。どうやら俺の原点は無様にもUSJの一件で堪えてしまったらしい。俺を超える気概も全部アレで消え失せ、ただのクソナードに逆戻りだ。
今までの俺ならば漸く立場を理解したかと嘲るのだろうが、 今の俺から見れば腹が立つだけだ。
「俺を超えるんじゃねぇのかよ……? 勝って越えたいってほざいてたのは嘘だったのか? テメェは何処まで行ってもクソナードなんか? 」
「だっ……だって……」
しどろもどろになる木偶の坊の面に限界を感じた俺は胸倉を掴みあげ、感情のままに吠え立てる。
「だっても糞もあるか! テメェが俺の原点ならそれらしく行動しやがれ! テメェがそのザマだったから俺までクソ雑魚で満足しちまったんだろうが! 」
俺の言葉が理解不能だったのか、困惑する木偶の坊の胸倉を離す。テメェがこのナメプ野郎みたいな奴だったら、俺はこんなクソ雑魚じゃなかった。テメェさえ強けりゃ俺だって慢心しなかったし、糞みたいに雑魚に対してイキリ続けるなんて無様を晒さなかった。
怯えた目で俺を見る木偶の坊の視線が心底わずらしくなり。俺は視線を切り、ナメプ野郎を睨みつける。
ナメプ野郎は相も変わらず笑っているだけだ。
「──おい。ナメプ野郎」
「なんだ爆豪? えらい殺意マシマシの目で睨みつけてくるが、もしかしてヤル気か? ん? 」
その言葉はまさしく強者故の余裕から出る言葉。自分が目の前の存在よりも圧倒的に上だと理解しているからこそ出る言葉。
「そうだ。俺とこの場で、今すぐ戦え」
ナメプ野郎の目の色が変わる。俺が本気だと、回避は出来ないと理解したのだろう。
「本気で殺れ。じゃねぇとぶっ殺す」
「よかろう。手加減してやるから本気で掛かってこい」
はなからお前如きに本気を出すまでもないと言わんばかりの態度に殺意が湧く、だがその通りだ。今の俺じゃコイツに届かねぇ。だから……確かめさせもらう。
俺の全力で何処まで届くか、コイツの足元にどれだけ追い付けるか。
夜の海岸公園に2人の少年が対峙する。1人は力を追い求め勝利を追求する求道者、もう1人は理不尽の化身。運命の女神が何方に傾いているかなど火を見るよりも明らかだ。
だが、何をしても越えたい存在が目の前にいるのならば、立ち向かうのが求道者としての性そのものである。
そして……それを見る少年の胸に何が灯るのは、未だ誰にもわからない。
⚠引合は海パンです