友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
夜の海岸公園は静寂に包まれている。波音と潮風が静かに静寂の中に溶け、対面する2人の少年は何一つ語る事なくただ互いを睨み付けていた。
潮風が両者の間を強く吹き抜ける、それを合図に1人は動き出した。両腕から爆破を放ち爆音を上げながら眼前の存在へと特攻を仕掛ける。先手必勝を体現する、その愚直ながらも荒々しい一手は当然の如く躱される。
しかし、躱すのは織り込み済みだったのか、その方向へと向かって方に腕を向けて爆破を放つ。放たれた爆風は浜を抉り小さなクレーターを作り出す。だが、手応えはない。その証拠に別方向から自分を賞賛するような声が響いた。
会心の一撃を避けられたと言わんばかりに舌打ちをかます。だが……眼前の相手ならばこの程度出来て当然だと言わんばかりに眼光を爛々と光らせ笑う。
「──ちっ。糞が」
「やるじゃん爆豪、下手したら当たってたわ」
海パン一丁だから当たれば火傷決定だなと笑う眼前の少年、引合石を見ながら爆豪勝己は笑う。己が超えるべき壁の高さに喜び爆豪は、両手を暇にしながら引合へと悠然と近づいて行く。
ダラりと両腕を揺らしながら一歩一歩近付いてくる爆豪の姿を見た引合は、同じようにゆっくりと爆豪へと近づいて行く。10メートル、5メートル、3メートルとドンドンと距離を近づけながら互いに笑い合う。
「───ハッ 」
爆豪は笑う、その両腕を何度も紅く輝かせ最高の一撃を放つ為に。
「待ったなし……ハンデの一つや二つくれてやる。それに……こういう展開は俺好みだ」
引合は笑う。両腕を固く握り締め、片手を顔面の前に起く。もう片手の力を抜き何時でも降り抜ける体制を取った。
先に動いたのは引合だった、身体を低くして爆豪の元へと突撃を仕掛ける。爆豪は正面から来る引合の方へと片腕を向け爆破を放つ。爆音と共に放たれる一撃は海を砂浜を、海を穿ち、その一撃の凄まじさを証明した。
だが、爆豪は放った一撃からそのまま身体を反転させ残った片手を眼前へと向けた。その眼前には、引合が既に拳を振り上げる体制にまで整っている。ボクシングでいうアッパーの構え、脳天を揺らす一撃を放たんとしていた。
だが、それに爆豪の片腕は既に個性を放つ事が出来る。自分の一撃と相手のアッパー、どちらが速いかと言われれば間違いなく自分、それを確信し爆豪は爆破を放った。
バチバチと汗腺から溢れ出るニトロに似た液体が今にも最高の一撃を放たんとした瞬間、引合のアッパーが放たれる。その一撃が顎を狙っていたのならば爆豪の方が早く一撃を放てたのだろう。だが、引合の腕は顎を狙いに行かなかった。
「──腕ッ! 」
本能でその一撃を察したがもう遅い、身体は既に個性を放たんとしている。今にも最高の一撃を放たんとしていた片腕に衝撃が走る。下から打ち上げられた片腕は真上と上がり、そこで汗腺から溢れ出したニトロに似た液体は爆音と共に虚空へと衝撃を放った。
爆豪の身体が止まる。上空へと放った一撃、そのせいで出来てしまった隙、それを逃す引合ではない。
「ダァァッシャァァッ! 」
その掛け声と共に、放たれた回し蹴りが爆豪の横腹に衝撃を与える。蹴られたと理解した直後に感じる衝撃、そして激痛、腹の中がかき混ぜられる感覚に陥り嗚咽感が爆豪の脳裏を支配した。
ただの少年ならばここで嘔吐して終わりだっただろう。少なくともこの戦いを呆然と見ている緑谷出久という少年ならばそうなる。だが、爆豪は違った。
本能、野性的とも言える直感がここで蠢いていては死ぬと脳内で叫んだのだ。
個性を使いこの場を緊急離脱する、激痛に耐えながら見た爆豪の視界に映ったのは自分がいた場所に振り下ろされる足、つまりはカカト落とし。身体を振り子のように回し放たれた一撃は砂埃を生み出す。当たれば確実に意識はなかった、直感に従った己に安堵し、爆豪は眼前の存在を睨みつけた。
「おいおい。ここは横に飛んで蹴りの1発放つのがお約束だろ? 個性ばっかでバンバンバンバンデカいのぶちかますのも良いけどやっぱ砂浜で勝負と言えばコレだろコレ」
そう言いながら虚空に演舞を放ち、引合は笑う。引合の個性は『磁力』手で触れた物同士を対象に引き寄せるか引き離すかを選択する事が出来る力、この力故に触れられたら一撃で終わる。故に爆豪は触れられないように、爆破による一撃で相手の隙を付き、そこから会心の一撃を見舞い、終わらせる予定だった。
だが、今の引合の手は固く握られている。まるで個性を使うつもりなど毛頭ないと言わんばかりの構えだ。
今までの戦い方では埒があかない。個性を使ってデカい一撃を放とうが避けられてしまえばどうという事ではない。
ならば此方も同じ手を使えば良い、相手が個性を使わないならば好都合。格闘戦に乗り、そこから確実に当てられる爆破を放ってやれば良い。
汗で肌に引っ付く上着を適当に脱ぎ捨てる。これで服のせいで動き辛いなんて事は起きない、正々堂々真正面から殴り会える。
「なぁ……ワンハンドシェイクデスマッチって知ってるか? 俺あれ好きなんだよ。互いに譲れないと分かってるからこその片腕同士の殴り合い、確実に当たるし当てられる一撃、意地と意地のぶつかり合いって感じでなんか良いんだよなぁ」
「知るか死ね」
そう引合の言葉を切り捨てた爆豪だったが、アレなら確実に爆破をぶつけられるなと脳内で考えた自分のみみっちさに少し呆れ眼前の存在へと再び近づき始めた。
「宣言しよう。俺は右ストレートで決める」
「言ってろ」
右ストレート。その言葉に爆豪はピクリと反応するが、初手は殴り合えば確実に分かると考え、その言葉を無視した。
互いに距離を詰め、初手をまじ合わせる。自分は先程のお礼を含めて横腹目掛けての回し蹴り。そして引合が放った一撃は
「……テメェ。ホラふかしてんじゃねぇぞ」
「良いじゃねぇか。対話フェイズだ対話フェイズ」
互いに足を交錯させ睨み合う。初手は回し蹴りの同時打ち、ならば次は?
爆豪はそのまま足を振り上げ脳天へとカカト落としを放つ、そして引合は滑り込むようにカカト落としを避け爆豪の眼前へと近寄った。
第二ラウンドの始まりだ。
───拳をまじ合わせ蹴りを放ち合う。そんな2人の姿を見て緑谷出久はただ混乱しか出来なかった。元来喧嘩等と無縁な人間性であり、純朴で気弱な少年である彼は喧嘩などした事の無い少年だった。何処にでもいる心優しい少年、だからこそ彼には理解が出来ない。
何故、眼前の2人は何の理由もなく喜んで殴り合いをしているのかが。
「なんでなんだよ……引合君が殴り合う理由なんてないだろ? かっちゃんだってなんでいきなり……? 」
理解が出来ない、互いに傷を付けあって喜ぶ2人が。ざっくりと言えば彼等に殴り合う理由なんて殆どない、ただ爆豪が越えたい壁の高さが知りたくて、引合がそれを引き受けただけ。爆豪だって今じゃなくとも体育祭で存分に引合と戦える、それで本来は問題はないのだ。
引合だってこれを引き受ける必要は無い。無視して帰れば無駄に傷を作る事はなかった。ならば何故彼等は殴り合ってるのか?
「爆豪ォ! 腰が入ってねぇ拳だなぁ! アァン!? 」
「だぁぁってろ! 死ねぇ! 」
互いに拳を交じ合わせる。互いに頬を殴り抜き血を吐き出し、今度は頭突きを互いに放ち合う。
「───ックゥ! 結構な石頭なことで! 」
「テメェだって糞石頭じゃねぇか死ね! 」
また殴り合う、その度に傷を増やしていく。緑谷には彼等が同じ人間には見えなかった。
力だけで言うならば目の前の2人と緑谷を比べたら圧倒的に緑谷の方が強い。ワンフォーオールの超パワーをその身に宿す緑谷が本気で殴れば2人を瞬殺する事は可能だ。
だが、今の緑谷には2人と殴り合いをして勝てるイメージが全く湧かない。彼等に拳を当てられるイメージが全く湧かないのだ。
緑谷出久、彼が純朴ではなく。爆豪や引合のような人間性を持っていたならば彼等の行為を理解出来ただろう。そして彼等と殴り合っても勝てるイメージが沸いたであろう。
その理由を簡単に言うならば彼等の世界に緑谷出久が入れていない、ただそれだけだ。殴り合いに恐怖を抱かず、己の意地を突き通す決意、そして傷を恐れない覚悟。それらが彼等を突き動かしているのだ。
殴り合う事で脳内のアドレナリンが大量放出されているのも殴り合える理由の一つだろう、だが……それよりも意地、決意、覚悟。この3つがあるから彼等は殴り合える。
「──ッハァッ! 死ねやぁ! 」
「死ね死ね死ね死ねと……それしか言えんのかこの猿ゥ ! オラァ! 」
互いに一撃を食らわせば、やり返しと言わんばかりに一撃を食らわせる。
「やめなよ!二人とも! もう辞めないと怪我が酷くなる! 」
我慢が出来ない、緑谷はあらん限りの声で叫んだ。何が悲しくて幼馴染と新しく出来た友達の殴り合いを見なければならないのか、しかもなんの理由もない殴り合い、傷が出来るだけではないか。
そんな緑谷の声が届いたのか2人が止まる。声が届いた、そう安心した緑谷に溢れんばかりの殺意が込められた罵声が放たれる。
「だぁぁってろクソデク! テメェが俺に指図すんじゃねぇ!……今の俺が何処まで届くのか、それの邪魔をするんじゃねぇ! ぶっっ殺すぞ! 」
「ひっ……」
純然たる怒り、殴り合いを止められた事で爆豪は怒り狂う。その罵声に怯える緑谷を一睨みすると爆豪はまた引合の方を向いた。
「なぁ……緑谷。今さぁ……すっごい良い所なんだよ。用事なら後にしてくれ」
口元から血を流しながら笑う引合の姿を見て緑谷は思考が止まる。理解が出来ない、何故?
立ち竦す緑谷から視線を切ると引合は笑いながら爆豪へと言葉を向ける。
「気持ちは分かるが言い過ぎだろ。俺達の事を思って言ってくれたんだからな?」
「知るか、今のクソデクのヒーローごっこに付き合う暇はねぇんだよ。俺はお前を超えて糞女を超える、そしてオールマイトを超える」
「……良く分からんが俺は踏み台ってか? 上等、踏み台のデカさを思い知らせたる」
吐き捨てるように言い捨てた爆豪の言葉が緑谷の脳裏をガツンと殴りつけた。ヒーローごっこ、自分の今までの行いが子ども遊びのように言われたのだ。
ヒーローごっこ。その言葉が緑谷の脳裏をグルグルと駆け巡り、眼前の光景が見えなくなる。自分の行いがごっこ遊びだった? 憧れの存在から指導を受け、ついに雄英高校に入れたのに、それが全てごっこ遊び?
緑谷の目から涙が溢れ出す、己の全てを全否定され悲しくて涙が止まらなくなったのだ。だが、それを慰める者はいない。
「死ねやぁ! 」
「……調子こいてんじゃねぇぞゴラァ! 」
彼等は彼等の世界の中に入っている。緑谷が思考の渦に取り込まれている中、ついに決着が着いた。
爆豪の右ストレートが爆豪自身の顎を貫いたのだ。恐らく引合の個性による一撃、今まで個性を使わないと思っていた爆豪にとっては理解不能の一撃、爆豪は目を見開き引合を睨み付けるとそのまま意識を落とした。
「ちゃーんと右ストレートって言ったんだけどなぁ……なんだか良く分からんが良し! 勝ったなガハハ! 」
そう笑い倒れた爆豪の隣に座り込んだ引合を見て緑谷は急いで駆け寄っていく。その姿を見て引合は笑いながら手を振る。
「すまん緑谷! このバカ頼んだ! 俺はそろそろ帰る! 」
その言葉を最後に引合は文字通り飛び去るように宙を舞い闇の中へと消え去る。海パン一丁、しかも片手に銛を持って闇の中に消える姿は変態のそれであったが緑谷にはそんな事を考える余裕はなかった。
傷まみれで倒れている幼馴染の為に急いで自動販売機から水を買い、幼馴染に元に戻ると凄まじいタフネスで起き上がり口から血を吐く姿がそこにあった。
「───ちっ! 糞がッ! 」
気に食わない。そう言わんばかりに砂浜を殴り付ける幼馴染、その姿をみて恐る恐る緑谷は話し掛けた。
「……かっ……かっちゃん。あの……」
「……クソデク。俺は先に行く、テメェがそこで終わるも終わらないもテメェの勝手だ」
突然の言葉に困惑する緑谷を無視して爆豪は言葉を続ける。
「俺はオールマイトを超える。この思いはずっと変わらねぇ」
「……頑張れって感じのデクだったか? 今のテメェなんぞ唯の木偶の坊だ。昔と変わらず無能で無個性なクソデクだ」
「精々そこで死んどけ」
そう吐き捨て、爆豪は緑谷を無視して上着を取り家路へと足を進める。
1人取り残された緑谷は拳を握り締め涙を流す。幼馴染から言われたヒーローごっこ、担任から言われた言葉、オールマイトの言葉。その全てがグルグルと脳の駆け巡る。
「僕は……僕は……」
──君はヒーローになれる
「僕は……ヒーローになれるんですよね? オールマイト? 」
呟いた疑問は夜風に吹かれて闇夜の中へと消え去った。
体育祭までが長い! ぶっちゃけ高校編のメインだから仕方ないんだけど長い! 長いんだよ!
あああああああ!緑谷お前さァァァッ! もっとJUMP主人公しろよぉぉぉぉっ! 恐怖の一つや二つタフネスで克服しろよぉぉぉぉっ!頑張れって感じじゃなくてどんな時でも諦めないって感じのデクになれよぉぉぉぉっ!
それが忍道だろぉぉぉっ!?ぜってーに諦めねぇど根性が必要だってナ○トだって言ってるじゃん!
ナンセンス界に旋風吹かせる前にヒロアカ世界で旋風吹かしてくれよぉぉぉっ!
ぶっちゃけ爆豪のほうが主人公し始めたよ!? 駄目でしょ! もっと頑張ろう!? ね!ね!ね!?
プラスウルトラァァァァァァッ! (発狂)
……失礼。錯乱しました。
という訳で体育祭まではもう少し掛かります。これも全部引合って奴が悪いんだ。まじで糞だな引合オティンティンの心を潰す天才か?
この二次創作では既にご理解頂けているとは思いますが遊泳体育祭はただの体育祭ではごさいません。色々と伏線をポイポイする必要があるくっっっっそ面倒臭いイベントなのです()
後は緑谷君だけなんですが彼がねぇ……流石ナンセンス界で右の出る者はいない男です。しぶとい(半ギレ)
という訳で以上! 閉廷閉廷!