友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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緑谷出久 1/9 ②

「緑谷。体育館Δに来い」

 

放課後、相澤消太が緑谷出久へと話し掛ける。一体何の話なのか、それを理解している緑谷は顔を真っ青にしてその言葉に従った。まず間違いなく彼の持つ力、平和の象徴オールマイトから授かった個性『ワンフォーオール』の話だ。

 

未だに結論が出せずにいる緑谷は、死刑宣告を受けた囚人のように重い足取りで体育館Δへと向かう。その中で彼の友人である麗日お茶子、飯田天哉が心配した様子で彼の事を見ていたが、そんな事に気を使う余裕がない彼は幽鬼の如くフラフラと身体を揺らしながら辿り着いた。

 

体育館Δ。雄英高校の体育館とは普通校の体育館とは違い、事件や戦闘での様々な場面を想定した造りをしている。ここは岩盤をメインとした構成、家屋や工場地帯の様に細々とした建築物が存在しない。故に、体育館Δの中央で立ち、彼を見詰める相澤の存在を遠くから認識する事が出来た。

 

「……覚悟は決まったか? 」

 

それは今の緑谷にとっては死刑宣告に等しく、これに頷けば彼の夢へと道は閉じさる事となる。だが、彼にはもう自分がどうすれば良いのか分からない。無言で頷き指に小さな切り傷を作る。そしてその手を相澤へと向けようとした、その瞬間。

 

「 SMASH! 」

 

彼等の間に、暴風を身に纏い1人の男が姿を現す。男の巨躯が緑谷を相澤から庇うように前に立ち、眼前にいるであろう相澤へと底冷えするように低い声で話し掛けた。

 

「……これは一体、どういう事かな? 」

 

その底冷えするする声を聞きながらも相澤は何時の様に飄々とした態度で言葉を返す。

 

「どうもこうもありませんよ、俺は俺が正しいと思っている事をしているだけです」

 

「……私は彼こそが私の後継者に相応しいと思っている。そう伝えた筈だが? 」

 

最早、脅迫とも呼べる程の圧倒的な威圧感。分かっているのだろう?ならばどうするべきだ?と言わんばかりの言葉に相澤は嘲るように鼻で笑った。

 

「……聞きましたよ。それじゃあもう一度言いましょうかオールマイトさん? 」

 

オールマイト。そう呼ばれた男の肩がピクリと動く、相澤は鋭い視線でそれを見た後。断じて引かぬ、そう言わんばかりに言葉を返した。

 

「貴方の戦いに子どもを巻き込むなと言っているんです。緑谷はまだヒーローではない、そして彼を育てる時間はない。何度言えば分かるんですか? 」

 

両者の間の空気が恐ろしい速度で冷え込んでいく、両者何も語る気は既にない。故に、彼等は臨戦体制を取る。緊張が互いを支配する。

 

両者の譲れない物がぶつかり合う。古代から意地を突き通す為に行う行為、ここまでくれば緑谷も現状を理解する。自分の師と担任が争おうとしていると。

止めなくては。そう思い声を出そうとするも口から声が出ない、パクパクと口が閉口するだけだ、目から涙が溢れ出す。何故自分は泣いているのか、理解が出来ずにいると、背中越しに師匠の声が響く。

 

「大丈夫だ緑谷少年。私が来た」

 

その言葉と同時にオールマイトは相澤へと駆け出していく。大人同士の、意地を突き通す為の戦いが今、始まった。

 

先手は相澤の捕縛布だった。オールマイトの腕を絡め取るように巻き付けた捕縛布、そして相澤は全身を使いオールマイトを地面に叩き付けんと布を操る。

だが、相澤の力如きでは自然現象に等しい圧倒的なパワーを持ったオールマイトを止められない。逆に布を持ち、布を相澤を宙へと放り投げた。

 

「Carolina……」

 

そして宙を舞う相澤の眼前へと飛び立ち、その剛腕を放たんと、振りかぶった。当たれば間違いなく意識を失う事は間違いない、プロヒーローであろうがヴィランであろうが、この状態になれば殆どの存在が諦めて神に祈るか現実から逃避するだろう。

だが……相澤は違う。オールマイトが拳を振りかぶる瞬間、彼は己の個性を発動した『抹消』視界にいる者の個性を一時的に使用不可能にする力。それを発動した。

全てを粉砕する神の拳の力が一時的に失われる。筋骨隆々だったオールマイトの身体が一瞬で萎み、ミイラのような形相へと姿を変えた。そして相澤は捕縛布を放ちオールマイトの身体に巻き付けていく。

このミイラこそが平和の象徴、オールマイトの真実の姿。過去の戦いで先程の形態、所謂マッスルフォームを維持し続ける事が出来なくなったオールマイトが、ワンフォーオールによって姿を変えていた。

ならばワンフォーオールを使えなくなってしまえばどうなるのか、答えがこれだ。

 

巻き付けた捕縛布を自分の手元へと手繰り寄せ鋭い蹴りを放った。オールマイトの腹に鈍痛が行き渡り、その衝撃で血を吐く。そのまま相澤は地面に着地しオールマイトを自分の方へと寄せて鋭いボディーブローを放った。地面をバウンドしていく眼前の存在へと視線を切らず相澤は言葉を発する。

 

「俺の個性は『抹消』正面から相対するなら基本的に負けません」

 

自分の個性を説明しながらも。視線は決して外さず、血を吐きながら睨み付けてくるオールマイトを見て相澤は言葉を続けた。

 

「……舐めて掛かりましたか? 貴方が本気なら俺は今頃そこら辺で血を吐いて倒れてますよ? 」

 

「……舐めて掛かったつもりは毛頭ないんだけどね……ゴホッゴホッ」

 

血を吐きながら言葉を発するオールマイト、そしてそれを見て相澤は言葉を返す。

 

「俺ではあの女……オールフォーワンに手も足も出なかった。貴方が幾ら倒すと言ってもこの状況ではやはり信じられない……だけど、その力があれば……もしかしたら俺でも勝てるかも……いや俺の個性とその力があれば勝てるかも知れない」

 

ワンフォーオールは俺が貰い受けます。そして俺がオールフォーワンを倒してみせます。

 

そして。その言葉はオールマイトだけではなく、その後ろにいる緑谷へと話し掛けているようであり。言外に伝わった言葉の意味に緑谷の心臓は、掴まれたようにドクンと大きく動いた。

 

「奴との決着は私が付ける! 君に背負わせるつもりはない! 」

 

相澤の瞼が閉じられる。ドライアイのせいで目が極度に乾燥する相澤にとって個性発動はある種の拷問に等しい、彼の個性は強力だが、1度視線を外すとその効果を発揮する事はなくなる。

 

マッスルフォームに戻り今度は相澤の視界に入らないように死角へと高速移動したオールマイトは再び拳を放たんとする。

だが、死角に入ったオールマイトに再度捕縛布が放たれる。視界に入っていない状況からの一撃を読んでいたと言わんばかりのそれはオールマイトの身体に巻き付かんと襲い掛かる。

 

「SHIT! その嫌らしい戦い方! ほんと師匠達とそっくりだよ! 」

 

「『相手の隙の隙を付け』あの人達にそう言われ続けたので」

 

再度捕縛せんと襲い掛かった捕縛布から逃れんと横へとオールマイトは跳躍する。そして、相澤もその瞬間に身体を一回転させオールマイトを目視した。その瞬間に発動する個性、オールマイトの身が再び萎む。そして相澤はオールマイトの元まで駆け寄り、再びボディーブローを放った。とある戦いで内臓に大ダメージを負っているオールマイトにとって内臓への攻撃は余りにも辛い。

 

蹲り、あらん限りの血を吐きそうになるのを耐えオールマイトは相澤を評価する。

 

「……本当に嫌らしい戦い方だ。捕縛布で捕まえ、個性を抹消する。捕縛布で逆にその身を吹き飛ばされようとも抹消さえ発動すれば、後は常人を無力化するだけ。ならば死角をせめれば……捕縛布を放ち、それによって自分に都合の良い状況を作り出す」

 

「……一対多は面倒臭いので少々苦手ですが、奇襲と正面切っての一対一は俺の本懐です、もう1度言いますよオールマイトさん」

 

俺を倒したいなら本気で来てください。貴方が来るまではこれでも雄英最強だったんです、筋を通したいなら俺を倒してからにして下さい。

 

「……本気で強いよ相澤君。いやマジで、なんでトッププロにならないんだい? 君ならなれるだろう? 」

 

賞賛と疑問の混じったオールマイトの言葉に相澤はいつもの様に呆れたような、疲れたような声色で返事を返した。

 

「……俺の個性を考えてください、メディアの露出なんて事があれば俺の個性が公に出てしまう。そうなればヴィランが俺の対策をするかもしれないじゃないですか」

 

全くもって合理的ではない。そう言い張る相澤が再び瞼を閉じる、そしてその瞬間、オールマイトは地面を割る程の踏み込みと共に相澤の元へと近寄った。




こんな状況でなにやってんだコイツら……?
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