友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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緑谷出久1/9 ③

 

「SMAAAAAAASH!」

 

「バカの一つ覚えですかオールマイトさん! 砂煙で視界を遮ったとして、俺がそれに大して対応出来ないと思ってるんですか! 」

 

轟音が体育館で包まれる。体育館Δが砂埃と共に悲鳴を上げ、凄まじい轟音と共に崩壊を続けていく。環境すら歪める神に等しい一撃、そしてそれを無効化する超常の力。神の拳が岩をも砕き、捕縛布がその両腕に襲い掛かる。

神とは如何なるものか、正しくその剛腕から放たれる一撃はそれを体現していた。 オールマイト、平和の象徴、No.1ヒーロー、と様々な呼び名がある者に宿っていた力『ワンフォーオール』災害現象すらその身1つで起こせる究極の力を放てる個性。

 

オールマイト、彼をこの場に於いてはこう名乗るのが正しいのかもしれない。

 

『ワンフォーオールの後継者』

 

そのワンフォーオールの力を無効化する力、それこそ相澤消太が持つ個性『抹消』この世の殆どの超常の力……個性を消し去る無情の力であり、この個性社会に於いてその力は何よりも強い。

 

神の一撃すら放てる個性と個性に対して絶対的な力を持つ個性。まるで物語のライバルと主人公が持つ力だ。

 

まぁ……そんな彼等に問題点を上げるとすれば。

 

まず第一に、ここが体育館Δであるという事。ここは生徒達が自分達の成長の為に使う場所であり、決して彼等の殴り合いの為に使うべきではない。

そして第2に、オールマイト。彼は先日のUSJ襲撃の事件の際にUSJの1部分を崩壊させている。本来ならば自分からこのような行いは当然自粛するべきであり、相澤がこの行為をオールマイトに望んだとしても、それを止めるべきなのだ。

そして第三。ここが最重要であり、彼等が決して忘れてはならない事。彼等が現時点で全くもって出来ていない事だ。

 

崩壊していく体育館Δ、そこで呆然と彼等を見詰める少年。緑谷出久、ワンフォーオールを継ぐ者、平和の象徴の後継者、彼の事を置いてけぼりにして勝手に全てを決めようとしている所だ。

 

オールマイトは自分の後継者を第一に考えているように見えて考えていない。全ては己の意志を曲げない為に意地を通そうとしているだけ。

 

ならば相澤消太はどうだろうか? 彼も同じだ。生徒の為、子供を守る為、己がその盾になる。呆れるほどに正義感に溢れる言葉だ。だが、彼の本心はそんなものでは無い。彼もまたオールマイトと同じように己の意志を曲げない為に意地を通そうとしているだけだ。

 

そこに緑谷の意思はない、緑谷出久の言葉は彼等に届かない所か必要ないのだ。ならばこの体育館Δでの争いを一言で例えるならば。

 

どうしようもないほど自分の意思を曲げないが為に周りの環境破壊すら気にせず喧嘩している彼等は。

 

自然環境すら崩壊させる神の拳と、全ての超常の力を無効化する超常の力、そんな力を奮って喧嘩をする彼等は一体なんなのか。

 

「すまないが相澤君! 私は私の意志を通させて貰う! あの時、彼こそが私の後継者に相応しいと思ったあの時から!この意志を曲げるつもりはない! 」

 

砂埃が竜巻の様に舞い、神の如きの拳を振るい平和の象徴は猛る。そして、個性を消し去る男はその言葉を聞いて声高らかに吼え立てた。

 

「此方とてそのつもりです! 俺は俺の意志を曲げるつもりは一切ない! 貴方の力は俺が継ぐ!そしてオールフォーワンは俺が倒します!」

 

「……正直ウマが合わないとは思ってたけどほんっとに君とは分かり合える気がしないよ! 」

 

「奇遇ですね!俺もそうですよ! 」

 

力を持った唯の糞餓鬼共だ。

 

「何なんだよ……どういう事なんだよ。どうしてオールマイトと相澤先生が戦い始めるんだよ! 何一つ分からないよ!」

 

力を持つ他者の言葉を聞かず、強いだけの彼等は己の意地を突き通す為に戦う。張本人たる少年の心はどうすれば良いのか。

ドクン、心臓が鳴り響く。崩れていく体育館Δを見詰めている彼の身体に超常の力が行き渡り、限界だと言わんばかりに緑谷出久の身体は飛び出した。

ドクン、心臓が大きく動き出す。血が行き渡った身体は彼の感情に従い動き出す。何故自分に何も説明しないのか、何故、眼前の2人が勝手に納得して勝手に争っているのか、意味が分からない。分かりたくもない。

 

「……分からない!」

 

憧れたヒーローと自分を助けてくれたヒーローが何故戦い合わなければならないのか、それが分からない。

限界だった心が砕けていく音が聞こえた気がした。もう我慢出来ない、耐える事すら出来ない。

 

「分からないよ! 」

 

三度対峙した両者の間に小さな影が現れる、それに気付いた糞餓鬼共は慌てて戦闘行為を中止し後ろへと飛んだ。そして、彼等がいた場所に神の一撃が振るわれた。

 

「ああああああああぁぁぁッ! 」

 

絶叫と共に放たれた一撃は地面を砕き今まで一番の爆音を放ち砂煙を巻き上げた。困惑する両者の視線を感じながら張本人は叫んだ。

 

「説明して下さいよ! なんで2人が争うんですか! さっぱり分かりません! なんでなんですか!」

 

ボロボロと涙を流しながら絶叫する緑谷を見て相澤は茫然自失といった様子で手を降ろす。既に臨戦態勢など取れていない、違う、違うんだと口から呟くように漏れ出しているがそれは今の緑谷に届いていない。

 

「何でなんですか!相澤先生がこの力を持っていたら危ないって言ったんじゃないですか! いっぱい考えて考えて! それでも分からなくて!頭がグチャグチャになって!それでもう手放そうって思ったのに!なのになんで先生がオールマイトと戦うんですか!? ワンフォーオールを知ってるって事はオールマイトの味方なんですよね!? なのになんで!」

 

本心からの絶叫だった。現れた恐怖、そしてそれから自分を守ってくれた存在。その人の言葉なのだからきっと正しい、そう思う自分とオールマイトに託された力を手放したくないと願う自分。その両方が入り交じり、昨日の幼なじみの言葉。

 

『ヒーローごっこ』

 

その言葉で更に思考の迷宮へと堕ちて行った緑谷にとってこの選択しかなかった。自分が手放せばあの恐怖と相対する事はない、しかし……手放せば自分がやってきた事は、オールマイトと共に過ごした時間は一体何だったのか。考えれば考えるほど迷宮の奥へ奥へと入り込んで抜け出す事が出来ない。限界だった彼にとってあれしか答えがなかった。

 

「緑谷……俺は……」

 

「いっそ事情なんて説明せずにこの力を奪って欲しかった! 聞きたくなかった! 知りたくなかった! 」

 

涙を流し、呆然と呟く相澤を睨み付けた後。緑谷はオールマイトを睨み付ける、既に戦闘態勢を解きミイラのような形相へと戻っていたオールマイトへと心の奥底に封じ込めていた思いを放った。

 

「助けて欲しかった! 貴方に導いて欲しかった! だけど貴方はいつもの様に『もう大丈夫!』って! 全然大丈夫じゃなかったじゃないですか! 貴方は僕の憧れで……どんなヴィランにも負けない最高の……最高の……」

 

その言葉を最後に緑谷は泣き崩れた、ただ涙を流し嗚咽を漏らし続ける。その姿に近付きながら言葉を返そうとするオールマイト。

 

「緑谷少年……私は、君こそが……あの時、どんなヒーローですら前に出られなかったあの時に、一人勇気をもって飛び出せた君だからこそ……私の……」

 

後一歩で緑谷に触れる。その瞬間、その手が払い退けられた。

 

「お前は本っ当にヒーローしか出来ねぇな俊典ィ! 」

 

跳ね除けられた手、それを行った存在を視認しオールマイトはたじろぐ。それは己の師匠グラントリノ、その顔は阿修羅の如く怒り狂っているが自分の師匠を間違える事は無い。

何故ここまで激怒しているのか、修行時代ですから見せた事の無い修羅の形相にオールマイトはたじろいだ。

 

たじろぐオールマイトから視線を切り、グラントリノは自身の背中にしがみついている存在へと話し掛けた。

 

「根津よ。そろそろ退いてくれ」

 

「全く君は……速いけど乗り心地が最悪だね? 殆どおんぶされてる身でいうのもなんだけどもうちょっと優しくはいけなかったのかな? 」

 

「そりゃあ……お前を背負うなんて一生しねぇと思ってたからな」

 

そう言うと、グラントリノの背中から1匹の鼠が地面に降り立つ。その鼠は緑谷に近寄りながら相澤へと声を掛けた。

 

「……相澤先生は今日はもう帰った方が良いね? 少し頭を冷やした方が良い」

 

「はい……申し訳ありませんが。後の事は……」

 

そう言い残し、相澤は緑谷の方を何度か見ると、揺れるように歩きながらこの場を後にした。

そして、グラントリノがオールマイトを引き摺りこの場から後にしていく。その中でオールマイトの足が何度も擦れていくがそれを気にする余裕がないのか、オールマイトも茫然自失といった様子で緑谷を見詰めていた。

 

そしてこの場に根津と緑谷しかいなくなると、根津は緑谷へと頭を下げた。

 

「すまない。彼等が君の意志を無視してこのような事を行うなんて……許してくれなんて言えない。だけど……その力を持つのは君だ。その力をどうするのかは君が決めて欲しい……彼等が、仲間同士で争ってしまう程の価値と意義がその力にはあるのさ」

 

「君の意志を全て僕達、雄英高校は尊重する。君が選んだ道を突き進んで欲しい」

 

こんな事しか言えない僕を恨んで欲しい。そう言い残しこの場を後にしようとした根津に声が掛けられる。とてもか細い、まるで独り言のように呟かれた言葉を根津の耳は察知し、その言葉に答えた。

 

「……僕の知るヒーローの言葉を借りるならば『──自分の奥底にある物。そこが知っている、だから私は走り続ける事が出来る』らしいのさ」

 

オリジン、その答えはきっと君の原点が教えてくれると思う。そう言い残し根津はこの場を後にした。

 

心臓が鳴り響く、心音と共に夢であった女性の姿が緑谷の視界に浮かび上がる。その女性は困ったように笑いながら緑谷に近付き、徐に抱き締めた。

 

『大丈夫だ……私達は……いや、この力は君の味方だ。君の思うように行動してくれ、それにこの力は答えてくれる筈だ』

 

『──思い出すんだ、君のオリジンを』

 

その言葉と共に緑谷から離れ、最後に言い忘れていた事があった。と笑いながら女性は語る。

 

『……ヒーローしか出来ないあの馬鹿に言ってやれ『お前の弟子はお前ではない』とな』

 

「……貴女はなんなんですか? 」

 

夢で見た姿と同じ。この存在は一体何なのか、呆然と呟くように出た疑問は、朗らかな笑みで返された。

 

『──秘密だ。今知るよりも何れ全てを知る時が来る、ならばその時に知った方がロマンがあって良いじゃないか』

 

その言葉を最後に女性が緑谷の視界から消える。その姿を最後まで見続けた緑谷は立ち上がり体育館Δを後にした。

 

「……僕の原点。オリジン」

 

その足が向かう場所は決まっている。彼が気付いていなくとも本能が察して既にその場所に向かおうとしている。

 

緑谷出久とオールマイトの思い出が詰まった場所、海岸公園だ。

 




この度はオールマイトと相澤消太を糞餓鬼扱いし全世界5000兆人の両者のファンにお詫び申し上げます。

オティンティンは好きなキャラには苦しんで苦しんで苦しんで覚醒して欲しいという性癖を持っており、そんな畜生故にオティンティンが好きなキャラは1度は絶対にシリアスします。というか彼等3人が今めっちゃ苦悩してます。
前に苦悩していたキャラ達はもうしません。だって彼等は色んな意味で覚醒してるし(小並感)

え?引合?アイツに苦悩させても正直何一つ面白くないのでアレは最後まで理不尽でいてもらいます(屑)

もうすぐ体育祭に入ります! さてここからどうなってしまうのか! どうなってしまうのか!

どうなってしまうのか!?(次回に続く)
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