友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
それが嫌な方云々
「俺の……ターンッ! 」
朝の教室、それはまだ生徒達があまり来ていない時間帯。そこに一人の少年の声が響き渡る。少年の対面にいる存在は無口ながらも、これから起こるであろう展開に予想しているのか、自分が握っているカードを確認し次を促した。
「8マナ発生! 流星バルガライザー!シールドブレイクする際に山札の上をチェックする! さぁ来い俺の最強ドラゴン! 」
山札の1枚目が捲られる。そこに存在するカードを見て少年は笑い、場に出した。
「2枚目のバルガライザーをバトルゾーンに! さぁショートのシールドを吹き飛ばせ! ブレイクだ! 」
ショートと呼ばれた少年が机の上に置いていたカードを2枚自分の手元に入れる。
「……トリガーはなしだ」
「なら終わりだ! 2体目のバルガライザーで『ニンジャストライクオロチを出す』……命拾いしたな。バルガライザーだろ? 」
ショートの出したカードを見て、少年は先程出したカードを山札の一番下に置き、山札の一番上から捲っていく。何枚か捲り出たカードに溜息をつく。
「……ここでパルピィゴーピィか、操作型連ドラの宿命だな。ターンエンド」
そのままショートと呼んだ少年に手番を譲り、少年は内心ほくそ笑む。勝った、ここから俺が負けるはずが無い。
「(馬鹿め……貴様のシールドはゼロ! 手札は次に引くカードを含めて5枚! それに比べて俺のシールドは5枚! バトルゾーンにはブロッカーが一体いる! バトルゾーン、シールドがない貴様に何が出来る!ガハハ勝ったな! )」
そのドローが貴様の最後のドローだ。そう内心で笑う少年、そんな少年の期待を裏切るようにショートは動き出した。
「俺のターン、5マナを使い超次元ボルシャックホールを発動する。能力でブロッカーを破壊、そして時空の霊魔シュバルをバトルゾーンに。そして2マナでソルハバキを出す。能力でマナの母なる聖域と手札にある聖霊王アルファディオスを入れ替える」
黙々と行われるプレイング、それを見て少年は冷や汗を流す。あれ、この流れ前も見た覚えがあるぞ、というかこれ駄目な流れだ、だと。
「ん……? 嫌な予感しかしないんだが? 」
「残った3マナで母なる聖域を発動する。ソルハバキをマナゾーンに、そしてアルファディオスをシュバルを下にして場に出す」
出されたカードを見て少年は諦めた顔をして言葉を発する。その声色は既に勝ち目を失ったと言わんばかりに失意が篭っており、顔に手を起き嘆いている。
「あっ……負けたわ」
「アルファディオスでバルガライザーを破壊。ターンエンド、石は何か出来るか? 」
石と呼ばれた少年は両手を上に上げ降参の構えを取る。そしてショートはそれに無言で頷いた。
「……水と火の混合デッキです。後は分かるな? 」
「……なら毎ターン攻撃してダイレクトアタックだ」
何回かアルファディオスを縦横に動かし、石は諦めたように机に突っ伏す。そして地獄の底からの怨嗟を彷彿とさせる声で叫んだ。
「……浪漫デッキに負けるとか死ぬ程悔しいィィィィッ! ドルバアルファバルカNEXデッキに負けるとか悔しくて……ぉぉぉおおおおう! 次は水単フルモンで勝負じゃおらァァァッ! 」
ガバりと起き上がりカバンの中から別のカードを取り出した姿を見てショートは不思議そうに首を傾げた。
「……さっきから俺と相性悪くねぇか?」
「まぁ……相性も何も操作型連ドラって結構ガチなんですけどね? というかなんでそんなデッキ回せるの?」
心底不思議そうに聞いてくる姿にショートは首を傾げ何を当たり前な事を聞くんだと言わんばかりに言葉を続けた。
「……引いたら好きなもんが来るだろ? 」
その言葉を聞き石は口元を何度か引くつかせ言葉を発する。
「因みに、なんだけど……残った手札には何があった? 」
その言葉を聞き、残った手札を見せつけショートは言葉を発した。
「ドルバロムとハヤブサマルだな」
その現実を見て石は無言になり新たなデッキをシャッフルし、再度のデュエルを準備をする。それを見たショートが同じように準備を行い、両者の準備が終わり石はビシリと眼前の存在に指を刺し、叫んだ。
「……負けんぞリアルディスティニードロー持ちめ! 絶対にぶっ倒してやる! 」
そしてその数分後、哀れな少年の悲痛な声が教室内に響き渡った。
「……んで、轟。何で引合の奴は死体になってんの? 」
喧騒で賑わい出した教室の中で死体のように机に突っ伏している哀れな少年、引合石。彼を見て不思議そうにショートに尋ねる存在がいた。その存在の名は上鳴電気、明るい黄色の髪を何度か掻き毟りそう言い放つ。それを聞き赤と白のコントラストの髪を持つ少年、轟焦凍。別名ショートは上鳴と同じように首を傾げ言葉を続けた。
「……バトルゾーンとマナを0にしてダイレクトしたら『見ろ遊戯ィ! これが敗者の姿だ! 』って言いながら突っ伏した」
「……正直。お前がカードゲームやってる事に俺は今、驚愕を隠せずにいるわ」
そう言いながら机に散らばったカードを持ち上げ、上鳴は懐かしそうにカード眺めながら話し出す。
「いやー懐かしいなぁ、俺もガキの頃はブイブイやってたぜ。遊○王もデュ○マも両方な。というかバトルゾーンとマナを0されたとか引合、お前どんだけ弱いんだよ」
笑いながらそう言い放つ上鳴の言葉を聞き、引合はガタリと立ち上がり上鳴に自分が座っていた席を譲る。困惑する上鳴の姿を見ながら引合は笑い、言葉を続けた。
「……ショートに勝ったら昼飯奢ってやるよ」
「おっ!マジで!? 俺めっちゃ強かったからな!約束は守れよ! 」
ウキウキで座り、机の上にあったカードを纏めシャッフルし始める上鳴に引合は言葉を続けた。
「その代わり……お前が五回やって五回とも負けたら、昼飯を奢る代わりに関節をキメてやる」
「良いぜ! 絶対に1回は勝つから問題ねぇ! 」
ゲームの準備がお互いに終わり、引合はショートへとハンドシグナルを送る。それを見てショートが1度頷くと、勝負が始まった。
その後。五回中五回、つまり全試合全てでボコボコにされ、信じられないと言わんばかりに呆然としている上鳴を捕まえ関節技の実験台にしている少年の姿があった。
というか、引合石だった。
「ほーら卍固め、そんでアバラ折り。まだまだ行けるがどうだ? 」
「いでででで! 折れる折れる! ストップ!ストップ! 」
「ダイジョーブ。オレ、ヤサシイ。オラナイ、イタクスルケド、オラナイ」
「片言で怖ぇ事言ってんじゃ……ンギャァァ!」
教室内に上鳴の悲鳴が木霊する。入ってくるクラスメイトは彼等の姿を見ると何度かチラチラと見ると何も言わずに自分の席へと向かう。
「なぁ……轟。アレ、何? 」
やばいものを見たと言わんばかりに問うしょうゆ顔の少年、彼の名は瀬呂範太。彼が教室に入った瞬間目にしたのは関節をキメられ地面を何度も叩く上鳴と笑顔で関節をキメている引合の姿だった。
正直、やばいもの所ではない。下手すればイジメの現場そのものである。そう思い問いかけた。
そしてそれに対する答えはとても淡白で
「……賭けで負けてああなってる」
「あー……んじゃ半分上鳴の自業自得みたいなもんか。頑張れよー上鳴ー! 」
そして、それを聞いた瀬呂の反応もとても淡白なものであった。助けを求める悲鳴を聞き流し瀬呂は朝の日常へと戻っていく。悲鳴がBGMの珍しい朝の日常、そして新たなクラスメイトが教室に入ってくる。
「おはよう……ってええ!? 何でそんな事になってるの!? 」
教室に入りながら朝の挨拶をして、目の前の現実に仰天する。大きな目を見開き絶句するように立ち竦す少年、その名は緑谷出久、最近色々と重い運命を背負わされたこのクラスの委員長だ。
「助けてくれぇ緑谷ァ! このままじゃ俺はこの鬼畜外道に殺されちまう! 」
「殺されるの!? 」
「失礼な、殺さんし骨も折らん。ただ間接をキメてるだけだ」
そう言いながらさらに関節技を掛け始める引合に緑谷は目を白黒させながら言い放つ。
「そっか。それなら……って! それでも駄目だよ! 」
その言葉に引合は驚いたように目を開き緑谷をじっと見詰めた。いきなりの行為に困惑しながら見詰め返す緑谷、何秒かの逡巡の後。引合は驚いたように言葉を続ける。
「緑谷……お前、なんか吹っ切れたか? 最近のお前と目付きが全然違うぞ? 」
「えっ……そうかな? 」
その言葉に何度か悩んだような態度を取ると緑谷は笑いながら言葉を返した。
「……強いて言うなら自分がなりたいものを思い出した……って感じかな? 」
「ほーん。まぁ……いっか! 今回は委員長様の言葉もあるしコレで勘弁してやる! 精々お礼を言っておくんだな! 」
そう言い残し引合は上鳴を解放し、自分の席へと戻る。すがりつくように感謝の言葉を掛け続ける上鳴の言葉を聞き緑谷も自分の席へと向かう。
「ありがとうクラス委員長! あの鬼畜外道から俺を解放してくれて本っ当にありがとう! 今日のお前は俺のヒーローだ! よっ大統領! 」
「……上鳴君。結構余裕あったんだ」
それからいつも通りの時間が流れ朝のHRになる。相澤が朝の連絡をした後、緑谷が挙手し、立ち上がった。
「……なんだ緑谷」
「先生……僕はオールマイトのような最高のヒーローになります! 以上です! 」
ただそれだけを言い緑谷は再び座る。いきなりの緑谷の発言に困惑するクラスメイト達、そんな中。爆豪だけが心底不機嫌と言わんばかりに舌打ちをして言い放った。
「……チッ! 元に戻りやがって、死ねカス! 」
「爆豪君! クラスメイトに対してその暴言は些か限度が過ぎている! 君はいい加減に優しい言葉遣いを」
「うっせ死ね糞メガネ」
そんな爆豪の言葉を聞いた後、相澤は深く溜息をつき言葉を発する。
「緑谷、放課後……体育館Δに来い。話がある」
「はい! 」
「……ハァ。んじゃHR終わり」
そう言い気だるげに教室を出る相澤。そしてその日は引合石にとっては何も変わらない一日が過ぎた。
誰もが己を力を磨き、時間が流れた。
そして時は経ち、遂に雄英体育祭の日が訪れた。
イベントを複数後回しにしても問題ないと気付いたド畜生の屑は平然とイベントをスキップしました。
なんと!次回から体育祭が始まります!
嘘みたいだろ……?次が70話なんだぜ(多分)
ここまで長かった(半泣き)