友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
青い空、白い雲。きっとこんな日は良い事があるに違いない。そんな事を考えながら、手に遠慮なく噛みつく問題児を抱き抱え俺は目の前の惨状を眺める。
「くそっコイツら全員メスかよ!ベロベロ舐めるな!離れろ!」
「モテモテじゃねえか。なつかれてて羨ましいな」
「好きでモテてるわけじゃねえよ!」
触れ合い広場のメスの兎にベロベロに舐められてる大和と本気で羨ましがっているショート。
俺には人の手に噛みついて離れない問題児。コイツは俺の手を人参とでも勘違いしているのではないだろうか?
「流石はモテキング、動物すら落とすとはたまげたなぁ。ついでにどっちでも良いからコイツを預かってくれ」
「流石に噛みつくのは抱きたくない」
「俺よりダメージを食らってるお前を見てると俺、幸せになれるわ」
「控え目に言って死ね」
こんなに空は綺麗なのに俺の心は悲しみに満ち溢れていた。
今日は遠足の日である。
「あの兎。外で出会ったら丸焼きにしてやる」
「まぁまぁ落ち着けよ手のひら人参」
「全身人参野郎は言うことが違うな。ベロベロ舐められて獣臭いぞお前」
「「…ッ!」」
「子どもが怯えてるから落ち着け」
俺達が胸ぐらを掴んで睨みあってると、ショートの言うとおり家族連れの少年が怯えきっていた。許せ少年、大体目の前のモテキングが全部悪い。
最初に赴いた兎とのふれあいコーナーから退散した俺達は次の動物探しの旅に出た。入る際に貰ったパンフを眺めつつ次に見る動物を物色し、三人で次の場所を決めようとすると
「なんか見たいやつあるか?」
「危なくない檻の中にいる動物」
「全部」
と馬鹿共は返してくるので俺がプランを考えて行動していた。どうやらここの動物園には何ヵ所かスタンプを押す場所があるらしく、そこを全部押すとここの動物園のシールが貰えるしくみになっているらしい。
最初のふれあいコーナーでのスタンプを貰ったので俺は他のスタンプを貰える場所に行きたいのだが。
「…キリン見に行きてぇな」
「キリン…おいおいこれ餌やりあるじゃねーか!ここはスタンプもないし行くの止めとこうぜ!」
餌やりという単語にさっきまでの地獄を思い出した大和が反対する。確かに個性のせいで動物のメスにすらモテてしまうお前はふれあい系が嫌いだろう。だが俺はお前の嫌がる事が嫌いではない。
つまりは
「多数決によりキリンに決定!右を抑えろショート!」
「任せろ」
「冗談じゃねぇ…ッ!俺は…って放せ!」
二対一の多数決により俺達はキリンのエリアへと足を進めることになった。
「デカいな…流石地上最長動物」
「…餌がなくなった」
「お前それで四回目だからそろそろ餌あげるの止めとけ」
「金ならある」
「そうじゃなくてだな…」
ショートが何度も餌を買ってキリンに餌を貢ぐのを諌めながら俺も買った餌を一つキリンに渡す。キリンはあれだけ貢いで貰ったにも関わらず食い足らないのか俺の餌をその長い舌で絡めとりモリモリと食べていた。
「…あと一回だけ」
いくら貢ぐ気だお前は
「うぇー…ベロベロすんなって。顔中ベタベタだろうが」
因みに俺達の隣でベロベロに舐められて心底嫌そうな顔をした大和がいた。コイツが飴だったら今頃なくなってるのではないだろうか。
「ここまでモテるといっそ清々しいな。流石は個性『フェロモン』」
「…お前。犬、猫、その他もろもろに発情されてみろ。マジで動物と触れ合うの嫌になるから」
「…すまん」
そう言う大和の顔は半分死んでいた。すまん大和、次の場所は餌やりとかないから許してくれ。
「取り敢えず次はスタンプのある場所に行くぞ」
「触れ合いはなしで頼む。冗談抜きにマジで」
「冗談抜きのマジだから安心しろ」
「信じるぞ…それじゃあ轟!次に…ッ!?」
取り敢えず次の場所に行く為にショートに声を呼ぼうとした大和が絶句し動かなくなる。その姿にとてつもないほどの嫌な予感を感じながら恐る恐る振り返ると
「まだ食べるのか?分かった。買ってきてやる」
「あの…一人で餌をあげすぎるのは…他のお客様の迷惑になりますので」
「…?金ならあるぞ?」
「いえ…そういう事ではなくてですね?」
作業員にドン引かれるほど餌をあげてた馬鹿が一人いた。というかショートだった。
それから従業員に平謝りをし、ショートを無理矢理引き連れてその場から離れた俺達は次なるエリアへと足を進めていた。
それからは
「知ってるか?虎って発情期になると1日中交尾するらしいぞ」
「何故、虎の目の前でそれを俺に言ったのか教えてくれるか?」
虎が入ってる檻の目の前でそんな事を話す俺と大和。因みに交尾の事を話した理由に特に深い意味はない、本当だ。
「…」
「…そこで目をキラキラさせながら虎の子どもをガン見してる馬鹿をどうにかして、そろそろ次の所に行かないとな」
「…かれこれここに20分はいるな」
ショートが虎に夢中になったり
「おっ見ろ。メスの孔雀が求愛行動してるぞ。珍しい事もあるもんだ」
「俺は孔雀にすら求愛されるのか…」
大和が孔雀に求愛行動されたり
「ごらんショート。あれがメスを大和に取られた哀れなライオンだよ」
「…オスが吠えながら檻にぶつかってるな」
「大丈夫だよなこの檻!?壊れないよな!?めっちゃガタガタ鳴ってるけど大丈夫だよな!?」
大和が肝を冷やしたりしていた。
楽しかった時間は直ぐに過ぎ去り、帰る時間となる。帰りのバスの中でスタンプラリーの景品であるシールを眺めるショートと話をする。因みに大和は疲れてダウンした。正直すまんかったと思う。
「楽しかったか?」
「小学校の遠足で何度か動物園に行ったことはあったけど今までの中で一番楽しかった」
「そりゃ良かった」
嬉しそうな表情を見せるショートにそう返事を返し、夢見が悪いのか唸る大和の額に貰ったシールを貼り付ける。俺の目の前で寝てる奴が悪い。
「…ありがとな」
何故か俺にお礼を言うショートのデコに一発強いのをお見舞いする。何故叩かれたのか理解できず驚くショートに呆れながら話しをする。
「楽しかったなら『ありがとう』じゃなくて『また行こう』で良いんだよ。俺達は友達だろ?」
「…そういうものなのか」
そういうものなのです。
信条大和 個性『フェロモン』
簡単に言うなら女にモテるぞ!というかメスにモテモテになるぞ!正直この作品で一番欲しくない個性だよ!
どうやっても過去編が暗めになるので、活動報告でアンケートをとりたいと思います。過去編が欲しい人が多いなら過去編を書きたいと思います