友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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VIP落ちしたので投稿します()
ジョーカー早くして? 役目でしょ?


雄英体育祭 当日

朝、太陽が登り始める前。街がまだ目覚めておらず、耳を澄ませど都会の荒波に揉まれたタフな小鳥達の囀りと暑い熱気に包まれた人々の狂騒はまだ聞こえてこない。そんな時間の海岸公園にとある子ども達の声が響き渡っていた。

 

「どりゃぁぁっ! 」

 

その声は威嚇というよりも自分に覇気を込める為の掛け声を思わせ、甲高い少女特有の声色を喉で鳴らし空気を震わせた。

 

ざざめく波音を掻き消さんと言わんばかりの声色、そしてその声の持ち主である少女は眼前の存在目がけて振り上げた足を全力で振り下ろした。振り下ろした足はそのまま眼前の存在へと放たれる、少女はそう確信した。

 

やった。とった! と内心で勝利を叫んだ瞬間、少女の視界がぐるりと回転しそのまま背中から砂浜へと落とされる。

振り下ろした自分の足を掴みそのまま身体ごと回転させられた、そう気付いた瞬間に少女は悔しさを隠さずに声を上げた。

 

「くっそぉぉっ! もう1回や引合君! ええやろ!? なぁ!? 」

 

引合。そう呼ばれた少年は少女の言葉を聞き少し悩んだのか顔に手を当て考え込むと、パッと顔を上げて少女に向かって笑いかけ言葉を発する。その言葉を聞き少女は不満そうな態度を顔に出し言葉を続けた。

 

「うっ……それを言われたらなんにも言えへん。 でも、一つだけ、これだけは言っとくで! 」

 

ビシり。大仰に引合へと指を向け、麗日は瞳を決意で輝かせながらハッキリと言い放つ。

 

「引合君が強かろうが優勝するのはウチや! いくら教えて貰った身だとしてもこれだけは譲れんから! 」

 

言ってやったと言わんばかりの態度をとる麗日を見ていた引合は呵々、と愉快そうに笑い。拳を作り麗日へと向けながら語り掛ける。

 

「さっきまで延々と投げ飛ばされてた癖に……良い根性だ。ハンデなら幾らでもくれてやるから全力で掛かって来い」

 

「上等。ハンデやったから負けたとかいう言い訳は聞きたくないで? 」

 

その言葉を聞き麗日もニヤリと笑い、コツンと小さな音を立て拳同士がぶつかり合う。そして、それを最後に2人は海岸公園を後にする。

 

彼等が家路に付き今日の準備をしている頃には。太陽が完全に登り、小鳥達が囀り声を出し、街は人々の狂騒で賑わい始める。今日は雄英高校体育祭当日、これから起こりうる全てが今日という日から始まる。そんな運命の日だ。

 

少し時間を戻そう。時は彼等が海岸公園である意味、青春している時、小鳥も街も目覚めていない。街のとある一軒家、他の家屋とは圧倒的とも言える面積を持ち、造りは古式の日本家屋を彷彿とさせた。そこはとあるトッププロヒーローが住まう一軒家。家主が己が持つ財をもってして造り上げた自宅兼修練場。その修練場の中で1人の男の感嘆の言葉が響き渡った。

 

「──良くぞ、良くぞ。ここまで……まだ未熟な部分は多々あるがお前は今、完全なる俺の上位互換となった。俺の持つ力、その全てを叩き込んだ今のお前に敵う者などトッププロですらそうはいまい」

 

「ここに俺が認めよう。焦凍、お前こそがあらゆる全てのヒーローの頂点に立つべき存在だ」

 

その声色から感じるのは万感の想い。賞賛と歓喜、それに類する全て。全てが極まり涙を流しながらその声の主は眼前の存在を賞賛した。その声の主の名は轟炎司、No.2ヒーロー エンデヴァーにして最強の炎系個性『ヘルフレイム』を操る益荒男。彼は、今この瞬間に己の悲願、己を超える存在を産み出す事に成功した。そして彼が造り上げた最強の存在はその賞賛を受け取らずギラギラと熱の篭った視線を持って炎司を睨み付けた。

 

「……まだだ、こんなんじゃ足りねぇ。こんなのじゃアイツを超えられねぇ」

 

2週間程前だろうか、己の後継者たる我が子が発した言葉。超えるべき存在がいる。そう頭を下げられ、己が忌避していた力を使う決意した姿を見せられた炎司は歓喜した、遂に反抗期を終えたのだと。愛する我が子が己の力を受け入れる覚悟をしたのだと。

 

「……勘違いするな。俺はあんたが嫌いだ。だが、アンタは俺を育てたい、そして俺は力が欲しい。アイツが言うなら『WinWinの関係』何も不満はねぇだろ」

 

その言葉に炎司の高揚は鳴りを収め疑問が産まれた。頑なに己の力を否定していた、それは妻を無碍に扱い我が息子を鍛え抜いた父である自分に対する憎悪からだった筈。故に問うた、何故? 今になってお前はこの力を使う覚悟をした、お前にとって俺の力は憎悪の象徴そのものだろう? と。

 

「……越えたい奴がいる、アイツには母さんの力だけじゃ追いつく事すらままならない。USJで痛感した、今の俺は弱い」

 

「一緒にスーパーヒーローになる。今のままじゃ無理なんだ」

 

拳を握り締めそう断言する息子を見て炎司は確信した。コイツは今、壁にぶつかっている。超えるべき壁の高さにぶつかったのだと。自分はオールマイトという壁にぶつかり、最終的に絶望した。そして息子も、焦凍も今同じ状況に陥りそうになっている。

ならばどうすべきか? 答えは既に決まっている、己の全てを授ける時が今来たのだ。炎の最奥、自分が辿り着いた境地の全てをこの息子に授けよう。

そして……願わくば授けた力を持って眼前にあるであろう酷く強固で天より高い壁を打ち破って欲しいと。

 

お前こそが最強のヒーローになり俺の悲願を成し遂げる者なのだから。

 

炎司の中にある薄暗い自己投影の想いと父として、自分と同じ轍を踏ませたくないという願いが入り交じる。そして彼己が知りうる炎の極地、その最奥までをたった2週間という期間で叩き込んだ。己が数十年掛け辿り着いた境地を無理矢理2週間、日に直すならばたった14日という時間で息子にへと叩き込む、今まで行ったの訓練の比ではない。文字通り毎日血反吐を吐き、気絶しても叩き起し繰り返す程の超高密度な地獄とも例えうるスケジュール。その地獄はどれだけ強い決意を抱いていても本来ならば泣き喚き中止を懇願しても可笑しくはなかった。

 

だが、焦凍はその全てを耐え切った。そして今日、体育祭当日を迎え彼は一応の形で完成を迎えた。まだまだ未熟な部分はある。だが、確かに炎司が歩んだ数十年を会得したのだ。

 

「焦凍……もう一度言っておくが今のお前に敵う者はトッププロですら少ない。経験と実力を加味しても、殆どのトッププロはお前以下だ。学生のみに絞ればお前こそ頂点にいるだろう」

 

だが、違うんだな? 今のお前の上に立つ存在がいるのだな? そう炎司が問うと焦凍は当然と言わんばかりに深く頷く。

 

「……俺が言える言葉ではない。が……経験者からの言葉だ。心して聞け」

 

「イメージしろ、己の中にある炎を。決して消えぬ炎がその胸にある限り、お前の炎は絶える事は決して有り得ぬ」

 

その言葉を最後に炎司は修練場を後にしようとする。扉を開き、廊下に出る瞬間。その背中に、か細く小さな声が掛けられた。

 

その声を聞き炎司は笑う。それは己の全てを授けた師としての笑みなのか、遂に己の代わりに悲願を成し遂げる存在を育て上げたNo.2ヒーロー エンデヴァーとしての笑みなのか、それとも息子の成長を喜ぶ父としての笑みなのか、それともそれら全てか、誰にも分からない。

 

修練場を後にした炎司は携帯電話を取り出し、とある場所へと電話を掛ける。それを複数回繰り返した後、炎司はドカドカと足音を立て目的の部屋の扉を開けた。

 

「冬美ィィィッ! 」

 

その怒号とも呼べる声に何事かと言わんばかりに慌てふためきながら目覚める娘へと炎司は言葉を掛ける。

 

「お前は確か今日休みだったな? 丁度良い、お前は冷と夏雄を連れて雄英に来い。案ずるな、全て話は通してある」

 

状況が理解できないと言わんばかりの態度をとる娘。そして言いたい事だけ言い残し、父親は台風の如くその場を後にした。安眠を妨害され、徐々に覚醒していく明瞭な頭脳が先程の言葉の意味を漸く理解しバタバタと慌てながら父の後を追う。

 

「……俺もそろそろ覚悟を決める時か」

 

登り始めた太陽。小さく、覚悟の決まった声が目覚め始めた街の声に掻き消された。

 




実は強化フラグの中で1番強化されたのは轟だったりします。女神?あれは元々ヤベー奴なので(目逸らし)
ただでさえくっそ強いのにこれ以上強くなるとかお前チートかなにか? イケメンで強いとかヤバすぎでしょこりゃモテるわ
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