友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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第一種目 開幕

蒼天。海中を彷彿とさせる大空、広々と地平の彼方まで遥か遠く続いている。それは頭上に広がる大海そのもの。太陽が燦々と輝き、世界を照らし今日というこの日を祝っているように感じられた。

 

『YEEEEEEE! 盛り上がってるかリスナー共! 直に今日の一大イベントが始まるぜ! さっさと席を確保しなきゃ立ち見になっちまうぞ! 』

 

校内中に設置された拡声器からプロヒーロー プレゼントマイクの声が木霊する。今日こそが日本の一大イベントである雄英体育祭当日、視聴率稼ぎの為のマスメディアに今日を心待ちにしていた観客、そして掻き入れ時と言わんばかりに様々な屋台が校内に立ち並び、人々は活気に満ちた声を上げた。立ち並ぶ屋台、祭りに相応しい商品がこれでもかと屋台で販売されており、人々は目的の場所へと足を進めていた。

 

「お母さん……人が多いけど、大丈夫? しんどくない? 」

 

「私は大丈夫。それより焦凍がいる場所は何処だったかしら……? 」

 

そんな人々の波の中にとある家族がいた。母と呼ばれた白髪が目立つ妙齢の女性、白と赤が入り交じった髪を持つ女性、そして白髪の少年。そんな3人がいた。家族での応援だろうか、彼等の姿を見た者達はそんな事を考えながら自分が向かうべき場所へと足を進めた。

 

「ふむ……弔、君は何か欲しいものはあるかい? 」

 

「……どうでも良いからちゃんと杖を使って歩け」

 

まるで喪服を彷彿とさせる黒いスーツを身に纏い、顔を隠すように黒いシルクハットを深く被った老年の男性が隣にいる少年へと語り掛ける。声を掛けられた少年は呆れたような声色で男性へと返事を返す。

 

「おっと。これはこれは……」

 

それを聞いた男性はおどけたような声色で笑い、二人して先程の家族と同じ場所へと足を進めた。そうやって人々が自分が向かうべき場所へと足を進め、人々の喧騒と賑わいがこの場所一帯を包み込んでいる中、火薬が炸裂した音が彼等の耳朶を叩き、空に色鮮やかな花火が上がる。

 

「……こうして僕も気にせず入れるなんて随分とザルな警備じゃないか。 まぁ……僕も楽しませて貰うよ? 」

 

人波の中で小さく笑う黒髪の美女が流れに逆らわずに目的地へと進んで行く。波が3つに別れ、学年毎で別れた競技場が人で溢れ体育祭の始まりを今か今かと待ち構えている。熱気は既に最高潮、そんな熱気の中、プレゼントマイクの開幕の宣言が拡声器を通じ、声高らかに学園中に響き渡った。

 

『それじゃあリスナー共! 準備はOKか? ポップコーンとジュースは買ったか? 先にトイレは済ませてるな? OK! それじゃあ始めよう! 雄英体育祭の開幕だぁぁっ!』

 

雄英体育祭 開幕

 

「それで……まぁ、後はアイツら次第だろう。教えられる事は大体教えた、俊典。アイツらはお前よりも教えがいがあったぞ」

 

「この度は本当にご迷惑を……」

 

一年専用競技場。教員専用の席で2人の男性が談笑していた。いや……それを談笑と表現するのは少し妙で、老人の言葉に痩せこけた長身の男性が腰を低くして謝罪の言葉を紡いでいるのだ。その姿は談笑とは真逆の何かだろう。だが、それが彼等の当たり前なのだろうか、他の席に座っている教師達はその姿を気にしている様子はなく、まるでここ最近で見慣れた光景と言わんばかりに対応していた。

 

「爆発小僧はセンスがあるが、ちと野生的に過ぎる。そしてお前の弟子はセンスはお世辞にもあるとは言えんがそれをカバーするだけの努力と分析能力がある。まぁ……どっちもどっちだな」

 

老人はそう言葉を締め、隣にいる俊典と呼んだ長身の男性を睨み付ける。その眼光に男性は竦み上がり、恐る恐るといった様子で言葉の続きを待った。

 

「それで……私は参加させて貰えなかったので詳しくは分からないのですが、緑谷少年の完成度は如何程なものでしょうか? 」

 

「あぁ!? お前に任せてたら100年あっても足りん! 弟子の心情を放ったらかしにして暴れ回る阿呆に任せてみろ、間違いなくロクな事にならん」

 

「ううっ……仰る通りで、全ては私の不徳の致す限りです」

 

その長身を小さく幻視してしまうほど萎縮した姿を見て、老人は深く溜息をつきボソリと、独り言のように呟いた。

 

「……現状、全身稼動の限界の限界が20%って所か? それ以上は小僧の身体が持たん」

 

20%その言葉を聞き、男性は驚愕に満ちた目を見開いた。男性の想定では与えた力のコントロールが出来ておらず、20%まで辿り着くには相当な時間が掛かると踏んでいたのだ。

 

「もう20%……ッ!? 」

 

「……理屈で理解する小僧に自分の経験談をそれっぽく話すだけのお前のやり方が合う訳がないだろうが。やり方を考えさせ身体に染み付くまで反復練習させる、それ込みで実践訓練をやれば……まぁこのくらいはいける」

 

お前はセンスだけはあったから教えなくとも勝手に覚えていったがな、と老人は過去を懐かしむように笑った。自分の過去の話をされ気恥ずかしくなったのか、男性は上ずった声でやめて欲しいと懇願した。

 

「しっかし、相澤の奴はとんでもねぇ条件を出てきやがったな……ぶっちゃけこの条件は小僧どころか俺ですらクリア出来るか分からん」

 

その言葉に先程までの空気は掻き消され、プレゼントマイクの声と同時に彼等の眼下に広がるスタジアムに生徒達が入場する。入場する生徒達、その中の1人の少年を見詰め、男性は確信に満ちた声色で言い切った。

 

「えぇ……しかし。緑谷少年ならばきっと乗り越えられる筈です」

 

その言葉に老人は返事を返す事はなく、両者の会話はそこで終わった。そこから開幕式はつつがなく進められ、ついに選手宣誓の時となる。

 

『選手宣誓 一年代表! 爆豪勝己! 』

 

蠱惑的な衣装を着たプロヒーロー ミッドナイトが代表者を呼び出す。呼び出された少年は無表情で前へと進み、気だるげな声色をあげた

 

『せんせー』

 

一呼吸だけ間を置くと、鋭い目付きをさらに鋭くし、後ろを振り向き、言い放った。

 

『俺が頂点に立つ。精々首を洗って待っていやがれ』

 

その瞬間巻き起こるブーイング、会場にいる全ての生徒達の罵詈雑言が発言者へと放たれるが、それらを一切気にする様子はない。その鋭い視線に一切の揺らぎはなく1人の少年へと向けられていた。そして、そんな視線を向けられていた少年は。

 

「(やっぱ女神はなんでも似合うなぁ……あっ可愛い。信仰しよ)」

 

彼の視線を全く気にすることなく別の事に夢中になっていた事をここに記しておく。そんな事実を露知らず傲慢不敵に宣言した少年は自分がいた場所へと戻り、司会進行であるミッドナイトが鞭を振るい、暴徒と化していた生徒達の視線を集めた。

 

『さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲む! さて運命の第一種目! 今年は……障害物競走! 』

 

スクリーンに映し出された映像と共にミッドナイトは説明を始める。

 

『全員での総当りレースよ! コースはこのスタジアムの外周、約4km! 我が校は自由が売り!「はい! 質問があります! 」……はい。何が知りたいのかしら? 』

 

説明の腰を折られテンションの下がったミッドナイトに質問が投げ掛けられる。

 

「何をしても良いんですか!? 本当になんでもありなんですか!? 」

 

『 ええ! 他の選手の妨害でもフィールドを破壊しても良いわ! ぶっちゃけもうなんでもありよ! 』

 

「分かりました! ありがとうございます! 」

 

半ばやけくそ気味の対応に少年は満足そうに頷き、ミッドナイトは再度、説明の続きを始めた。

 

『つまりは計4kmの何でもありのチキンレース! 質問はもう受け付けないわ! さっさと位置に付きまくりなさい! 』

 

スタジアムのゲートが音を立てて開かれ、我先と生徒達がゾロゾロと向かっていく。誰もがスタート地点へと位置について行く中、1人だけ別行動をとる馬鹿がいた。

 

「先生。少し借ります」

 

『えっ……ちょっと? いつの間に取ったの!? 』

 

突如、ミッドナイトが持っていたマイクが1人の少年に奪われたのだ。奪われた事実に気付かなかったのか、困惑するミッドナイトを無視して少年は声を張り上げた

 

『レディースアーンドジェートルメーン! 紳士淑女の皆々様方!私は、これからの1日間、貴方達を決して退屈させない試合をお届けする、今をときめくニューウェーブ! 引合石と申すものでございます! 』

 

マイクを奪おうとするミッドナイトの攻撃を全て躱し馬鹿は揚々と語り始める、最早放送事故を超えた何かだ。そんな馬鹿はミッドナイトの近くにあった機材を何度か触る。するとレースの始まりを告げるスタートシグナルの明かりが1つ消えた。

 

『これから私が貴方様方にお見せするのは単純明快にして簡単なステージ! 』

 

スタートランプがまた一つ消える。

 

『宣言致しましょう! 今回の障害物競走は今までとは一線を画す圧倒的混沌レース! 』

 

突然の馬鹿の凶行に困惑する生徒達と教師陣を尻目に引合は宙へと浮かび上がりながら言葉を紡いだ。

 

『さぁレースが始まる! スタートランプが消えた瞬間、運命の1回戦が幕を開けるのだ! 』

 

最後のスタートランプが消え、皆が走り出す。宙へと浮かび上がった引合はそのまま吹き抜けになっているスタジアムの上空を抜けて大空へと飛び立つ。

 

『 運命の女神は一体誰に微笑むのか、今年のレースはひと味違う! 障害物競走、スタート!』

 

その言葉を最後に引合はスタジアムから消える。開幕から混沌渦巻く雄英体育祭が幕を開けたのだ。

 

第一種目 障害物競走 開幕

 




正直すまんかった()
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