友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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第一関門 1

『もうどうすりゃ良いんだこの状況! でも盛り上がってるなら問題ねぇな! ついに始まった雄英体育祭! 一年部門の解説は俺ことプレゼントマイク! そして、解説役の……Hey! イレイザー! 白目むく暇はねぇぞ! 』

 

『……すまんマイク、どうやら悪い夢を見ていたようだ。まさか生徒が堂々と教師のマイクを奪ってあのような惨事……うっ腹が』

 

流石は自分のラジオ番組を持っているエンターテイナーと言ったところか、やけくそ気味でもしっかりと実況を始めるプロ意識の高いプレゼントマイク。そして何時もの気怠げな声色ではなく、現実逃避から来る、乾いた笑みから吐き出される言葉を紡ぐイレイザーヘッド。プレゼントマイクから押し付けられたであろう解説役を嫌々ながらも引き受けた結果がこれである。彼は今、ストレスからくる腹痛を味わい、半分現実から逃避していた。

 

『HeyHey! そんな調子じゃ今回の体育祭についていけないぜ? 見てみろよ引合の奴! 空をカッ飛んで誰よりも先にもう第一関門に到達してやがる! 』

 

スタジアムに設置されてあるディスプレイに馬鹿が豪笑をあげ第一種目である仮想ヴィランの元へと向かっていく姿が映し出されるが、イレイザーはそれを見なかったフリをして機材を触り別の場所を映し出した。

 

『……嫌な光景が見えたからあえて無視する。取り敢えずあの馬鹿は放置として……第一関門に1番近付いているのは、順番で言うなら夜嵐、轟、爆豪。といった所か。』

 

ディスプレイに風を纏い空を飛翔をする夜嵐と自分の後方に氷塊を産み出し、それに押される形で高速移動を行う轟、そして両手の汗腺から溢れ出るニトロに似た液体を爆破し空中を滑空する爆豪の姿が映し出された。その後方から複数の生徒が追い掛け、更にその後方にいる生徒達は彼等の背を追わんと必死なって駆け出していた。

 

『ぜんりょぉぉぉっく! 轟!今までは引き分け続きだが、今回は俺が勝つからな! 』

 

『……わりぃが負けてやるつもりはねぇ』

 

『邪魔だモブ共! テメェらはとっとと死ね! 』

 

スクリーン上に熱血主人公的な事を言い出す夜嵐と主人公のライバル的ポジションみたいな事を言い出す轟、ついでにチンピラみたいな事を言い出す爆豪が音声つきで映し出された、ヒーローを目指す子ども達が集まる最高峰たる雄英高校ヒーロー科にただのチンピラがいるという事実。これには観客も苦笑いを零さざるを得ない。

 

『ワォ! 言ってる事がチンピラじゃねぇかバクゴー! これには見ているリスナーもドン引きしちまうぜ! 』

 

『……安心しろ。爆豪にドン引きするよりも先にあの馬鹿にドン引いてチャンネル変えてる』

 

『キビシィィィッ! リスナーの皆は頼むからチャンネルは変えずにそのままで頼むぜ! 』

 

そうやってマイクの爆豪に対するイジりが終わり、再び司会進行へと戻ろうとした瞬間、スクリーン上に新たな変化が映し出された。馬鹿を除いた3人の上空をとある生徒が飛翔したのだ。

 

『おいおい誰か飛んで行ったぞ? あれは……イレイザー。お前のクラスの生徒じゃねぇか? 』

 

スクリーン上に空を飛ぶ生徒が映し出される。両手足をバタつかせ、まるでこの状況は自分の本意ではないと言わんばかりの姿に、イレイザーは目を細め言葉を続けた。

 

『……ウチのクラスの障子目蔵だな。アイツの個性では空中移動は難しいと思っていたんだが』

そして、障子は第一関門である場所へと飛翔したとかと思うと、そのまま引合の隣へと着地した。その光景を見ていた二人は無言でスクリーンの映像を再び3人へと変えた。

 

『しっかし今年の一年坊はやる事が違うな……なぁイレイザー。あれ、全員お前の所の生徒だろ? 何とかなんねぇのか? 』

 

『……一応の努力はしているんだがな』

 

真に迫ったイレイザーの独白に聞いていた者達は彼の気苦労を察し、思わず哀れむ。彼を哀れでる間にも試合はドンドンと進み、ついに先頭の3人が第一関門へと辿り着く。その瞬間、3人に向かって巨大な鉄の塊が幾重にも襲いかかった。

 

『YEAHHHH! 漸く辿り着いた3人に仮想ヴィランが襲い掛かるゥゥッ! 第一関門は仮想ヴィランを使った"ロボ インフェルノ! " 本来なら地上で屯しているロボットをぶっ飛ばして先に進んでいく筈なんだが……なんかロボが縦横無尽に空を飛んだりしてんな 』

 

眼前のモニターに映る光景をマイクはそう表現した。様々な仮想ヴィランが宙を舞い先頭の3人目掛けて突撃してくる光景は彼にとって予想外だったのだろう、彼のトレードマークとも言えるサングラスが半分ズレていた。

「上等じゃねぇか……オラ! もっと寄越せや! 全部スクラップにしてやんよ! 」

 

爆豪がそう吠えたてた瞬間、宙を舞う仮想ヴィランが突然左右へと別れる。3人を中央として生まれた空間、そんな彼等の眼前の二人の少年が姿を現した。

 

「校長から許可を貰って司会進行から許可を貰えたので……ガチのマジで好きにやらせてもらうぜぇ……! 」

 

「……すまん。俺は勝ち馬に乗らさせてもらう」

 

今日をもって日本中に醜態を晒している少年、引合石と先程何故か宙を舞っていた障子目蔵がそこにはいた。左右に別れていた仮想ヴィランがまた宙を舞い、2人の姿を隠していく。先に進めずにいた3人達に追い付いたのか、複数の生徒達が第一関門まで辿り着き、眼前の光景に目を見開いた。

 

「……すいません。誰か現状を教えて下さりませんか? 」

 

「追い付いた……ッ!? 」

 

「……八百万に緑谷か。気を付けろ、アレを操ってんのは石だ。恐らく……生半可な気持ちで突撃すれば」

 

3人に追い付いた緑谷と八百万、そんな2人に轟は現状説明を簡潔に行った。そんな状況に痺れを切らしたのか爆豪が舌打ちをすると彼等を無視して前へと滑空した。

 

空を滑空し第一関門を抜けようとする爆豪の元へと膨大な量の仮想ヴィランが襲い掛かる。その光景は圧倒的質量から産み出される地獄そのもの、破壊しきれず、避けきれなかった爆豪は小さな仮想ヴィランに衝突したかと思うと、そのまま先程まで自分がいた場所まで叩き込まれた。

 

「……恐らくああなる。不用意に責め立てれば、爆豪の二の舞いだ」

 

「黙ってろや紅白野郎! 」

 

阿修羅を彷彿とさせるほど目を鋭く尖らせて爆豪は吠えたてるが、八百万はその姿を見ることなく、少し考え込むような態度を取り、声を上げた。

 

「……何か対策をしなければいけませんね。取り敢えず皆さん、ここは一時休戦と致しませんか? 」

 

「うん。恐らく僕達が単身で突撃したらあの質量で無理矢理押し返されるかもしれない」

 

八百万の言葉に緑谷が賛同するように声を上げると、その姿を見ていた轟が独り言を呟くように言葉を紡いだ、

 

「あぁ。俺が言い出してなんだが、そうするのが1番確実なんだろうな」

 

「轟さん……? 」

 

一体何を。と八百万が問い掛けようした瞬間、轟の左手から炎が溢れ出した。

 

「……もしかしたら、爆豪も今の俺と同じような気持ちなのかもしれねぇ」

 

炎と呼応するように右手から凍えるような冷気が溢れ出す、そのまま駆け出していく轟に向かって巨大な仮想ヴィランが襲い掛かった。その仮想ヴィランを緑谷は良く知っている、それは嘗て自分が受験の際に吹き飛ばしたのと同じサイズのロボットだった。ビルよりも巨大、それと比べたら人間なんて蟻同然の圧倒的巨体、0点ヴィラン。それが轟目掛けて飛翔してきたのだ。

 

「石……あの時からずっと、俺はお前達の背中を追い続けた。だけど……それじゃあ、お前の隣には立てないんだよな」

 

その瞬間、その巨体を超える大氷壁が轟の眼前に現れる。その大氷壁の中には圧倒的巨体を誇る0点ヴィランが封じ込められており、それを目視した轟は左半身から溢れ出す炎と共に拳を大氷壁目掛けて叩き込んだ。

 

それをスクリーン越しに見ていた観客の1人が、目を大きく見開き、震える声で呟く。

 

「あれって……お父さんの」

 

大氷壁が音を立てて砕け散っていく。当然、大氷壁の中に封じ込められていた仮想ヴィランも氷諸共砕け散った。

 

その光景を見ていた引合はゆっくりと轟の元へと歩き出しながら声を上げた。

 

「どんな心境の変化か知らんが、そっちを使う気になったんだな」

 

「あぁ……お前のお陰だ」

 

「そっか……そっか。良かったよ、なら……お前に対して加減はいらないな」

 

感慨深く、何度も引合は頷く。そして歩みを止め、溢れんばかりの笑顔を轟にへと向けた。

 

「なぁショート!力比べしようぜ! 」

 

「……本気で行くぞ 」

 

空を覆う圧倒的質量と自分の周りを歪ませる程の膨大な熱量が今、ぶつかり合った。

 

 




評価とかコメントとかいつもありがとうございます
なんと評価してくれた人が200人を超えました! サンキュー皆様
コメントもなんかいっぱい貰えてオティンティンの自己顕示欲は発散されております。嬉しすぎて泣きそうです

サンキュー皆様 フォーエバー皆様
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