友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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第一関門2 鼠の憂鬱

 

例年通りの体育祭、生徒達の奮闘を眺めながら1匹の鼠は溜息を吐いた。己の地位の高さとこの学園に続く恒例事項、この2つに初めて自分が苦しめられているという事実。それに鼠は、その聡明な頭脳を悩ませていたのだ。

 

「困ったね……3年の司会進行は校長の義務、僕だけの理由でそれを曲げる訳にはいかないのさ。引合君……彼は今どうしているんだろうか」

 

彼はちゃんと自分が言った通りにしているだろうか? 彼に対して鼠が言った要求はただ一つ、世間に対する己の主張。これは鼠の考える計画に於いて外せない最重要事項、出来れば自分が見守りたいのだが鼠には3年ステージの司会進行という務めがある。

 

出来るならば状況を己の目で確認していたい、状況が悪いなら此方側でコントロールが可能だ。しかし自分では見に行けない、そして教師達、特に相澤消太と八木俊典。彼等にだけは自分の目的を悟られてはならない。

 

もし彼等が鼠の目的を知れば己が力を十全に振るい止めに掛かるだろう。特に相澤消太、彼にバレるのは不味い。もしも計画が彼に露見した瞬間、彼は己が持つ者全てを投げ捨ててでも自分を止めに掛かる、鼠はそう確信していた。

 

そうなるのは不味い、余りにも不味すぎる。下手すれば計画はご破算では済まない。オールマイトが来たことにより、この雄英高校の最高戦力は彼になったが、嘗ては相澤消太、イレイザーヘッドこそがこの雄英高校最高戦力だった。弱りきったとは言え、凡百のヒーローが幾ら集まろうが手も足も出ない存在。平和の象徴オールマイトと勝負の形に立てる存在、それを失う訳にはいかない。

 

計画も成就させたいが彼等に自分が動いてると察せられてはならない。

 

視界に映るモニターに全裸になりながらも他の生徒達の腹を殴打しつつ全力疾走する生徒を眺め、今の自分ではどうする事も出来ない現状に鼠が内心で溜息を付いていると、顔を真っ青にした職員が鼠を呼ぶ。気が動転しているのか、手を震わしながら必死に出すハンドサイン。それが示す意味を即座に察し、内心で更に大きな溜息を吐きながら職員の元へと向かう。

 

ハンドサインが示すのは特別緊急事態。ヴィラン、テロリストに攻め込まれたのではないが別の用途により雄英に異常事態が発生しているというサインだった。

 

一体どうした事か。不祥事にならマスコミにバレる前に揉み消さなければならない、そう結論をつけた鼠は職員の元へと駆け寄り話を聞く。緊張と焦りで呂律が回り切っていない言葉を脳内で咀嚼し、言葉の意味を理解した鼠は、凡そ彼が生きてきた鼠生の中で出した事のないような声を上げた。

 

「……雄英のHPがアクセス過多でサーバーダウン? ついでに1年ステージに観客が集中し過ぎて怪我人が出ている? SNS上で1年ステージが大炎上? え? なんでそうなったのさ? 」

 

彼の聡明な頭脳をもってもこの展開は想定外だったのだろう。野生に帰る寸前まで追い詰められた鼠は、目の前の職員に更なる説明を要求する。その要求に職員はヤケクソ地味た態度でポケットから取り出した携帯をTV状態にして、とある番組を映し出す。

 

そこに映し出されたのは

 

『ショォォォトォォォォッッッ! 』

 

先程まで己の不安の対象だった少年が目を爛々と輝かせ叫ぶ姿。ついでに彼の周りには有りと有らゆる仮想ヴィラン達が宙を舞い、様々な場所へと射出されていた。

 

『行けィ! ファンネル! 』

 

少年……つまりは引合が手を大きく振り上げ、それに呼応するように空を覆う鉄の塊達がたった1人の少年の元へと襲い掛かる。このままでは、たとえプロヒーローであろうとも死は免れない絶対的絶望とも呼べる圧倒的な物量が間違いなくこの少年を殺すだろう。聡明な頭脳がそう結論を出したと同時に、少年が煌々と輝き出す。その熱量で光景を映し出していたカメラロボットに限界が来たのか画面にジジッと波線が流れた。

 

『借りるぞ……クソ親父! 』

 

少年が纏う熱量が更に増幅しその身が太陽を見間違えてしまうほど煌々と光

り、輝きを放つ。少年の眼前にまで近付いた鉄の塊、それを少年が見据えた瞬間、映像がブツりと切れ映像がそこで終わる。

 

「まっ……まただ……また壊れた。もうダメだ……おしまいだ……」

 

鼠の耳に絶望に支配された声が届くが、彼はそれどころではなかった。先程見た映像で大体の状況は理解出来た。理解出来たが、理解したくない。彼の心境を例えるならばこの一言に尽きる。

 

それと同時に、スタジアムがしんと静まり返り誰もがある一点を見詰めている事に鼠は気付いた。彼等が見詰める先は吹き抜けのスタジアムの先に存在する大空、巨大な熱線が空を割るように煌々と輝いていた。そして、その熱線を避けるように空を鉄の塊が縦横無尽に飛翔している。

 

「根津校長! 今年の1-A……というかあの二人は一体どうなってるのですか! 」

 

涙声で抗議してくる声に構える余裕が鼠にはなかった、というか泣きたいのは彼も一緒だった。確かに目立てと言った、それは認めよう。だがそれにも限度と言うものがある。なんで怪獣大決戦を始めてるんだ、もっとこう普通に競技で圧勝して『この生徒は一体何者なんだ!?』みたいな雰囲気を作って欲しかった。これじゃあ『この熱線出す紅白ゴジラと鉄の塊を操るキチガイ怪獣は誰だ!? 』にしかならない。

 

「根津校長!お話のところ申し訳ありません! 学園に電話が殺到しています! その全てが1年ステージで闘争を繰り返す生徒達についてです! 他の生徒の安否についての確認と先程から何度も映像が途切れてる事に関しての苦情が殆どです! 」

 

「根津校長! 観客の数が1年ステージの許容人数は遥かに超えています! 超過密度により怪我人が続出! 」

 

「根津校長! 想像を超える観客人数のせいで雇ったプロヒーロー達の手が全く足りておりません! これ以上の観客動員は不可能です! 入場規制を早急に掛けるべきです! 」

 

鼠が頭を悩ましている間にも状況は悪化する一方。やんやんやと他の職員達が絶望的な状況を伝えにやってくる。

 

だが。そんな状況下でも流石は雄英高校校長と言うべきか、鼠は人類を凌駕する知能を最大限に発揮し今行うべき事を職員達に手早く伝え初める。それを聞き、自分が何をするべきなのかを理解した職員達は即座に行動へと移し始める。

 

鼠も自分の計画云々は取り敢えず後回しにして、自体の沈静化に勤める為に脳をフル回転させる。そんな中、彼の人類を凌駕する鼠イヤーがある会話を耳にした。

 

「なぁおい!今年の1年やべぇんだって! 滅茶苦茶盛り上がってるって! 見に行こうぜ! 」

 

「……なんかT○itterにも今年の1年部門がヤバいって来てるわ。というかトレンド入りしてるんだけど。ウケる」

 

不味い、そう思い観客席に目を向けると既に観客席では席を立とうとする者達が続出している。彼等は間違いなく1年ステージに向かうつもりだ。

 

この瞬間、鼠は覚悟を決めた。

 

『おおっと!早くも雄英BIG3全員第2関門突破なのさ! 例え友人であろうともこの場に於いては彼等は敵同士! 勝利の栄光を掴む為、戦うのさ! 』

 

『ここで通形ミリオ君! また服が脱げたのさ! サービスシーンはさっきしただろうに、サービス精神旺盛で何よりなのさ! まぁプロになったらそれも必要さ! 』

 

『あっ、でも過度なサービスはやり過ぎると、後々辛くなるから程々にしておくのがオススメさ! 』

 

鼠の実況が3年ステージに響きたわる 。熱意に溢れる実況、それを聞き観客達は立ち上がろうとした身体をゆっくりとおろしモニターへと目を向けた。

 

鼠、いや根津校長。この雄英高校での教師生活においてここまで熱く実況した事はない。彼は今、必死だった。これ以上1年ステージに人を集めないように、ここから観客を逃がさないように、正直もういっぱいいっぱいだった。

 

余談だが、今年の雄英高校体育祭の経済効果は過去随一を記録している。その影には、職員一同と校長の血の滲む努力があった事をここに記しておく。

 

「(彼はやりすぎなのさ! 誰だい!彼にあそこまでやっていいと許可を出したヤツは! )」

 

自分の事を棚に上げて内心で憤る鼠の心を知るものは誰もいない。

 




VIPで運送してるリドリーと出会ったらオティンティンと握手!

鼠の誤算はたったひとつ
原作のヤベー奴たる轟焦凍を忘れていた事につきます

Q 今回轟君はなにしたの?
A プロミネンスバーン
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