友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
雄英高校普通科、彼等にとってはこの体育祭はチャンスそのものだった。1度は落ちたヒーロー科への道、そこへ向かう為の唯一無二の切符。この体育祭で好成績を残せばヒーロー科編入もある、そう聞かされていたからこそ、彼等はこの時に全力を掛けていた。
自分達の目の前で女を侍らす畜生に妨害という名の復讐をする機会を捨ててでも、この切符を逃してはならないと分かっていた。
「ぜんりょぉっく! 」
そんな呑気な掛け声と共に眼前で嵐が吹き荒れる。仮想ヴィラン達を飲み込む暴風が1人の少年を中心として発生しているのだ。巻き起こる暴風に巻き込まれた仮想ヴィラン達はぶつかり合いその身を崩壊させていく。
吹き荒れる暴風の中、暴風を掻き消さんとする爆風が縦横無尽に飛び回る仮想ヴィランを吹き飛ばした。遥か上空から回転しながら落下し、その反動を最大限に利用した爆発は爆発源の周りに存在していた仮想ヴィラン、その全てをスクラップにへと変貌させ、その爆風の発信源たる少年は彼従来の鋭い目付きを飛び回る仮想ヴィランに向けると大声で吠え立てた。
「退けやポンコツ! テメェらスクラップにされてぇか! 」
その声を聞き嵐を生み出している少年は笑い、声を掛ける。その声を聞き少年は、最早三白眼を超える程の鋭過ぎる目付きと共にあらん限りの罵声を持って返事を返した。
「やるな爆豪! でも俺だって負けるつもりはないぞ! 」
「黙れ暴風野郎! テメェなんぞ眼中にないんだよ死ね! 」
その罵声は意味を成さなかったのか、暴風を生み出す少年はあらん限りの笑みを持って返事を返した。
「そういうな! どっちが先にここを超えるか勝負だ! 」
「知るか死ね! 」
そして、また爆風と暴風が幾度となく生み出された。暴風と爆風が支配する世界、地獄絵図とも呼べるその空間から視線を外す、そして別の方に視線を向けると。
「仮想ヴィラン……遠慮はいりません! 緑谷さん! もう一度一斉射撃致します! 援護はお任せ下さい! 」
1人の少女が産み出した黒い砲身から何発もの弾頭が仮想ヴィランの頭上へと突き進み、ある高度で弾頭の先端が割れた。幾つもの小さな黒球が先端から仮想ヴィランにへと降り注ぐ、黒球が対象に触れた瞬間、それは小さく爆ぜた。一個一個の黒球は連鎖するように誘爆し、降り注ぐ黒球の雨と共に仮想ヴィラン達は結合部分から崩壊して行った。黒球の雨から逃れた仮想ヴィランの数体が少女の元へと飛翔していく。
「緑谷さん! 」
少女の声に答えるように1人の少年が仮想ヴィランの元へと駆け出していく。その少年を見下ろせる程の巨体、0点ヴィランと呼ばれる仮想ヴィラン程ではないがそれでも人間と比べると破格のサイズ。飛翔するスピードを含め、当たれば普通の人間ならば一溜りもないだろう。
だが。その少年は少女と仮想ヴィランの中心に辿り着くと、己を鼓舞するように声を張り上げ、拳を放った。
「SMAAAAAASH! 」
その声と共に放たれた拳は眼前の巨体を吹き飛ばし、後から追従していた仮想ヴィラン諸共粉砕した。常人では決して放てぬ絶対的な破壊力をもった拳、そして広範囲に破壊をもたらす兵器。そこもある種の地獄と呼べる光景だった。
自分達では到底入り込む事が出来ない領域、ヒーロー科の試験を落ちて再起を願った者達だがこの光景を見て、抱いたはずの決意は簡単にヘシ折られた。
「無理だ……あんなのどうしようもない、あの4人ですらあれなのに……どうやって超えるんだよ……アレに! 」
4人が相対する光景を超える光景がその先に存在している。
それは等身大の太陽であり氷河そのものだった。全てを消し飛ばす灼熱の化身であり、全てを凍り尽くす凍結の化身。
先程から彼等が何度も見た光が三度、大空を割くかのように遙か天まで伸びる。そして、それに呼応するように0点ヴィランすら鼻で笑ってしまいたくなる程の大氷壁が幾重にも産み出された。
自分達にあのような力はない。いやトッププロヒーローですらあのような力を持つ者は殆どいないだろう。No.1とNo.2、トッププロの中で他を圧倒し頂点に属する者達にしかあれと相対する事は出来ない。呆然と見ていた者達は肌でそれを感じていた。
突如、大氷壁が浮上する。宙を覆う程の鉄の塊達と大氷壁が圧倒的速度を持って地面へと落下していく。それに呼応するように光は膨大し、落下する大氷壁を消し飛ばした。その熱線を避けた鉄の塊達は再び宙で縦横無尽に飛び回った。
「おいおい自分で武器を作ってくれるなんて優しすぎるだろショート。何? 舐めプ? やるじゃん」
「……やっぱ当たらねぇか」
愉快そうに笑う声と、その声を聞きやっぱりそうなったかと言わんばかりの声を聴力に優れた個性を持った生徒は聞き、掠れるような声で呟いた。
「……化け物かよ、何なんだよ……何だよコイツら! 」
第一関門。それはヒーローを目指す物達を振るい落とす登竜門、力無き者は近付く事すら能わず、少しずつ、少しずつ前へと進み、第一関門の門番の如く全ての者達の道を塞ぐ存在を越えなえればここで全員が脱落する事になるだろう。
「どうしたどうしたどうした! ここで全員終わらしてやろうかァ!? 嫌ならちったぁ根性見せろ! ここまで辿り着いたのはショートくらいじゃねぇか! 」
馬鹿の雄叫びが第一関門に木霊する。その声を聞き、登竜門も掛け上がらんとする者は更なる力を放ち前へ前へと進み続ける。自分と1人、それ以外全てを敵し、少年は戦い続ける。
登竜門を超える者、未だ居らず。
『あー……うん。なるほどね? OKOK、理解した。うん……うん? 』
先程まで聞こえていた大熱狂は消えさり、全ての観客達がスクリーンに映し出されていた光景に釘付けだった。何度も何度も途切れた光景だが、それを加味しても目を離す事が出来ない戦いがそこにはあった。その光景を見ていた視界のプレゼントマイクが筆舌に尽くし難いと言わんばかりの歯切れの悪い言葉を発し、それをイレイザーヘッドは諌めた。
『やめろマイク、それ以上言うな』
『いやさぁ! だってさぁ! もうさぁ! 』
諌める言葉を聞きながらも、プレゼントマイクは叫ぶように声を上げた。
『4人はまだギリギリ分かるとして……なんだよあの二人! チートとかそんなの鼻で笑うレベルのヤバさじゃん! 俺アイツらに勝てる気が全くしねぇよ!? なんでアイツらまだ生徒なんだよ! 実はプロヒーローでしたーって言われても納得するレベルじゃねぇか! 』
『……あの6人に関しては実戦経験を積めば即プロヒーローの仲間入りだろうな。今年の1年は有望株が多くて何よりだ』
何処か他人事なイレイザーの言葉を聞きプレゼントマイクは糾弾するような声色でイレイザーにへと語り掛けた。
『イレイザー! 言っとくがアイツら全員お前のところのクラスだからな! お前マジでちゃんと教育しろよ! 世界の平和はお前の教育スキルに掛かってるからな! 』
『……任せておけ。俺の生命に代えてでも、それだけは必ず果たす』
重すぎるイレイザーの言葉を聞き、プレゼントマイクは大きく息を吐き言葉を続けた。
『……いやまぁお前の事を信頼してない訳じゃねぇよ? というかこんな事言ってる場合じゃなかったな。ソーリーリスナー! 実況に戻るぜ! まぁ実況もなにも第一関門は地獄絵図なんだがな! この場にいるリスナーは天井見上げてみな! ヤバいの見えるぜ! 』
プレゼントマイクの言葉に反応し観客達は吹き抜け天井の先を見上げた。その先には熱線が天を貫き、鉄塊が空を黒色で支配していた。モニター越しの爆音と騒音をBGM代わりに、現実離れした光景を目に焼き付けた。
『サンキューリスナー! そんじゃあスクリーンの状況を説明しようか! 現状はあのチンピラ爆豪と嵐を巻き起こしている夜嵐が共同戦線……? を張って前へと進んでいるな! そんでその逆側から八百万と緑谷が完璧な共同戦線を張って進んでいる! というか爆豪、口悪すぎんだろ。ウケる』
『笑ってる場合か。そして1番前では引合と轟の一騎打ち……そして引合は仮想ヴィランを操り、隣にいる障子目蔵以外の全てを敵に回して戦っている……のか? 引合の奴……何故障子を手元に置いた? 』
イレイザーの視線がスクリーンに映し出されている障子に集中する。解せない。何故、障子を自分の手元に置いたのか、親交の深い轟と共に共同戦線を張れば圧倒的戦力の前に彼等は手も足も出ない。合理的に考えれば、手元に持つなら彼ではなく轟にする。なのに何故?
スクリーン上に映し出されている障子は個性である複製腕を幾重にも増やし続けその全てを目と耳にしている。それを見た瞬間、イレイザーはズルりと倒れ込むように椅子へと倒れ込み小さく笑った。
『ハハッ……確かに、合理的だよ引合。お前の選択は正しい。お前ならそれで問題ないだろうな』
『おいおい何勝手に納得してんだよイレイザー! 俺にも教えろよ! 』
得心がいったように笑うイレイザーをプレゼントマイクは揶揄するように語り掛ける。その声を聞きイレイザーはスクリーンを指差し言葉を続けた。
『障子目蔵の個性は『複製碗』腕を増やし、それを好きな肉体の部位に変換する事が出来る。つまり……そういう事だ』
スクリーン上の光景と共にイレイザーはゆっくりと語り出す。それを聞き理解したプレゼントマイクは、サングラスの奥にある目を見開き、張り上げるような声を上げた。
『あーっ! 成程成程! OK!OK! そういう事か、つまり引合の奴は! 』
「もう! 何度も何度もキリがありませんわ! 隙間を見つけようとも直ぐに塞がれます! 引合さんは轟さんと一騎打ちをしている筈なのに! 」
1歩を踏み出す事すら難しい戦場の中で、八百万は苛立ちを隠さずに声を荒らげた。それを聞きながら緑谷も内心同意しつつ眼前に放たれる鉄塊を拳で吹き飛ばし自分達が置かれた状況をゆっくりと確認し始めた。
「確かに可笑しい……轟君と引合君はあそこで一進一退の戦いを続けている。僕達に意識を向ける余裕があるようには思えない、何かがある……何処かに引合君がこの場を支配出来ている何かがある筈だ」
全身に個性を張り巡らせながら緑谷は辺りを見渡した。何度か辺りを見渡し、彼の観察眼は1つの異常を発見した。そして、その異常を理解した瞬間。彼の脳内が危険信号をガンガンと鳴らし始めた。
「障子君……ッ! そうか! この乱戦の中で気づかなかったけど、彼の個性なら! だから引合君は彼を味方に引き込んだのか! 」
複製碗を幾重にも出した障子の視線が緑谷にへと集中する。幾重にも存在する目が緑谷を捉え、1つの口が引合にへと語り掛けている。
「不味い! 八百万さん! ここを支配しているのは引合君だけじゃない! 障子君だ! 彼の目と耳がこの場にいる僕達を冷静に見渡して引合君に指示を出している! 引合君は彼の指示した場所に仮想ヴィランをぶつけるだけで良い! だから彼は僕達を相手にしながら轟君と戦う事が出来たんだ! 」
緑谷の発見した事実、それは障子目蔵の存在。彼が司令塔になり引合へと指示を出す。乱戦の中で闘うことなく引合にただ指示を出す障子の存在を彼等は気にする事がなかった。何故なら引合という存在が圧倒的過ぎたから、全対個で戦い押し返す怪物と言える存在、そんな彼で手一杯であり、此方側に何もしていなかった障子の存在を彼等は完全に忘れてしまっていたのだ。
「不味いぞ引合。恐らく緑谷にバレた」
「気にすんな障子、俺が守ってやるから安心しろ。お前はそうやって俺に指示を出してくれ そうしてくれれば俺は約束は守る 」
「分かってる。信じてるぞ」
今日で何度目か分からない程の障子と引合の会話。そんな中で引合と相対する轟は障子と引合が会話している事に疑問を感じるが、それを考える間もなく仮想ヴィラン達が鉄塊となり彼に襲い掛かる。
「おいおいショート。俺を目の前に考え事とは余裕だなぁ! そんな君には鉄の塊をプレゼントだ! 」
大空から轟に向かって放たれた鉄の流星群。それを氷の高速移動で避ける轟は、先程の思考を頭から放棄し眼前の好敵手へと視線を向けた。
現状、引合と障子が徒党を組んで5人と相対している状況。このままでは間違いなく轟を除いた4人は数と圧倒的質量に押され切ってしまう。そう確信した緑谷は八百万に口早に声を掛けた。
「八百万さん! 僕達だけじゃ押し切られてしまう! 数が足りない! だから後ろにいる皆を呼びたい! けど……僕達が下がればそれだけ前線が下がる! 何か下がらずに皆に伝える方法はないかな!? 」
「……これを使ってください! もう!さっきから此方ばかり! 」
鋼鉄が空を渦巻く。前線から遠く離れた第一関門の入口、そこで諦めるでもなく、ただ機を待つ者達がいた。
「糞ッ! 俺はもう行くぜ! 止めてくれるなよ! 」
「バッカ! やめろ切島! いくらお前が頑丈でもあの地獄絵図に入れば一瞬で終わりだ! 協力して計画を練って行かなきゃアレは突破出来ない! 」
前線で闘う彼等と同じクラスメイトであるA組の生徒達。そして
「……計画はこれで行く。良いかい拳藤、鉄哲、骨抜? 」
「おう! 俺は馬鹿だからこんなのはお前に任せる! 」
「まっ……しょーがない。それで行こうか、物間」
「まぁ詳しくはケースバイケース……柔軟に行こう。鉄哲は……そこら辺が苦手そうだから俺が付いておくよ」
彼等と同じヒーロー科である1-B組。彼等は一丸となり1つの目的の為に着実に動き出そうとしていた。
登竜門たる第一関門。それが開く時が少しずつ、少しずつ近付いている。
「……行くのか。心操? 」
「あぁ、俺は夢を諦めたくないんだ」
普通科の中で小さな決意が動き始めた。
なんか原作の方でOFAについて色々と判明しそうで震えています
ヤベぇよヤベぇよ……かんっぺきに独自解釈してるから原作と齟齬でまくりそうだよ助けてママン
後、物間が遠慮なく煽り倒してて嬉しい……嬉しい。
入れててよかった。オリジナル展開
皆様いつも感想ありがとナス。感想はオティンティンの自己顕示欲の発散と次話の活力に役立っております!