友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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第一関門 4 今世紀最悪の職員席

 

「んだ、ありゃあ……鷹が龍を産んだってのか? 」

 

教員席から鋼鉄に染まった空を見上げ、感嘆の息を吐き1人の老人がそう呟いた。何十年とプロヒーローとして活動して様々な修羅場を経験してきた彼からしてもこの光景に勝るものは記憶にない。鋼鉄の空。巨大な熱線が空を割るように天を突き、熱線と同時に大氷壁が幾重にも生み出されていく。この光景を見れば、世界の終わりがすぐ目の前に来ていると言われても違和感はない。

 

「轟少年……彼の個性は『半冷半燃』右から冷気を左から炎熱を発する個性、今まで左を振るう姿を見た事がなかったから実力を測りきれなかったが……まさかこれほどとは」

スクリーン上に映る光景を見ながら老人の言葉に追従するように、細身というより痩身痩骨と言えるほど痩せこけた男性は呟いた。彼にとってスクリーン上に映る少年達は自分が想像してたよりも遥かに力を持っていた。隣で唖然とした表情で呟く己の師匠たる老人はスクリーン上に広がる光景から決して目を離さずに呟く。額から流れ落ちる汗、それは決して気温からくるものではない。精神的な動揺からくる汗、つまりは冷や汗。

 

「……空を覆う仮想ヴィラン。どれ程の

出力があればあんな真似が出来る? 」

 

「少なくとも……私の知る限り、紬と要にはあれほどの出力はありませんでした」

 

男性の言葉を最後に押し黙る両者。この大会を見世物として見に来ていた観客達はスクリーン上に広がる光景に夢中になり、画面に釘付けになっている。馬鹿が競技の前に言っていた言葉『貴方達を決して退屈させない』その言葉通りだと言わんばかりの姿だった。

 

「……俊典よ。個性とは一体なんなんだろうな? 」

 

「……先生? 」

 

男性が初めて見る老人の姿だった。視線はスクリーンを見詰めているが視点が定まっていない、いや……この姿を一言で例えるならば現実を直視出来ていない。歴年の強者たる老人が見せる動揺、何十年の付き合いの筈なのにこの姿を男性は見た事がなかった。

 

「お前が……志村が……代々の後継者達がここまで繋いできた個性『ワンフォーオール』その力は最早、神の力と言ってもおかしくない」

 

「一振りで空が割れ、一振りで海が割れる……お前は天才だった。志村よりもあの力を使いこなしていたと言っても過言ではない」

 

「……一体何を言いたいのですか? 」

 

ここまで饒舌に話す老人の姿を見た事がなかった。何を言いたい、それが理解出来ず困惑する男性へと老人は上ずった声で言葉を続けた。

 

「『ワンフォーオール』が絶対の力ではいられない時代がすぐそこまで来ているって話だ。次の世代……お前の後継者が平和の象徴でいられるのか? 」

 

スクリーン上に広がる光景、それはある種の神話の再現。業火と氷河が同時に暴れ狂い、宙を覆う鋼鉄の空と何度も何度もぶつかり合う。その力の持ち主である少年達は自分達以外の存在が立ち入る事を許さぬと言わんばかりに、その力のぶつけ合いは苛烈を極めていく。

 

「時折思う……お前とアイツらが手を取り合い、今も共にいられたのなら、お前が突き放した手をアイツらが握り続けていられたのなら……少しは今が変わったんじゃねぇのかってな」

 

その言葉を聞き、男性は想起する。共に背中を合わせた者達、そして彼等の輝かしい未来を奪ってしまった自分の力の足りなさを。

 

「……全ては私の力が足りなかったからなのです。これ以上、私の道に彼等を付き合わせる訳にはいきません」

 

背中を合わせられる唯一無二の存在だった。どんな時でも共に危機を乗り越え、時には泣き、笑いあった。

あの時の私達に打ち砕けない壁はない、傲慢にもそう思ってしまえるほどに。

 

「……負の歴史は私が全て片付けます」

 

だが、これ以上私の道に彼等を付き合わせる訳にはいかない。人並みの幸せを得ている彼等に、これ以上強いる事はあまりにも傲慢が過ぎる。

 

「彼等の未来も……その子どもの未来も、私が守ります」

 

何故なら私は平和の象徴、人々に安心と安寧をもたらすヒーローなのだから。ヒーローは負けない、血反吐を吐こうが身体を壊されようが、最後には笑ってスタンティングポーズをとる者と相場が決まっている。

 

「……一度は遅れを取ったが、例え敵がかつてのお師匠の姿を取っていようとも。私は絶対に負けない」

子ども達の未来は私が守る。それが私の最後の仕事、彼等の子に掛かる宿敵の魔の手からあの子を解放し、未来のバトンを渡す。その為ならば例え敵が嘗ての師匠の姿を取っていようとも、私は負けない。

 

そして、願わくば。

 

「緑谷少年にも……引合少年にも。私達の宿命とも呼べる存在には関わらずに未来へと突き進んで欲しいのものです」

 

万感の思いを持って男性はそう言葉を纏めた。その言葉聞き、老人は愉快そうに笑い言葉を続ける。

 

「……そうだな。かなり大変な仕事になるぞ? 恐らく……俺達の人生全てを懸けた戦いにな」

 

「勿論……えっ? いや、これは私が背負うべき……」

 

老人の言葉に唖然とし、男性は口早に言葉を続けるが老人は聞く耳を持たないのか男性の言葉を無視して言葉を続けていく。

 

「乗りかかった船だ。どうせ老い先短い、最後まで乗らせてくれや。そのぼろ船に……

 

 

何をつまらない事を話しているんだいオールマイト? そんなつまらない事を話すよりも、今は大切な事があるだろう?

 

瞬間、怖気が走る。昔ならばこの声に万感の安心感を覚えたのだろう。だが、今は違う。今のこの声の持ち主は魔王と呼ぶに相応しい存在。

彼等が戦闘態勢を取るのは一瞬の時もいらなかった。周りにいた教師達も、その声の持ち主が突然現れたのか、声を上げるまで気付いていなかったのか、彼等が戦闘態勢を取った数瞬の後に戦闘態勢を取った。

 

「……飛んで火にいる夏の虫たぁまさにこの事か? なんの真似だ? オールフォーワン? 」

 

老人、グラントリノの鋭い視線が眼前の女性を睨み付ける。その目を見たオールフォーワンと呼ばれた黒髪の美女は愉快そうに顔を歪ませながら笑った。

 

「そう硬い顔をしないでくれよグラントリノ。今日の僕はただ見物に来ただけだぜ? 」

 

そう言いながら適当な席に座る女性。自分を囲んで臨戦態勢を取る教員達が脅威ではないと言わんばかりの態度でふてぶてしく、なお優雅に座り込んだ。

 

「……見物だぁ?何をだ? テメェの新しい玩具でも探しに来たってのか? まぁ何でも良い、テメェがこの場に来たのならここで捕えさせて……」

 

飛んでいる火にいる夏の虫とは正にこの事よと言わんばかりのこの状況。グラントリノとオールマイトが拳と足を振り被ろうとした瞬間。

 

「君達が僕に危害を与えようとした瞬間、第一関門にいる子ども達は全員死ぬ」

 

動きが止まった。正確には止めざるを得ないと言うべきか、眼前で止められた拳と足を見て女性は愉快そうに笑う。

 

「ハハッ。嘘だと思うなら試して見ると良いよ? 13号? スナイプ? エクトプラズム? 君達が彼等の代わりに襲いかかっても良いんだよ? 」

 

「貴様は……何処まで……ッ! 」

 

唇から血を流し激昂するオールマイトを見て女性は笑う。愉快な物をみたと、その端正な顔を酷く歪ませ笑みを浮かべた。

出来る訳が無い。そんな事を言われて行動を取れる者が、ヒーローが存在する訳が無い。例えブラフだとしても、眼前の存在は魔王、不可能すら可能にすらしてもおかしくない。

 

「何を怒るオールマイト? 当然の事だろう? 君達の目の前に行くのに僕がなんの用意もしていない訳がないだろう? 」

 

「……ここなら席も空いてるし、見晴らしも最高だ。教員特権ってやつかい? 羨ましいねぇ」

 

そう言いながら女性はオールマイトへと自分の隣に座るように手で促し始める。当然それに従うつもりのないオールマイトは眼下で優雅に座る女性を憤怒の表情で睨み付けるが、

 

「……どうしたんだい? 君達は試合を見ないのかい? 教員として、先生として、生徒の成長を見ないのは頂けないなぁ」

 

「そうだなぁ……座らないなら一人殺そうか? 」

 

まるで昼食を決める時のような気楽さで生命を奪うと宣言した女性の言葉を聞き、オールマイトは憤怒の表情のまま女性の隣へと座り込んだ。

 

「……何故ここに来た? 」

 

「何故? そうだねぇ……今日は人が多くてねぇ。 少しゆっくりと見学出来る場所を探してたんだ」

 

「あの子の晴れ舞台さ。僕が見ずに誰が観るって言うんだい? 」

 

「しかし……アレには僕も度肝を抜かれたよ、流石は僕の教えを受けた子だ。流れ全て自分の方へと持っていった。僕の教えも良かった……『黙れ』つれないねぇ」

 

ペラペラと話し続ける女性に対してオールマイトは修羅の眼光をもって言葉を黙らせ、言葉を発した。

 

「あの子達に手を出させない。緑谷少年に引合少年、これ以上彼等に手を出そうとしてみろ。その瞬間に貴様の生命を断つ」

 

「……僕を殺す、本気だねオールマイト? 」

 

だが、それがどうした? と女性は嗤う。酷く愉快そうに、見た者を不快にさせる笑みで笑う。

 

「もう一度言おうか? 僕は観戦しにきただけだ。君達と遊ぶつもりは毛頭ない」

 

一緒に観戦しようじゃないか。同じ弟子を持つ者同士、ね?




とある■■の日記 ver1

個性は代を深める事に深化していく
様々な個性が絡み合っていくもの、それこそが■
ならば■で■も■には何がある?

僕達はその手前にいる存在だ。
■はまだそれに気付いていないだろうけどね。やんちゃ盛りで愛しく可愛い、僕だけの教え子。

僕には■がいた。
そして、僕には■がいる。
僕と同じように■には■を与えよう
だからどうか僕を受け止めて欲しい
僕の■のように僕を■しないでくれ
僕が■を■したように僕は■を■している。

僕らを繋ぐたった一つの■
僕と■だけが見ることの出来る■これは僕にも内緒なんだよ?

応援してるよ■の晴れ姿を僕に見せて欲しい、勝利の栄光は何時だって■の物さ。結論、栄光も賞賛も全ては他の追随を許さない力に付いてくるものだからね。

経験則さ、僕のね。

嗚呼……楽しみだ。楽しみだよ、本当に

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