友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか? 作:オティンティン大明神
⚠チワワ要素あり
「──ッ! 舐めるのは大概にしやがれェェッ! 」
鳴り響く爆音が世界を空気と大地を震わし、着弾点に存在する全てを塵芥へと変えていく。実力差は理解していた、だからこそ己の持たぬ力を持つ老獪へと頭も下げ、教えを乞い、2週間という短い時間の中で個性を磨き続けたのだ。速度、瞬間的爆発力、容量。それら全てが今までの己を凌駕している自信がある。
なのに
何故。
「テメェは……ッ! これでも届かねぇってのか! 」
眼前で笑う存在に届かない、それどころかこの場にいる全ての者達が情けを掛けられ続けている。眼前の存在が自分達を反発させればこの場にすら立てない、それを理解してしまえる自分の聡明さが、情けを掛けられて尚届かない己の力が情けなくて、激情を抑えきれず唇を噛み締めた。
「舐めんなや! 俺はテメェを超える! 全部の力を使えや! テメェからすれば俺達は取るに足りないカスって言いたいんか!? 」
ここに来るまで勝ち続けきた生涯だった。初めて感じた挫折感を与えた存在を超える為に、ただそれだけの為にこの場にいる筈だった。他の有象無象とは違う、俺はお前を超える存在だと、頂点に経つ存在だとあの場で言い切ったのに。
「……危ねぇぞ。爆豪 」
瞬間、己の眼前に氷壁が立ち塞がる。此方を巻き込まないように威力を調整した一撃。先程まで繰り返した威力と比べれば天と地も離れている、その氷壁が今この場にいる自分に対する宣告そのものように感じ取れてしまう。
力不足
邪魔
雑魚はこの場から消えろ
「──ッ! 糞が……テメェらは……何処まで俺を虚仮すれば……ッ! 」
「駄目だかっちゃん! 1人で立ち向かったらまた! 」
「だぁってろ糞デク! 俺はお前らみたいな雑魚宜しく群れる訳にはいかねぇんだ! 」
そうだ。俺は何れ頂点に立つ男、オールマイトも舐めプもあの糞女も全部ぶっ飛ばして俺こそが最強だと。
そして、その為には先ず眼前の存在の全力を上から叩き潰す必要がある。
片手で筒を作り、爆風の射出するのを最小限まで細め貫通力と射程距離に特化した構えを取る。サポートアイテムを抜きで放てば怪我をするのは必須の一撃、ここで放つのは得策ではない。まだ第一種目の第一関門、こんな所で怪我をする必要が何処にある?
「(あるに決まってんだろが……ッ! 俺が出せる力全てを出し切らずに何が全力を出せ!だ。元より実力差は歴然としてんだ。俺は出せる全ての力を使わねぇと始まらねぇ! )」
「当たって死ねやぁ! 」
彼が2週間の間に作り上げた必殺技の一つ。徹甲弾、彼の持つ爆発力を一点に集中させた一撃。広範囲に壊滅的な一撃を放つ威力が一点に集中する。それによって生み出された射程距離は轟焦凍が生み出す熱線と同等に近いものを持ち、貫通力に関しては熱線を遥かに凌駕していた。
そんな一撃が人間に当たれば死は免れない。放たれた一撃、圧倒的威力と引き換えに爆豪の手は、その一撃に耐えきれずに裂傷と火傷を引き起こした。
「……ッ! どうだ……ッ! 」
睨みつけるように着弾点を睨みつける。白煙が巻き起こり靄に隠れた場所から聞き覚えのある脳天気な声が響いた。
「やっべぇ……当たったら確実に死んでた。うわ怖……マジで死ぬかと思った」
手から滴るように流れ落ちる血液、もしも今、もう一度同じ威力の徹甲弾を放てば二度と手は使い物にならなくなる。もう徹甲弾は放てない。
そして、お返しと言わんばかりに空から鋼鉄の流星が自分に向かって流れ落ちる。呆然と空から降り落ちるソレを眺め心の中で悪態をついた。
「(ハッ……糞が。化け物かよ)」
頂点に立つ、その頂点がどれだけ高いのか。それを改めて感じ、爆豪は襲い掛かるであろう一撃へと身を委ねようと
「爆豪! 何ボンヤリしてんだ! 危ねぇぞ! 」
襲い掛かるであろう一撃はそんな声と共に粉砕された。声の主はそのまま襲いかかる仮想ヴィランを拳で殴り抜き粉砕する。その存在に見覚えがあった、同じクラスにいるモブの1人。自分に対してヤケに絡んでくる存在、赤い髪が重力に逆らうような髪型。
「クソ髪……」
「切島だ! 頼む瀬呂! 」
その声と共に爆豪にテープが巻き付き身体が宙を舞う。身体に巻き付いていたテープが外れ、先程いた場所から離れた。
「はいよっと。あのなぁ……落ち着けって爆豪。というかお前……その手、大丈夫か? 」
そう言いながらニヒルに笑う顔を見て爆豪は考える。これも自分のクラスにいたモブの一人だった筈、名前は知らないが。
「……しょうゆ顔」
「瀬呂な!ってやべぇ! 芦戸ヘルプ! 」
「任せて! 」
此方へと放たれた仮想ヴィランが鉄を溶かす溶解液によって半身を失い地面へた落ちる。その一撃を放った存在も自分と同じクラスのモブの一人、名前は知らない、覚える必要も無いと無視していた。
「……黒目」
「芦 戸 三 奈 ッ! アンタ人の名前覚えてないの!? クラスメイトなんだけど!」
「知るか……テメェらなんで」
理解が出来ない、俺を助ける意味がない筈だ。これは競走、ならば俺を助けずにその隙を見てアイツを越えようとする、それが普通の考えの筈。
「なんでって! そんな事当たり前じゃん! 馬鹿なのバクゴー!? ってヤバ! 助けて青山! 」
「フゥッ☆ フゥッ☆ ハウッ……ッ!☆ キラメキが……止められないよ☆ 」
コイツに関しては存在すら知らない。だが、黒目が名前を呼んでいたという事は同じクラスのモブなのだろう。それはどうでも良い、だが……何故。
「クラスメイトの危機、一つや二つなんとかしてこそヒーロー科って事だろうが! 」
仮想ヴィランと立ち向かいながら切島が吠え立てる。その言葉に追従するように瀬呂は笑い言葉を続けた。
「まっ……平たく言えばそうだな。お前が俺達を気にしていなくとも、俺達はお前の事を案外気にしてるって事」
「そーいうこと! バクゴーって強いけどメンタル弱そうだしね! 案外隠れてメソメソしてそうなイメージある! バクゴーってガキ大将しててちゃんとした友達いないタイプでしょ! 」
瀬呂の言葉を被せるようにバッサリ言い放つ芦戸の言葉を聞き、周りにいるクラスメイト達は笑い緑谷は何とも言えない顔で苦笑いをする。
「子犬……チワワみたいだよね☆ いつもキャンキャン吠え立てて威嚇してるみたい……キラメキが足りてないよ☆ 」
「「チッチワワ! 似合わねーっ! 」」
青山の恐れ知らずの一言がツボに入ったのか瀬呂と芦戸が笑い、唖然とする爆豪へと切島の言葉が掛けられた。
「……という訳で爆豪! あんま無理すんなよ! 引合を何とかするまで後ろに下がってて良いからな! 」
「えっ?何、俺ハブ? ズルいぞ! 俺も仲間に入れてくれよ! 」
謎の盛り上がりを見せる彼等を見て引合は文句を言うが、それをかき消す程の大声でクラスメイト達の反論が響き渡った。
「「だったらお前はそこを退け! 」」
「すまん! それ無理! 取り敢えず物理的に俺を乗り越えて行くんだな!ハーッハッハッ! 分かったか! 」
高笑いを響かせる引合の声を聞き、芦戸と瀬呂はウンザリしたような声色で呟く。
「……引合って絶対行事で周りがドン引くくらい全力を尽くすタイプでしょ。なんかそんな気がする」
「……あーなんか分かるわ。文化祭とかアイツに全部任せたらスゴい事やらかしそう、なんかこう……学校全部を巻き込んだ一大イベントとか」
笑いながら仮想ヴィランへと立ち向かう彼等に酷く小さな声が掛けられた。
「……んで、行きゃあ良いだろうが。テメェら勝ちたいんじゃねぇのか? 」
「そりゃ勝ちたいッ! けど! それよりもそんな顔してるクラスメイトを放って行ける訳ないじゃん! 」
「俺も芦戸と同意見だな。自分を最優先して如何にも泣きそうな奴を放っておいたらヒーロー志望失格だろ……っと!」
「……チーズ食べる? ☆」
1人を除いて言ってる事は同じ。そして、切島の声が吠えるような叫び声が響き渡る。
「plusultraだァァァッ! ウオオオオッ……ってやべぇ! 助けてくれ砂藤! 」
「しまらねぇな切島! 手伝ってくれ尾白! 」
「ほんとにしまらない……ねッ! 」
気付けばA組の全員が最前線に集まり、近接戦闘が得意な者、遠距離戦が得意な者、そして我が道を行く轟の3パターンに別れ出す。
「チワゴー! さっさと動いてよ! こっちだっていっぱいいっぱいなんだから! 」
「──誰がチワゴーだッ! ぶっ殺されてぇか黒目ェ! 」
その瞬間、爆破を放ちながら爆豪は眼前から突撃してくる仮想ヴィランを蹴り飛ばす。蹴り飛ばしながら爆破を放ち、一番柔らかい関節部分を粉砕した。
「おせぇぞチワゴー! 」
「早くしてよチワゴー! 」
「壁とは!超えられる為に存在するが、そんな簡単に超えられる訳には行かねぇんだよなぁ! ましてや、あのチワゴーに負ける訳にはいかないよなぁ! 」
最前線で立ち向かうクラスメイトと引合の熱いチワゴーコールに青筋を立てる爆豪だったが、舌打ちをした後。近くにいる者達へと声を掛ける。
「……引合まとめてぶっ飛ばされてぇかテメェら……ッ! ……チッ! まぁ良い! おい黒目! しょうゆ! 金髪モブ! 力を貸せや! 俺がお前らの個性を使ってやる! 」
それは爆豪勝己にとって最大限の譲歩だった。決して誰とも群れない、だが現状、単独では決して勝てない。ならばどうする? 力を借りる? 論外。決して己は雑魚と一緒に群れるつもりはない。
ならばお前らを使ってやる、お前らの個性を使って俺がアイツを倒す。そう思い吐き捨てた言葉だったが。
「えっ……やだ! 使ってやるって何様? そんなんだからチワゴーなんだよ? 」
「同じく☆ 」
けんもほろろに否定されてしまう。その言葉に血管が切れたのを感じながら爆豪は吠えたてるが
「アァ!? ぶっ殺されてぇかテメェら! 」
「ほら☆ また吠えた☆ 」
青山の容赦ない一言で呻くような顔をしながら爆豪は悪態をつく。
「──ッ!糞がッ! 」
「まぁまぁ……今回はこのコミュニケーション力の足りない可愛い可愛いチワゴー君の意見を尊重しようぜ? 」
「うーん……しょうがないなぁ! 今回だけだよチワゴー! 」
「仕方ないね☆ そこまで言われたら折れなきゃ優雅じゃない☆ 」
そんな爆豪の様子を見ていた瀬呂が助け舟を出し2人は納得したように返事を返す。彼の聡明な頭脳が3人に玩具にされた事実に気付き、腸がねじくりかえる程苛立ち、両腕から爆破を発する。
「──テメェら……ッ! 」
「ほら来いや愉快なチワゴー御一行! 他の奴らはガンガンこっち来てるぞ! 」
引合の容赦ないチワゴー煽りを聞き、
芦戸が声を上げる。
「だってさ! どうする!? 」
「……力を使ってやるって言うくらいだから、策はあるんでしょ?☆ 」
「だな。ないなら頭脳派瀬呂さんが作戦立てて爆豪の個性を使ってやるよ」
これまでの人生ならここまでボロクソに言われた事はなかった。常勝、勝ち続けた人生。勝者は孤高であるべき、群れるなんて論外、それは今も変わらないが。
「ハッ! テメェらの個性、俺が上手く使ってやる! 」
今だけはそれを捨てよう。今の俺では奴を越えられない、ならば他者の力を使うくらいの譲歩が必要だ。勝利に貪欲に、どんな手を使ってでも勝つ。
この小説でやりたかった事 その1
チワゴー勝己