友人が能天気な紅白饅頭なんだがキレても良いか?   作:オティンティン大明神

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ショートの家

遅刻遅刻ー!俺、凝山中学三年。引合石!昨日夜更かししてゲームをしていたせいですっかり寝過ごしたの!遅刻したら生活指導のドSババアに心身ともにフルボッコにされちゃう!個性を使って何時ものように登校していたらプロヒーローが俺を怒って追いかけてきてるの!

 

「こらー!あれだけ個性を使って登校するなと言ってるだろうが!」

 

「げっバードマン!くっそこんな日に限って!」

 

プロヒーロー、バードマン。個性は鷹、鷹のように凄まじい速度で空を飛ぶ事が出来るヒーロー。ついでに鈎爪で相手を捕まえる事も出来るヤベーヤツだ。

 

「今日は捕まえて説教してやるからな!一時間コースを覚悟しておけ!」

 

「冗談じゃねぇ!そんな事されたら遅刻しちまう!」

 

電柱に飛び乗り、個性を使い空を舞う。後ろからドンドンと近寄る悪魔に声の出ない悲鳴をあげそうになりながら俺は学校への道を急いだ。

 

「捕まえたぞ!」

 

「ヒェッ」

 

全くもってついてない。遅刻するわバードマンに捕まるわ、今日は厄日だ。

 

「 ──聞いているのか引合!全くお前という奴はいつもいつも」

 

「ウッスすいませんでした。これからは気をつけて個性を使います」

 

バードマンに捕まった俺は近くの公園に下ろされそのまま説教をくらう。希にある光景なので遠くから俺達を見た人は

「コイツまたやってるよ」といった顔をして通りすぎていく。見せ物じゃねーぞ散れ散れ。因みにうちの学校の奴も俺の事を見ていた。これは学校中の噂になる、間違いない。

 

「そうだこれからは…じゃなくて!個性を使うなと言っているだろが!色んな人が、外でむやみやたらに個性を使うと大変な事になる!それを未然に防ぐ為にだな…!」

 

「良いじゃん。悪いことには使わないんだから」

 

「その考えが悪いと言っているんだ!」

 

知らん。皆隠れて個性使ってるんだからそこら辺気にしなくても良いだろ。

 

「良いじゃん別に、皆隠れて使ってるんだから問題ないだろ。力仕事のおっちゃんだって異形系とか増強系の個性とか念力系の個性を使って仕事してるじゃん」

 

「設計図書く時に精密に動ける個性がある人は当然使うし俺が登校する為に個性を使って何が悪い」

 

バードマンの話は何時も長い。なので俺は何時も完全論破する時に使う『皆使ってるから良いじゃん』を言い放つ。

この話題はクリーンヒットするらしくバードマンがいつも返事に困っている。

 

「いやー…国が法律で決めているから本来は使っちゃ駄目なんだがな?本来はそんな事で個性を使っちゃ駄目なんだが…」

 

「でも皆使ってるじゃん。知り合いのおばさんだって個性を使って家事をしてるぞ」

 

「…駄目なものは駄目だ!ちゃんと分かってる癖に言い逃れをしようとしても無駄だ!」

 

ちぃ!後少しで言いくるめたものを!思わず舌打ちしそうになるのを我慢して話を続ける。

 

「分かりましたーこれからは個性を使いません」

 

「…絶対使うつもりだろ?全く…お前のお父様やお母様がどんな思いで」

 

「…父ちゃんと母ちゃんを知ってるのか?」

 

「…あー!いや!うん!ほら!そろそろ学校の時間だろ?」

 

顔を歪ませ、しまったと言わんばかりに突然話題を変えるバードマン。なんだこいつ凄い怪しい。怪しすぎてヴィランに見えるレベルだ。

 

「いやもう完全に遅刻してるからどうでも良い。それよりもさっきの話の続き」

 

「おーっと!そろそろパトロールの時間だ!サラバだ少年!これからは気をつけろよ!」

 

「ちょっ…待て!ストップ!止まれ!」

 

その言葉を残し空中へと飛び立つバードマン。凄まじい速度で大空に消える背中、届かない俺の声。ポツンと取り残された俺は鞄を背負い直し、ため息を吐きながら学校へと急いだ。

 

「──それで学校に遅刻してドSにこってり絞られたと。ハッ!ざまぁみやがれ!」

 

「…今度ドSに大和が告白しに行くって言ってやる」

 

「やめろ、やめてくれ」

 

「『子どもは三人作りたい』もプラスしてやる」

 

「すいません調子のりました」

 

「…今回だけは許してやる。次はないからな」

 

人を煽っていたかと思えば即座に手のひらを返す大和。コイツは煽ったら倍になって返ってくると分かっていて何故煽るのか

 

「煽れる時に煽っとけがうちの家訓でな」

 

だから捨てちまえよ。そんな糞の役にも立たない家訓。

 

「というか今日はショートいないな。休みか?」

 

「おう。なんか風邪引いたらしいぜ」

 

「あの個性でも風邪引くのか」

 

「あんな凄い個性持ってても風邪引くみたいだぞ」

 

今日はショートは風邪で休みらしい。俺達からすれば眼から鱗が出るほどの衝撃だ。ショートの個性的に考えて風邪とか引きそうにないとばかり思っていた。

ショートの個性は『半冷半燃』熱と冷気を操る個性。熱と冷気でどんな温度状況下でも体温が乱れる事はない。つまりは

 

「…疲れてたのか」

 

「いやーないだろ。あのショートだぜ?どれだけ走り回っても息一つ切らさないお前並みのタフネスがある奴なのに疲れる訳がないだろ」

 

「ほら。お父様の事とかで…心が」

 

「あー…」

 

俺の言葉に納得したのか、微妙な表情を浮かべる大和。ショートは父親と仲が非常に悪い。ショートの人との付き合い方が変化しても、これだけは全く変わらない。色々事情はあるみたいなので俺からショートには何も言うつもりはないが。

簡単に言うならショートがマザコンを拗らせてる。そりゃまぁ酷い具合に。

 

「まぁ俺もマザコンみたいなもんだしな!」

 

「…これほど笑えない自虐ネタがあっただろうか」

 

「…正直言って後悔した」

 

大和の何一つ笑えない自虐ネタで空気が死んだり何時ものように馬鹿をやったり授業を受けたりして時間はドンドン過ぎ放課後となる。

 

「おい引合。お前轟にプリント渡しに行け」

 

「ウッス分かりました」

 

「あー…信条…お前は…うん」

 

「ウッス女と遊びに行くっす。まだ死にたくないっす」

 

「…まぁいいか。任せたぞ」

 

大和に行かせたらその家の女性を軒並み落とすから担任も行けとは言えず大和も察して普通に女と遊びにいくと返す。これがモテ男の宿命、俺には少々荷が重い。だが、学校中の女子にモテモテと考えるとちょっぴり羨ましいと思わん事もない。

中学生男子故致し方ない、男は誰だってモテたいんだ。ショート?アイツは心が小学生だから。

 

「じゃあな引合。女とイチャイチャしてくるわ」

 

そう言いながら煽ってくる屑。次はないと言った筈だが?

 

「怒江洲せんせーい!大和が呼んでますよー!」

 

「やべっマジでやめろ!死ね屑!」

 

ドSババアを大声で呼びながら俺は教室を後にした。因みにこれは余談だが、大和は俺が大声で怒江洲を呼んだ瞬間。ダッシュで教室を出て、俺が学校を出る頃には既に町で待たせた女の元まで辿り着いていたらしい。

アイツの逃げ足の速さは最早個性ではないのだろうか?

 

「…相変わらず糞でかい家だな。俺の家二つは入るぞこれ」

 

ショートの家は糞でかい武家屋敷みたいな造りをしている。俺の家もそこそこ大きいがショートの家はそれが二軒は軽く入るくらいの大きさだ。正直デカ過ぎて掃除に困るのではないのかと何時も思う。

 

「あれ?もしかして引合くん?」

 

「あっ冬美さん。どうもっす」

 

インターホンを鳴らそうと思っていたら後ろにショートのお姉さんがいた。

 

「はい、お茶どうぞ」

 

「有難うございます」

 

「どうぞ。お菓子もあるからね」

 

ショートのお姉さん…冬美さんにプリントを渡して帰ろうかと思っていると折角だからと言われ、家に入れられお茶とお菓子を出され完全に歓迎ムードになる。やべぇ前にもあったぞこれ。間違いなくショートの学校生活の様子を根掘り葉掘り聞かれるやつだ。

 

「それで…焦凍の事なんだけど。最近学校で何か思い詰めた様子はなかった?」

 

「うーん…特になかったですね」

 

ショートが思い詰めていた様子…ないな。

 

「そう…良かった。焦凍ね、学校で何があったのかを楽しそうに教えてくれるの」

 

「はぁ…」

 

「君と出会う前は学校に行くのが嫌だったのを隠してたけど、今では毎日元気に学校に行くようになったの」

 

「そうなんですか」

 

そんな事俺に言われても、としか思えないが取り敢えず相槌を返す。

 

「最近一緒にお蕎麦を食べたんでしょ?その時のお蕎麦が凄い辛かったとか、ほんと楽しそうに話してたの」

 

「あー…あの時ですか。大和が蕎麦に七味やらなんやらぶちこんで兵器を作った時ですね」

 

あれは本当に凄かった。次の日の尻が使い物にならなくて座る事すら拷問だった。

 

「焦凍と友達になってくれてありがとうね」

 

「ショートと遊んでて面白いから一緒にいるだけなんで…そんな事言われましても」

 

「私が言いたいだけだから。気にしないで」

 

この後は予想通りショートの学校生活を根掘り葉掘り聞かれた。聞かれ終わった後、風邪っぴきのショートにプリントを渡し家に帰ろうとすると、帰ってきたばかりのショートの父親と玄関でカチ合う。

 

「あっどうも。おじゃましました」

 

「あぁ…君か。気をつけて帰ると良い」

 

「うっす」

 

「…一つ聞きたいんだが。親御さんは息災か?」

 

「…何時も通りピンピンしてますけど」

 

「…そうか。引き留めてすまなかったな」

 

相変わらず筋肉ムキムキの巨体。ショートと全然似てないなと考えつつ、俺は帰りの道を急いだ。




ショートの部屋にて

「おっすショート。元気か?」

「…元気そうに見えるか?」

「…そこそこかな?ほらプリントだ。机に置いとくな」

「わりぃな」

「良いってことよ。お前はさっさと治して学校来い。何時ものメンツじゃないとなんか物足りないから」

「…明日は絶対行く」

「…明日も風邪引いてたら休めよ。来たとしても家に叩き返すからな」
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