「女神とゲームの超次元」第1話
「変わる次元(せかい)~黒の出会い~」
-「四女神オンライン」-
それは今巷で大人気のVRMMORPGだ。ソロプレイから大人数でのマルチプレイなどでこの世界の復活した魔王を倒す為に各地に散らばっている神器を集め、伝説の4人の女神を復活させ、その力を借り共にこの世界の平和が取り戻す……というゲームだ。そんなゲームをプレイする少年がここにも1人いた。
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-yozoraさんがログインしました-
誰もいない宿の一室にその文字が浮かび上がる。
虚空から青い光が集まり凝縮し人間の形に徐々になっていく。頭からつま先まで成形が終わった瞬間、光が弾け飛ぶ。光の中から出てきたのは黒い服装の少年だ。少し長めの黒髪、優しい光を宿した瞳、見た目は華奢に見えて力のある身体、少年の名は鳶沢(とびさわ)夜空(よぞら)。「四女神オンライン」をプレイするソロプレイヤーだ。
「……~んっ!」
夜空はまず大きく身体を伸ばし軽く肩や首を回す。すぐに動き出さずに軽く準備してから動くのが夜空のログインしてからの日課だ。
「さて……っと」
夜空は空中で手を軽く横に振る。するとそこにメニューウィンドウが出現した。今の夜空の服装はカジュアルな物の状態なのでフィールドに出るようの装備へと変更していく。メインの色が黒なのは変わらないが胸当、篭手、腰当、ブーツと必要な部分にはきちんと金属製のパーツがある為、街中用の服装と違う事が分かる。
最後に武器を装備する。夜空の背中に一振りの剣が現れる。グリップに触れ、確認した所で夜空は部屋を出る。
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クエストを受ける為に集会所へと向かっていると見覚えのある人影が見えた。夜空と同じくらいの身長、腰に装備されている銃で確信した夜空は前にいる人影に近づき話しかける。
「おーい、待てよ~」
その声に反応した人影がこちらに振り向く。つり目気味の瞳と多少ボサボサな茶髪、濃いグリーンのジャケットを羽織った彼の名は
「龍真、お前もログインしてたのか。」
齋藤(さいとう)龍真(りゅうま)。通称S氏。夜空とはリアルで同じ高校に通う少年だ。友達である彼とは同じ時期に「四女神オンライン」を一緒に始めたので実力は折り紙付きの銃の使い手だ。
「おぉ、夜空か。さっきログインしてな、今使ってる銃の強化素材が足りないからクエストに行って取ってこようと思ってたんだ」
それを聞いた夜空はニヤリと笑い
「そうゆう事なら付き合うぜ。クエストには行こうと思ってたがまだ決めてなかったしちょうど良い」
「なら決まりだな。受注して早速行くか」
話がまとまった2人は集会所へと歩いて行く。この先で自分達が遭遇する運命に気付かぬまま……。
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「ふっ!」
夜空が手にした剣を振るう。目の前にいたモンスターは吹き飛び光となって消滅する。その瞬間、背後から別のモンスターに襲われそうになるが空中で身体がくの字に曲がり消滅した。龍真が素早くモンスターが撃ったからだ。
「ナイスタイミング」
夜空は龍真に近づきながら先程の銃撃を褒める。
「俺りゃ普通に撃っただけだよ。それにアタッカーがあの”魔神”だからソロよりかなり楽だしな」
「はいはい。んじゃ、必要な素材も集まった事だし街に戻りますか~」
”魔神”というワードには触れずに夜空は聞き流し歩き出す。
「おい、待てよ~置いてくなって!」
先に歩き出した夜空を追うように龍真も後を歩く。
2人が会話をしながら歩き、街が見えてきた時の事、道端に何か落ちているのに夜空が気づいた。
「ん?」
道端に落ちていた橙色の光を放つひし形の宝石のような物を見つけたのだ。
「なぁ、龍真。あれ何だろ?あそこに落ちてる宝石みたいなやつ」
夜空は落ちている宝石とおぼしき物を指差しながら龍真に聞いてみる。龍真も夜空の言葉で気づいた様で指差した方にあるものを見た。
「何だあれ……?見た事無いアイテムだな……モンスターのドロップ品か?」
「いや、ひし形の宝石を落とすモンスターなんて聞いた事も見た事も無いぞ……となるともしかしたらあれってレアアイテムか!?」
夜空は少し興奮したように言った。レアアイテム、その言葉に龍真も惹かれたのか夜空の方を見て
「もしあれが、まだ他のプレイヤーが誰も見つけた事の無いアイテムなら……凄いぞ!俺たちが第1号だ!」
2人はその宝石のような物がレアアイテムだと考え、周りに他のプレイヤーがいない事を確認してから宝石のような物に近づいた。
大きさとしては手のひらに収まるくらいのサイズでやはり宝石のような輝きを放っていた。
目の前まで来た2人は早速ゲットしようとする。
「どっちが取る?」
夜空は龍真に聞いた。
「夜空が見つけたんだ。お前が取って良いぜ。後からじっくり調べてどのモンスターか採取場所なのか分かれば俺もゲット出来るしな」
「分かった、じゃあ……」
そう言って夜空は宝石のような物に手を伸ばす。手が触れたその瞬間-
いきなり宝石の光が大きくなり2人を包み込む。
「な、何だ!?」
「何だよこれ!?」
光に包まれた夜空と龍真は混乱した。さらに宝石は輝きを増し─
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」」
─その後、道には夜空と龍真、そして落ちていた宝石の姿は無かった……。
□ □ □
─光の中、夜空は目を覆っていた手の隙間から4つの影を見る。シルエット的に女性だろうか……
だが、それも一瞬で光に包まれ─
「……………………ん、っ……」
夜空は倒れていた。場所は分からない。唯一分かる事は今自分が倒れている場所の地面が硬い事だけだ。
「くっ………………龍真……?」
友の名を呼ぶが返事は無い。
頭を抱えながら身体を起こした夜空が目にしたのは─
「──こ、ここは……?」
まず、目に入ったのは大きなパラボラアンテナのようなもの、そしてパイプのような物が繋がっている事、そして─
それら全てが重厚な黒色だという事だ。
明らかに違う。ここは「四女神オンライン」内でも無ければ現実世界(リアル)でも無い……そう言葉で表すならばまるで─
「べ、別次元……なのか……?」
周りを見渡すと、どうやら今いる場所は街の外のような場所だと分かった。パラボラアンテナの前に壁があり、どうやら囲うようにあるからだ。龍真の姿を改めて探したが見つからなかった。どこにいるのだろうか……?
次に夜空は自分の姿を確認する。鏡は無いが、壁が艶のある黒色の部分があった為、そこに自分の姿を写して確認した。髪も瞳も身体も全て変わらない自分の姿で夜空はほっと安心する。
混乱と油断により夜空は自分に近づいてくる人の気配に気付けなかった。
「──ねぇ?あなた、大丈夫?」
夜空は驚きで固まった。いきなり背後から声をかけられるとは思ってなかったからだ。
夜空は振り返った。そこには1人の少女が立っていた。
まず目に入るのはツインテールにしてリボンで括ってある艶やかな黒髪、首元の青いリボン、ドレスのような服装、そしてこちらを見つめる赤い瞳。夜空は思わず見とれてしまった。
「本当に大丈夫?どこか悪い所でもある?」少女は心配そうにこちらを覗き込む。その瞬間、夜空の視界に程よい大きさと柔らかさを持っていそうな少女の胸がちらっと見えた。
「だ、大丈夫だよ……うん、大丈夫」
夜空は慌てて答えながら少し後ろが下がる。少女は不思議そうにしたが夜空はほっとした。
「あなた、どこの都市から来たの?」
「……え?」
突然の質問に夜空はまた固まる。どこから来た……?
「プラネテューヌ、リーンボックス、それともルウィー?」
少女が3つの都市の名前と思われるものを上げたが夜空には全く分からない名前ばかりだ。
「分からない……」
夜空にはそう答える事しか出来ない。
「え……?」
少女は多少混乱したようだが、俯いた夜空を見て何か思ったようで
「ねぇ、一体どうしたのか私に話してくれない?」
優しく少女は夜空にそう言った。その言葉で夜空は今まで分からなかった緊張の糸が切れたのかその場にへたりこんだ。
「だ、大丈夫!?」
少女が慌てて駆け寄り、支えてくれる。温かく柔らかなその手に包まれ落ち着いた夜空は先程の出来事を少女に話した。
「……それで気がついたら、ここに倒れてたんだ」
少女は夜空の話を聞き終えると
「ひし形の宝石……もしかして……」
何か考えていたが少女は夜空にもう1つ質問した。
「そういえばまだ聞いてなかったけどあなた名前は?」
そういえばまだ言ってなかったな……夜空もそう思いつつ自分の名前を少女に言う。
「夜空…鳶沢夜空だ」
「夜空…夜空っていうのね」
うんうんと少女は頷いている。
「君の名前は…?」
今度は夜空が少女に聞く番だった。
「私?私の名前はノワール。ラステイションの守護女神よ」
□ □ □
ラステイション?守護女神…?また分からない言葉が出てきた。少し落ち着いていた夜空だが、眉をひそめる。
「ラステイションも都市の名前なのかな?」
夜空は情報を集めるためにノワールに質問する。
「そうよ、ラステイションはここ」
そう言ってノワールは夜空の背後の街を指さす。
「ここなのか…」
夜空は改めて自分の背後に見える建物を見た。そしてもう一つの質問をする。
「それと、守護女神っていうのは…?」
守護女神についてノワールが説明する。
「守護女神っていうのはさっき言ったラステイションを含む四つの国それぞれの象徴で、国を守護する女神の事よ。守護女神は人々の信仰心からなる力「シェアエネルギー」を自らの力として国や国民たちを守り抜くの。これが守護女神よ」
守護女神の説明を聞いた夜空は「四女神オンライン」に存在する伝説の女神に似ていると思ったが、実際に見た事が無い為、何とも言えないが。
情報を出来る限り集めた夜空はこれからどうするかを考える事にした。
(さて、これからどうするか…)
そこで夜空はまだ確信が持てていない大切な質問をしていない事に気が付いた。
「あの、もう一つ良いかな?」
「何かしら?」
「この世界は一体どこなんだ?ゲーム内でも無ければ、俺の知っている現実世界でも無い。なら、ここは何処なんだ…?」
上手く伝えられるか心配だったが、ノワールは夜空の質問の意図が分かったらしく口を開く。
「ここは超次元にあるゲイムギョウ界よ」
「…超次元の…ゲイム……ギョウ界……」
ノワールの言葉をゆっくりと繰り返した夜空は自分がこれからどう行動するべきかが分からなくなってしまった。次元の違う世界、行方の知れない友達、そしてこの世界から現実世界へ帰る方法……。様々な不安要素が頭の中に出てきてしまう。夜空は完全に混乱してしまった。
「お、俺は……一体……」
頭をかきむしり抱え込んでしまった夜空を見て、ノワールが夜空に近づき声をかけた。
「ねぇ、夜空。あなたはこの世界に迷い込んできてしまったのでしょ?一緒にいた友達も心配になるの、とても分かるわ…。だから私の所に来ない?」
ノワールからの突然の提案に夜空は呆然とした。
「え?」
「さっきも言ったけど私は守護女神。このラステイションを統治しているのよ?あなたの友達もおそらくこの世界に迷い込んでいると思うから一緒に探してあげる」
ノワールの言葉を聞いた夜空は驚きがあった。
「何で…初めて会ったのに、俺の事がよく分かってないのに何故、そんなに優しくしてくれるんだ…?」
その言葉に対してノワールは少し照れながら
「決まっているじゃない。困っている人を助けるのは女神として以前の事。それに……あ、あなたとなら良いと、友達になれそうって思ったからよ……」
この言葉は夜空の心に深く響いた。そして夜空は決心する。
「なら、お願いして良いかな?」
ノワールは胸を張りながら
「まかせなさい!きっとあなたの力になってみせるわ。だから……よろしくね夜空」
そう言ってノワールは夜空に手を差し出す。夜空も答えるように手を出しながら
「こちらこそ、よろしく……ノワール…」
やっと名前で呼んでくれたのが嬉しかったのか笑顔になりながらノワールは
「それじゃあ行きましょうか」
「うん!」
こうして夜空はノワールと共に歩き出す。龍真を見つけ、この世界から自分たちの世界へ帰れるようになる為に……。