やる気のない女提督と睦月型   作:十六夜月乃

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書きたいこと全部書いたらとんでもなく長くなっていた…!しょうがないよ、うん、しょうがない。

ドロップする様子ってどんな感じなんだろう…



第9章 「如月着任!」

提督に出撃してくれと頼まれた次の日。

皐月、睦月、卯月、長月は黙々と艤装のチェックをしていた。

 

「…4人とも、何で黙ってるの?いつもうるさい卯月まで黙っちゃって…」

【……】

 

沈黙に耐えかねて、提督が困ったように言うが、誰も反応しない。それを見て提督は顔を青くして声をあげた。

 

「ねぇほんとにどうしちゃったの!?何!?何があったの!?天変地異!?地球が滅ぶ!!」

「うるさーーーい!!何なんだお前はさっきから!」

 

提督の叫び声に叫び声で返す長月。提督はホッとして再び訊く。

 

「何で黙ってるの?何かあった?」

 

本当に困った顔で尋ねる提督の様子を見て、卯月が答える。

 

「だって…司令官が出撃してって頼むのなんて珍しいんだもん…」

「私、提督だよ?君らを出撃させるのが仕事なんだけど」

「そうだけど、そうじゃないぴょん…」

 

言いにくそうに卯月は言葉尻を小さくして目をそらす。

それを聞いていた皐月が、ため息をついて口をはさんだ。

 

「ついこの前『どうせ他の鎮守府が敵を倒してくれるっしょ、出撃しなくていいよ』って言ってたくせに?」

「それはそれ。これはこれ」

「ほら、ね?そうやってはぐらかしてまで出撃させるなんて、何かあるんじゃないかって思うよこっちは」

 

ガチャンと手元の12,7㎝連装砲B型改二に弾を込めて言う皐月の視線から逃げるように海の向こうを見つめる提督。

皐月はやれやれと頭を振って艤装のチェックに戻る。

 

「我々に言えないことか?」

「んにゃ?んなことないよ?」

「なら教えろ」

「ちゅーしてくれたら教えてあげても…ごめんて、悪かったから主砲下ろして」

 

主砲を提督の腹に突きつける長月。目がガチです。

 

「ちょっとね…皆に迎えに行ってほしい娘がいるのよね~」

「迎えに行ってほしい娘?」

 

装備の確認から目を離し睦月が首をかしげる。提督はうなずく。そしてまた海の向こうを見つめた。

 

「その子がいるところが、いつものところよりちょっと遠いんだよね」

「いや全然」

「すぐそこぴょん」

「心配しすぎだぞ司令官」

「地獄メニューのおかげで睦月強くなりました!平気です!」

 

真顔で言う皐月たち。睦月はグッと拳を握ってガッツポーズしている。提督は「ああそう…」と苦笑して頬をかいた。(皐月たちの言う通りかなり近い海域である)

 

「ってことで、みんな、よろしくね」

 

いつになく真面目な顔で、口調で言う提督の言葉に、思わず息を飲む。皐月たちは背筋を伸ばし一斉に敬礼をした。

 

【了解!行ってきます!司令官!】

 

その返事を聞くと、提督は嬉しそうに笑って頷いた。

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 

~海域~

 

「迎えに行くっていっても、誰をだろう?」

「さあ…?」

「うーちゃん、戦艦がいいぴょん!」

「睦月、近海に戦艦はドロップしないと思う…」

「資材が溶けるから戦艦はやだ」

 

目的の海域に着く道中に出現した敵艦隊を撃滅し終わり、睦月型たちはワイワイと騒ぐ。彼女たちの周りには深海棲艦だったと思われる残骸が浮いていた。

 

「ていうか、どうして司令官は誰かがこの先の海域で待ってるって分かったぴょん?誰が待ってるかも分かってるっぽかったし」

 

卯月の疑問に、皐月もうなずく。それはそうだ。いくらドロップはランダムだとしても、提督の口振りからして、ドロップする艦娘が誰か分かっているようだ。

どうして分かるのか。どうやって知ったのか。聞きたいことはたくさんある。

 

「…ま、それは帰ってから問いつめるとしよう。先を急ごう。司令官ちょっと焦ってたし」

「焦ってたの?睦月分かんなかったにゃしー」

「皐月と司令官は特別なカンケイだからだぴょん」

「馬鹿なこと言ってないで行くぞ。姉さんの背中がもう見えなくなってきた」

「「早っ!」」

 

慌てて皐月の後を追う。当の本人は嬉しそうに海面を進んでいた。新しい艦娘に会えるのもあると思うが…

 

「張り切ってるなぁ姉さん…そんなに敵を倒したいのか…」

「司令官に珍しく頼られてるからだと思うぴょん」

「それはいいけど…皐月ちゃん!早いよー!追いつけないってぇ!」

 

睦月の涙声が海に響いた。

 

 

睦月の声でようやくスピードを落とした皐月に長月たちが追いつく。

 

「着いたよ、目的の海域だ」

 

違った。海域に着いたからスピードを落としただけだった。長月や卯月は平気な顔をしているが、睦月はぜいぜい言っていた。これが練度の差だろうか?

と、深海棲艦の声が皐月たちの耳に届く。長月は目を細めて言った。

 

「早速おでましか」

「うん。鬱陶しいことに重巡までいるよ」

「ひぃっ!」

 

重巡はこちらに気付いているようで、忌々しげにこちらをにらみつけている。睦月は悲鳴をあげて卯月の後ろに隠れてしまった。

 

「大丈夫ぴょん睦月、あんなやつらうーちゃんにかかれば瞬殺ぴょん」

「卯月ちゃん…」キラキラ

「じゃあ卯月、睦月のお守りよろしく~」

「えっ?」

 

卯月がばっと皐月の顔を見る。冗談だよと皐月は笑った。

 

「魚雷発射用意して」

【了解】

 

重巡含む敵艦隊が突っ込んでくる。なぜ奴らは人間を襲うのか、分かっていない。

 

復讐か、本能か、はたまたただの殺戮衝動か。

 

なんにせよ、沈める他に平和を守る手立てはない。

 

「魚雷発射したら、長月はあそこの軽巡よろしく。卯月と睦月は残りの駆逐艦4隻を。ボクは重巡を殺る」

「了解だ」

「任せるぴょん!」

「駆逐艦ぐらい、睦月だって!」

 

異論はない。皐月の実力は皆理解しているし、信頼しているからだ。ならば、あとは自分たちのやるべきことをするだけ。

 

魚雷を発射する。駆逐艦4人も集まり一斉に魚雷を撃てば、かなりの数になる。魚雷は一直線に敵艦隊を目指し泳いでいく。そして、爆発。駆逐艦1隻が撃沈、重巡が中破した。

 

「やったー!うーちゃんの魚雷当たったぴょん!」

「珍しい…」

「珍しいって何ぴょん長月!」

「はいはい。ほら、動くよ。全艦突撃!」

「卯月ちゃん、いくよっ!」

 

長月につかみかかっている卯月を引き剥がし、睦月は砲を撃ちながら駆逐艦のもとへ突っ込んでいった。

 

 

 

 

あの人の声が聴こえてから、どのくらい経ったのだろう。たった数分前のことにも思えるし、何十年も前のことにも思える。

 

あれっきり誰の声も聞こえない。いつもの静かで冷たい海の底で私は1人沈んでいる。

 

寂しい。

 

でも、約束したの。待ってるって。あの人に届いたかどうかは、分からないけれど。

 

だから早く、迎えに来て。

 

司令官…

 

 

 

 

さっきまでのやかましい戦闘音が嘘のように無くなり、辺りはしんと静まり返る。

皐月はふぅと息をついて重巡だったなにかから目を離した。

 

「おっそーい、ぴょん!皐月」

「それ別の娘の台詞にゃしぃ…」

 

ごめんごめんと謝りながら皐月は二人のもとへ主機を動かした。

 

「けっこう硬くて時間かかっちゃった。ふたりとも、損傷は?」

「ないよ!」

「あんなの雑魚ぴょん、うーちゃんたちがやられるわけないぴょん!」

「そのわりには、魚雷外してたけど…」

「あっ!睦月、しーっ、しーっ!」

 

睦月のカミングアウトに卯月が慌てて手をバタバタと動かす。皐月は笑って、内心胸を撫で下ろした。怪我は無いようである。

 

「姉さんたち!こっちに来てくれ!」

 

長月の声に3人が振り向く。長月の視線の先には―

 

 

さっきまで何の音もしなかったのに、急に誰かの声がする。あの人の声じゃない。

それに、今までのようなささやくような声じゃなくて、ちゃんと空気を震わせて伝わる、声。

 

そっと目を開けてみる。いままで居た海の底じゃない。今私が立っているのは…

 

「おはよう」

「…!…えっと…」

「はじめまして、じゃないね。久しぶり。ボクの名前、分かる?」

 

目の前に金髪の少女がいて、少し驚く。久しぶり?私と貴女は初めて会ったというのに…

 

カチン、と頭の中で歯車が合う音がした。

そう、そうだ。私たちは初めてじゃない。貴女は私の妹の――

 

「皐月、よね。久しぶりだわ。本当に」

 

皐月はふわりと笑ってうなずく。

 

「正解。じゃあ…自分の名前は?」

「私、私は――」

 

 

 

「如月」

 

 

 

嬉しくて、涙が出る。だって、自分の名前を思い出せたんだもの。妹に、会えたんだもの。

 

「うん。…迎えに来たよ、如月」

「如月姉だぴょん!司令官が言ってた娘って如月のことだったぴょん!?」

「き、如月ちゃん…!う、うわあああああん」

「ああもう、気持ちは分かるが泣くな睦月。…笑って如月を出迎えてやれ」

「うん、うんっ!…如月ちゃああああああんっ!」

「きゃっ…!む、睦月ちゃんってば、もう…ふふっ」

 

皐月の言葉をきっかけに、周りに居た姉妹たちも歓声の声をあげる。それが嬉しくて、つい笑ってしまった。

 

 

 

~執務室~

 

「おかえり、みんな。如月には会えたかい?」

「ばっちりだぴょん!ほらっ!」

 

そう言って、卯月が大きく手をひろげ、如月を示す。

如月は睦月に抱きつかれ、動きづらそうだが、どこか嬉しそうだ。姉妹に会えて嬉しいのだろう。

 

「もう、司令官ってば教えてくれてもいいじゃないか」

「言ったら面白くないでしょ?」

「私はそれより、どうやって如月がドロップするということが分かったのか知りたい」

「企業秘密です」

 

私はそう言って口をつぐむ。長月は諦めたのか、そもそも答えてくれると思ってなかったのか、ため息をついて睦月を如月から引き剥がしに向かった。

 

「ボクは諦めてないよ?」

「いつか言うよ。いつかね」

「ん。待ってる」

 

皐月は憮然とした顔で言う。

睦月を引き剥がされ自由になった如月が私の目を見据え、にこりと笑った。

 

「ありがとうございます、司令官。迎えに来て頂いて」

「約束ですし」

「ふふっ…」

 

如月は笑うと背筋を伸ばし、見とれてしまうほどきれいな敬礼をした。

 

「睦月型2番艦、如月、着任しました。お側に置いてくださいね、司令官♪」

「もちろん。私たちの鎮守府へようこそ、如月。私たちは貴女を歓迎します」

 

私が答礼をして返すと、如月は今日一番の笑顔を見せた。

 

 




―オマケ―
長月が如月を「姉さん」って呼ばない理由

「呼んでくれてもいいのよ?」
「…」
「…呼んでくれないんだ…」
「如月姉さんはそうやってからかうから…!」
「ふふっ、冗談よ、冗談♪」

理由…「姉さん」と呼ぶと笑ってくる

結果…時々なら呼んであげなくもない


――――――

いかがでしたでしょうか。今回は(も?)如月のお話です。回を重ねるごとに文字数が増えていく…

感想、意見、質問、評価よろしくお願いいたします!

次は誰にしよう…その前になんかコメディを…
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