やる気のない女提督と睦月型   作:十六夜月乃

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遅くなってごめんなさい 
父にスマホを取り上げられまして…

待っていてくださった方、本当に申し訳ありません!


第12章 「水無月の苦悩」

いよいよ艦娘が6人になった。

ようやく1艦隊を組めるようになったので、守備海域を広げようという意見が多数寄せられた。

渋い顔をする司令官を押しきり、出撃しようとする皐月。

けれど水無月の練度が皐月たちと比べ低いので、水無月の練度をあげてから出撃しようという結論になった。

 

水無月の教育係は一番練度が高い皐月が務めることになった。

――それから約1週間。

 

~執務室~

 

「司令官…」

 

卯月が執務室の窓から皐月たちの訓練を見守りながら言う。

 

「あのままだと、みーな(水無月のあだ名)死んじゃうぴょん…」

「…そうねぇ」

 

司令官も頬に汗を垂らしながら同意する。

皐月に教育係を任せたのは間違いだったかもしれない。この場にいる全員が思った。

 

「姉さんの訓練内容がいつも凄いことは知っていたが…」

「スパルタすぎるわよね…」

 

皐月は努力の鬼だ。司令官の地獄の訓練メニューをやすやすとこなし、自分でも訓練メニューを組み、更に上を目指している。一体何になるつもりなのか。

 

自分に厳しいとは知っていたが、それを他人にまで強要することはない。

ただ、教育係となって水無月の練度を上げようと張り切っているのか、少々…いや、かなりハードな訓練内容になっているようだ。

 

訓練海域から、小さいが皐月と水無月の声が聞こえてくる。

 

『もう、なに休んでるのさ水無月。まだあと3セット残ってるよ』

『まって!もう勘弁してぇ!もう7セットも休みなしでやってるんだよ!?さっちんいつもこんなのやってんの!?』

『え?そうだけど』

『え…やば…』

 

うん。スパルタだ。

 

「でも提督~、水無月ちゃんの練度は確実に上がってますよ?」

「それなんだよね…もう長月といい勝負なんじゃない?」

「ああ。10本勝負で、6対4で勝ち越された。あれには驚いたな」

 

これが皐月を教育係から外せない理由である。ただスパルタなだけではないのだ。この鎮守府で皐月の次に強いと言っても過言ではない長月と同等の実力を水無月につけさせた皐月は流石というほかない。

司令官はやれやれと頭を振って言う。

 

「鬼だねぇ…」

【あんたが言うな】

 

全員から言われた。

 

 

 

 

~お風呂場~

 

「つ、疲れた…」

 

首まで湯に浸かりながら水無月は大きくため息をついた。

本当はもう2セット半残っていたのだか、皐月は今日の近海警備の任務を担っており、訓練は中止になったのだ。

 

「さっちんいつもあんなハードな訓練やってるんだ…」

 

ケガしないか最初不安だったが、皐月が目を光らせているため無キズで訓練を終えている。

演習弾でできたあざを無しとすればだが。

 

水無月はもう一度大きなため息をついた。

訓練がキツいのもあるが、1番は皐月に言われたことが胸に引っ掛かっていたからだ。

 

『水無月、もう少し視野を広く持ちなよ。1対1ならいいかもだけど、常に敵が1体だけとは限らないんだからね』

 

皐月たちは艦隊を組んでも一斉砲撃とか回避運動とか陣形とかを全くしない。

理由は単純。軽巡程度なら単艦でも倒せるからだ。睦月と如月はよく2人で戦っているため、連携能力では鎮守府一である。

 

固まっていると敵の弾が当たる可能性が高まる。1対1で、そして余裕で倒せるならやるに越したことはない。

 

けれど、稀に敵の数の方が多い場合がある。そうなるとどうしても1対多になってしまう。まあ、勝てるのだが。

水無月は1対多の局面が苦手だ。皐月の言う通り、視野が狭いから。

 

「さっちんの役に立ちたいのになぁ…」

 

ポツリと漏らしたその言葉。

もし、皐月が沈んでしまったら。水無月はきっと、否、確実に耐えられない。皐月が死んだのなら自分も死ぬ。そう言って海に飛び込んでしまうかもしれない。

 

もうかなり前の記憶。艦娘ではなく軍艦だった頃の記憶。

同じ第22駆逐隊として活躍した、記憶。

水無月の方が先に沈んでしまったけれど、艦娘となった今、もう二度と沈むものかと決めている。だから、強くなって、皐月や姉妹たちとずっと一緒にいつまでも楽しく過ごすのだ。

 

けれど、今のままでは…

 

「もっと…もっと強く…」

「汝の願い、叶えよう…!」

 

ざばぁと湯船から人型のなにかが現れる。

水無月は絶叫した。

 

「う、うわああああああああああああああ!!」

 

何!?奇襲!?敵!?でも願い叶えようとか言ってたしお風呂の神様!?なんにせよヘンタイ…

 

「…って司令官?」

「はぁい貴女の司令官です」

 

間延びした声音。間違いなく司令官だ。

 

「し、司令官?水無月が湯船に入って10分は経ってるんだけど…」

「水遁の術最高すわ」

 

そう言って手を掲げ見せたのは細長い筒。どうやらこれを使って息をしていたようだ。

 

「…えっと、それで?叶えるって何を?」

「よくぞ聞いてくれました。君に使ってみてほしい装備があるのです」

「…また勝手に作ったの?さっちんに砲撃されても知らないよ?」

「大丈夫。これけっこう前に作ったやつだから」

「それを大丈夫とは言わないかな」

 

水無月のツッコミをスルーし、司令官が取り出したのは、1人の妖精だった。

 

「え?これって…」

『電探妖精ですよろしく』

「だってさ」

 

ビシッときれいな敬礼をしたのは彼女が名乗ったように電探妖精。

――しかも

 

「22号対水上電探改四!?」

「あれ、知ってた?」

「司令官!?一体資源どれだけ使ったの!?」

 

水無月の悲鳴にも似た質問には答えず、司令官は「はい」と妖精を水無月に渡す。

 

「これなら、皐月の役に立てるんじゃない?」

「―!」

 

確かに、電探を装備すれば敵の位置が手に取るように分かるだろう。水無月の弱点もカバーできる。

 

「で、でも…水無月にはこんな立派な装備は…」

「水無月?」

 

煮え切らない態度をとっていると不意に司令官の声のトーンが低くなった。

水無月はドキリとして姿勢を正す。

 

「守りたいのでしょう?」

「…うん」

「なら、遠慮なく使いなさい。水無月が遠慮する必要なんて無いんだから」

 

それに、と司令官が言葉を紡ぐ。

 

「私は、水無月にだって沈んで欲しくないんだからね?」

「!」

 

真っ直ぐで、芯の通ったその言葉に水無月は気づく。

自分が仲間に沈んで欲しくないように、仲間たちも自分に沈んで欲しくないのだ。

 

それは、司令官が一番願っていることなのではないだろうか。

 

「…分かった。大切に使うね」

「ん。頼むよ」

 

水無月の言葉に、表情に、決意に納得したのか、司令官は小さな兵士の頭をグリグリと撫でた。

 

 




―おまけ―

長月が水無月を姉さんと呼ばない理由

提督「何で水無月のことは姉さんって呼ばないの?」
長月「いや?最初は呼んでたんだがな、水無月が…」
水無月「だ、だって恥ずかしいんだもん!」
提督「えー、照れてる顔見たいー」
水無月「絶対やだっ!」


睦月「…お姉ちゃんの何がいけないにゃしー…」
卯月「…うーちゃんお姉ちゃんなのにぃ…」
皐月「…なんでだと思う?」
如月「…」(大爆笑)
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