やる気のない女提督と睦月型   作:十六夜月乃

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はい遅くなりました。←オイ
書いては書き直して書いては書き直して…

疲れた!!!


第13章 「ヲ級」

書類仕事を終え、皐月が淹れてくれた紅茶を啜り、一息つく。この瞬間が提督の至福の時間なのだ。

 

「今日の予定は?」

 

コツン、とティーカップを置き、皐月に訊ねる。皐月は手元にある資料に目を通すと、すぐに答えた。

 

「如月を旗艦とした遠征部隊がもうそろそろ帰ってくるかな」

「どうりで鎮守府が静かなわけだ」

 

いつもなら卯月と睦月のおかげでBGMには困っていないのだけれど、なるほど。こんなに静かな1日なのは彼女たちがいないからか。

 

「静かなのは良いことだけど、少し物足りないね」

「ふふ、もうすぐ騒がしくなるさ」

 

今この鎮守府には提督と皐月しかいない。いつも執務室には睦月か卯月か如月か長月か水無月がいるのでなんだかんだで皐月と二人きりというのは珍しいのかもしれない。

 

「そういえば、最近水無月はどう?電探上手に扱えてる?」

「問題ないよ。睦月が泣いてたよ?お姉ちゃんとしての立場がないって」

「睦月もちゃんと強いよ。水無月とか長月とか君とかがおかしいの」

 

駆逐艦とは何だったのか。重巡を簡単に仕留める駆逐艦なんてそういないだろう。

 

「睦月と如月は何でもできるからどんな装備をあげようか悩むんだよね」

「何でも屋でいいんじゃない?海域によって乗せる装備を変えて出撃させれば。何でもできるなら何でもやらせた方がいいよ」

「姉をこき使う気満々だね」

「立ってる人なら姉でも司令官でも使うさ」

「おう、怖い怖い」

 

おそらく本気だ。提督はそう確信すると、できるかぎり皐月を怒らせないようにしようと心に決めた。

 

「まあなんにしろ、うちの海域は平和だから大丈夫でしょ」

「司令官、それフラグ」

 

皐月が真面目な顔をして言う。だが提督はどこ吹く風。ないないと笑い飛ばした。

 

「笑い事じゃないよ」

「だって、そんなの漫画とかアニメとかの中だけでしょ?皐月漫画の読みすぎ~」

「そういう人が真っ先にやられるんだよ」

 

ガチの顔だ。提督は頬に汗を垂らした。

 

「も、もう。皐月ってば~。そんなのあるわけ…」

「司令官大変ぴょん!!」

 

バタン!と勢いよく執務室の扉を開け入って来たのは初期艦の卯月だった。そのあとからも如月、睦月、長月、水無月の順に入ってきた。

全員の顔は真っ青でいかにも何かありましたと物語っている。

 

「ほらきた…」

「さ、皐月が変なこと言うから…!」

 

卯月は「変なこと?」と首をかしげたが、すぐにそれどころじゃないと提督の机をバンと叩いた。

 

「司令官!さっき近海に空母がいたぴょん!!」

「…は?」

 

皐月が提督の声にびくりとする。皐月だけではない。睦月たちも、空母がいたと報告した卯月でさえ怯えている。

空母が出たことに怯えているわけではなさそうだ。全員の視線が提督に集まる。

提督はゆらりと立ち上がった。

 

「この近海に?私の場所に?空母?」

 

提督だ。彼女たちが怯えている理由は。

提督はこれ以上にないほどキレている。自分の守備している海域に、自分の聖域に、近海だけはこれ以上にないってほど徹底的に敵を叩き潰してきたと言うのに。

 

「そう…空母が…そうなの…」

「て、提督…?睦月こわいですぅ…」

「ながなが…あれ、ほんとに司令官?」

「た、多分…」

 

ふふふと笑う提督に全員がドン引く。睦月なんて如月の後ろに隠れ、小動物のようにブルブルと震えている。

だが、卯月は怯むこと無く提督に訊く。

 

「司令官、どうするぴょん?」

「もちろん、沈めなきゃ」

『…!!』

 

提督のハッキリとした答えに、皐月たちははっとする。

そうだ。自分たちは艦娘だ。たとえどんな敵だろうと沈めるのが自分たちの存在意義。

 

「…けど、装備は?それに、対空訓練なんて如月たち、やったことないわ」

「それは大丈夫。ね、卯月」

 

ようやく落ち着きを取り戻したのか、いつもの調子で話す提督。全員ホッとして、卯月の方を見る。

 

「対空訓練、やったことあるよね?」

「ああ…一番最初にやった訓練…」

 

そう。かつて提督と卯月しかいなかったころ、最初に行った地獄の訓練で、砲撃と魚雷だけでなく、対空訓練もやっていたのだ。

 

「君、砲撃も魚雷もダメだったけど、対空だけは飛び抜けて良かったよ」

「えっ!?良かったぴょん!?なにも言わないからまた呆れられてるのかと!」

 

いや、呆れていた。どうして艦載機には弾が当たるのに、的には当たらないんだと。呆れて声も出なかった。

 

「だが、卯月だけでは…それに、対空装備も…」

「装備は大丈夫。けど、そうね、卯月だけでは不安か。んー、じゃあ睦月と如月にもやってもらうか」

「いやいやいや」

「さすがに無理かしら」

 

睦月と如月の抗議を聞き流し、提督が唐突に机の下に潜る。皐月たちは怪訝そうにのぞきこんだ。

 

【ってえええええええええええ!!!】

 

と、同時に絶叫した。理由は単純。机の下には地下へ続く階段があったからだ。

さすがにこれは皐月も知らなかったようで、慌ててもうすでに降りていった提督のあとを追った。

 

「し、司令官?なに?ここ…」

「装備保管庫」

「え?いや、それなら工廠にあるじゃん」

「それとは別。皐月が知らない装備を保管してるとこ」

「…」

 

色々と言いたいことはあるが今はそれどころではないので黙っている皐月。空母沈めたら問いつめようと心に決めた皐月だった。

 

「ほい」

【……】

 

提督が持ってきたのは対空機銃と電探。

そして――

 

「なんで秋月砲があるの…」

 

誰が言ったかその言葉。もしかしたら全員かもしれない。

提督が持ってきたのは対空駆逐艦秋月型が持つ主砲。

 

「なんかできたの」

「お前ほんとに何者だよ!」

「待って、ながながおちついてぇ!」

 

提督につかみかかっていく長月を水無月が全力で止める。けれど全員同じ気持ちだった。

提督がはいと卯月に主砲を渡す。

 

「…いいの?こんなの」

「電探もらった水無月と似たような反応するのね。卯月が適任だと思ったから渡してるのよ?」

 

提督のハッキリとした物言いに、卯月はこくりとうなずき、「主砲の調子確かめてくるぴょん!」と執務室を出ていった。

 

「あとは、睦月と如月に機銃」

「25ミリ3連装機銃集中配備…」

「えげつないですぅ…」

 

受け取った装備を見て、ドン引く2人。皐月がなにか言いたそうにこちらを見ている。というかキレそう。

長月と水無月が心の中でそっと手を合わせていた。

 

「さあ、時間ないよ!2人には機銃の扱い方みっちり叩き込んであげるから!」

「えっ!?」

「あ…これ、地獄メニューだわ…」

 

提督に手を引かれ執務室から連れ出される睦月と如月を見送り、なにもすることが無くなった皐月たち3人。

皐月は地下へ続く階段をじっと見つめていたが、やがて、ふぅと息を吐き、パンパンと手を叩いた。

 

「じゃあ、ボクらは先に出撃して空母たちの居場所を見つけよう。できるだけ戦わないようにね」

「も、もし見つかったり、空母が鎮守府に攻めてこようとしたら?」

「そのときは腹を括るしかないだろう…行くか?姉さん」

 

長月は、とうに準備はできているといった顔で皐月を見る。水無月も少々不安げだが、やるしかないと腹を括ったようだ。皐月はそんな2人を見て、うんとうなずいた。

 

「…行こう。さっさとあいつら倒して司令官に装備のこと問いつめなきゃ」

「「アッハイ」」

 

けっこうオコな皐月を見て、なにも言えなくなった2人だった。

 

 

 

 

~近海~

 

空母と対峙しているというのに、皐月たちは回避運動どころか一歩も動いていない。まるで、海に浮かぶ標的艦になったようだ。

 

「すご…」

 

誰かがポツリと漏らす。誰も何も言わなかったが、皆同じ気持ちだった。

 

辺りには空母ヲ級の放った艦載機…いや、艦載機だったなにかが大量に海に浮かんでいた。

それらはもう艦載機なんて呼べる代物ではなく、鉄の破片と化していた。

 

「もう終わりなの?うーちゃんつまらないぴょん」

「…うーちゃん、すっごいキラキラしてる」

「もう神の領域だなこれ…」

 

水無月と長月が呆れる。提督が対空要員に卯月を選んだ理由がよく分かった。

 

何があったか簡単に言うと、卯月がヲ級の艦載機を全て撃墜したということだ。

睦月と如月も機銃でいくつか撃墜したが、卯月の対空技術は凄まじく、ヲ級も固まって動けない。まさか駆逐艦ごときに艦載機全部溶かされるとは…!みたいな顔してる。いや、分からないけれど。

 

艦載機のない空母なんてただの置き物である。随伴艦は駆逐と軽巡なので、恐れるものは無いとばかりに皐月たちが突っ込んでいく。

卯月は役目を終えたため、姉妹たちの背中を見つめ息をついた。

 

「これ、如月たちいらなかったんじゃないかしら…」

「卯月ちゃん1人でいけたと思うし…」

『そうでもないよ?ついさっき教えたばっかりなのに機銃扱えてるなんてすごいじゃない』

 

提督はどちらかと言うと、成長の著しい睦月と如月に称賛の意を示していた。付け焼き刃と言っても過言ではないほどだったというのに、10機以上撃墜したと聞いたときは驚いた。皐月の言う通り、何でもできるなら何でもやらせた方がいいのかもしれない。

 

「敵艦隊撃滅~」

「むっつん、さらさら、うーちゃん!お疲れ様~」

「ふん、大したことなかったな」

【…】

 

突っ込んでいったと思ったらもう帰ってきた。

これにはさすがに全員口を閉ざした。

 

「これ、如月たちいらなかったんじゃ」

「睦月お姉ちゃんなのに…」

『誰よあんな風に育てたの…』

「司令官だぴょん。司令官の艦娘なんだから司令官が何とかするぴょん」

『そりゃ無茶ですぜ旦那…』

 

今さらだがこの鎮守府はどこかおかしいと思う。

 

 




あとがき

皐月「それで?この装備、どういうことか説明してくれるんだよね?」
提督「さーてとっ!私ちょっと工廠行ってくるわ」
長月「懲りろ馬鹿」


睦月「あれ?提督と皐月ちゃん追いかけっこしてる?」
卯月「ほっとけばいいぴょん。じごーじとくぴょん」
如月「そうね…」
水無月(ごめん司令官っ!ああなったさっちんは水無月ではとめられないっ!)
長月「とめなくていいんだよ」

如月「さてと。司令官たちは放っておいて、ついにこのお話も13章まで来たわね」
水無月「ここまで続けられたのも、応援してくれる皆のおかげだよっ!ありがとう!」
長月「第1章で感想を頂いたのに未だに返信返してない司令官…」
卯月「司令官いわく、『返信するべきなのか色々迷ってたらいつのまにか時間経ちすぎてて返すに返せなくなった』らしいぴょん」
睦月「ごめんなさーいっ!」

如月「と、いうわけで、これから感想のお返事はあとがきで返すことにしたわ。一応、返信はするつもりだけど、ここでも紹介されるから、よろしくね」
睦月「今回のお手紙(感想)は、提督が好き、だって」
長月「あんな司令官でも好きになってくれるやつがいるのか…」
水無月「ながながだって司令官のこと大好きじゃん」
長月「!?」

皐月「司令官の駄作に感想を書いてくれる人なんて滅多にいないと思うけど…これからもよろしくね!」
水無月「もちろん、感想だけじゃなく、評価も受け付けてまーす!」

【また見てねー!】




水無月「ところで司令官は?」
皐月「あそこ」
提督「…」←黒こげで土下座してる
卯月「じごーじとくぴょん、仕方ない」
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