早く新しい睦月型出したいのに…
ザザ…ンと波が浜に押し寄せる。提督は執務室の窓からその様子をぼんやりと見ていた。
妖精「提督」
月乃「ん?できた?」
妖精「バッチリでさー」
月乃「そう。お疲れ様」
提督は窓の外から目を離すといつのまにか後ろにいた妖精を見つめた。妖精はエヘンと胸を張っている。
月乃「ん。じゃあ卯月たちを呼んできてくれる?多分卯月は食堂、皐月は入渠してると思う」
妖精「あいあいさー」
提督は妖精を見送ると、くすりと笑った。卯月たちの驚く姿を想像して。
―
卯月「司令官~、入るぴょん!」
皐月「もう、ノックくらいしなよ。司令官、呼んだかい?」
バンと勢いよく扉が開く。紛れもなく、卯月である。皐月が呆れて注意するが、本人は聞く耳を持たない。
提督も全く気にしていない。諦めていると言った方が良いかもしれない。
月乃「いらっしゃい。お二人にプレゼントがありまーす」
卯月「プレゼント…ぴょん!?」ワクワク
皐月「机の上に置いてあるのがそうかい?」
月乃「いえす。どうぞ」
皐月の言う通り提督の机の上には大きなプレゼントボックスが置いてある。
提督は詳しくは話さず、促すだけだった。卯月は待ちきれないと言わんばかりに箱の包装を解いていく。皐月も恐る恐るだが、ゆっくりプレゼントを開け始めた。
皐月「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ司令官、これって…」
卯月「12.7㎝連装砲の…B型改二?」
月乃「そー。資材を大量につぎ込んで造った一級品です」
皐月「は?ちょっと待って?大量ってどのくらい?」
月乃「数字で表せばこのくらいまで…って、皐月?何で砲を構えてんの?私に押し付けてんの?ご、ごめんなさいやめてください痛い、痛いです」
提督が差し出した書類には資材の残りの数値が示されている。それを見たとたん皐月がぐりぐりと砲の先を提督のお腹に突きつけた。
卯月「あっ!魚雷もあるぴょん!四連装酸素魚雷だぴょん!」
皐月「…」
月乃「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい」
提督がさらに涙目になる。自業自得である。
皐月「まったくもう、こんなに資材つぎ込んでっ!何してんのさ!」
月乃「だって新装備は心強いでしょう?」
皐月「そうだけどっ!そうじゃないの!どうしてボクたちに相談せずに造っちゃうの!?」
月乃「だって言ったら怒るじゃん」
皐月「あったり前でしょおおおおおおおおバカなのおおおおおおおおおおお!?」
皐月が頭を抱えて絶叫する。卯月は新しい強力な装備に心を奪われているのか、目を輝かせている。
月乃「喜んでくれると思ったのに…」
皐月「そういう問題じゃないんだよ!ボクらのためにとはいえ資材をこんなに遣う必要はあったのかって言ってんの!」
月乃「だって…いい装備の方が…ちゃんと私のもとへ帰ってきてくれると思ったから…。無事に帰ってきてくれると思ったから…」
皐月「うっ…!」
しょぼんと項垂れる提督。そんな姿を見て、皐月は言葉を詰まらせた。「しまった!」とか「言いすぎた!」とか考えている顔である。
月乃「喜んで…くれないの?」
皐月「う…その…」
気まずそうに顔をそらす皐月に、提督は悲痛に顔を歪める。
月乃「やっぱりそうなのねええええええええっ!!結局これはただの私の自己満足なのねえええええええええっ!」
皐月「ああもう…!違うよ、嬉しいってば。ただその…素直に言えなくて…」
申し訳なさそうに皐月が言う。提督は泣くのをやめ、いまだうるんでいる瞳を皐月に向けた。
月乃「ホント…?」
皐月「ホント。その…ありがとう、司令官」
頬を染めうつむきかげんにお礼を言う皐月を提督はガバッと抱き締めた。
皐月「うわっ、司令官!?」
月乃「えへへ、皐月~❤」
皐月「もう…」
「もう…」なんて言いながらしっかり抱き締め返す皐月ちゃん。可愛い(確信)
卯月「…」ニヤニヤ
月乃「…」シー
すべて演技である。
最初の「喜んでくれると思ったのに…」のところで卯月は大体察していた。それだけではない。きっちり録音していた。皐月のデレを。
―
~演習海域~
月乃「うん。新しい装備にも慣れてきたね」
卯月「ぴょん!魚雷はあんまり当たらないけど、強力な装備は心強いぴょん!」
皐月「…」ムッスー
ちなみに、皐月のデレを録音していたことがバレ、提督と卯月の頭にはたんこぶができていた。もちろん、皐月が殴った。
卯月「今日出撃ぴょん?」
月乃「そうしたかったんだけどね…たんこぶが痛いから」
皐月「誰のせいだと思ってんのさ」
卯月「皐月だぴょん」
月乃「皐月だね」
皐月「君らだよっ!!なに人のせいにしてんのさっ!」
顔を真っ赤にして異議を唱える皐月に、提督と卯月はまたニヤニヤと笑う。それを見て皐月はフンッとそっぽを向いた。
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