過去のアビスゲート卿から   作:旅人アクア

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書けました……書けましたよ……


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 目を開けるとそこには膨れっ面な表情をしたエミリーがっ、……なんてこともなく普通に昨日眠りについた天蓋付きベットで目を覚ました。

 

 昨夜、健太郎提案による格闘訓練もとい鬱憤曝しに付き合った時から分かってはいたけど、それでも微かな希望は抱いていたみたいだ。

 

 軋んだ体を丁寧に解しつつベットから出る。

 

 天蓋付きベットで寝るのは未だに落ち着かず慣れないが、身体が疲れていると気にせず寝れる位には成長していた。

 

 

(……布団を元の位置に戻して、皺がないように整えてから部屋を出るのは普通だよな)

 

 

 

 訓練場所に着くと多くのクラスメイトが先に集まっていた。

 

 やはり異世界の訓練が気になると言ったところだろうか、前回のときも五分前には全員集まっていた。

 

 名簿みたいなものを取り出して全員揃ったかを確認していたメルド団長は顔を上げて首を捻る。

 

 

「おい、遠藤浩介って奴はまだか?」

 

 

 ……メルド団長、昨日は泣いてましたがそれは無いです。

 

 いや、分かってはいたけどね、分かってはいたけどね、と呪詛でも吐きそうな勢いで呟きながら遠藤はメルド団長の前に出る。

 

 

「……あの、……ここにいますよ。メルド団長」

 

「うぉっ!? 居たのか! これはすまなかった」

 

 

 ボソボソとクラスメイト達から聞こえる声。

 

 ――――浩介の影の薄さは異世界でも通用するのか。

 

 ――――流石は影の薄さ世界一のことはあるな。

 

 ――――遠藤くん、この間自動ドアにも気づかれてなかったよ。

 

 心のHPが地味に削られていく!

 

 

「さて、全員集まったな! では先日、紹介を承った時に憶えているものもいるかも知れないな!」

 

 

 空気を変えようとさらりと流そうとしているが、語尾も上がっているし若干早口になってるぞ。

 

 ジト目をしながら言葉を聞く遠藤に、メルド団長は視線を少しずらす。

 

 

「あぁー、うぉっほん。……勇者一行、ご協力に感謝する! 私はハイリヒ王国騎士団長を務めるメルド・ロギンスだ! 指導者という関係上言葉遣いは荒くなるがそこは勘弁してくれ」

 

 

 わざとらしい咳をしながらそういい括ったメルド団長は騎士団員達に指示を出す。

 

 その指示に直ぐさま騎士達は動いて、丁寧に全員に〝ステータスプレート〟を渡していく。

 

 

「あと、お前らもこれから戦友になろうってのに何時までも他人行儀で話すなよ」

 

 

 メルド団長は他の騎士団員達にも普通に接するようにと注意してきた。

 

 こういう豪放磊落な性格のおかげで、俺たちクラスメイトは安心して兄貴として慕うことになったのだろう。

 

 

「さて、全員に配り終わったな? このプレートは〝ステータスプレート〟と呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 

 そういえば結局このステータスプレートがどこまで役に立つのか知らなかったな。

 

 どこに行ってもだいたい顔パスで、ステータスプレートを免許証のように出す機会は無かった。

 

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所有者が登録される。〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。これは神代の〝アーティファクト〟の類だ」

 

「アーティファクト?」

 

 

 光輝が聞き慣れない単語だったのか復唱する。

 

 

「アーティファクトっていうのはな、現代じゃ再現できない強力な能力を持った魔道具のことだ。まだ神様やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は国宝級になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身も蓋もない話、身分証明に楽だからな。因みに唯一聖教教会だけが作成できる」

 

 

 二度目の話を聞きながらサクッと指をさしてプレートに血を垂らす。

 

 魔法陣が淡く藍紫色に輝いているのを確認したあとクラスメイト達に視線を変えれば、どこもかしこも顔を顰めながら指にさしていた。

 

 巷では指の皮に糸を通してタトゥーみたいに掘る人もいるらしいが、このクラスにはそういった人は居なかったみたいだ。

 

 

「〝ステータスオープン〟」

 

 

 ===================================

 遠藤浩介 17歳 男 レベル:1

 天職:暗殺者

 筋力:70

 体力:90

 耐性:40

 敏捷:150

 魔力:50

 魔耐:50

 技能:暗殺術[+深淵卿]・気配操作・影舞・言語理解

 ===================================

 

 

 昨夜、格闘訓練していた時に気が付いていたが、やはりレベルは初期値に戻っていたようだ。

 

 とはいえ体が軋んでいたのは殴り合いの結果という訳でもなく、以前動いていたように動こうとした結果激痛が走ったといった感じだ。

 

 筋肉をあまり使わず、逆に技量が必要な絞め技は容易く行使出来たので動き方は分かっているみたいだ。

 

 ……ん?さらっと流したけど何か表記がおかしかったような気がする。

 

 もう一度ステータスを確認してみることにした。

 

 

 ===================================

 技能:暗殺術[+深淵卿]・気配操作・影舞・言語理解

 ===================================

 

 

 ……ステータスプレートを全力でペイッしたのは言うまでもない。ついでに、足でゲシゲシしたのも言うまでもない。

 

 例え周囲から奇怪な目で見られようともこの腐れアーティファクトをゲジゲジする権利はある。

 

 まさかの引き継ぎ要素がこれとはどれだけ俺を苦しめたいのか。

 

 だがしかし、運が良かったといえばいいのか生徒達は自分のステータスプレートに夢中で、メルド団長も魔法陣の輝きに夢中なクラスメイトにステータスの確認を促しているところだった。

 

 仕方なくステータスプレートを拾い、念の為効果を確認する。

 

 効果:凄絶なる戦いの最中、深淵卿は闇よりなお暗き底よりやって来る。さぁ、闇のベールよ、暗き亡者よ、深淵に力を! それは、夢幻にして無限の力……

 

 やっぱり全力でペイッしたのは言うまでもないし聞くまでもない。

 

 

 

 ステータスプレートの内容に打ち拉がれていると、メルド団長がステータスや天職についての説明が終わったのか次の言葉を話し出す。

 

 遠藤は嫌な汗がぶわっと出る。

 

 

「後は……各ステータスは見たままだ。ちなみにトータスの人間の初期値は平均10くらいだ! まぁ、上位世界から来たお前達ならその数倍から数十倍は高いハズだ! 全く羨ましい限りだな! あ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

 

 だらだら嫌な汗が次から次へと溢れてくる。

 

 百歩譲って派生技能を獲得していたのは良いとしても、この能力は説明したくねぇ。

 

 どうしようか思考回路をフルスピードで回していると、メルド団長の呼びかけに応じたのか、早速光輝がステータスの報告をしに前に出てた。

 

 

(なんで早く行くんだよぉ、もっとゆっくり自分のステータスを堪能してからで良いじゃないかぁ)

 

 

 歴史通りことが進んでいるだけなのに溢れ出る不満。

 

 刻一刻と迫ってくる説明タイムに汗が止まらない遠藤。

 

 

(ん? 歴史通り? ならここに活路がある!)

 

 

 光輝のステータスに沸き立っているなか、自然にかつ素早く判明した技能を使いながら南雲の後ろに並び替える。

 

 ちなみに光輝のステータスはやはり前回同様同じである。

 

 

 ===================================

 天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 天職:勇者

 筋力:100

 体力:100

 耐性:100

 敏捷:100

 魔力:100

 魔耐:100

 技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 ===================================

 

 

 何度聞いても他のクラスメイト達と比べてチートのレベルが違いすぎる、と再確認する。

 

 メルド団長も文字通り桁違いな才能とステータスに朗らかになる。

 

 

「ほお〜、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや〜、あはは……」

 

 

 メルド団長のお世辞なしな賞賛に照れたように頭を掻く光輝。

 

 素直に俺も褒められたら良いんだけどな、とステータスプレートに目を落とし溜息を吐く。

 

 参考にメルド団長はレベル62でステータス平均は300前後。

 

 勿論ステータスには表れない技量とか数値では測れない要素はあるが、それでも光輝は化け物スペックといえよう。

 

 

「(僕だけ自重なくらい平均なんですけど)」

 

 

 そんな小さな呟きが前から聞こえた。

 

 あーめん、何も助言なんて出来ないけれどお前は光輝なんかよりも強くなる可能性を秘めているよ。

 

 未来の南雲を想像し、なんとも言えない苦笑いを浮かべていると檜山大介(ひやまだいすけ)が近づいてくるのが見えた。

 

 勘付かれないように気配操作をして足を引っ掛ける。

 

 

「なぁ、あだぁ!」

 

 

 見事にすっ転ぶ檜山を見て少しスッキリする。

 

 後の南雲にとっては取るに足らない存在かも知れないし、こんな事をしても何か変わる訳でもないし、この後の展開を考えれば無駄かも知れない。

 

 ただ、俺は魔王の右腕であることに変わりはないのだから。

 

 自己満足かも知れないが、やったことは後悔していない。

 

 

(つーか、この先起きた事を考えればまだまだ足りないな)

 

 

 まだ何もしていない檜山からすればとばっちりもいい所である。

 

 

 

 その後、報告の順番が回って来た南雲はステータスプレートをメルド団長に見せる。

 

 メルド団長も光輝には劣るものの規格外なステータスを見て、ホクホク顔だったが、その表情も固まる。

 

 見間違いかと目を擦ったり、プレートを叩いたり、光にかざしたりする。

 

 そして物の見事に微妙そうな表情に変わった。

 

 

「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言って見れば鍛治職のことだ。鍛治するときに便利だとか……」

 

 

 歯切れ悪く南雲の天職について説明するメルド団長。

 

 ただ遠藤は言いたい、そいつ神まで殺す錬成師ですよと。

 

 天職なんて関係ないと言わんばかりの圧殺ウサミミを思い出し遠い目をする。

 

 ただ、実際このまま成長しても魔力が足りないので良い鍛治師にもなれないらしい。

 

 そんな事を大戦が終わった後に言っていた。

 

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦闘職か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

 

 

 鼻と髪の毛に若干土が付いたままでよく言えるな。

 

 

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

 

 擁護しようとメルド団長は一旦考えたのか言葉を詰まらせたが、結局見つからなかったらしくそのまま言った。

 

 

「おいおい、南雲〜。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

 

 実にウザい、非常にウザい、南雲に肩を回している感じが特にウザい。

 

 そんな風に思っていると南雲と目があった。

 

 どこなく哀愁漂う様子にちょっと戸惑う。

 

 言っても南雲のイメージは豹変後の南雲なのだ。

 

 

「ステータスや天職だけで騎士団長になれますか? メルド団長」

 

 

 思わず口からそんな言葉が出て、そんな風に発破をかけた。

 

 その言葉に南雲は驚いた様子だったが、言った自分はもっと驚いていた。

 

 

「いや、なれんな。ステータス以外にも必要なものはあるからな」

 

 

 勿論南雲にあるかどうかは別問題だ。

 

 ただ遠藤は、南雲をみたときそう言い返してしまったのだ。

 

 

 

 その後、慰めようと愛子先生もステータスプレートを見せるも更に南雲にダメージを与えただけだった。

 

 ちなみにステータス報告は普通に受理されました、勿論泣いてなんかいません。




最近睡眠不足です、お察しください。
毎日一万字書いて毎朝10時に投稿してた人は神です。
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