ステータスの確認が終わった後、クラスメイト全員に適性に合った武器が手渡された。
遠藤は小太刀を貰ってからというもの、自室でどうしようかと悩んでいた。
――――やはり苦無が欲しい。
心の中の小さな厨二病遠藤が『呼んだ?』と顔を出してくるが、即行で奥底に沈める。
実際、厨二病的な話ではなく純粋に尋常ではないくらいに南雲アーティファクトは心強いのだ。
炎を纏わせることも冷気を纏わせることも出来て、更には手元に返ってくる機能も搭載している。
分身の起点にも出来ることを考えると、遠藤にとって必要不可欠と言っても過言ではない。
(取り敢えず、形だけでも作ってもらおうか)
そんな事を考えながら手慰めに小太刀を振り回す。
これはカッコイイから覚えておいたわけではないし、ハウリアといるとこれくらいは覚えておかないといけない焦燥感に駆り立てられて獲得したわけではない、ないったらない。
単純に熟練度上げというものである。
南雲――――今の南雲と混同しそうになるので今後は
勿論、ただ振り回すだけで派生技能が獲得できるわけではない。
技能の使用回数、その技能の使い方の質、倒した敵の数や動き方……etc.などなど。
様々な熟練度や特殊な条件により獲得できるのが派生技能というものらしい。
因みに技能数が多ければ多いほど、派生技能に対しての熟練度が溜まりにくいのかも知れないと推察していた。
最もそんな推論を立てる事ができるのは魔王だけであり、そもそも基本的に技能数は増えないので検証しようがない。
更にトータスの人々は普通は2、3個程度しか持っていないし、派生技能に関しては所持しているだけで凄い人となっている。
その派生技能に関してもトータスは色々酷いものであった。
先程、派生技能は様々な熟練度や特殊な条件により獲得できると言ったが、トータスの常識では
それはどうしてか……理由は三つ上げられる。
まず一つ目は、研鑽を積んで派生技能を獲得した人たちはその過程を隠す傾向にあるからだ。
日本でもあったが技術者や研究者ほど、技術の獲得方法は秘匿にしたがる。
更にトータスでは研鑽の過程を書物に残すという概念がないため、条件の確認が本人以外できない。
戦争中なのに頭が悪いのではと思うかも知れないが、闇を見てきたからこそ分かるが人は基本的に強欲で権利を守りたがるものなのだ。
誰しもエミリーのように純粋ではいられない。
そして二つ目だが、トータスには魔王のようなゲーム脳を持っていないからである。
ゲームで能力を得ようとしたら何某かの
その常識はそのまま思考回路に定着し、そしてある仮説を浮かび上がらせた。
それは派生技能には何か条件があるのではというものだ。
天から授かりしものという考え方が一般的なトータスにおいて、その考え方は邪道甚だしい。
その宗教的考え方がゲーム脳のような考え方を妨げさせた。
最後の三つ目だが、それは単純に力不足で生きる為に必死だからだ。
自分たちは生活に不自由があまりない為、そのままその時間を戦力増強へと充てられる。
しかし普通、生活を送るには衣食住を得る為にお金を稼がなければならない。
お金を稼ぐには仕事をしなければならないし、仕事をしていれば魔物退治をする時間やその考え方に至るわけがない。
魔物を退治するのが生業な冒険者ですら身体が資本なのだ、毎日迷宮になんて行ったりはしない。
危険がないラインで魔物退治を行い、そして日がない生活を送る。
これら三つの要素が複雑に絡み合った結果、派生技能の獲得を妨げる結果となった。
そんな訳で小太刀を振りましているのだ。
何故か途中でカッコイイポーズを考え出したり、決めポーズをとったりしているのも熟練度稼ぎである、決して他意はない。
ある程度新しいポーズを生み出した後、自室を出て国お抱えの鍛冶職人がいる仕事場へと向かった。
★☆★☆★☆★☆★☆
「ん〜、イメージはなんとなく分かったが新しい武器だし、作製には時間は掛かるぞ?」
「大丈夫です。では宜しくお願いします」
「あいよ。神の使徒様たっての直々な願い事だ。別に構わねぇよ」
そんなに偉いものじゃないんだけどなぁ、と頬を掻く。
訪れた当初は『仕事場に餓鬼が遊びに来てんじゃねぇぞ』といった感じだったがステータスプレートを見せると様子が一変した。
物腰が文字通り柔らかくなり、途轍もなく豪華な待合室で待たされることになった。
待合室って三つあるものなんだな、と染み染み思いながらも居心地悪そうに座ったものだ。
因みに遠藤のことを知らなかったのは、様々な武器を勇者たちに提供したせいで武具が不足し、何を補充するかをという指示を仰ぐために、遠藤のことを知っている幹部陣営が謁見に向かったのだ。
今回ばかりは遠藤の影が薄いからという訳ではない。
とはいえ何も知らない遠藤にとっては関係なく、ただ地味に精神が削られたものだが。
「今回は役に立ったな、このステータスプレート」
初めて役に立ったのがこういった場面というのが実に悲しい気持ちであるが、一応水戸黄門的なテンプレではあったりする。
国お抱えの鍛冶場を出ると日が夕方に差し掛かっていたので夕食へと向かった。
夕食では王族の人達は居なかったが、それでもある程度は豪華だ。
ささっと食事を取った後、自室に戻って考える。
この後の展開についてだ。
この4人が前回異世界に来て死んだクラスメイトなのだが、四人中三人が裏切った結果ということに頭を抱えそうになる。
その三人の裏切る理由も悲惨なものだ。
檜山は香織が欲しいからという理由だし、中村も光輝が欲しいからという理由で、清水にいたっては確か目立ちたいから(魔王談)という理由だ。
しかも近藤が死んだ理由は中村による流れ弾だ。
(何なんだよ、この裏切った理由は……!? 内三人が痴情の縺れで死んだってどういうことだよ! 戦争中じゃねぇのかよ! クラスメイトで殺し合うとかデスゲームかよ! ……もう訳が分からないよ)
詳しい理由なんて聞いてないから、どうしてそういう結果になったのかすら知らないし分かりたくもない。
一応前回よりも良い結果にと目標を掲げたが難易度はINF級じゃないのか?
いっそ死ぬ前に確保して隔離でもしたら良いんじゃないかと思いだした頃、ノックがかかる。
一旦思考を放棄して扉を開けると、専属侍従になる予定のリゼが居た。
「こんばんは、貴方の付き人をさせて頂きますリゼと申します。以後宜しくお願い致します」
そう言ってペコリと下げるリゼを見て、今日が侍従を充てられた日だったことを思い出した。
しかし、前回の記憶の中では陽が差していた時間帯に紹介を受けたような気がするのだが。
「あれ? 紹介って今日でしたっけ?」
「……? 紹介の日程はお伝えしていたでしょうか? 今日の夕方前に一度お伺いをしたのですが、留守でしたので夕餉が終わり次第急いで参りました」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらそう説明する。
そうしてやってしまったと遠藤は気がついた。
苦無が欲しかったから鍛冶職場に向かったが、今日が侍従を充てられる日だったのだ。
あまり記憶に残って居ないから忘れていた。
「それはごめん。あと敬語とかはいいし普通に話してくれる方が助かる」
「ほんt……ごほん。いえ、神の使徒様であらせられるお方に対等に話す権利など私には御座いません」
そう言って軽く頭を下げるが、こいつの性格は知っているのだ。
ぶっちゃけ敬語が面倒だと思っていることを、雫姉様の侍従になれず舌打ちしていた
「確か、『こんな影の薄い男に慰み者にされるなんて』だっけ?」
ビクッと面白いようにリゼの体が震える。
顔面を蒼白にさせながら必死に言い訳を紡ごうとする。
「い、いえっ、そんな滅相も有りません。そんな失礼なこと使徒様に思ってなどいません!」
「そうか、……なら八重樫さんに――――」
「少しは思いました!すみませんでした!!」
見事な勢いで土下座をかますリゼ。
熟練度具合は神がかっていて、何度も行なっていたのが目に見えて分かるくらい華麗な土下座常習犯だった。
このまま脅して今後のことに協力させるのもいいが、そう言った主従関係はあまり好きでは無いし、何より良心が地味に痛い。
(ん? 少し……?)
彼女は少しと言ったが、前回のリゼは少しなんて口にしてないはずだ。
むしろもっと酷いことを言われたような気がする。
「ん? 少し……? もう正直に言っていいよ。ちゃんと分かってるからさ」
自傷気味にそう言ってみると、リゼはクワッと顔を上げて反論する。
「い、いえ! 確かに最初の方は何でこんな影の薄い男に媚びを売らないとダメなんだ、命じた上層部には闇属性魔法が上手い子に教えてもらって足が痒くなる魔法でも掛けてやろうかと思いましたが実際会ってみるとちょっとカッコイイ感じがしたのでまだマシかと思いました、お姉様には負けますが! お姉様には負けますが!」
「なんで二回も強調して言った……」
「大事なことなので」
凄い早口で熱意を語るリゼにちょっとドン引きしそうになったし、その上手い子ってクゼリーに辞職をすすめられていた気もしたけど黙っておこう。
にしても微妙に好感度が上がっていた理由がわからないが、どうしてだろうか。
首をひねりつつも、とりあえず扉の前でずっと土下座状態は色々誤解を招きそうなので中に入れることにする。
「とりあえず中に入ってくれ」
「それは無理です!」
(そういう意味じゃねぇよ! なんでそっち方面に受け取ったよ! 夜伽を受ける気はサラサラねぇよ! 恋人いるし!)
声にならない叫び声をあげるも、このままじゃ本当にやばいのでリゼの前にしゃがんで耳元で囁く。
「(あとで、八重樫さんと会える機会作れるけど)」
「了解であります!」
シュタッと遠藤を押しのけて部屋に入るリゼに頭が痛くなる。
『
(とりあえず誰も見てないよな?)
廊下の先をキョロキョロ見るが誰の姿も見当たらない。
ステータスや技能が初期化されているせいで、細かな所は分からないがきっと大丈夫だろう。
気配を隠すのがよっぽど上手くない限りは大丈夫なハズだ。
そんなことを思いながら扉を閉める。
遠藤が扉を閉めたあと、幾分か経ってから廊下の奥からひょっこりと顔を出す人物がいた。
ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークの彼女である。
「(なんなのよあれは。もしかして遠藤くんってかなりなやり手なの!?)」
そんな小さな叫び声は誰にも届いていなかった。
派生技能に関しての独自解釈をぶっこみました。
更にトータスにおける派生技能獲得のし辛さについて独自解釈を入れました。
遠藤がいくら強いといっても派生技能の所持率が異常だし、上位世界といえどトータス住民と比べて研鑽時間が短過ぎる。
多分こういう事なんじゃないかなーと思いながら書きました。
あと専属侍従はリゼという名前にしました。
勿論あの女性騎士のお友達です。
リリィの側近辞めさせられた女性騎士って名前出てないですかね。