「それで、話とはなんでしょう? やはり身体が目当てですか? 穢らわしい男ですね」
「いつまで言ってるんだよぉ!」
「冗談です。先ほども言ったように他に比べたらマシだと思ったので、ある程度信頼はしてますよ。それにこれも仕事のうちですので貴方なら欲しければ構いませんよ?」
そう言ってスカートの裾を軽く摘んでみせるリゼをみて、遠藤は盛大にため息をつく。
前回のリゼはこんな残念な感じだっただろうか?と軽い失望を抱きながら頭をガシガシ掻いていると、突然リゼの表情が真面目な顔になる。
「やはり童貞のような気配を感じますけれど、対応はそれとは違いますね」
そう冷静に言い放つリゼに、遠藤の頬がヒクつく。
なぜ形式上、主人である俺が罵倒されなければならないのだろうかと。
そういった思いが顔に出ていたのかリゼが説明しだした。
「私達の任務は、貴方方を色んな意味で満足させて籠絡するのも仕事のうちの一つなんですが、まだもう一つあるんですよ」
「もう一つ?」
「ええ、主人を見極める仕事です。主人の人となりの情報収集は勿論のこと果たしてどの位の利益になるかということ。勿論国益がかかってますからね」
それはそうだろうなとは思う。
国を守るために情報収集をするのは当然であり、その行為も必要悪であると言っていいだろう、そんなことを局長と話をしていたことも思い出す。
そういえば以前魔王もメイドに情報収集させていたが、メイドとは情報収集するのが常なのだろうか?
「だとしても、どうして俺に分かるように?」
「はて? 貴方様は分かっていたのでは? 私の個人情報や侍従の充てられる日を知っていたりしていましたし、技能に〝読心〟を持つ方でもないので。まさか今日判明した〝暗殺者〟をそこまで有効活用されているとは思いませんでしたわ。見知らぬ地で情報収集すら行っていないお人好し達かと思っていましたが、貴方様はそういう訳ではないのでしょう?」
かなり盛大な勘違いをしている。
今日の昼に居なかったのは、ただ単に苦無が欲しかっただけなのだ。
リゼの事を知っているのも逆行しているからだし、何故かそれらがミラクルな方に展開していた。
勘違いさせておくのもいいけど、どうせ鍛冶屋行ったのがバレるのも時間の問題だと思うので言っておく。
「いや、俺は全然知らなかったけど?」
「へ?」
え?いやマジで言ってんのこいつみたいな顔されても困るんだが。
ブラフを張ってるわけでもないぞ、だからその目でこっちを見るな。
「……ま、まぁそういう事に――――」
「今日の昼に居なかったのは鍛冶屋に行っていただけだから」
「……」
いやいやと首を振って言葉を紡ごうとするリゼに最終宣告をする。
リゼはものの見事に固まり硬直したのち、肩をがっしり掴んできた。
「解雇だけは嫌です!すみません!見逃してください!」
「知らないし!近いし!顔まで10cmもないのは流石にドキドキするんですけど!」
「なら貰ってください!処女です!」
「要らないし!というか童貞バカにしてた人が処女ですか!?」
はーはー言い合う二人。
字面状は怪しい関係だが、場の雰囲気はこれ以上にないくらい壊れている。
ちょっと冷静になろう、と手を引き剥がしてしばし呼吸を整える。
「ただ単に協力してほしいだけだよ、実戦訓練に」
「実践訓練!? やっぱり身体目当てだったんですね!」
もうゴールしてもいいよね。
正直そんな気分でした、とのちに遠藤は語った。
★☆★☆★☆★☆★☆
「うー、寒いです。夜分に野外プレイしたいんですか。私は可哀想な子です」
「いつまで引きずっているんだ……。さっさと案内してくれ」
夜の王宮を抜けて魔物が出る街の外に来ている。
本来なら一週間後に屋外訓練場で弱った魔物を相手に実戦訓練をするのだが、さっさと派生技能を獲得したい遠藤にとってはもどかしく感じた。
なのでリゼに手伝って貰いながら王宮の外に出たのだ。
自前の影の薄さで抜けることも可能かも知れないが、バレたら割と洒落にならない事態が発生する。
もしバレても
たまにちょっとやばいかも知れませんねなんて呟きが聞こえても俺は聴いてない。
夜の街の外は視界の悪さもあって危険らしいが、あの使徒との闘いに比べたら全然恐怖を感じない。
襲い来る魔物を処理しながら技能に集中する。
気配操作で魔物攻撃のタイミングをずらし、影舞で体幹を整えて、暗殺術で弱点を刺す。
たまに四、五匹ほど同時にやって来てリゼが慌てたりしていたが、攻撃をいなして捌き切る。
魔物がやって来るのが一旦止んだので、チラリとリゼを見て上着を投げる。
「うわっぶ、何をするんですか」
「寒いんだろ。ちょっと温まって来たからそれを着てくれ」
「貴方は――――」
魔物がやって来たので集中するために声をカットする。
一体一体、急所を見定めながら捌いていく。
血が小太刀にこびり付くが一振りすると刃が綺麗になる。
魔王アーティファクトのような化け物性能はないが、それでも十二分に使えるアーティファクトだった。
何度か魔物を切り裂き、何度か小太刀を振るい続けて、キリがいいところで空を見上げると白くなる三歩手前の感じだった。
魔物もほとんど来なくなっていたので丁度いいかなと思いつつ、火の魔法陣を書き上げて討伐証明部位と魔石以外を全て燃やす。
こうしてきっちり処分しておかないと後々大変なことになるらしい。
燃やし尽くしたあとリゼを探すと、リゼは木を背もたれにして座りこんで、幸せそうに船を漕いでいた。
何故か無性に腹が立ったので船をデコピンで難破させる。
「あだぁ!?」
「訓練終わったんだけど……。というか侍従ならせめて立って待たない?」
「……っ、でしたら黙ってお姫様抱っこして下さい。地味に私の憧れなんですよ」
そう言ってパサパサと服を叩いたあと上着を返してきた。
その上着を受け取って少し肌寒くなって来たところ包む。
「ん、ありがとう。別に帰るまで使ってもらっても良かったけど」
「万が一、使徒様の上着を使用して議題にかかると面倒なので」
あーなるほど、と思いながら討伐証明が入った袋を渡す。
中身を確認したリゼは数の多さに引き気味になりながらも、魔石が入った袋も渡されないことに小首を傾げる。
「お荷物でしたらその魔石が入った袋もお持ちしますが?」
「そういう意味じゃなくて、その証明あげるよ。少しはランクの足しにでもなるんじゃないか?」
「っ!? ……やっぱり情報収集してたのでは?私は冒険者に登録していたこと一言も言っていませんよ」
ちょっとジト目で見てくるのでデコピンをかます。
「乙女の額に何度も攻撃するとか、鬼畜生ですか」
「自分で自分のことを乙女だという人はやばい人って知り合いが言ってたぞ」
夜の帳が空けつつある中帰宅して、即行ベットにダイブした。
地味に節々が痛いし疲労もピークに達していた。
こんなに痛くなるまでする気は無かったのだが、何故かまだまだいけると思い込んでいたのだ。
(まさか卿を抑えつつ使えるようになったのか!?)
少しワクワクしながらステータスを見る。
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遠藤浩介 17歳 男 レベル:5
天職:暗殺者
筋力:110
体力:135
耐性:60
敏捷:230
魔力:75
魔耐:75
技能:暗殺術[+夜目][+深淵卿]・気配操作[+気配遮断]・影舞・言語理解
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(もしかして、この夜目のせいで時間が狂っただけか?)
全く新しい派生技能に困惑しながらも、疲れていたこともあり思考を放棄して寝ることにした。
ちなみに記憶が途中でなくなっていることに気がついてないし、その時香ばしいポーズを取りながらターンを繰り返し、グラサンを探していたことも記憶から消去されていた。
遠藤、じみに卿に侵食されていく。
八重樫さんが何度も遠藤くんに会う理由。
それはただ単に南雲くんに話をしようとしているからです。
実は遠藤くんの自室は南雲くんの部屋と結構近いんですよ。
腐れ馴染みの件で謝罪しようと行ってるんですけどね。
最近の悩み事、遠藤くんのヒロインをどうしようかということ。