この愉快な二人に祝福を!   作:ブルーな気持ちのハシビロコウ

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昨日の内にタグとか色々いじりました。

昨日に頭痛がしたんですよね(唐突)...。
「頭痛い、流行ってるし風邪かな...はっ!」
という、思い付きの寄り道今話です。

皆さん、帰りの手洗いうがい忘れずに。


この風邪引きさんに看病を!

「ケホッ...ケホ!」

  駆けだし冒険者の街、アクセル。

  ある宿屋の一角で、咳が聞こえる。

 

  ヒトミは震える肩を抱く。

  朦朧とする意識、気だるさ、そして咳。

  ヒトミは靄がかった意識の中、ある結論に達する。

「うぅ...これは、風邪引きましたね...」

 

  ヒトミはベットからのそっと起き上がり、ふと気付く。

「温熱計は無い、ですよね。ファントムさんに連絡...あ、この世界携帯も無いんでしたけ...」

  この世界は、彼女のいた世界とは勝手が違うのだ。

  確かに過去の転生者達が奔走してある程度の知識や物は揃うが、それでも明らかな限界がある。

  ましてや、距離が離れた相手に小型で即座に且つ迅速に、電波で会話のやり取りをする物はない。似た魔法具があっても、ヒトミには手の届かないようなものであった。

 

  手詰まりした感覚に襲われ、ヒトミは無理にでもギルドに行こうかと考える。しかし、さらに倦怠感と咳が込み上げる。

「ケホケホ...流石に、厳しいですかね...どうしましょう」

「体を温めて安静に寝てればいいんじゃないか?」

「そうですけど、でもファントム連絡を...ぇ?わぷっ」

  ヒトミはふと、声の聞こえた方を振り向こうとする。

  が、その前に寝かされて布団を顔まで掛けられた。

 

  ヒトミが布団から顔を出し、声でなんとなくわかるが、目で確認する。

「....ファントムさん?」

  彼がいた。

  そして、苦笑している彼は静かな口調で言った。

「随分遅いから来てみればこの有り様か...お前が風邪を引くとは意外だな?馬鹿は風邪を引かないと聞いたが」

「うっ、すいません」

「謝るな冗談だ。こうなることは想定していた...むしろ遅かったがな」

「?」

「そっちの世界のこっちの世界は似ているんだな?俺は気候差に体を壊すことは考えていたと言っているんだ」

  彼は淡々と語る。

「...なる、ほど。ケホケホ」

「喋り過ぎたな。とは言っても...別に軽度の熱だろう、いまから看病する」

「っ...!」

  彼はスッとヒトミの額に触れて熱を確かめる。

  その動作にヒトミは目を丸くし...さらに頬を紅く染める。

 

「おい、年頃だからと恥ずかしがるな。熱が計りにくい」

  彼に鈍感とイチゴな雰囲気は存在しないようだ。半目で呆れながら注意する。

「そんな無茶な...なら直接触らないで下さいよっ」

「お前は手袋越しで触って熱を計れと言うのか?いいから病人は黙って看病されろ」

「むぅ...わかりましたよ」

 

「熱は軽度...と言っても慣れてないか?どうする?俺はその手に精通してないからな、万が一を考えて一応マトモな医者に診てもらうか?」

「いえ、いくら体調が悪くても...そこまでは」

「では聞くが、どんな風に体調が悪い?」

  彼の問いに、ヒトミはふと視線を置く。

 

「そう、ですね。頭が痛いです」

「ほぅ奇遇だな、俺もお前らに会ってからずっとだ」

 

「心なしかお腹の調子が悪いです」

「奇遇だな...俺は毎日ストレスで胃に穴が空きそうだ」

 

「身体中だるいです...」

「奇遇だな。どこかの誰かに催眠かけられて四六時中走って暫く感じたこともない疲労が溜まったんだが」

 

「「...」」

「冗談のつもりだったが...俺、お前よりも医者に診てもらった方がいいんじゃないか?」

「...ごめんなさい」

  新たな病人が生まれた、しかも重度の。

 

  彼は頭を掻き、息を吐く。

「まぁ、いい。そんな事はいい...消化に良い飯でも作ってこよう」

「え?悪いですよ...」

「悪いと思うならさっさと治せ、体は十分に動かせるか?」

「え、と...あまり、キツいかもです」

「......そうか。ならヒトミ」

「?」

「年頃のお前にこれは正直に言ってキツいと俺は考えてる。サバサバしていれば助かったが...怒りたいなら後でいくらでも怒れ」

「は、はい?何をですか?嫌な予感しかしないんですが...」

  ヒトミはどこか嫌な予感に、頬が痙攣する。

 

  彼も少し言いにくそうに。

しかし再度聞かれるのを恐れてか、ハッキリと。

「今から服を脱がして布で汗を拭く」

「......えっ?」

 

 

  ...その後、暫くヒトミは羞恥で彼を直視できなくなった。

 

 ◆◇◆

 

  訳を話し、大家に台所を借りた彼は無言で包丁を握る。

  頬は紅くない、だがその表情はいつもよりも能面だった。

 

『~!~!』

  まるでそれは。逃げようとするために、彼が手で完全に固定している野菜の様に、何かを押さえつけるようだった。

「料理と着替え...順序を、間違えたな」

  ザクッザクッ

  慣れた手つきで包丁を振り下ろし、ポツリと呟く。

(陶器のような白い肌に柑橘系の香り女の肌とは何故あんなにも柔らかいのかあれで力が出るのかサンとは全く異な)

「やめろ。料理に支障が出る...全く、ここまで耐性がなかったのか?俺は」

  ちなみに彼は、彼女いない歴=年齢だったりする。

  彼自身。大してその称号に興味も引け目も後悔もなかったが、それが思わぬ弊害を呼んだようだ。

 

「ゆんゆんやめぐみん辺りを呼ぶべきだったか...っ情けない」

  彼はまな板の粉々になった野菜を見て、自分に呆れた。

 

 ◆◇◆

 

「おい、作ったから食え」

「すいません...わぁ、鍋ですか?」

「まぁな、野菜を中心にしたから消化にはいいだろう」

 

(おぉ...ファントムさんがいつもよりも優しいです)

「今失礼な事考えたか?」

「いいえ全く!」

  慌てて手を振る元気はあるようだ。彼はそう思った。

(にしても、鍋。ですか...)

「こういうのって、いいですね」

「風邪を引くのがか?」

「はい。迷惑を掛けられる相手がいるのって...なんか、幸せだなぁって」

 

「ほう。まるでいつもは迷惑を掛けていないみたいに聞こえるな」

「.....病人ですよ~労ってください~」

「帰る」

「待ってくださいすいませんでした置いてかないで!」

 

「冗談だ...二割くらい」

「何だ良かったです.....最後何て言いました?」

  彼は無視して鍋をテーブルに置き、テーブルごとベットの近くに移動させた。

「これで幾分か食べやすくなったろう...一人で食える、訳ないか」

「これは...甘えてもいいですよね?」

「まぁな」

(これはまさしく、マンガやアニメで見たフーフーの後にあ~んのアレですよね!まさか自分が体験する日が来るとは思ってもみませんでした!)

「ケホケホ!」

(...でも、辛いものは辛いですね)

  再び体が震える。

  そして素直に大人しくしようと誓った。

 

「で、ではその鍋を熱いので...」

「安心しろ『フリーズ』で熱すぎず温すぎずまで調節した......おい。何だその目は、訳を聞こうじゃないか?」

「...いえ。お気遣いなく、流石ファントムさんだなぁと思っただけです」

「どういう意味だそれは」

「乙女心は複雑なんですよ.....でもお心遣いはとても感謝します。では早速優しいあ~んをっ」

そう言って目を閉じて口を開けるヒトミに、

  ズボッ

と、彼は鍋の具を掬ったスプーンを押し込んだ。

「...」

押し込んだのだ。

「...?...!」

 

「「......」」

  カチャ、カチャ...パクパク

 

  彼はヒトミの凄みのある、だがなんとも言えない視線に疑問を持ちながら。

  しかし『あ、やらかした』となんとなく察した彼は何も言えず閉口し、今度はゆっくりとスプーンをヒトミの元に運ぶ。

 

  沈黙が訪れ、食事が終わるまで二人が口をきくことはなかった。

(...うぅ、どうせファントムに求めた私が馬鹿ですよ~)

  余談だが、鍋は塩味が効いていたそうな。

 

 ◆◇◆

 

  食事を終えて一息つくと、ヒトミはふと彼を見る。

「....どうした?」

「ふと思ったんですがファントムさんって、変な人ですよ痛いです痛いですこめかみ押さないで下さい」

「なら聞くが病人なら他人を変人扱いしていいのか?食事を終えたんだ、再び着替えをしないなら大人しく寝てろ」

「悪い意味じゃないんですよ、本当に...」

「?...どういう意味だ」

  彼はグリグリと押していたこめかみから人指し指を外し、怪訝な顔をする。

 

「イレイシアで会ったときと、だいぶ変わりましたね」

「俺がか?まぁ、否定しないが....」

「素直に優しくなったと言ってくださいよ?」

「優しさは甘えだ。人に甘くなると、俺は自分にも甘える面がある...悪い癖だ」

「むぅ、厳しい人ですね...でも私はそう思いませんよ。優しさは確かに甘えに近くてなっても、決して一緒ではないと思ってます」

「...?」

「言葉でうまく説明できませんが...私はファントムさんを『優しい人』だと思いますよ?」

「っ...もういい、寝てろ」

「おやおや、照れちゃいました?」

「違う。その言葉は好きじゃないんだ」

「?」

「ありがとうとか、優しいとか。そういう言葉を言われると自分の行いが、偽善見えてくる...それで...」

「...それで?」

 

 

 

 

「『偽善』が......何かこう、紅魔族っぽいだろう」

  ヒュゥゥゥゥ...

  室内なのに、乾いた風が吹く。

 

「...ファントムさん」

「...なんだ?」

「私のシリアス返してください」

「知るか寝てろっ」

 

「いいえ寝ません。そんなに紅魔族が嫌なんですか?」

「あぁ嫌いだとも。全く合理性の無い動きと装飾、そして長く中身の無い自己紹介。あの思考回路の血が俺の中に入ってると思うと...」

(私、あれ結構好きなんですけどね...)

  この間の催眠の件は、完全に封印しているため口には出さない。

「家出の際に親御さんは心配しなかったんですか?」

「しないとも、そういう母だ...むしろ『お土産待ってる』位のノリだろうな。父はいない、居ないというか十歳の頃に『俺の血が騒いどるわ!こっちじゃ、こっちじゃなぁぁ!!!?』とか意味不明な事を叫んで明後日の方向に消えた...未だに消息は定かじゃない」

「えっ。なんか...凄い家族ですね?紅魔族はみなさんそういう感じなんですか?」

「俺の家はある意味、紅魔族でも紅魔してる...流石に十二年も子供と妻を放る奴は親父くらいだろう......そうだよな?」

「お母さんはなにか言わなかったんですか?」

「『バツイチになっちゃった。これは名乗りに入れておくべきね!』と。怖いのがそれが本気で言っていたことだ...あれは、もはや紅魔族なのか?今思うと何か別なモノに思えてきたんだが」

 

「ファントムさん、若干家族から逃げてません?」

「否定しない。というかできん....最悪なことに弓が使い物にならなくなってきたからな、眼鏡の替えも兼ねて...近頃に行こうと考えている」

「!そうなんですか?」

「あそこの魔法具や鍛冶屋は頭はあれだが腕はいい、頭はあれだがな」

「二回言うとは...私も行きたいです」

「それは構わないが......先に言っておくが、お前に何か起こっても命の危機がない限り俺は見届けるぞ。最悪見捨てられると思え」

「え、と。そこまで言います?」

「行けばわかる。さて、もうそろそろ本気で寝ろ」

  彼はそう言って若干無理に寝かせる。

 

「.....お話ししましょうよ?」

「いつもしてる」

「むぅ...こう、女性の気持ちを汲むべきだと思います。風邪の時、一人は怖いんですよ?」

「寂しいのか?なら寝るまでずっと側にいてやるからさっさと寝ろ...おいどうした?」

「あ...いえ、恥ずかしくなるようなセリフをよくそんな平然と言えるなぁ...と。あ、若干ですが目が紅いですね?紅魔病でました?」

「それ以上その口を開くなら、希釈してない自作の睡眠薬原液で突っ込むぞ?三日は寝ていられる」

「おやすみなさいよい夢をっ」

「あぁ」

  ヒトミはガバッと布団を被り、彼は短く答えて椅子に座り、足を組む。

 

  そして、即座に帰るタイミングをうかがう。

(さて。さっさと帰るか...潜伏でもすれば音もなくいけるだろうしな...)

「ファントムさんいます?」

「っ...あぁ、早く寝ろ」

  無理っぽかった。

  定期連絡をする必要があるようだ。

 

  彼は深く嘆息し、ヒトミが寝付く夕方まで付き合うことになった。

 

 ◆◇◆

 

  朝になり、ヒトミは目を醒ます。

「...ん」

  ムクリと起きて、警戒心皆無な様子で小さく唸った。

  大きくアクビした後に目を擦り、あることに気付く。

「熱は...おぉ、一日で完全復活です!まるで疲れが吹っ飛んだよう、な....」

  ベットの上で上体を起こし肩やら腕やらを回しはしゃぐが、ある方向に視線が向いた瞬間、口を開けたまま固まる。

 

「スゥ......スゥ」

  そこには。椅子の背もたれに完全に体を預け、俯いたように頭を垂らし、足を組んだまま睡魔を迎えた彼の姿があった。

  いつもの緊張を巡らす彼は、そこにいなかった。

 

「!...」

  ヒトミは開けた口を閉じて、柔らかい笑顔を向ける。

(これで優しくないなんて...頑固な人ですね)

 

「ありがとう、本当に....貴方がいてくれてよかったです」

  その短い言葉には、沢山の想いがこもっていた。

  今の彼なら聞こえずとも、受け取ってくれるとも。

 

 

  ヒトミはそっと彼の体を揺らす。

「ファントムさん?起きてください。もう朝ですよ」

 

 ◆◇◆

 

  大家に微笑ましい笑顔で迎えられ、二人はそのまま玄関で会話していた。

「...まさか朝まで寝て、お前に起こされるとはな」

「アハハ...『すぐ帰ると思っていた』って。スゴく大家さん笑ってましたね...?」

「どうせ勘違いしたんだろう。いくらガキとはいってもお前は女なんだからな...むしろ邪推しない方が少ないだろう」

「むっ、子供扱いしないでくださいよ?」

「だったらもう少し節度と言うものを...っ」

「...ファントムさん?」

  彼はドアを開けたまま、硬直した。

  ヒトミが怪訝そうにドアの先を見ると、そこには丁度ドアノブを掴もうとして彼同様に固まった、めぐみん一行の姿が。

 

『あっ』

 

  彼以外の声が重なり。彼は遠い目で天井を見上げた。

先程の発言が脳裏をよぎる。

 ...むしろ邪推しない方が少ないだろう。

 

 ◆◇◆

 

  場所は移り...冒険者ギルド。

『いいかお前らぁ!もはやこやつに慈悲も無し!!』

『そうだ!』

『こんの色男は風邪で弱ったヒトミちゃんに対して看病と称してあんな事やこんなことを....!』

『万死に値する!』

『粛・清!粛・清!』

 

  彼を取り囲むのは、いつぞやの被り物集団。

 

  彼は今回手首を縛られている、抵抗したが溢れる数には勝てなかった。

「しかし...成程、これが既視感と言うやつか」

  溜め息をつく彼に、軍団の外からヒトミが叫ぶ。

「み、皆さん誤解です!本当に只の看病してもらっただけで、昨日は何もなかったんですよ!?」

『皆そうやって言い逃れようとするんだよぉ!!』

『こんな可愛いパーティメンバーがいてなにもしないなんて男が廃るぜ!?』

 

「.....そうか?」

  彼は小さくツッコミをいれる。

『そして俺達はクズマとゴミ(ダスト)を除き女には手を上げない!』

『だからこの男を気がすむまで粛清するんだ!!』

『粛・清!!粛・清!!』

  ギルドに大量の低い声が重なる。

  まるで戦場に赴く鬨の声の様に。

 

「色々最低ですね...この状況」

「あんなに多くから睨まれて...羨ましいぞ!」

「ヒトミ~次のコラボレーションの打合せしましょ~?」

  女性人から凍えるような視線を向けられる。

  いや、正確にはめぐみんだけなのだが。

 

 

「フハハハハ、面白そうな奴等を発見したぞ...また嫉妬に溢れたこの空間も美味なり」

  そんな人混みの中、一人の男が不敵に笑った。




作者、文字拡大を覚える。

そしてくろぐろは『フラグを壊す者(フラグブレーカー)』の称号を得ました。
紅魔族らしいぞ、やったな。

これはラブコメじゃない、コメディなのだよ!

誤字脱字、この辺がわかりにくいよ作者!
といった心ある批判や意見、気軽に感想下さい。
作者が喜び勝手に踊ります。
心ある批判は前向きに受け止める所存です。

次回は明日に...行けるかな?頑張ります。
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