この愉快な二人に祝福を!   作:ブルーな気持ちのハシビロコウ

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予告通りデストロイヤー篇です。



この理不尽な要塞に終焔を!前篇

 ピシュン...タァン!

 乾いた音が、朝露の残るアクセルに響く。

 

 その音を辿ると、アクセルでも少し外れた所の木に行き着く。

 その一本の木には、既に四本の矢が刺さっていた。

 その内三本は、木の腹に貼りつけられた紙の中心に塗られた、円形の握り拳程度の大きさの赤に当てられている。

 

 若干の、白い息を漏らして彼は息を吐いた。

「一本目は、力み過ぎたか...しかしやはり、鍛冶の腕は確かだな」

 そう言って、目を瞑り黙考する。

 

(....ひとまずこの弓の癖は把握した。魔道具や里の帰りにウィズの店での準備は終わった。試作は段階的に使えないとして、確認すべき事は全て済んだ)

「よし、今日来ても問題ないな」

 彼は目を開け、矢を抜こうと歩きながら眉を寄せる。

 

「しかし。バニルとやらの言葉には変な説得力があったから備えたものの...アクセルにそこまでの『ナニカ』が来るのか?」

(しかもバニルは魔王軍幹部と来た....事実だろうがどうだろうが、色々な意味で二度と相手にしたくない奴だな)

 彼は全ての矢を抜き、ふぅと汗を拭い一息つく。

 ようやく、マトモに太陽が顔を出し始めた頃だった。

 

 彼は目を細めて、その顔をだした太陽を見る。

 周囲は田んぼと叢で、未だに残る朝露が反射して光り輝く。

 それはまるで、宝石のように、地に広がる星のように。

 

 ようやく朝が来た。そんな雰囲気の中、突如警報が響く。

『デストロイヤー警報!デストロイヤー警報!機動要塞デストロイヤーが、現在この街へ接近中です!冒険者の皆様は、装備を整えて冒険者ギルドへ!そして、街の住人の皆様は、直ちに避難してくださーいっ!!』

「っ...デストロイヤーだと!?」

 

 彼は目を丸くし、突如慌ただしくなった街の方を見る。

 人々が寝巻き姿で家を飛び出し、荷物を落としながら逃げ惑う。

「成程...確かに、過去にみないな」

 彼は若干引きつった笑みを浮かべる。

 先程の美しい光景すら、今では嵐では生温い災害の、その前の静けさに感じられた。

 

 

 遠くの喧騒の中、彼は少し荒くなった息を整えて思考を巡らす。

(だが、これは....うまくいけば千載一遇のチャンス(・・・・)だ)

 

 そして、急いでパーティメンバーの元に駆けた。

「しかしバニル、これは手に負えないだろ....っ」

 

 ◆◇◆

 

 機動要塞デストロイヤー

 これはもともとは、魔導技術大国ノイズが対魔王軍用の兵器として開発した超大型ゴーレムだった。

 

 しかし開発されたと同時に暴走、魔王軍ではなくノイズの国を滅ぼす原因となってしまった兵器である。ある一説にはデストロイヤーを創った賢者が、まるで道具のように自分を使う王や国を滅ぼすのを目的としていたとも言われている。

 

 クモの様な外見を持ち、街に並ぶその巨大さに似合わず速度が異常に速く、さらに魔法の結界をもつために魔法による傷をつけることすら叶わない。物理をしようと近付こうとするものなら踏み潰される。

 

 一通りの彼の解説を終えると、丁度外で合流したヒトミはポカンとしていた。

「...そんなに滅茶苦茶なんですか?」

 彼は顎を軽く引く。

「気持ちはわかる。まさしく難攻不落の『災厄』だ...寝巻きを着替えろ、ギルドに行くぞ」

「えっと、ギルドにですか...何をしに?」

「とぼけた事を言うな.....警報でもいっていただろう。冒険者がギルドに集められるんだ、やることは一つだ」

 

 彼は一息置く。

「討伐だよ、機動要塞のな.....もしかしたら、もしかするからな」

 一寸にも満たない光の可能性に、彼は苦笑した。

 

 ◆◇◆

 

 ザワザワと、二人が来る頃には既に冒険者達が集まっていた。

「お集まりの皆さん!本日は、緊急の呼び出しに応えて下さり大変ありがとうございます!只今より、対機動要塞デストロイヤー討伐の、緊急クエストを行います。このクエストには、レベルも職業も関係なく、全員参加でお願いします。無理と判断した場合には、街を捨て、全員で逃げる事になります。皆さんがこの街の最後の砦です。どうか、よろしくお願い致します!」

 冒険者の喧騒の中、ギルドの職員が声をあげた。

 既に用意が整っており、テーブルをギルドの中央に集めていて会議室のような空間になり、張りつめた空気がよりその雰囲気を漂わせる。

 

 しかし、彼はその雰囲気に疑問を覚えていた。

「...思ったより多いな?てっきり半数近くは逃げるとばかり思っていたが」

「皆さん、この街が大好きなんですよ」

「そうか.....?にしても男の割合が多い気がするな。元々か?」

 場違いに嬉しそうにするヒトミを他所に、彼は小首を傾げた。

 

 実のところ。

 男性冒険者が通う、とある風俗店がこの冒険者大半をここに引き留めたと言っても過言ではないのだが。

 しかし答えを二人に教えてくれる者はおらず。そして、それどころではない。

「それでは緊急会議を行います。各自席に着いてください!」

 ギルド職員に言われて席につき、二人は見易くなった周囲を見渡す。

 

「カズマ達がいるな....やはり何かあるな?カズマなら間違いなく逃げると思っていたんだが」

「あの鎧の人、ミツルギっていう人じゃないですかね?アクアさんの事ずっと見てます.....なんか怖いですね」

 カズマの存在がさらに疑問に拍車をかける彼。

 アクアに送る、同郷の視線に若干の恐怖を覚えるヒトミ。

 妙に緊張感の無い二人だった。

 

「では、短くですがデストロイヤーの説明に入ります....」

 デストロイヤーの説明が入ると、その知名度から「知っている」とばかりに頷くほぼ全員。だが話が進むにつれて、冒険者達の顔に影がかかる。

 

「まぁ、そうだろうな」

 彼はボソリと呟いた。

 機動要塞デストロイヤー、王都の名のある冒険者が束になって、賢者達が知恵を絞り出して、漸く同じ土俵に乗れるか否かのレベルなのだ。

 いくら中堅が多いからと、駆け出しの冒険者のいる街では普通に考えれば太刀打ちすら出来ないのは目に見えていた。

(第一。魔法の結界を破らないと、物理だけじゃ無理があるだろうしな.....考えなしに来た奴ばかりか?チッ、こうなれば討伐は視野に入れずとも、俺一人・・・で...)

 彼は顎に手を置き、思考を巡らせ始めた。

「魔法結界をなんとかするには、魔法で壊すしかないがそんな使い手がこのアクセルにいる訳がないからな....侵入には胴体部を地に着ける必要がある。こうなれば、紅魔の里で得たあれを使うべきか....ヒトミ?」

 独り言に集中していたため、いつのまにか横から消えていたパーティメンバーに遅れて気づく。

 ふと周囲をみるとすぐに見つかった。

 

 ヒトミはいた。

「アクアさん...ここをこうしたらもっと良くなりません?」

「まだまだねヒトミ。そこは敢えて余白をつくることで『わびさび』とかいうやつを出しているのよ、つまり必要な場所なの!」

 そしてアクアとコップの水でテーブルに絵を描き遊んでいた。

 

 彼は口を閉じ、遠目で無駄に芸術性の高いそれを眺める。

「.....何をしているんだ、アイツは」

 長い話に飽きたのか、それとも関係ないと非情になったのか。

 それは定かでないが二人は気が合うとはよく聞く、その理由が彼はなんとなくわかった。

 二人の精神年齢は近いようだ、片方は女神なのに。

 

 バシャン!

「あぁっ!なにしてんだよお前!?」

 そして気に入らなかったのか、アクアは水を上乗りした。

 水の絵にみいられていたカズマは驚いて叫ぶ。

 

 やはり、緊張感は無かった。

 

 ◆◇◆

 

 ポカポカとした日の光を浴びながら、彼は近くの見通しの良い丘に立っていた。

 

 柔らかい風が心地よく体を撫で、サワサワと草の波が揺れる。

 その光景を背景に彼は薄く笑っていた。

(僥倖だな...まさか魔法結界を壊せる可能性があるとは)

 

 ダメ元だが、なんとデストロイヤーの討伐の目処が立ったのだ。

 

 流れは以下の通りである。

 一、魔法結界を破壊できる可能性があるアクアが魔法障壁を破壊。

 二、めぐみんと遅れてやってきたウィズの最大魔法を使って脚を狙い、一気に行動不能にさせる。

 四、行動不能になったデストロイヤーの中に侵入し、中から機能停止に追いやる。

 五、まぁ、動けなくなった後はのんびり考えようや。

 

 と言った具合であった。

 動けなくなっても頑丈なデストロイヤーは厄介だが、危険性は動ける時よりも比べるまでもなくどっと落ちる。

 きっと、めぐみんの一日一発の爆裂の的にでもなるのだろう。

 

 その後の冒険者達はアクセル付近にバリケードや罠を仕掛け、完全とはいえないもののデストロイヤーを迎える準備を整えている。

 

 現在の彼は一人だ。そこにはいつものパーティメンバーの姿はない。

 彼女には「弓使いに出番はないからな」とだけ伝えて立ち去ったのだ。討伐において今回の彼が助力できることは少ない。

 

 尤も、彼の若干紅い瞳には最初から『討伐』の二文字など映っていないのだが。

 

「...追い風だな」

 彼は薄い笑みを浮かべながら、一点だけを見つめる。

 北西、デストロイヤーが来る方向だ。

 

 今回、弓兵の出番はない。強いて言うならデストロイヤーが行動不能になってから、ロープとフック付きの矢をかけてよじ登らせる役目があるが。逆に言えばそれ以外に出番はない。

 

 だが彼はそれでも、現時点で弓矢を持っているのだ。

(矢は通らないだろうがな...まぁ、普通の鏃では無理だろう...しかし、まさかこんなに早く頼んだ物を使う日が来るとはな)

 彼は首だけで背中の方を向く。

 コツンと指で、背中に掛けている矢を入れている箱を指で叩いた。

 カランカラン

 普段使う金属の鏃には似合わない、軽い音が響く。

「そしてこっちは...ほぼぶっつけだな」

 

 そして背中の腰辺りには、いつもは管や煙玉を付けている場所に全く別の、大きな釣り竿のリールの様な物がついていた。

 リールにはロープが巻かれており、その中心部には左右を分けるかのような金属のしきりがあった。

 側部には小さなレバーとつまみもある。その性能は現時点では、彼と造ったひょいざぶろーしか知らない。

 

 そしてその殆どが黒で彩られておりゴツゴツとしており、めぐみんが瞳をキラキラと輝かせそうなその風貌で、いつもの彼とはかなり違う格好だった。

 

「!....来たか」

 すると小さな揺れが起き、その一点にその巨大な頭を覗かせた。

 

『来たぞーッ!!』

 アクセルの門付近では、冒険者達が吠えているのが聞こえる。

 想像以上の速さで接近している。既にその全容は明らかになり、巨大な脚が高速で動かして、それに伴って地面の揺れも激しくなっていく。

 

 しかし彼は表情一つ変えず、視線でデストロイヤーを追いながら、小さく息を吐いて背中に腕を回す。

「さて、精々利用させてもらうぞ。冒険者アイツらも、機動要塞お前もな」

 そう言って、彼は箱から取り出した変わった鏃の矢をつがえた。

 

 ◆◇◆

 

 

 門の付近では、既に準備は完了していた。

 

「『セイクリッド・スペルブレイク』ッ!」

 迫り来るデストロイヤーに、アクアが魔法を唱える。

 すると複雑な魔方陣が浮かび、白い光の玉が浮かび上がり、デストロイヤーにそれを撃ち出された。

『す、スゲェ!』

 それはデストロイヤーに到達する前に薄い膜らしき物に阻まれたが、それはガラスの割れたような鋭い音と共に弾き散った。

『...やった、やったぞ!』

 魔力の結界が、壊れた。それだけで歓声が上がる。

『油断するな!まだ終わってないからなぁ!』

 そして他の冒険者が叫び、緩んだその空気も再び張り詰める。

 

 流石、戦闘に身を置く者達である。

「わ、わわわわたしの出番ですか....や、やってやりまひょう?」

 めぐみんの体は縮こまり、まるで携帯のバイブルの様に震えていた。呂律も回っていない。

 完全に緊張しているようだ。無理もない、彼女とウィズの魔法がデストロイヤーを無力化できるかどうかで、全てが決まるのだから。

 

『ウィズ頼む!そっちの脚を吹き飛ばしてくれ!』

 カズマが拡声器で遠くのウィズに指示をだし、そしてガクガクのめぐみんに向かった。

「めぐみん!お前の爆裂魔法の腕は本物なのか!?それともお前が毎日爆裂爆裂といってても、アレも壊せないようなへなちょこ魔法かよ!?」

「っ!」

 ピクン、とめぐみんは立ち上がる。

「な、なにおぅ!私がバカにされるよりも、一番言ってはいけないことを言いましたね....我が名はめぐみん!紅魔族の、最強の爆裂魔法使いです!!」

(よし、うまくいった!)

 内心でガッツポーズするカズマを他所に、めぐみんは完全復活した。

 

 胸を張り、ウィズと同様に力強く詠唱を始める。

「『『エクスプロージョン』』ッッ!!」

 

 そして、最大火力の二つの魔法が放たれた。

 ドォォォォォォン!!!

 

 空気が咆哮を上げ、距離があるにも関わらず一拍遅れて爆風が冒険者を襲う。

 巨大な爆発が機動要塞の脚を粉砕して底部が地面と激突。慣性の法則から地面を抉りながらもアクセルへと進み、そして門の前で構えていたダクネスの鼻先で、止まった。

 

 デストロイヤーの無力化に、成功したのだ。

 

(...あれ?)

 だが。

 最大火力の爆裂魔法に、いつものように魔力不足で倒れるめぐみんは。

 倒れていく最中。ふと、ほんの小さな違和を覚えた。

 

 ◆◇◆

 

 よし、と彼は丘の上で呟き。弓を降ろす。

「...ここまでうまく運んでるな」

 すかさず彼は丘を駆けおりた。

 否、もはや草の上を滑るようにして下っていた。

 

「『狙撃・二連』」

 そして滑りながら弓を上げ、持っていたフック付きのロープがついた二本の矢を左右からデストロイヤーに向けて放つ。

 

 ギュルギュルギュル!

 すると腰のロープが巻かれたリールがギュルギュルと両側から回転して、さらに二つの矢は飛距離を伸ばす。

 

『アーチャー』に支給された同様の物は、『冒険者』の彼には重すぎたのだ。『狙撃』を以てしてもアーチャーには及ばない冒険者の弊害でもあった。

 

......という名目で彼は丁重に断り、そして一言。

 自作した軽い物で代用するからいい。と

 

(こちらの方が手間もなく速い(・・)からな)

彼は既にデストロイヤーまで数十メートルまで近付いてた。

「『そろそろ引くか』」

 彼はタイミングを見計らってそう言い。

腰元の縄が巻かれたリールの横に取り付けられていた、小さなスイッチを右手の人さし指の腹でカチリと入れ、さらに指二本でつまみを軽く時計回りにねじった。

 

 すると。魔力によってリールが高速で逆回転を始めた、すると必然的にロープが引かれ、

 ギュルギュルギュル...ガチンッ!

 そして。彼が地面に落下したデストロイヤーの底部まで走り寄った時点で、デストロイヤーの部品の部分に二つのフックが引っ掛かった。

 

「よし」

 彼はその丁度ロープがピンと張られて、パチンコのように腰を始めとして体が引っ張られる。

 このままでは無理矢理上部に引っ張られるが、彼は駆け降りたそのままの走りの速度でデストロイヤーの側部に足をかけ、腰の引っ張りに伴い思い切り壁を蹴って宙に浮く。

柔らかな『く』の字を描き、彼はさらに壁を今度は軽く蹴り続けてバランスを取りながら上部に向かう。

 

 それはまるで、重力を無視して垂直の壁を走る様にも見えた。

 

 ロープを掛けてよじ登るより、どちらが早いかは言うまでもないだろう。

(.....高所への移動用としてひょいざぶろーさんに作ってもらった品が、まさかこんな形で役に立つとはな...しかし腰の保護と固定をするハーネスが邪魔だ、重い上に場所もとる。こういう場でないとそこまで使い物にならないか?)

 

 彼は紅魔の里にいる間に、予備の望遠レンズと共に別で作ってもらったのだ。

 ひょいざぶろーもこのアイデアは気に入ったようで、すぐに他の商品に手を付けずにこの製作に取り掛かった。

 

 

 そんな背景もあり、彼は文字通りデストロイヤーの側部を駆け上がる。そして数十秒もたたずにすぐに終わりが見えた。

 そして地面と平行な部分に足を掛けたと同時に、高さの並んだことによって二つのフックが外れた。

 しかしフックは外れても勢いは止まらず、上部に引っ張られて数メートル宙に浮いた。

「っ」

 彼は上空に上がり、しかし焦ることなく次の行動に移る。

 その間に腰に取り付けていたハーネスを外して背後に投げ、上空から着地点を見極めてスタっと膝を折り衝撃を緩和して着地した。

 

そして。ふぅ、と彼は息を吐いた。

(....初めてにしては、驚く程上手くいったな。良しとしよう)

 彼自身、内心で驚きを隠せていなかった。

何かしらの失敗を考慮して別の案も考えていたのだが、それは杞憂に終わったようだ。

 

 こうして彼は同郷の紅魔族達が見たら狂喜乱舞しそうな、流れるような動作でデストロイヤーへの潜入を完了した。

 

 その船の甲板の様なひらけた場所に着いた彼が顔をあげると、そこには万が一の侵入を見越してか、小型や戦闘型と思しき大量ゴーレムがおり、彼等と目が合った。

 いや。目が合うというよりは、顔と思しき部位が全てこちらを向いているのだが。

 

「お前らに用はない」

 しかし彼はそれらを無視して視線を回し、砦のような建物のドアを見つけた。

 本来屈強な冒険者がハンマーで破壊するのが予定だったのだが。

 

 彼は迫ってくる大型ゴーレムを無視して、左手で弓を掴み背中に右腕を回して矢を取り出した。

 そして彼が矢を放つと、鏃の代わりに取り付けられた管が金属のドアにぶつかり、割れる。

 バリン!と音をたてると、管から明らかに入りきらないサイズの黒い粉と火が混じり。そして彼はゴーレムの攻撃を背後に飛ぶことで避け.....。

 ドォン!!

 

 先程の二つの爆裂魔法とは比にならないほど小さいが、それでも十分な威力の爆発が生じた。

 小型のゴーレムがぶっ飛び、彼は攻撃しようとした近くの大型ゴーレムを壁にして爆風を防ぐ。後方に跳んだのはその為だった。

 そして爆発を終えるとゴーレムの股下をくぐる様にして攻撃をかわし、ドアを見る。

 

 火が小さく残り床でパチパチと火の粉が跳ねる中、その中心でドアを破壊しポッカリと穴が空いていた。

 

 彼は口角を上げる。

「よし、現時点では計画・・も、配合量は完璧だな」

 

 そう呟いて、彼は迷わず駆け出した。

 まだ他の冒険者は、ようやくアーチャー達がフック付きの矢を放って、縄を登ろうとしている最中である。

 

 彼はふと入り口付近で振り返り、そしてゴーレム達に言い放った。

「...悪いが俺はお前らでなく、お前らやこの要塞の『情報』に興味があるんだ。ここが熱で馬鹿になる前に、ギルドに収集されるより早く。この緻密で魅力的な仕組みを理解させてもらうぞ?」

 

 

 そう。

 彼が一人で動いたのは、決して弓使いの、しかも冒険者に役目がないからではない。

 

 機敏で、大きく、そして凡夫の魔法を通用しない。

 近付けば踏み潰され、遠くからの攻撃など痒くもない。

 そして通った後はアクシズ教徒しか残らない。

 

 もはや、自然災害と言っても過言でない要塞。

(.....それは逆を返せば、それだけの元となる『知識と技術』がこの要塞にはあるということ...完全な理解には時間がかかっても、無理ではないだろう)

 

 今回、彼のような非力な冒険職の弓使いは、あまり重要視されない。

 彼はそれを逆に利用して姿を晦まして、唯一のパーティメンバーには軽く嘯いて一人で行動してたのだ。

 

 何故、彼の何がそこまで駆り立てるのか。

 

 彼の口元が薄い三日月に裂ける。

(これで、さらに強くなれるぞ....)

 

 そう。

 全ては、己の研鑽と精進のために。

 全ては、才能を持つ者達に追い付き抜かすために。

 

 彼は昔に抑えていた筈の、胸中から溢れる。

 まるで泥のような濁りドロドロとした粘着質なそれに囚われたまま、一人機動要塞の中に消えていった。

 

 

 

 

「...クルッポー」

 そしてそれを遠くから、白く無垢な双眸が覗いていた。




次回、シリアス先輩来たる。
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