おっちゃんと千冬姉――――以外は……
二番目の男性操縦者という事も驚きだが、なにより本日知らされたその男性が自分達よりも一回り以上歳が離れている事が、何よりも信じられなかった。
「おっちゃん、一発殴って良いよな?」
「でっ!? お、おまっ、殴ってから言うなよ?」
「うるせー! 本当なら一発でも足りないくらいなんだぞ!?」
「わ、わかった俺が悪かったよ……。
さっきちーちゃんにも往復ビンタされて説教まで喰らったんだぜ? 今は勘弁してくれよ」
「千冬姉はよくそれで済ませたな……。ぶっちゃけ刺されてもおかしくないぜ?」
「あぁ、お前達二人が俺の思ってた以上に俺を慕ってくれてたのが今になってよーくわかったよ……」
深め色をした若干癖のある茶髪に、今思いきり殴り飛ばした一夏に準ずる程度には整ってる―――どう見ても一夏と見比べって同い年か少し上にしか見えない若々しい見た目は、ハッキリ言って本当に三十路前なのかと疑ってしまう程に若い。
「しかし随分強くなったなイチ坊。まさか殴り飛ばされるとは思わなかったぜ。危うく机にダイビング噛ます所だったぞ」
「へ、おっちゃんがふざけた置き手紙置いて雲隠れしたあの日からこちとら千冬姉と死ぬ気で鍛えたんだよ。おっちゃん探し出して一発ずつ殴る為にな!」
「なるほどね……いやホントごめん」
そして何よりも不思議なのは、一夏と千冬との関係である。
一夏の事をイチ坊と呼び、千冬とも恐らく知らない仲では無いだろう雰囲気漂わせているこの自称オッサン男は一体全体本当に何者なのだろうか。
「休み時間になったと思ったら織斑君がいきなり殴るし……」
「イチ坊なんてあの人は呼んでるし、何なのかしら?」
純粋に不思議に思う生徒約半数以上、裏を感じる生徒複数、そして――
「……」
憎悪にも近い感情を抱く者一人。
差し出された一夏の手を取り、立ち上がる一誠を親の仇の如く睨む長い黒髪を後ろに一つで束ねているその少女は、爪が食い込む程に拳を握り、ただ鋭く本人の気付かぬ所で睨み続けていた。
まさかおっちゃんとこんな所で再会するなんて……しかも俺に続いて二番目の男のIS起動者と来た。
「しっかし、白い学生服て……俺もうそんな歳じゃねぇから微妙に恥ずかしいぜ」
「大丈夫、おっちゃんは見た目は殆ど詐欺レベルで俺等と変わらないから」
「そりゃそうかもしれんけどよー……それにしたって白ってのは……」
こりゃあもう運命だぜ。
血の繋がりがどうとかなんて最早問題じゃないレベルでな。
「で、五年近くもどこをフラフラしてたんだよ?」
「あぁ、それちーちゃんにもさっき言ったんだけどさ――」
『ち、ちーちゃん!?』
「およ? 何だ?」
やっぱり俺と千冬姉を『引っ張り上げてくれた』からこその目に見えない血の繋がり以上の繋がりは、どれだけ離れようともやがては引かれ合うものらしい。これでやっと確信出来るよ。
それはそうとイッセーのおっちゃんが世間的には世界最強のブリュンヒルデなんて呼ばれちゃってる千冬姉の事を『ちーちゃん』と昔と変わらない呼び方で呼んだせいなのか、隣のクラスからも恐らく男であるとかいった理由で一々俺や……そしてある意味俺以上に謎に見えるおっちゃんを見ていた女子達がビックリしたかの様に声を張り上げている。
「おっちゃん、一応おっちゃんが居なくなった後に千冬姉は更に世界的に有名になったんだよ」
「あ、そゆこと。しまったな……つい自然と出ちゃったぜ。織斑先生って呼ばないとな」
「授業とかの時はそっちの方が良いね……てか俺もそれで注意されたし」
「オーケーオーケー」
制服の上着を脱いでYシャツ姿のおっちゃんが軽い調子手をヒラヒラさせる。
俺が物心つく頃にはおっちゃんが親代わりで、千冬姉もまた一人で気張ろうとする性格だったのを大分おっちゃんに精神的に助けられて来た。
そのせいなんだろうが……IS開発者のあの人と同じく、おっちゃんもまた千冬姉の事を『ちーちゃん』だなんて呼んでいる……いや、呼べる唯一の存在だ。
「しかしISか。
おい、そういやちーちゃんの友達のあの子は今何してるんだ?」
「さてね。俺は知らんけど、そういやあの人はなにかに付けておっちゃんを毛嫌いしてたな。
『『ちーちゃん』って呼ぶのは私だけだし、最初に呼んだのも私だからパクるな』なんて言われてたね」
「あーあったあった! そうそう……あの子とお前の同い年の妹さんからは頗る嫌われてたっけなぁ……あはは」
「俺からすれば、最初に千冬姉をそう呼んだのはほぼ同時だしどっちがパクった訳じゃないと思ってるけどな」
その妹は今絶賛遠くの席からおっちゃんを睨みまくってるけどな。
そう心の中でヘラヘラ笑ってるおっちゃんに呟きながら、千冬姉がおっちゃんを連れてくる前の休み時間に久々に会話した女子――篠ノ之箒に視線を向ける。
篠ノ之箒……IS開発者である篠ノ之束の妹にて、六年ぶりくらいにこのIS学園で再会する事になった――えっと、何だろ? 昔の知り合いか? まあ、とにかくそんな感じの女子。
実家が剣術の道場で、当時習っていた千冬姉について行く形で俺はその道場に行き、そこの娘さん二人と顔見知りになった訳だが、困った事にあの姉妹は当時から既に俺達の保護者であったイッセーのおっちゃんを毛嫌いしていた。
「その妹さんならあちらに居んぜ?」
「え――あ、マジだ! おおっ、あのちんまいのが随分と美人さんになったもんだな――めっちゃガンつけられてるけど」
「………」
迎えに来た時の流れでおっちゃんとあの二人が顔を合わせたのが始まりだったんだが、その時点で姉妹二人はおっちゃんを『理解できない生物』扱いする様な目を向けていたっけか。
「あー……やっぱ嫌われてるな俺」
「ふん、くだらねぇ。
俺もさっきの休み時間屋上に呼び出されたが、意味無くキレられたぜ? 意味がわからねぇよ」
「いやお前そりゃあ――いや、何でもない」
嫌悪を丸出しにした目でおっちゃんを睨む篠ノ之さんに、俺は六年経っても『変わらない』その態度や目が実に気に入らない。
というか、決定的に気に入らないと感じたのがその屋上での一幕で彼女からおっちゃんの事を聞かれた時、俺が『今は別々に生きてる』と返した時の反応だ。
『な、何だと? それは何時から……』
『ちょうどキミ達と別れてから一年後くらいかな』
『……!? そ、そうなのか!? そ、そうなのか……あの邪魔者はもう何年も居ないのか……ふふ』
『…………』
俺もその時はおっちゃんの行方を――まさか既に学園内に居るとは思わず、また千冬姉と同じく再会を本気で焦がれていた。
それなのに彼女は何年も一緒に居ないと聞いた瞬間、隠しもせずそれを喜んだ。
様子からして当時の時点で嫌っていたのは解っては居た。
しかしそれでも俺と千冬姉にとってはおっちゃんは英雄なんだ。
それを彼女――いやコイツは……。
思わず込み上げる怒りをどれだけ必死に堪えたか……。
だから俺の中では、彼女の事は、昔の顔馴染みから昔見たことがある顔見知り程度になった。
「ま、その歓喜も直ぐに終わったわけだが……」
「あ? 何のこっちゃ?」
「何でも無いよおっちゃん。ま、今も昔も変わりばえしない奴なんてほっとけよ。嫌悪させるだけさせときゃ、例え何をして来ようとも害にもなりゃしない」
「お前な……あの子の事言ってるのか? 言っとくけど
あの子達姉妹が俺を嫌悪する理由はちゃんと――」
「俺達をおっちゃん側の領域に踏み込ませ、あの二人が入れなかった話か? だったらお門違いだな。
俺と千冬姉は自分の意思でおっちゃんの領域に入りたいと毎日死ぬ気で磨いた。あの二人はその領域に進める材料が無くて勝手にひがんでる……それだけだよ」
「……。あのなぁ? ハァ……」
ふん、いくらおっちゃんがため息吐こうがこれは訂正なんてしないよ。
だって結局、あの二人は勝手におっちゃんを僻んでるだけなんだから。
「おっちゃんよ。まさかとは思うけど、俺達から雲隠れしてる間に俺と千冬姉みたいに引っ張り込んだ人間はまさかこの世界に居ないよな?」
「えーっと、居ない。
というか、同じ領域にお前等二人が入れただけでもハッキリ言って異常なんだよ。
そんな簡単にホイホイ量産なんてできるか……つーか引っ張り込む意味も無い」
「そいつぁ安心だぜおっちゃん。もし居たなんて特に千冬姉が聞いたらやきもちで大変な事になってたぜ?」
「ちーちゃんがねぇ……?」
そしておっちゃんの領域に……傍に居るのは俺達姉弟だけだ。
「おっちゃんがふざけた置き手紙で雲隠れしてからの千冬姉は暫く荒れてたんだぜ? マジで責任取れ」
「それは分かってるけど、嫁探しがもし上手くいったらそうも言ってられなくなるぜ?」
「おう、なら安心だな。
どうせおっちゃんを旦那にできる器の女性なんてこの世界じゃ誰も居ないしな」
他? 別に居ても良いけど、それがもし女で千冬姉から奪う輩なら容赦しないよ。
俺は今の昔もお姉ちゃんっ子なんでね。
「イチ坊め、小僧っ子だったお前が言う様になったじゃねーか。否定出来ないよホント」
「はは、だろ?(千冬姉以外は、な)」
只でさえ千冬姉は素直じゃないし、おっちゃんはおっちゃんでそんな千冬姉をまだ子供扱いしてるし。
先は結構長そうだぜ……。
結局誰も一夏と一誠の間に入り込む女子も居ないまま始まる次の授業。
やることと言えば最初と同じ基礎事なのだが……。
「そういえば山田先生、我がクラスはまだ代表を決めてませんでしたよね?」
「あ、そうですね」
その前に教壇に上がった千冬が思い出したかの様に副担の山田真耶に確認する所で話は始まった。
「来週に早速各クラス対抗によるISの試合がある。
一クラスにつき代表一人を選出し、他クラスの代表と競うというのが主な内容なのだが、このクラスはまだその代表を決めていない。
なので一時授業を中断して今からクラス代表を決めたいと思う」
淡々気味に説明する千冬に生徒達は若干ながらざわめく。
「勿論来週の試合のみならず、クラス委員的な役割も含まれているから心して置け。
さて、早速だが自薦も他薦も問わん……誰かやるものは居るか?」
『………』
しかしクラス代表という時点でプレッシャーでも感じるのか、千冬の言葉に誰も手を挙げで名乗り者は居なかった。
勿論クラスに加わる事で自然と席が隣同士になった男二人も手を挙げない。
「おっさんやらねーの?」
「やるわけねーだろアホか。こういうのは華の10代がやるんだよ、今さら学生年齢とっくに越えた俺がやってどうるすんだよ」
一切自分なやる気無いぜオーラ出す一夏に問われ、一誠も呆れながらやらないと首を横に振る。
28である己が、10代という若い子供を差し置いてクラス代表なんて『色々と間違ってる』と思うのもある意味頷ける話だが、生憎実年齢はともかく色々と超越した結果見た目だけなら一夏達より2歳程年上にしか見えないレベルで若い一誠が言ってもイマイチピンと来ない。
「別に自薦するならイッセー――じゃなくて、兵藤でも構わんぞ?」
「おいおい、勘弁してくださいよ織斑センセ。
三十路前のしょぼくれたおっさんがクラス代表やったったてしょうがないでしょうよ? 寧ろここは若くて成長の兆し十二分のイチ坊だろ」
「然り気無く振るなし」
ポンと肩に手を起きながら隣の一夏を然り気無く推薦し始める一誠に一夏は心底嫌そうな顔をする。
しかし今の支配者は千冬故、その表情は無効化されてしまう。
「なるほど、兵藤は織斑を推薦する、と」
「は!? 今の推薦なのか!?」
然り気無く候補に押し上げられてた事にハッとしながら一誠を見ると、一誠は親指立てながら小声で『がんばれ若者』と無駄に爽やかに笑っていた。
「つーかさ、他の子の意見も聞きたいんだけど――えっと、そう例えばキミなんか」
「へ!? わ、私……で、ですか?」
そして面白味に欠けると思ったのか、急に自分の隣近所周囲の席に座る女子生徒にも話を振り出し始め、手始めとばかりに薄紫色の髪を持つ少女に話しかける一誠。
いきなり振られて驚いた様に、そしてたどたどしく畏まり口調で返そうとするその女子生徒。
「えっと……私は織斑君が良いかな……なんて」
「おうそうか! 聞きました織斑センセ、この子……えっと――」
「あ、夜竹……です」
「おっけーオジサン君の名前覚えたよ。
聞いたかセンセ、夜竹さんはイチ坊推しだとよ」
おい!? と抗議の声を上げようとする一夏をスルーしながら千冬に一夏推しを続ける一誠。
それが効いたのかは定かでは無いが、オッサンらしき何者かの緊張解しにより、やはり辿々しくながらも次々と手を挙げながら一夏推しをし始める生徒が出てきた。
「ほら、やっぱり歳食ったオッサンより若い奴がやるべきなんだよ」
「おっちゃんだって見た目俺等変わらねーよ!?」
「静かにしろ。他は居ないのか?」
すっかりクラス代表の座が一夏になる空気に染まってしまう中、騒ぐ一夏を一言で黙らせた千冬はもう一度教壇から教室中を見渡すと……。
「お待ちください!!」
一人の女子生徒が明らかに憤慨した表情で勢いよく椅子から立ち上がった。
「そのような選出は認められません! 男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!
わたくしにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
「あら?」
「んだありゃ」
明るめの金髪を軽く巻き、空の様な蒼い瞳が実に特徴的な少女が怒り心頭とばかりに机を叩きながらもの申す。
「貴様はセシリア・オルコットだな? 意見したくば挙手をしろ」
「うっ……!?」
しかしそんな怒りも透明感バリバリの千冬の一言に一撃で気圧されしまう。
「が、まぁ良い……言ってみろ」
だが千冬は敢えて聞いてやる事にして続きを促すと、出鼻を挫かれたその少女は三泊程間を置いてから最初の調子で口を開いた。
「実力から行けば学年首席でありこの学年最強であるわたくしがクラス代表になるのが必然。
それを珍しいという理由で極東の猿にされては困ります!
わたくしはこんな島国までIS技術の修練に来ているのであってサーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
『……』
「言うねぇあの子」
「ふん」
その極東の島国の住人だらけの真ん中でよくまぁここまで啖呵が切れるもんだ……と他人事の様に軽く笑いながら怒る女子生徒の言葉を耳に入れる一誠と、くだらんねとばかりに鼻を鳴らす一夏。
だがヒート状態を完全に持ち直した少女は尚も続ける。
「いいですか、クラス代表は実力トップがなるべき、それは私です! それにそもそも、文化からなにから後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――」
恨みでも日本にあるのかというレベルにディスりまくる少女……セシリア・オルコットは既にその『文化から何から後進的な国在住』である生徒達から白い目で見られてる事に気づいていない。
このまま言わせるのは簡単だが、そうなると後々このセシリアがクラスで浮く可能性はほぼ間違いない……と言わせるだけ言わせておきながら、ハッと呑気に気付いた一誠は、セシリアに向かって――いや、千冬に対して手を挙げながら口を開く。
「すいません、さっきイチ坊を推薦したんですけど、それ取り下げて……えっと、彼女を推薦したいんですけど」
「だから私は―――――へ?」
「は?」
「なに?」
何と一誠は一夏の推薦を取り下げ、セシリアを推薦すると言い始めたのだ。
これにはヒートしていた本人も、そして一夏も千冬も目を丸くする。
「な、なんのつもり――」
「おっちゃん何のつもりだよ?」
「そうだ、何のつもりだ?」
急に推薦されたセシリアが何のつもりかと問う前に一夏と千冬が怪訝そうに尋ねる。
すると一誠はヘラヘラと一夏と千冬にとっては安心する笑みを浮かべながら言う。
「いやだってあの子学年首席なんだろ? だったら試合の事もあるし、責任感も強そうだし、流れで推薦されるイチ坊よりよっぽど相応しいんじゃねーのと思っただけだぜ」
「「……」」
だろ? とセシリアにニッと笑みを見せる一誠。
「イチ坊もやる気無いしさ、やっぱこういうのってやる気の問題だろ――的な? えっと……名前何だっけ?」
「ぅ……さ、さっき自己紹介したのにもうお忘れなんですか? これだから極東の猿男は……」
思わぬ所からの援護に完璧に面を喰らった様子のセシリアが思わず強がりで一誠を猿呼ばわりするが、一誠本人は苦笑いして別に怒る様子は無かった。
「ははは、ごめんな? 俺その自己紹介の時まだここに来てなかったから」
「ぁ……」
そういえば来たのは最初の授業の途中だった……とはたと気付いたセシリアは気まずくなって思わず目を逸らす。
「セ、セシリア・オルコット。イギリスの代表! 候補生ですわ」
しかしそこは我の強いセシリア。知らないのなら自分が如何にお前達より優れているのかを強調するかの様にイギリスの代表候補生であることを主張しながら己の名前を口にする。
「へぇ、イギリスの代表候補生か。ならますますキミが代表をやるべきだね。つーかもう勝ち確定じゃん……やったなオイ!」
「な、なんですのアナタ……微妙にやりづらいですわね」
ヘラヘラしながら微妙に持ち上げてくる一誠に、自分が関わった男共と所詮同じかコイツはと内心思いつつ、目を逸らす。
「つー訳で俺はオルコットさんを推薦する」
「む……」
「おいおっちゃん、随分と持ち上げるじゃねーの? あんなのを」
「っ!? そこのアナタ、今私を――」
が、それでも一夏の態度にムッとなりまた突っかかろうとしたセシリアだが、それよりも早く一誠が被せる様に千冬に言った。
「事実ISに関してはお前より確実に経験は上だろ? なんせあの国家代表候補生だしな……教科書にその意味も乗ってたし、実力は本当に上だろうよ。
まあ、それ以上にあの子は可愛らしいお嬢さんだからな……そらお前、推薦したくもならぁ」
「………!」
「ほう……?」
「へー?」
ケタケタと笑いながら推薦理由を話す一誠。
だがそれはハッキリ言って地雷だった。
そう、勿論実力が下だとハッキリ言われた一夏にしても、可愛らしいお嬢さんと聞かされた千冬にしても。
「ふ、ふん……持ち上げられても何とも思いませんわね」
「確かにこんなオッサンに言われても嬉しかねーわな、あっはははは!」
「む……そういえばアナタは28歳とおっしゃってましたが……」
「あ、ホントホント……ほれこれが免許証」
「「………………」」
ムカついた。
姉と弟は今ハッキリと私情丸だしてムカついた。
「良いだろう、なら織斑とオルコットで試合をして勝ったらクラス代表だ」
「了解だ……俺もその気になってきたぜ」
こんな何処の馬の骨ともわからない小娘が一誠から持ち上げられてる? 嘗めるなよ……千冬と一夏は静かに、嫉妬の念を膨らませていた。
「良いでしょう!
それなら織斑さんにハンデを――」
「要らねぇなぁ?」
「あぁ、そんなものは互いに無い。だから遠慮せず代表を争え」
「なっ!? で、ですが、織斑さんは素人で……」
「そうだぜ、つーか何二人して怒ってんだ?」
ハンデの話を蹴られ、面食らうセシリアに一誠がキョトンとしてる。
それがまた余計に腹が立つわけで……。
「要らねぇったら要らねぇの! ふん!!」
「このロリコン……」
「ろっ!? な、なんでだよ……」
一夏に怒鳴られ、千冬にロリコン呼ばわりされてしまった一誠は意味がわからないまま縮こまってしまうのだった。
(クソ……あんな金髪の女が? ぜってぇぶっ倒してやる……!)
(あんな小娘に可愛らしいだと? ………………く、涙が出そう……)
それが嫉妬されてるんだと気付かずに……。
終わり
オマケ……副担任ちゃん
そんなこんなで授業を再開する事になった一組。
微妙に不機嫌な千冬と一夏がちょっと怖いと思う副担任の山田先生は気を取り直そうと、急遽起動したという理由で受け持つ事になった年上には見えない年上の生徒にも気を利かせ様と頑張っていた。
「あ、あの兵藤君は授業の内容とかちゃんとわかりますか?」
「………………」
自分もよく童顔だと言われるが、彼もまた童顔のそれであると山田先生は微妙なシンパシーを感じつつ、教科書とホワイトボードとを交互ににらめっこする一誠に尋ねてみる。
先のクラス代表のイザコザで彼は割りと年の差故の壁を作るといった様子は無いのは既にわかっていたつもりなので、ここは年は下だけど先生である自分が……と張り切って聞いてみたのだが……。
「………ハッ!?」
「へ?」
一誠は自分を見て数秒固まる後、何かにハッとする。
「いや……今の所は……はい」
「? そうですか、でもわからない所があったらどんどん聞いても大丈夫ですからね?」
「うっす……」
妙に辿々しく大丈夫と答える一誠に山田先生は微笑むと、そのまま他の生徒の様子を見る為に再び教室内の巡回へと戻る。
そんな彼女の姿を暫くジーッと見ていた一誠は……。
「イチ坊、俺ちょっとだけこの学園に入れて良かったかも。ありゃ天使だわ」
ニヤニヤしながら、隣でノートを取ってた一夏の肩をバシバシ叩いてアホな事をほざく。
「あっそ」
しかし一夏は内心『おっちゃんめ……』と毒づいていた。
何故か? そりゃ勿論……。
「次はP8を……開け……!」
「お、おおお織斑先生!? そ、そんなに捻ったら教科書が破れちゃいますよ!?」
「っ……すいません乳オバケ――いや山田先生。
つい乳フェチバカの姿に怒りが……」
「ええっ!?」
タウンページクラスの教科書をまるで某花山が如く捻り破ろうとする程の嫉妬念を膨らませていたお姉ちゃんが居たからである。
「兵藤、お前放課後罰則な?」
「え!? な、なんで!?」
「山田先生に色目使ったからに決まってるだろ? 絶対許さない」
「い、色目って……別に使って――」
「良・い・な・?」
「…………ア、ハイ」
千冬ちゃん、帰って来たおいたんのせいで急に遅れた思春期到来。
終わり
補足
本人からしたら、これ以上ディスってセシリアさんがクラスでボッチになったらアレだと思ったんで、それとなくフォローしたつもりでそれ以上の事は考えても無かった
しかし二人からしたら全く面白くなかった……それだけのこと