赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

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過去最大の文字数。

いっきに終結。

ラウラたんデレる。

嫉妬止まらんちーちゃんとイチ坊。

オーバーキル。

感想たくさんでやる気マックスになれた現金作者


師の為に

 私は造られた人間だ。

 人である事に変わりは無いが、それでも私は普通の出生では無い。

 

 そして出来損ないだった。

 

 ISの適合移植に失敗した私は本来そこで全てが終わるはずだった。

 だがその私を救ってくれたのが織斑千冬教官であり、私は出来損ないから這い上がれた。

 本当ならもっと教えて欲しかった……けれどそれは叶わなかった。

 

 

『弟をこれ以上一人には出来ない―――それにある人を探さないといけない』

 

 

 引き留めたかった私に教官が話した理由。

 一人は弟の織斑一夏であり、もうひとりはその織斑一夏と教官を拾って世話をしたらしい男……。

 勿論私は去っていく理由であった織斑一夏とその男を憎んだ。そいつ等がいなければもっと教官と一緒にいれると嫉妬した。

 

 特にその男の事を語る教官の表情を見た時は殺意すら沸いた。

 けど――けど――――

 

 

「何とかギリギリで次の試合に出れる程度には修復できるけど、さっきみたいな使い方してたら不戦敗になるわよ?」

 

「マジすか……師匠どうしよ? 俺の囮戦法は何度も使えないみたいっす」

 

「当たり前だ、もう次からは使うな」

 

 

 その男は殺意すら向けた私に近づき、師匠と呼んで人懐っこい犬みたいに私の後ろに付いてくる。

 それが酷く私を戸惑わせる。

 

 

「そもそもこの程度のレベルなら囮にならんでも勝てるし……その、なんだ……その都度お前もろとも攻撃するのはちょっと嫌だというか……」

 

「師匠……」

 

「おい、変な勘違いをするなよ? 別にお前を気遣ってるつもりなんて無いぞ! ただ、そんな勝ち方は私には合わんのだ!」

 

 

 織斑一夏はこの男――兵藤一誠が私を師匠と呼ぶ度に敵意を向けてくる相変わらず腹が立つが、私も私で奴は嫌いだからまったく気にしてない。

 だけど兵藤一誠は……ある種織斑一夏よりも敵だと思っていた筈の男は――

 

 

「うぅ……ぐすっ、師匠の事やっぱり好きだじぇ……ぐすっ」

 

「い、一々泣くなよ、みっともないだろ……」

 

「ずずっ……すんません」

 

「………………。イチャつくなら整備の邪魔だし出てってくれないかしら?」

 

「あ、すんません……」

 

 

 私のペースを悉く乱してくる変な奴だけど……不思議と最初ほど嫌な気持ちが沸かない……。

 

 

 

 

 

 

 卑遁・囮寄せの術ばりの自爆戦法で無事に一回戦を突破したラウラと一誠のペア。

 しかしながら整備担当の者のストップによりその自爆戦法が使えなくなってしまった。

 まあ、加えてラウラがツンデレ気味に使うなと言ったので即座に使わないことを宣言したのだが。

 

 

「極力お前の動きに合わせながら戦ってもこの試合全体のレベルを考えれば十二分にフォローは出来る」

 

「でもイチ坊とシャルロット――じゃなくてシャルル君ペアやセッシーとりんりんちゃんペアは専用機持ちだし、俺に合わせたら師匠の邪魔になっちまう様な……」

 

「幸い奴等は反対側のブロックだし、当たるとしても決勝戦だから潰し合ってくれるだろう。個人的には織斑一夏に借りを返したいので奴等に勝ち残って欲しいが」

 

「借りっていうと師匠の転校初日の事とか? ……あれはその、俺も謝ります。本当にすいませんでした」

 

「お前に謝って欲しくて言った訳じゃないし、それだけじゃないからな」

 

「……ちーちゃんのこと?」

 

「そうだ。本当はお前にだって色々と言いたかったが……何だかお前を相手にしてると気力が削がれてしまう」

 

「師匠に大嫌いで顔も見たくないって言われたらリアルに引きこもりになるかも俺……」

 

 

 反対側のブロックの一回戦も終わり、楽々と二回戦に駒を進めた一夏とシャルのペアとセシリアと鈴音ペアを警戒しながら雑談混じりの作戦会議が続く。

 突然師匠と呼ばれて最初は戸惑ったラウラも何やかんやですっかり一誠のお師匠様をやっており、本当なら千冬の件で嫌っていた筈が、いい歳こいてアホみたいに人懐っこい一誠の性格によって雑談程度なら普通に応じていた。

 

 

「武器を振り回して牽制し、その隙をついて私が一気に叩くが良いだろう」

 

「なるほど、そういう陽動は割りと得意なんで任せてください」

 

「あぁ、あんまり期待はしないがな」

 

 

 ラウラが仏頂面でもニコニコとしてるし、指導された事はほぼ間違いなく吸収していく。

 その聞き分けの良さと飲み込みの良さもあってラウラも乗り気になってるのだけど、それを良しとしないのが何人かいるのも間違いない訳で……。

 

 

「あのチビが……あのチビがぁっ……!!」

 

「お、落ち着こう? 本当に落ち着こう? い、今の一夏怖いよ……」

 

 

 一回戦突破を誉めて貰おうと一誠を探していた一夏が親指の爪を指ごと食いちぎらんばかりに噛みながら血走った目で覗いていたり……。

 

 

「落ち着け、タッグを組んだからであって別に一誠さんはラウラを好きとかそんなことは無いから……」

 

 

 同じく別の場所から偶々見てしまった教師がブツブツ言ってたり……。

 

 

「本音ちゃんを宥めるのに時間が掛かかって遅れちゃったけど……ふーん、面白いことになってるわねー…………ホント」

 

「ほら、現実をみてくださいお嬢様。あの男は一回りも年下の女子に色目を使う変態男なんです!」

 

「別にそうじゃないと思うけどな~」

 

 

 生徒会長と会計だったり等々……。

 確実に変な勘違いを周囲にもたらしていたまま、試合は二回戦に突入。

 

 

「よっしゃあ!!!」

 

「ふん」

 

 

『勝者、ラウラ・ボーデヴィッヒ・兵藤一誠ペア』

 

 

 ラウラに言われた通り、自爆戦法を封印しての正攻法で勝利を収め、勢いそのままに三回戦・四回戦も勝ち上がっていく。

 

 

「ISの初試合なのに師匠のおかげで決勝まで進めた……」

 

「当然だ、相手は織斑一夏らしいが……ふん、勿論勝つ」

 

 遂に決勝まで駒を進めた。

 

 

「イチ坊とデュノア君か……。イチ坊の奴、二回戦から普通の操縦に切り替えてたけど、勝ち上がる度に異様な速度で上達してるな。

……………流石無幻大といったところか」

 

「何のことだ?」

 

「あ、いえこっちの話っす」

 

 

 異常ともいうべき速度で普通のIS操縦を上達させていく一夏が準決勝の相手であったセシリアと鈴音を叩き潰した姿をモニターで確認しながら、割りと本気でISに関しては一夏に分があると認める一誠。

 

 

「進化の速度も取り込む大きさも当時無神臓を常時全開させていたガキの頃の俺よりも上か……」

 

「何を言ってるかわからんが、負けるつもりなど無いぞ」

 

「ええ、そりゃ勿論……」

 

 

 旧世代の能力保持者である己と新世代である一夏達能力保持者の差を改めて認識した一誠の自嘲した様な笑みを見たラウラに背中を叩かれる。

 

 復讐を終えても尚己の中に残った永久進化の能力。

 現在は意図的に自ら封じる事で光のごとき速さの成長から一般人程度の成長になっているが、もし完全に封印から解いた所で一夏の性質は自分の上を行くだろう。

 

 無限と夢幻の両方を超越せん一夏の異常性は、誰よりも異常なのだから。

 

 

 

 

 

 一夏はラウラに日を追う毎に嫉妬の念を強めた。

 

 

「お疲れさま、いよいよ決勝戦だね?」

 

「何の用だ眼鏡……」

 

「応援。お姉ちゃんとは反対に、おじさんより一夏を応援してるから」

 

「……ふん」

 

「凄いんだよ一夏は。勝ち上がる度に操縦技術が物凄い速さで上達するんだ」

「見てわかってたけど、一夏は今異常性を全開にしてるよね?」

 

「………。あのチビを正攻法でぶちのめしてやりたいんだよ、文句でもあるのか?」

 

「無い。寧ろもっと一夏を見せて欲しい」

「あ? ………ケッ!」

 

 

 誰よりも憧れた大きな背中。

 自分と姉を此処まで育ててくれた歳の離れた兄の様な存在は一夏にとって織斑一夏としての全てだ。

 

 

「あの……更識さんだったよね? その言い方だと変な誤解が生まれると思うけど……」

 

「? 別に私はどっちに解釈されても問題ない。

それに解る人にはちゃんと意味はわかる」

 

「は、はぁ……。(微妙に浮世離れしてる人だよなぁ)」

 

 

 その想いが一誠と同じタイプのスキルをもたらしたといっても過言ではないし、この先もそれは変わらない。

 強い姉と共に一誠が立つ真の領域へ……。

 

 

『決勝戦開始5分前』

 

 

「デュノア……行くぞ」

 

「う、うん……それじゃあ更識さん、僕達はもう行くから」

 

「うん、頑張って」

 

 

 その為に――あの気に入らないラウラ(チビ)は叩きのめす。

 

 

「……」

 

(一夏……気のせいだったら謝るけどさっきまでと雰囲気が違う……)

 

「おっちゃん……」

 

 

 その瞳を白銀に煌めかせて……。

 

 

 

 

 決勝戦ということでアリーナの観客席は盛り上がっていた。

 しかも最初と二番目男性起動者同士が戦うというのもあり、各企業の視察しに来た人間達も大いに注目している。

 

 

「多分織斑君が勝つわよね」

 

「多分。あの兵藤って人はペアの子が強いから勝ち残った様にしか見えなかったし……」

 

 

 とはいえ、観客達の予想は大方一夏が勝つに予想しており、訓練機で決勝まで残った一誠についてはペアのラウラの力によるものだと言われている。

 

 

「いよいよ決勝戦だけど………篠ノ之さんと本音ちゃんはまだ拗ねてるの?」

 

「ふん!」

 

「あんな負け方させられて納得なんてできませんよーだ……」

 

 

 一夏一辺倒のオッズになってる空気の中、チアガールのコスプレをしている生徒会長の楯無は招いた箒と本音の拗ね具合に苦笑いを浮かべ、両者が控え室からISを纏って登場するのを見る。

 

 

「兵藤一誠に関しては殆どあのラウラ・ボーデヴィッヒの力によるものでしたし、二人が納得いかないのも無理はありません。

私だって思ってますから」

 

「イッセーさん本人もきっと言うでしょうね」

 

「ただいま、一夏に最後の応援してきた」

 

「あら簪ちゃん、どうだったの?」

 

「うん、明らかにイッセーおじさんとISの試合の上だけど戦えると思ってるのか、これまでに無いくらい本気だった。

多分一夏の本気が見れるかもしれない」

 

 

 簪の何時に無いワクワクした表情に本音は内心またしても嫉妬し、アリーナから出てきた一誠を睨む。

 勿論それは箒も同じだった。

 

 

「よぉイチ坊にデュノア君。

俺の場合は師匠のおかげもあってこうして決勝に来れた訳だが、力一杯戦わせて貰うぜ?」

 

「あぁ……」

 

「? なんだよイチ坊? 何かあったのかいデュノアくん?」

 

「えっと、僕にもよくわからなくて……」

 

「ふーん……?」

 

 

 そんな憎しみの視線を貰っている一誠はというと、明らかに様子の変な一夏に首を傾げつつ隣に居る師匠ことラウラにプライベートチャンネルで話し掛ける。

 

 

「余計な事かもしれないけど、あまり油断しない方が良いかもしれません。

今のイチ坊に遊び心が感じられない」

 

「言われなくてもわかってる。だが私は負けん」

 

 

 静かに、水面を揺らさぬ程の静寂な精神を一夏から感じた一誠の忠告にラウラは鼻をならしながらも頷く。

 転校してから今まで犬みたいに後ろをひっつかれて当初はウザかったが、この試合を経てある程度の信頼をほんの少し見せ始めた………ともいえる反応なのかもしれないが、やはり一夏を直接前にすると嫉妬の気持ちがふつふつと沸いて準決勝までの冷静さが欠けてしまう。

 

 そしてそれと同時に何かが自分の中で獣の様な唸り声をあげる……。

 

 

『試合開始!』

 

 

「……!!」

 

 

 その正体がわからないまま鳴り響く試合開始のブザーを合図に一誠がラウラに先んじて飛び出す。

 

 

「やっぱり剣は苦手だぜ!!」

 

 

 型も何もありはしない、ただ振り回すだけの剣を片手に一夏へと襲い掛かる一誠だが、その間にシャルルが割って入り、大きな盾で防ぐ。

 

 

「僕を忘れちゃ困るな?」

 

 

 一夏、一誠、ラウラの並々ならぬ因縁めいたものの詳細はシャルルにはわからない。

 しかしそれでも自分は一夏のパートナーだと盾になるのだが……。

 

 

「へへ、勿論だぜデュノアくん。忘れる訳がないだろ? ていうか、キミのその行動を待ってたんだからな!」

 

「っ!?」

 

「師匠!! 今だ!!!」

 

 

 ニヤリと三十手前にはどうしても見えない若々しい容姿の一誠の笑みにシャルルがハッとした瞬間、一誠の後ろから無数のワイヤーが襲い掛かる。

 

 

「くっ!」

 

 

 拘束されるシャルルは次の瞬間アリーナの端へと投げ飛ばされる。

 直ぐ様スラスターを投げ飛ばされた方向の逆へと吹かして体勢を立て直そうとするが……。

 

 

「ヒャッハー!!!!」

 

「わっ!?」

 

 

 まるで某世紀末の雑魚モヒカンみたいな雄叫びをあげた一誠が下手くそにブレード武器を振り回しながらシャルルを襲う。

 

 

「師匠はどうしてもイチ坊とやりあいたいみたいでね。悪いけどキミを足止めさせて貰うぜ!!」

 

「くっ、だと思ってたけど……!!」

 

「今の師匠はイチ坊にお熱だからな。

ふふ、この年になってちと妬けちゃうよ。キミもそうなんじゃないか?」

 

「な、なにかにつけて『おっちゃん』だの『あのチビ』だのと言って全然会話が無かったから……ね!!」

 

「っと……ふふ、言いたくはないけど俺とキミはどうやら余り物らしいな」

 

「ええ、癪だけど!!」

 

 

 一誠とシャルルが互いに声を張り上げながらぶつかり合う。

 その様子を少し上空から見たラウラは先程から微動だにしない一夏を鋭い目付きで見据える。

 

 

「やっとこの時が――」

 

「能書きは良い、おっちゃんと遊びたいからとっとと来い」

 

「………………。言われなくてもすぐに潰す!!!」

 

 

 ラウラの言葉を一蹴し、あの時殴り飛ばされた時以上の見下した表情をする一夏にラウラはプラズマ手刀を両腕から放ち、斬りかかった。

 ――――しかし。

 

 

「ぐは!?」

 

「…………」

 

 

 ラウラの攻撃は届かなかった、そればかりか攻撃の直前に何かが自分の顔面を殴打し、勢いよく吹き飛ばされた。

 

 

「な、なにが……」

 

 

 何とか体勢を立て直したラウラは痛む鼻を押さえ、鼻から血が流れているのを知りながら混乱しつつ、一夏に何かされた事だけは確かだとすぐに思考を切り替え、それならばと見え見えの牽制覚悟でのワイヤーブレードを全機一夏めがけて撃ち放つ。

 

 

「!?」

 

「………………」

 

 

 しかしそのワイヤーブレードが一夏を捉える事は無く、更に驚愕する事に一夏自身がいつの間にか自分の目の前まで接近していた。

 

 

(こ、これではAICが間に合わん!!)

 

 

 接近されたのが速すぎた為、ラウラのISの切り札を使おうにも集中力が足りずに発動できない。

 そう考える間も無く再びラウラは――

 

 

「ガッ!?」

 

 

 顎を蹴り上げられ、そのまま再び顔面に踵落としを貰い、勢いよくアリーナの地面へと叩きつけられた。

 

 

『ダメージレベルB……右翼スラスター損壊』

 

「ぐ……」

 

 

 IS自体のダメージはまだ戦える程のダメージレベル。

 しかし絶対防御を前にしても尚残る異様な力の一撃が搭乗者本人であるラウラを襲い、よく見れば瞳の色が不気味な白銀色に輝き、その瞳と同じ白銀のオーラに包まれて此方を見下ろす一夏の姿が揺れて見える。

 

 

(びゃ、白式の能力? い、いや白式の単一仕様能力は零落白夜の筈……! だ、だとすればこの力は――)

 

「師匠! くそ、イチ坊の奴、思っていた以上の進化を……! 師匠!!」

 

 

 つまらなそうに首の関節を鳴らしている一夏の白式によるものなのか……だとすれば何の能力なのかがわからずに焦るラウラの耳に犬みたいに寄ってくる一誠の声が入る。

 

 

「お、お前……」

 

「だ、大丈夫かい師匠」

 

「そのダメージは……」

 

「あ、いや……足止めするってイキってたけど、やっぱりあの子も強いわ。

ふふ、ちょっと隙見て逃げてきた」

 

 

 ハッと意識を現実に戻されたラウラの目に飛び込んできたのは、自分以上にダメージレベルが深刻な一誠の機体と申し訳なさそうにする一誠。

 

 

「ごめんね、これ試合だからさ……」

 

「やっと来てくれたかおっちゃん? ほら、今度は俺と遊んでよ?」

 

「やべ、完全に囲まれたし……」

 

「………」

 

 

 ISではとことん落ちこぼれ――いや、恐らくは男でなければそれ以下の烙印を押されて終わっていた二番目の起動者である一誠が恐ろしく冷たい目をしてても一誠を前にして無邪気な子供みたいな笑顔を浮かべながらゆっくり降りて来る姿と、銃系の武器を構えながら近づいてくるシャルルに、冷や汗を流しながらもニヒルに笑う。

 

 

「イチ坊……お前その目はなんだ?」

 

「わからない。おっちゃんが俺と千冬姉の前から居なくなってから千冬姉と一緒に編み出した俺達のオリジナルの技術

千冬姉はこれを『身勝手の境地』と呼んでる」

 

「身勝手……?」

 

「あぁ、この状態になると色々な状況に対して無意識に『最適』な行動を勝手にしちゃうんだ」

 

「……………。マジか、そんな技術をお前とちーちゃんは……」

 

 

 驚かせるつもりで今まで隠していた姉と自分だけの技術に一誠はひたすらに感嘆の気持ちしか湧いてこない。

 自分が教えた技術だけでは無く、更にそこから発展させた……身勝手の境地なる技術はラウラ一人で確かに難しいのかもしれない。

 

 

「み、身勝手だかなんだか知らないが、私はまだやれるぞ!!」

 

「……。もうお前なんかどうでも良い、俺は今からおっちゃんと遊ぶんだ。引っ込んでろ」

 

「黙れ!!」

 

「ま、待て師匠!!!」

 

 

 頭に血が昇ってしまったラウラが激昂し、ダメージのあるISのまま再び一夏に特攻するが、当然の様にラウラでは目視すら不可能な拳がISの一部を再び破壊し、殴り飛ばされた。

 

 

「くっ!」

 

『ダメージレベルC』

 

 

 咄嗟にラウラを受け止める。

 だが既にラウラの表情は絶望そのものへと変化しており、心の中では完全に敗北を認めて心を折ってしまっている。

 

 

「わ、私が……負ける……?」

 

「師匠!!」

 

 

 恐怖した様に震えるラウラを見て一誠は自分のバカさ加減を呪った。

 

 

(クソ……思っていた以上に自分の異常性とISの親和性を高めてる。

俺が出来なかった事をイチ坊は……)

 

 

 観客席の誰もがこの時点で一夏とシャルルの勝ちだと思っている中、それでも一誠はラウラよりもダメージが割りと深刻な状態の中、ラウラを庇う様にして立ち上がる。

 

 

「またやってしまった……俺は何時もこうだぜ。何時も選択を誤る。

あの時も……この時も……!」

 

「……」

 

 

 自分の選択を誤ったという一誠の言葉にそれまで異様なまでの静けさを保っていた一夏の表情がわずかに変化する。

 

 

「いい歳こいて未だに最良の選択を間違えるバカだ。

だからこそもう間違えたくはない……!」

 

 

 あちこちから火花を散らす訓練機を纏った一誠が下を向いて震えるラウラの肩を掴み、優しくその頬を叩く。

 

 

「らしくないぜ師匠。一回やられかけたからって諦めちまうのか?」

 

「………え?」

 

 

 焦点の定まらない瞳が自分の頬を触れて笑う一誠を捉える。

 その時、シャルルが一夏を見ながら目線で二人に対して『どうする?』と問うと、一夏はほんの少しだけ眉間に皺を寄せながら片手を挙げ『少し待て』と指示を送っている。

 

 

「俺とイチ坊に仕返ししたくて遥々ここまで来たんだろ? なのにこの程度で折れちゃうのか? 師匠はそんな子じゃないだろ?」

 

「……………」

 

「頼むぜ……俺一人じゃ二人に勝てないよ。師匠が居ないとな?」

 

「……お前」

 

 

 本当なら今すぐにでもラウラを嫉妬に狂って八つ裂きにしたかった。

 あんな言葉を嘘偽り無く向けて貰うなんてズルいと……そう思っていた。

 

 しかしそれと同時に一誠があのラウラにそういう意味ではないにしろ好意を持っているのは事実。

 だからこそ一夏は待ったのだ。

 

 

「………。まだ動けるか?」

 

「あぁ……勿論だぜ師匠!」

 

 

 自分には無く、一誠が持ち得る特性……互いに心を開いた者を引き上げる特性を。

 

 

「行くぞ、私の切り札を使う。今のダメージレベルでは一回が限界だが、これしか逆転の手は無い」

 

「っし! 師匠はこうでなくちゃな!! 引き付けは任せてくれ!!」

 

「…………………デュノア、俺に協力しろ」

 

「え? ……………う、うん! 任せて!」

 

 

 だからこそ再び一誠の意識は嫉妬という意味でラウラに向けられる。

 

 

「師匠、ちょっと手を貸して貰えます?」

 

「む、なんだ、なにをするつもりだ?」

 

「ちょっとしたまじないです……景気付けみたいなもんです。イチ坊が全開で来るなら――ね」

 

「は?」

 

 

 少しの中断があったものの、再び両者が相見える中、言われたそのまま手を差し出したラウラの手を一誠は握ると……。

 

 

赤龍帝からの贈りもの(ブーステッドギアギフト)

 

 

 一夏の本気に応えるつもりで、半ば封じていたその力の一部を解放する。

 

 

「……!」

 

 

 その力にまず気付いたのは一夏であり、次に気付いたのは贈り物を貰ったラウラ本人だった。

 

 

「な、何だ……身体に力が……」

 

 

 ほんの一瞬だが一誠の左腕が赤く輝いたと思ったら、その光が自分のへと流れ込んだ瞬間、今までに無い力のみなぎりが全身に行き渡る。

 

 

「おまじないが成功したみたい……まあ、所詮ただのおまじないだけど」

 

「お前……」

 

「ふふ、さぁ行こうぜ師匠……!!」

 

 

 それが何なのかはわからない。

 だが確実にラウラは今滾っており、一誠の声に頷き其々一夏とシャルルに向かって特攻した。

 

 

「待っててくれてありがとさん!!」

 

「一夏が怖い顔した待てって言うからね……!!」

 

「ドライグの力まで……テメーはどこまでおっちゃんに……!!」

 

「ふん、何の事だか知らんが、さっきまでの私と思うなよ!!!」

 

 

 激しくぶつかり合う両者。

 既にラウラと一誠のISはダメージが深刻だが、それを感じさせないスピードと力で一夏とシャルルにぶつかっていく。

 

 

「よくわからんが、アイツのまじないを受けてから身体が軽い、見えなかった貴様の動きも見える!!!」

 

「言ってろクソチビが!!」

 

 

 一夏の見えない一撃をAIC無しで見抜き、それを捌きながらレールカノンの照準を向け、ノータイムで撃ち放つ。

 

 

「うおっ!?」

 

「わっ!?」

 

「チッ!!」

 

「こ、これは……」

 

 

 観客席からもどよめく声。

 それはラウラが放ったレールカノンが一夏に当たりはしなかったものの、予測威力データを遥かに越えた力でアリーナの地面を消し飛ばしたのだ。

 放った本人であるラウラも驚愕しかない。

 

 

「な、なんだ……私のISが急に……」

 

 

 これもまじないのおかげ? とシャルルと撃ち合う一誠を見るが、真相はわからない。

 しかしわからないけどわかることが一つ………………。

 

 

「行けるぞ!!」

 

 

 今なら織斑一夏に食いつける。あの見下した顔を歪ませる事ができる。

 かつてない高揚感を得たラウラは無意識の内にその身から贈り物である龍帝の赤きオーラを纏いながら白銀に輝くオーラを纏う一夏に対して怒濤の接近戦へと持ち込む。

 

 

「ボーデヴィッヒさんが急に一夏と戦えてるけど、それってもしかしてアナタが何かしたの?」

 

「さぁて、俺は何もしてないぜ? アレがあの子の元々の潜在能力で、それをフル解放したのを手伝っただけさ……」

 

 

 明らかに一夏の顔色が変わっている事にシャルルは――いや、シャルロットは一誠を怪しむが、当の本人ははぐらかすだけ。

 とはいえ、一誠本人は別に急激なパワーアップをしてる訳では無く、シャルロットとしても苛烈な攻撃を捌けない訳ではない。

 

 その証拠に、一撃一撃の隙をついて反撃に転じ、逆に一誠を追い詰めていく。

 

 

「そろそろ終わりにさせて貰うよ兵藤くん?」

 

「流石に強いね……けど俺は死ぬまで諦めない質なんでね……完全に捻り潰されるまでは―――なぁ!!!」

 

 

 後半になってより苛烈となる両チームの戦いは、IS同士の試合というよりはもはや生身の戦いに見えた。

 それは忘れられた個人と個人の闘争の縮図にも見え、誰しもが華麗さとは言えないこの戦いに魅入ってしまっていた。

 

 しかし――

 

 

『ダメージレベルD』

 

「知るか! 私はまだ戦え――

 

『Valkyrie Trace System……boot』

 

「は? な、なに……何だ、頭の中が―――ウガァァァァッ!?!?!?」

 

「!?」

 

 

 その戦いは突然として終わりを迎えた。

 

 

「ガァァァァッ!!!!!」

 

「し、師匠……!? お、おいイチ坊、お前師匠に何か――」

 

「してないよ! 勝手に頭抱えて苦しみだしたと思ったらこんな……とにかく離れるぞ!!」

 

「くっ……二人ともこっちに!」

 

 

 ラウラが苦しみだし、ISが取り込む様に歪な変化をする。

 その変化に当初面を食らってしまった一誠と一夏だが、シャルロットに言われて離れ、それと同時にラウラの姿は完全に変わってしまった。

 

 

「あ、ISが変化するなんて聞いた事がないのに……」

 

「何だあれは……千冬姉にどことなくにてなくもない姿になっちまったぞ?」

 

「お、俺の赤龍帝からの贈り物のせい……か?」

 

 

 黒い千冬の銅像の様な姿へと変貌したラウラ……というよりはラウラを核にしたISに一誠はまたしても自分の行いが間違っていたのかと後悔するが、直後に入った千冬からの通信でそれが無いことを知る。

 

 

『聞こえるか三人とも。特に兵藤、お前は今自分がボーデヴィッヒに行った『ある事』が原因でああなったのかと思ってる様だが、先に言う……アレはお前のせいではない。

アレは……詳しくは言えないがボーデヴィッヒのISに仕込まれたシステムだ」

 

「システム?」

 

「何となく千冬姉に似てる感じからして予想はつくけど、つまりおっちゃんのせいではないんだな?」

 

「それだけは確実にいえる。

だから………自分を責めないでください一誠さん」

 

「ちーちゃん……」

 

 

 凛とした声から一誠のよく知る声色を聞かされて少しだけ心を軽くする。

 しかしそれでも現在ラウラはISに取り込まれたまま……。

 

 

「ちーちゃん、観客席にいる子達と来賓者は避難させたんだよな?」

 

『はい、別室に居ます……それが?』

 

「その別室ってのはこっちの様子がわかるモニターとかある?」

 

『……。残念ながらあります』

 

「そうか……なら腹を括るか」

 

 

 助けるしかない。ていうか助ける。

 しかしその為にはISを纏った状態ではまず無理……だとするなら『本気』にならないといけない。

 けどその本気を多くの者に見られればきっと自分は――と考えながらも覚悟を決めたその時だった。

 

 

『一夏、今お姉ちゃんと一緒にこのアリーナの状況を誤魔化す様に学園全土の監視モニターと一般モニターをハックした』

 

「あ? お前今どこから……」

 

『プライベートチャンネルの応用だけど、今はその説明をしてる場合じゃない。早くイッセーおじさんに教えてあげて?』

 

「……………。感謝なんかしねーかんな」

『ふふ、その言葉で十分だよ一夏』

 

 

 

 

「おっちゃん、あの眼鏡から連絡入ったんだけど、どうやら眼鏡とビッチ会長が色々と小細工したお陰で別室からでは俺達の様子は見えてないらしい。

つまり――」

 

 

 若干拗ねた口調の一夏の言葉に一誠の口元が緩んだ。

 そしてほぼ大破したISを脱ぎ捨て生身へとなった姿となった一誠はその身にラウラが微かに放出していた鮮血の様なオーラをバーナーの様に放出した。

 

 

「……へへ、かんちゃんとたっちゃんとちーちゃんにはちゃんと後でお礼を言わないとな――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――そうだろドライグ?」

 

 

 きっと師は言うだろう。

 『ふん、お前に助けられても嬉しくない』と言うだろう。

 でも、それでも自分の事をちゃんと鍛えてくれたり、醜い傷を見ても変わらない態度で接してくれた恩の為に。

 

 

『俺だけ使うな。あの小娘を助けたいのならお前自身もひねり出せ』

 

「へっ、何年振りかな……」

 

 

 

 

―我、解放するは無神の理を超越せし龍帝なり―

 

    ―無限を殺し、夢幻を破壊せん―

 

 ―我、全てを喰らい、全てを糧とした永遠の進化を遂げる無神臓を宿し汝に祝福を与えん―

 

 

 その力を解放をする。

 

 

無神の龍帝(インフィニット・オーバードライブ)!!!!」

 

 

 

 全能の能力を転生の神により与えられ、欲望のままに全てを奪った男へ復讐した力を。

 

 

「あ、え……? 僕の目が変なのかな? う、浮いてない? ISに乗ってないのに……」

 

「おいデュノア、お前が女である事を黙っててやったばかりか、一々受け身だったお前に対策を教えてやったんだ………今から見るもの全部を誰かに一部でも漏らしたら――――間違いなく殺す」

 

「あ……は、はい」

 

 

 左腕に最強の相棒を籠手として纏い、他は何も纏わない。

 謂わば力を引き出したばかりの赤龍帝の籠手の姿そのもの……。

 だがその力はあまりにも静かで……あまりにも強すぎる。

 それこそ世界を――星を破壊するほどに。

 

 

「お前は怒るかもしれないが、あの子には恩がある。

だからあの子は俺が引きずり出す」

 

「ハァ――俺もそこでブー垂れる程空気が読めない訳じゃないさ……」

 

 

 その瞳はどこもでも赤く。

 その放たれる雰囲気は水面すら揺らさぬ静けさを。されどその瞳は究極の激しさを孕んでいる。

 

 これでこそおっちゃんだ……と一夏は内心喜びに震え、千冬にも見せてあげたいと思った。

 

 

「烏滸がましいのだけど、師匠が苦しんでる今、出来の悪い弟子だけど助けさせて貰うぜ……!」

 

「…………………………ハァ」

 

 

 けど、その力をラウラ一人助ける為に躊躇無く解放したのはやっぱり気に入らなかったけど……。

 

 

 

 

 

 これは夢なのか。

 織斑一夏と戦っている最中に教われた激しい痛みに意識を手放した私は今、全く知らない狭苦しくて汚い家に居た。

 雰囲気からした日本家屋である事はわかったけど、でもしかし何故私が此処に居るのかはわからない。

 

 ただ一つわかった事は……。

 

 

「ミライの事を狙う悪者は私達が倒すにゃ!」

 

「アナタを倒せば先輩が愛してくれるから……」

 

「クソ雌共が……!」

 

 

 この部屋はあの兵藤一誠の部屋で、知らない女に囲まれて敵意を向けられてる……ということだけ。

 そして私が声を出そうとしても出せず、物にも触れられず、ただ見ているだけしかできないこと。

 

 

「く……!」

 

『チッ、逃げるぞイッセー! 今のダメージを負ったお前じゃ奴に媚する雌共には勝てん!!』

 

 

 そして、執拗なまでにリンチとも云うべき攻撃を受けて兵藤一誠が傷だらけな姿である事を。

 そういえば以前奴は傷だらけの身体の理由の一つに女共に受けたと言っていたが……。

 

 

「ぜぇぜぇ……な、なんとか逃げられたけどまた家が無くなっちまったよ…」

 

 

 ISを使わず、手から波動みたいなものを出す女や、剣をそこかしこに出現させる女。

 とにかくどう見たって普通じゃない女達からの攻撃から逃れ、ボロボロのままゴミ捨て場の様な場所で倒れた姿は、あの犬みたいにひっついてくる兵藤一誠とは思えない程に荒れていて……。

 

 

「お、おい……」

 

 

 思わず倒れた兵藤一誠に手を伸ばしたけど、私の手はボロボロの兵藤一誠をすり抜ける。

 ……そうか、これはきっとアイツの過去で、私は夢として見ているのだ……何故かはわからないけど。

 

 あの傷の理由もきっと……この夢の出来事が原因で……。

 

 

「こんな目に逢って、何でお前は笑っていられるんだ……何故生きようと思えるんだ……」

 

 

 私は血塗れになって意識を失っている兵藤一誠を見ながら聞こえてないとわかってても尚そんな事を聞いていた。

 普通ならまず生きようと等思わない人生……。

 まるで違う世界のような世界……。

 

 あまりにも希望の無い……私なら到底耐えられない。

 

 

「よぉゴミ共ォ……! この前はどーも、地獄から這い戻ったぜ」

 

 

 しかしそれでも兵藤一誠は生きて復讐を果たした。

 残酷ともいえるやり方で女達を殺し、最後は―――

 

 

 

 

 

「…………ハッ!?」

 

 

 私の意識は大量の女と吐き気のする真似をしている男の元へと乗り込み、戦いを挑んだところで現実に戻された。

 

 

「こ、ここは……」

 

「気付いたか?」

 

 

 声が聞こえた。それは知らない女の声ではなく尊敬する織斑教官の声。

 その声に私は夢では無い事を噛み締め、ホッとしながら身体を起こすが……痛い。

 

 

「あんまり動くな、お前の全身に負担が掛かっており、更には筋肉疲労と打撲が見られる。しばらくは無理をするな」

 

「そうだ、私は確か……一体なにが……」

 

「機密事項な為、ここだけの話にしたかったが……まあ、他ならぬ被害者だ。外部に漏らさないと誓えるのなら話してやる」

 

 

 教官のその言葉に私は頷く。

 今は何よりも真実が知りたかった私は、VTシステムとそのシステムが私のISに知らぬ間に仕込まれていた事を知る。

 

 

「腹の立つくらいに巧妙に隠されてはいたよ。

操縦者の精神状態と機体の蓄積ダメージ、そして何より操縦者の意志に呼応し……それらが揃うと発動するようになっていたらしい。

現在学園はドイツ軍に問い合わせている、委員会からの強制検査が入るだろう」

 

「………」

 

「そしてお前を助けたのは一誠さん――いや、兵藤達だ」

 

「……! そ、そうだ! 教官、信じられないかもしれませんが意識を奪われていた時、私は夢を見ました! アイツの――兵藤の夢を!」

 

「夢だと? どんな夢だ?」

 

「あ、アイツがある一人の男の寵愛を受けたい女達にリンチを受けていた夢です。

教官はご存じありませんか?」

 

「……………」

 

 

 思い出した様に話した瞬間、教官の顔つきが厳しいものに変わった。

 

 

「知っている。あの人が私と一夏を育ててくれる前に歩んだ人生と一時期私達の前から姿を消した後の人生も私は直接あの人から教えて貰ったから知ってはいる。

だが今回の事とあの人の事については関係ないし、お前はそれを知ってどうするつもりだ?」

 

「っ……」

 

 

 今まで無い教官の迫力に私は息を飲んでしまった。

 しかしそれでも私は!

 

 

「どうするつもりはありません。私は……アイツの師匠です、アイツの事を知りたいと思ったから聞きたいのです……!」

 

 

 アイツが犬の様にひっついて話しかけてくるのが遠い昔の様に思えてしまうくらい、アイツと話がしたい。

 けど私はアイツを何も知らない……だからこそ知りたい……興味本意では無く、私の意思で。

 

 

「ハァ……はぁぁ……そこまで私の真似をしなくても良いだろうお前は。

この学園に入学すると聞いた時から不安だったけど、殆ど的中だし……はぁぁ」

 

 

 私が本気だとわかったのか、やがて大きなため息を何度も吐いた教官が仕方ないと云わんばかりに口を開いた。

 

 

「聞いて同情したら私が許さんからな、あの人はそう言う事を望まない」

 

「は、はい!」

 

 

 アイツの歩んだ……教官と織斑一夏に出会う前の人生を……。

 

 

 

 

 

「そんな自慢にもならない事話しても何にもならないのに……」

 

「しょうがないでしょう、言わなかったらずっと聞きますよコイツは」

 

「…………」

 

 

 教官から聞いた後、兵藤一誠を教官が呼び出した。

 そして教官が私に過去の事を話したと聞いた瞬間、露骨に恥ずかしがった。

 

 

「だってそんな、雌共に昔リンチされて死にかけた話とか恥ずかしいだろうよ。情けなさ全開じゃない」

 

「私はそうは思いませんけどね。寧ろその女共はまともな存在ではないですし」

 

「そうだけどさぁ……師匠にこれ以上情けない所は見られたくなかったっつーか……。あーやっぱり恥ずかしいー!」

 

 

 両手で顔を覆いながら恥ずかしがる兵藤一誠に教官が敬語になってその肩を優しく叩いてる。

 ある意味私が見なかった教官の一面……しかし不思議と怒りは沸かなかった。

 

 

「ホントすいません、こんな奴が勝手に弟子なんか名乗っちゃって……」

 

「いや別に……前に傷の理由を聞いた時にチラっと聞いたからな」

 

 

 幻滅をしてないのも本当だし、私にとって兵藤一誠は犬みたいに後ろをついてくる変な奴としか教官から過去を聞いた後でも変わらないイメージだ。

 確かに夢で見た通りの人生だったかもしれないけど、だからといって情けないとは思わない。寧ろそれでも尚今を生きてるメンタルが凄まじいとすら思う。

 

 

「辛いとは思わなかったのか? お前と……そのお前の中に宿る存在以外は全部敵で毎日殺されかけてたのに」

 

「当時は俺もガキでしたからねー とにかく両親の仇を討ちたくてそんな事を思う暇も無かったですわ」

 

 

 手土産に持ってきたらしい林檎をウサギさんの形に剥いて私に渡しながらヘラヘラ笑うその姿には確かに嘘が感じられない。

 

 

「ちーちゃん……林檎剥くのが苦手なのはわかってるから無理するなよ」

 

「に、苦手じゃないです、この林檎の形が悪いだけです、それにほら! ちゃんとむけてます!!」

 

「剥いた皮に身が物凄くくっついてるし、元の半分以下の大きさじゃん……それ食うからちょーだいよ?」

 

 

 教官はコイツを前にすると急激にポンコツになるし、私を未だに師匠と呼ぶしで不思議な奴だ……。

 

 

「あぁ、そういや師匠のISに小細工かましたバカが誰なのかわかったの?」

 

「まだです、今調査中ですから」

 

「あっそー……ま、わかったら是非知りたいね。ソイツの頭の上に局地的な流星群降らせるから」

 

 

 本当に不思議な奴だ……どんどん知りたいと思ってしまう。

 

 

「んじゃ俺はそろそろイチ坊に呼ばれてるから行くけど、早く元気になってね師匠。

俺まだ師匠にISの事を教えて貰うつもりだからさ」

 

「お前、まだ私を師匠と呼ぶのか?」

 

「うん、俺師匠の事かなり大好きだからさ……はははー」

 

「す、好きってお前……またそんな事――」

 

「ま、まだそんな事を言ってイッセーさんは!!!」

 

「な、なに怒ってんだよ!? 俺結構オープンに言ってなかった!?」

 

「そういう問題じゃない! このタイミングでそんな事言うのはズルいんです!! 大丈夫じゃなくなるんですぅ!!」

 

「お、おう……」

 

 

 教官が弟とコイツに拘る理由が何となくわかった……。

 半泣きになって詰め寄る教官に弱腰になってる兵藤一誠を見て私もそんな事を思った。

 だから……。

 

 

「なぁ」

 

「へ? ちょ、師匠が何か言いたいみたいだから落ち着こうぜちーちゃん」

 

「はぁ、はぁ……!」

 

 

 私は敢えて教官の前で言ってみよう思う。

 

 

「その……弟子であることは構わないが、これからはお前の事をイッセーと呼んではダメか?」

 

「へ? そりゃ勿論どう呼んで貰っても構わないっすぜ?」

 

「………」

 

 

 教官の目が怖いけど、それでも言う。

 

 

「だからお前――イッセーも師匠じゃなくて名前で呼んで欲しい。ダメか?」

 

「ラウラ師匠って? 俺たまに呼んでなかった?」

 

「違うそうじゃない。師匠は要らない、普通にラウラと」

 

「えっと、ラウラちゃんじゃダメ?」

 

「嫌だ」

 

「じゃあラウラ……………そういや地味に親しい人を呼び捨てで呼ばなかったから微妙に気恥ずかしいぞ?」

 

「なるほど、それなら私が初めてだな? ふふ……」

 

「あ、やっぱこの子可愛い」

 師と弟子だけでは無い繋がりを求めて…。

 

 

「よろしいラウラ、ならば戦争だ」

「ちょっとおっちゃんのツボに入ってるからってチョーシ乗んなよコラ?」

 

「イチ坊!? お前どっから現れた!?」

 

「ふん、教官はともかく貴様に一々文句を言われる筋合いはない。

イッセーも了承したしな? そうだろイッセー?」

 

「あぇ? 確かにそっすけど」

 

「ぐ、ぐぬぬ……こ、これで勝ったと思うなよぉぉぉ!!」

 

終わり




補足

感想があるとやはりやる気が沸きまくり。
と、遠回しにギブミーする乞食気質ですいません。


その2

身勝手の境地。

イチ坊こと一夏とちーちゃんこと千冬が、一時期完全な清算の為に二人の前から居なくなった一誠への想いを強めた結果編み出した姉弟だけの技術。

元ネタは某身勝手の極意


その2

然り気無くラウラたんに初プレゼントした一誠。
しかも割りと親和性が高く、VTさえなければ相当燃えた試合だったかも……?


その3

そして弟子と師の関係は変わらず、一誠の事を知っても尚変わらなかったラウラたん。
それのお陰でイッセーくんはそういう意味じゃなくてますます好きというか、端からみたら誤解どころじゃない告白めいた事を言ってしまう。

おかげでちーちゃん半泣き。
イチ坊ぐぬぬ。


その?
全解放した時、どこかで一誠の力に気付いた方が約三名。

一人は暗黒騎士化した彼とそのパートナー。

一人は――――


「あ、あの変態のせいだ……あの変態のせいで下着が……うぅ」

 と、下腹部あたりを抑えて涙目のウサギさん……だとか。
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