赤龍帝ストラトス(仮)   作:超人類DX

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師匠ことラウラたんが復帰するまでの間のお話。

タイトル通り……。





シャルロット・デュノア

 結局どっちが優勝した……という話は流れてしまった。

 VTシステムを本人の知らぬ所で仕込まれてしまい、それが暴走してしまったともなれば仕方ない事だし、一誠達もそれを納得している。

 

 それにラウラの問題もさることながら、もう一つの問題が身近にあったりするのだ一誠――いや、今度は一夏も含めて。

 

 

「師匠は医務室暮らしで復帰まで暫く掛かるらしいんだぜ」

 

「おっちゃんよ、俺の前であのチビの事を師匠と呼ぶの止めてくれ、頭が沸騰しそうになる」

 

「え? じゃあラウラ――」

 

「やっぱり師匠でいい!! 血管がぶちギレそうだ!!」

 

「そ、そこまで言わんでも……」

 

 

 ただ一人決勝戦で訓練機による割かしな奮闘を見せた……という事でほんの少しだけ周りから見直されたおっさんこと一誠は今、一夏が使ってる寮部屋に来ていた。

 

 

「大体あのチビはイケ好かねぇ……!」

 

「落ち着けよ、俺から話を振った事とはいえ……」

 

「フン!」

 

 

 事件以降、国への調査結果待ちとVTシステムの強制使用により医務室暮らしを余儀なくされていたラウラの元へと毎日お見舞いしに行くせいか、一夏の機嫌がその都度悪くなる。

 千冬はそこら辺が制御できる大人になってる為怒りはしないが、思春期真っ只中の一夏はまだまだ制御を保てる精神力では無い様で、お見舞いの品を自分で買いに行ってはラウラにプレゼントしている姿が――いや、されてるラウラが実に気にくわない様子。

 

 以前の様にお互いがお互いに殺気立った視線をぶつけ合う事は無くなったものの、一夏もラウラも妙な所で張り合う関係になっていた。

 

 

「お待たせしてごめんね?」

 

 

 ラウラが師匠と呼ばれるのが嫌だ。でも一誠が呼び捨てで彼女を呼ぶのはもっと嫌だ。

 反抗期という概念が皆無な代わりに異様なまでの一誠に対する執着心を今日もすくすく育てている一夏を見て、昔はもっと普通だった筈なのになぁ……と思っていると、部屋の中にある浴室へと続く扉が開かれ、そこから髪を降ろしたシャルルがボディーソープとシャンプーの香りを仄かにさせながら姿を現した。

 

 

「決してそういう意味じゃなく、ただ単純に疑問なんだけど、授業に出てる時とかはその胸を隠す訳じゃない? …………痛くないの?」

 

「包帯を上手く巻けば圧迫感はあるけど、痛いと思うことは少ないかな……」

 

「ふーん……?」

 

「ケッ」

 

 

 シャルル・デュノアは男。

 しかし今拗ねてる一夏と疑問を投げ掛けた一誠の目の前に居るのは、決して小さくは無い胸や丸みを帯びた肢体をしたシャルル・デュノア――ではなくてシャルロット・デュノア。

 一体全体彼女は何者なのか……という疑問についてはお察しの通り、シャルル・デュノアはある理由があって男の格好をしているシャルロット・デュノアだった。

 

 

「さてと……キミのご実家の反応は?」

 

「特に無し。引き続き一夏の白式のデータを引き抜けって命令しか来ない」

 

「そうかい、会社を存続させる為とはいえ、自分の子供に犯罪の片棒を担がせてるって話は何時聞いても気分のよくない事だな――――まあ、俺が言うなっつー話だけど」

 

「おっちゃんとこの(スケ)の親とやらは全く違うよ。少なくともおっちゃんは俺や千冬姉にさせるくらいなら全部一人でやろうとするだろう?」

「自分の事に関してだからな? お前達を巻き込むくらいならやらないな」

 

「………」

 

 

 シャルロットの父親――つまりデュノア社長を介して自分の卑下をしようとする一誠に対してすかさず口を挟み、一誠は違うと半分不貞腐れながら一夏は言う。

 それを受けて一誠は明後日の方向を見ながら頬をポリポリと指で掻く姿を見て、シャルロットは軽く微笑みながら言う。

 

 

「本当に一夏は兵藤さんが大好きなんだね? 普段からそうだけど、言葉のひとつひとつに滲み出てるというか……織斑先生も」

 

「ありがたい話ではあるんだけど、こればかりは俺のせいでもあるから微妙に喜べないかな」

 

 

 一におっちゃん、二におっちゃん、三、四を飛ばして五におっちゃん。

 とにかく一誠一誠一誠一誠と、周囲を無視してひたすらに一誠の事ばかりである一夏をある意味で近くで見ていた為にシャルロットは余程一誠は一夏と千冬にとっての絶対的な心の拠り所だったのだろうと、ある意味で羨ましくも感じた。

 自分にとっての拠り所であった母親を失っているからこそ余計に。

 

 

「羨ましいな……」

 

「! おいお前、おっちゃんは渡さないぞ」

 

「そんな事一言もこの子は言ってないだろうが! まったくお前はどうしてこう何時も……」

 

 

 まるで兄弟の様に接している姿はシャルロットにとって眩しかった。

 

 

 

 一誠も一夏も千冬も殆ど最初からシャルロットが女子である事を見抜いていた。

 それでいて敢えて何も言わなかったのは、色んな事情があっての事なのだろうと考えていた為、ラウラの一件で物凄く機嫌が悪かった一夏に女である事を見抜かれるまでシャルロットは妾の子として利用され続けた。

 

 ……………と、いう話を一夏にしてみてもろくでもない返しか無視でもされると思っていたのだが、意外な事にイライラしていた一夏は言葉荒めに言ったのだ。

 

 

「そんな奴はとっとと訴えれば良いだろ? つーかそこまでしなきゃそいつの会社とやらの運営が危ういなら逆に強請るだろ普通。

『自分がアンタの命令で犯罪の片棒担がされてるだなんてメディアに知られたら会社はさぞ大変でしょうね?』ってね。俺ならまずそうする、もしくはメディアを誘導して裁判沙汰にしちまうとかな」

 

 

 キレやすくて下手な事が聞けない相手――と思っていただけに一夏の不機嫌そうな声でのこの一言はある種本当の母親を失ってから右も左も分からず精神的に疲弊して考え付かなかったシャルロットにひとつの光を与えた。

 

 

「向こうは男、お前は女。

今の世間の流れ的にどっちの味方になるのか考えてみればわかるだろ?」

 

「それは僕も少しは考えたけど、父はそれなりのコネクションを持ってて……」

 

「じゃあ向こうから今のお前に間抜けな命令してるその音声データを記録してみればいいだろ? それは証拠にならないのか?」

 

「…………あ」

 

 

 加えてこのIS学園は世界各国の政府からの干渉を一切許さない治外法権の様な場所。

 この場所に居る限りは訴えるだけの資料をかき集めるだけの時間稼ぎにもなる。

 

 

「おっちゃんなら言うだろうね、亡くなったキミの本当の母親は、娘が父親に利用されるのを見て許すタイプなのか? それを望んでるのか? ってね」

 

「それは……」

 

「まあ、俺か千冬姉がもしお前の立場に近い事になってると聞けばおっちゃんは元凶をこの世から消滅してくれるだろうけどな! 俺と千冬姉の為に! ふっふっふっ」

 

 曰くおっちゃん――一誠がもっとも嫌悪するだろうモデルらしいシャルロットの父親に向かってなのか、一夏も嫌悪した表情でぶっきらぼうに言いつつ、別にしなくても良い自慢をしていたのを思い返しながら、ほぼ自然な形で部屋を出た一夏の後をひょこひょこと付いていく。

 

 

「何?」

 

「あ、いや……僕も暇だから。訴えるにしても証拠とかかき集めるのにはまだ時間が掛かるし」

 

「ふん」

 

 

 その際一夏に怪訝そうな顔をされたが、特に追い返す事もなく無愛想に歩いたのでシャルロットはそのままひょこひょこと付いていく。

 ひょっとして兵藤さんの所かな? と一夏の狭すぎる行動パターンを思い返しながら付いていく事数分。

 一夏がやって来たのは普段使われない、訓練場だった。

 

 

「よ、イチ坊」

 

「ごめん、待たせた」

 

「気にするな、私と一誠さんも今来た所だ」

 

 

 一体この場所に何の用が……と思いつつもやっぱりついていくと、そこに居たのは黒のスラックスとYシャツ姿の一誠とジャージ上下姿の千冬。

 

 

「お、織斑先生!?」

 

「ん、あぁ、デュノアか」

 

「ありゃ珍しいな。イチ坊が連れてきたの?」

 

「勝手に来た。

まぁ、居ても居なくても害にもならないと思って」

 

 

 一誠はともかく、千冬の姿を見た瞬間思わず姿勢を正しすシャルロットだったが、時間的にプライベートタイムのせいか、千冬の反応は少し柔らかめであった。

 

 

「そんなに固くなるなデュノア。楽にしろ」

 

「は、はい……!」

 

「その言い方は逆効果な気がするんだけど」

 

「私がフレンドリーに接したら気味悪がられるくらい自覚してますから」

 

「俺じゃあるまいし、ちーちゃんなら寧ろ喜んでくれんじゃないの?」

 

 

 名目上では生徒である筈の一誠がタメ口で、教師である筈の千冬が敬語口調。

 たまに夕飯を一緒にしている席での会話で聞いたりはしたが、やはりあの織斑千冬にここまでラフに接することが出きる生徒は一誠くらいなのかもしれないとシャルロットは少しだけ肩の力を抜きつつ思う。

 

 

「あのー……勝手に付いてきてこんな事を聞くのは変かもしれませんけど、三人で一体何をなされるのですか?」

 

 

 それより気になるのは、訓練場にこの三人が集まって一体何をしようというのかであり、各々が軽くストレッチをしているのを見る限りは何かの訓練なのはわかる。

 しかし専用機を持ってる一夏も腕に嵌めた待機状態の白式を適当に放り捨て、千冬と一誠もISらしきものを持ち込んでる様には見えない。

 

 ならば一体……と考えを巡らせていたシャルロットに首の関節をパキパキ鳴らしていた一誠が口を開く。

 

 

「ちーちゃんも大人になり、イチ坊も学生で忙しくて三人で遊ぶ機会が無くなってきちゃってさ。

外出許可も俺とイチ坊じゃ色々と制約があってそんなに降りないし、こうして簡単な遊びを運動がてらしようと思った訳だ」

 

「私はこの時間が何よりも楽しみですけどね」

 

「同感。この時間だけは他の誰の邪魔は入らない。あの地味眼鏡と色ボケ女すらな」

 

「は、はぁ……」

 

 

 要するに三人で遊ぶ為に集まったのか……。

 意外と千冬にもそんな面があるんだな……と普段の教師である姿しか知らない―――いや、何度か一誠の前で泣いてたのを見たことがあるからそうでも無かったにせよ、少しだけ驚きながらもどんな遊びなのだろうと気になって訓練場の隅っこから見学する事にしたシャルロット。

 

 

「100均で買ってきた鈴に紐を通して簡単な首飾りを作ってみたから二人も付けて」

 

「はーい」

 

「これはアレですか? 貧乏でこれしか用意できなかったけど愛してるというプロポーズ的な意味ですか?」

 

「俺が本気で誰かを口説く時はこんなもんで誤魔化さねぇっつーねん! それに俺これでもこっちじゃブラック企業よりもエグいシフトで働いて割りと貯金あるっちゅーねん!」

 

 

 千冬がボケを炸裂させながらも、一誠が既に身に付けていたものと同じ鈴の付いた紐を一夏と一緒に首に掛ける。

 

 

「ルールは簡単、鈴の奪い合いだ。

俺たち三人の中で誰が最後までこの鈴を持っていられるかを競う。

もし奪われても制限時間内であれば奪い返す事をアリとする。

制限時間となった場合鈴を多く二つ以上持っていた者は勝利で、もし三人とも持っていた場合はそこからバトルロイヤルに移行、奪われた瞬間脱落だ。質問は?」

 

「勝者になったらご褒美とかあるの?」

 

「おう良いぜ、もし俺から鈴を奪えたら好きなもん買ってやるよ? 二年で400万貯めた俺の貯金は伊達じゃないぜ」

 

 

 どうやら一誠を出し抜ければ何か好きなものを買ってくれるという事らしく、貯金はあると嫌にドヤ顔をする一誠にシャルロットは遠巻きに『色々と大人も大変なんだな』と、生暖かい目で見る中、千冬が手を挙げ、普段の教師・織斑千冬とは思えない声色で言う。

 

 

「買って貰わなくて良いのでお風呂に一緒に入りたいです」

 

「え? ……………………まあそれで良いなら良いよ」

 

「じゃあ俺は昔みたいにおっちゃんと千冬姉と三人で川の字で寝たい」

 

「……………。ご、ごめんな? 本当にごめんな?」

 

「な、何で泣くんですか……」

 

「だ、だって……グスッ、本当に申し訳ねぇ」

 

 

 ルールを説明し、ご褒美についての追加が入るやり取りはシャルロットの目には何だか楽しげな家族を思わせた。

 だがそんなほんわかした雰囲気も――

 

 

「オラァ!!!!!!」

 

「ふん!」

 

「何で自然に二対一!?」

 

 

 開始と共に軽い戦場となる。

 

 

「……なにこれ?」

 

 

 ISによるものではない生身の攻防。

 それは誰かがぶつかれば剛風が吹き荒れ、当たり前の様に誰しもが残像を残しながら激しく動き回る。

 それはまるで漫画の様であり、ラウラの件で見た一誠の変化を見た時のような衝撃を受けるしかなかった。

 

 

「貰っ―――あ!?」

 

「ふっ、甘いな一夏」

 

「い、位置を入れ替えるなんてズルいぞ千冬姉!!」

 

「自分の異常性を使って何が悪い。お前だって使ってるだろう?」

 

「俺はある意味助かったぜ!! 行くぜドラ――」

「「それは流石にダメだ!!!」」

 

「……なんでぇ、ハモることないじゃんか」

 

 

 というか、明らかに千冬は魔法じみたものを使ってないか? と、一誠の首に掛けられた鈴に手を伸ばした一夏の位置が、一夏の後ろに居た筈の千冬の後ろに一瞬で移動したのを見て意味がわからなくなるシャルロット。

 

 

「ちっ、千冬姉の異常性も進化してるな……」

 

「当たり前だ。最初は自分の視界に入ったものしか出来なかったが、今では見て覚えた全てを可能にした。

例えばそこら辺の石ころと誰かの心臓を入れ換える……とかな?」

 

「えっぐ……。そんな事されたら俺もヤバイよ」

 

「例え話ですし、そんな真似はしませんよ。危ないし」

 

「ちーちゃんが良い子でよかったよホント……」

 

 

 しかも会話もぶっ飛んでると来たもんだ。

 八割りは理解できないその内容と、超常現象ともいうべき目の前の光景。

 

 

「ふははー!! 貰ったぜちーちゃ――――あれ?」

 

 

 果たして本当に人が起こす光景で良いのか? シャルロットはただただアクションSF映画の様な感覚で眺め、やがて一夏の異様な強さの秘密を知れた気がした。

 

 

「ちょ、ちょいちょいちょい! ちーちゃんは鈴をどこに入れてるんだよ!?」

 

「服の上に掛けておかなければならないというルールではなかったのでこうしましたが?」

 

「しましたが? って……じゃあ俺たちが取る場合はちーちゃんの服の中に手ェ突っ込めっての? ……それは流石になぁ?」

 

「俺は別にどうとも思わないぜ? だって姉ちゃんだし」

 

「お前はそうかもしれないけどよ……」

 

「これもひとつの作戦です。しかし所詮は幼稚な作戦なので、一誠さんに手を入れられてもしょうがないです。だってただの作戦ですから」

 

「そんな胸を張られても……」

 

 

 自分の置かれたクソッタレな状況をも破壊できる力を……。

 

 

「でも僕にはそんな力は無い……」

 

 

 シャルロット・デュノアの悩みは更に続く。

 

 

終わり

 

 

 

 

オマケ・姉弟と姉妹

 

 

 ご覧の通り、織斑姉弟は一誠に対する執着心が凄まじい。

 まだ千冬は大人なのである程度の制御が出来るけど、弟の一夏はすぐに言ってしまう。

 特に一誠により自分達と同じ位置に立っていた更識姉妹には並々ならぬライバル心を燃やしまくっている。

 

 更識姉妹の簪は寧ろ好意的にも拘わらずだ。

 

 

「別にイチャイチャしろなんて言わないかさ、もう少し仲良くなってみたりとかしない?」

 

「私は寧ろそっちを望みたいんだけど……」

 

「俺は嫌だ! ぜぇっったいに嫌だ!!」

 

「……って言うから」

 

「うーん……思春期は難しいな」

 

 

 試しに食事の席で一夏に提案してみてもノーの一点張り。

 そこまで頑なにならなくても……とノーを突き付けられて苦笑いする簪とを見ながらふと一誠は昔を思い出す。

 

 

「昔はお前だって俺と一緒にエロ本読んでたじゃん」

 

「そ、それは……」

 

「俺が巨乳ハンターシリーズをちーちゃんに隠れてこっそり見てた時、お前は―――――あ、更に思い出した。

お前確か眼鏡系の女の子の写真集を食い入る様に見てたなぁ?」

 

「なっ!?」

 

「その話はかなり興味あるよおじさん」

 

「へー? 一夏くんは眼鏡萌えかしら?」

「ちっげーよバカ!! そんなの俺は知らねぇ!!」

 

「いや、それは私も覚えてるぞ。一誠さんのそういうものを処分しようとした時、眼鏡系の写真集だけは捨てないでくれと私に泣きついたし」

 

「千冬姉がそこカミングアウトするのはダメだろ!?」

 

 

 今でこそ規制によりその手の物が入手できなくなりつつある時代よりほんの少し前。

 根底はやはりおっぱいドラゴンである一誠のコレクションを偶々意味もわからず一緒になって見ていた時に見てしまった一冊の写真集。

 それは眼鏡を掛けた可愛らしいアイドルの写真集だったのだが、一夏はそれを見た瞬間雷に打たれた様な衝撃が走った。

 

 そして密かに眼鏡属性好きになった――一誠が姿を消すまでは少なくとも隠さない程度に。

 

 

「別に隠す事ないだろ? 俺がお前くらいの歳は猿みたいに盛ってたぜ? ――――――出会いの機会はゼロだったから結局こんな感じになっちゃったけど」

 

「前から思ってたけど、もしかしてイッセーさんって……」

 

「……………。三十路突入で果たして魔法使いになれるのかな俺は? あはははー…………はぁ」

 

 

 つまる所、一誠にしてみれば一夏に自分の様にはなって欲しく無いからこそアレコレと女の子に対しての態度に口出ししてる訳で、未だにそんな経験が無いと改めて本人の口から聞いた瞬間、千冬と楯無がグッと拳を握ったのには気付いてないし……。

 

 

「ダメだ、更に性欲が跳ね上がってる。やっぱり束さんがちーちゃんの身代わりになるしかない……」

 

 

 と。どこぞからモニターしてるクレイジーなウサギがブツブツと思い込みの先の何かの超結論を出してたりしていた事も気づかない。

 

 

「イチ坊は俺みたいに絶対になるなよ? 本当に悲しいんだぜ?」

 

「そうは見えないけど」

 

「そらお前達が居るからだし、そこは俺も相当運がある自覚はしてるさ。色々とあるにせよな? でも急いでチェリーを卒業しろだなんて言いやしないけど、俺みたいに殺伐した人生は真似するなっつー話よ。お前は俺と違ってモテ男になれる素質があるんだからさぁ……」

 

「はぁ……」

 

「例えばかんちゃんだって可愛らしい子じゃないか? 篠ノ之ちゃんだってそうだし、りんりんちゃんだって、セッシーちゃんとかさぁ?」

 

「私、お姉ちゃんと一緒におじさんに鍛えて貰った頃はよく一夏の話を聞かされてた。

だからこうして会えてお話できて嬉しいよ?」

 

「チッ……それは何よりだな」

 

 

 眼鏡萌えをばらされて微妙に気まずくなって簪の笑顔から目を逸らす一夏に、一誠は『青春だねぇ』と他人事の様に頷くのだった。

 

 

 

 

「そんな事よりおっちゃんはどうなんだよ?」

 

「俺? 俺はまぁ…………………」

 

「イッセーさん、メイドの衣装を手に入れたので是非」

 

「私はスクール水着を着ようかな~?」

 

「………。今が楽しければそれで良いかな!!」

 

 

 そんな自分が妹分的な感覚で接していた筈の二人にコスプレをして貰える程度には、元の世界の億倍は充実した人生であったりはするのだけど。

 

 

「ちーちゃんがメイド服を着たら絶対に似合うとは思うけども……それを行うことで俺は束ちゃまにぶち殺されると思うな。たっちゃんの場合は布仏姉妹に……」

 

「本音ちゃんと虚ちゃんには簪ちゃんと一緒に何回も説明したのよねぇ。

というかあの二人はどうも私と簪ちゃんが仲違いしてた方が良いみたいに言う気がするんですよねー」

 

「それは私も思った、何でダメなのかはわからないけど」

 

「それは違うな。たっちゃんとかんちゃんが仲直り出来た事自体はあの子達だって嬉しい筈だよ。

問題はその間に外様の俺がしゃりしゃり出てきた事が気に入らないんだよ。ちーちゃんとイチ坊にとっての篠ノ之ちゃん姉妹みたいにね。だから結局全部俺が悪いの」

 

「ケッ、そんなもん勝手に言わせとけよ? つーか眼鏡の所にも逆恨みする奴が居たわけだ?」

 

「まぁね。あんまりにもおじさんをなじるからたまに喧嘩になる」

「くだらねぇ、テメーで出来ないことをおっちゃんがしただけで逆恨みか? くだらねぇ」

 

「私もそうね。虚ちゃんはどうしてもイッセーさんが生理的に無理らしいのよ」

 

「あの子そんな事言ってたの? そっかー……まあ、しゃーねぇよな」

 

「でも正直言ってしまうと私的には安心ですよ。多分織斑先生も同じ考えでしょうけど、イッセーさんは人見知りとは無縁の人だから、このIS学園にいる以上、他の女の子と親しくなっちゃうかもって不安で不安で……」

 

「既にラウラの件もある事だしな」

 

「山田先生からはめっちゃ怯えられたまんまだけどね……」

 

 

 青年期前半が凄惨過ぎたからなのか……。

 問題はあるにせよかつての様な常に周囲に気を張っていた一誠は居ない。

 

 

 

終わり

 

 

 

 




補足

実は眼鏡萌えだった一夏くん。
ていうか、性癖はほぼこのおっさんの影響を受けていたり。


その2

ちーちゃんの異常性は『大人』になることで消える事を否定した為、一誠領域に侵入しかけてます。


その3
たっちゃんこと刀奈さんに妙な対抗意識を燃やしてコスプレしようかと考えてるらしい千冬さん。

今回はメイド服に着目中。


その4
物凄く自然に盗撮盗聴をする束ちゃま。

あくまでも一誠くんがちーちゃんに狼藉を働いてはならぬという意味での監視です。……ほんとです。


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